鎮守高等学校・・・全国でもその名は運動、武術に秀でた高校として有名である。
この学校での部活の上位はそのまま全国の上位とさえ言われている程だった。
勿論学業も決してレベルが低いわけではい。
そんな鎮守高等学校に日比谷真司は通っていた。
-AM08:40 鎮守高等学校.3-B-
ガラッ!!
教室のドアが勢いよく開かれる。
机に突っ伏して寝ていたもの、これからの授業に備えて予習していたもの、友達と談笑していたもの。
皆が当然のようにドアの方に視線を注ぐ。
「はぁ・・・はぁッ・・・あれ・・・?」
肩で息を整えている真司はいつもとは違う朝の教室だと気がつく。
「おはよー、日比谷くん」
「おーす、相変わらずの重役出勤だな、日比谷ー」
「おはよーう」
皆が口々に真司の方へ向けて朝の挨拶をしてくる。
クラスでは遅刻で有名な真司。
今回のような朝のHRギリギリの時間で頑張ったと言える程である。
「なぁ、北ちゃんは・・・?」
「あー?何だ、知らなかったのか?」
教室の窓際、その1番後という特等席へ腰を下ろすと、前の席に座っていた親友の青砥凌空に話しかける。
北ちゃんとは、真司たちのクラスの担任である北村先生(42歳.男性)のことである。
「今日から担任変わるんだぜ?聞いてなかったのか」
「あぁー・・・言われてみればそんなこと聞いた記憶がないでもない」
凌空は呆れ顔もそこそこに、すぐさま笑顔になる。
「それでさ、実は今日から来る新担任・・・女の体育専任講師として来るらしいぜ!?」
「あー・・・?どうせ女ったって・・・あぁ、なるほどな・・・」
年上の女性が大好きな凌空は朝からハイテンションで真司に熱く語る。
対して真司は非常にドライだ。
どうせ、と言いかけて凌空のハイな理由が納得出来た。
鎮守高校は運動、武術で有名な高校である。
当然生徒に教えるべき教員も相応のレベルが求められる。
教師自らが手本を見せられないような年齢の先生が来るわけはないのである。
ましてや、体育の専任講師。
凌空のテンションは否が応でも上がる一方だった。
ガラッ
そんなことを考えていると教室の前のドアが開いた。
慌しく自分の席へと戻るクラスメイトたち。
だが、皆何処か動きが緩慢である。
その理由は皆同じだった。
「・・・これは・・・キタぜ・・・ッ」
目の前で教壇を見つめている凌空が独り言のように呟いた。
クラスの男子も女子も皆凌空と同じような目で教壇を見つめていた。
(・・・まぁ、気持ちは分からんでもないが・・・)
「遅れてごめん!今日からこの3-Bの担任になった・・・」
ドアから早歩きで機敏に教室へ入って来た女性は壇上に昇り、黒板へとチョークで名前を書いていく。
「朝比奈郁、です。これからよろしくね」
自分の名前を書き終え、正面へと振り向いた女性、郁は凌空や真司の想像を遥かに上回る美人だった。
にっこりと微笑むその顔はまさに凌空のストライクゾーンど真ん中の綺麗なお姉さんだった。
「えーと、早速で悪いんだけど・・・もう朝のHRの時間がないので、早く一時限目の用意をするように」
鎮守高校は科目ごとに教える教員が違う。
次の一時限目も郁先生の体育ではなかった。
「えー、郁先生は何処に住んでるんですかー!?」
「先生はカレシ居るんですかぁー?」
「先生の好みの男ってどんなやつー!?」
だが、郁の望みとは対照的に生徒たちからは矢継ぎ早に質問が飛び交う。
一気にクラス中が騒然となる。
(ま、そりゃこうなるわな・・・)
そんな光景を後の席でボケッと眺めつつ真司は置き勉していた机から一時限目の教科書類を取り出す。
「・・・黙らないと蹴り倒すわよ?」
しぃーん・・・
郁先生の呟いた一言でクラスは凍りついた。
声色を変えたわけでもない、表情だって笑顔のままだ。
だが、クラス中を黙らせる凄みがあった。
クラスメイトたちがいそいそコソコソと授業の支度を始めるのを確認すると郁先生は満足気に笑顔で教室から出て行った。
(・・・面倒なことになりそうだな・・・)
空は晴天雲は少なく・・・真司は憂鬱そうに軽くため息を吐いた。
なぜなに!!征伐係!!
◇青砥 凌空(あおと りく)
・18歳/171cm
・鎮守高等学校に通う高校3年生。
・土野市にあるお屋敷に家族と共に暮らしている。
・シンジと同じく、ファミレス「ピアチューレ」でバイトをしている。
・シンジとは中学時代からの親友。
・幼い頃から躾が厳しかった為、礼儀作法はしっかりしている。
・その反面、外で走り回ることが大好きだった。
・学校での成績は常に学年で上位に入るほど賢い。
・陸上部所属で、短距離のエースとして活躍している。
・勉強が出来て運動も出来るので、当然のようにモテる。
が、年上のお姉さま以外には異性を感じないので未だにフリー。
・しっかり勉強してはその倍しっかり遊ぶスタンス。
・若干冷め気味のシンジと対照的にこちらはスグに熱くなる熱血漢。
・男ながら料理の腕もかなりのものらしい。
・毎朝髪型のセットに非常に時間を掛けている。
髪型を崩されるとスグに怒る悪い癖がある。
・辛いものがとことん苦手。
カレーも中からでさえ、いっぱいいっぱい。甘口推奨。
・新しく赴任してきた郁先生に一目ボレ中。
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