「よ~し!じゃ、友達になった記念に親交を深める意味を込めて街にお出かけするぞ!!」
「おー!!」
「ほら、ぼ~っとしてないで。行くよ」
「え?え?」
「え~!?」
一刀の一言に璃々は元気に応えたが、弁と協の二人は展開についていけなかった為、呆然としていた。そんな二人の背を強引に押す一刀。二人は困惑しながらも、されるがままであった。
「蹴、符儒。悪いけど、葉雄を頼む」
「わかりました」
「任せろ」
「紫苑。悪いけど、一緒に来てくれない?」
「ええ。わかりましたわ」
「天和達はどうする?」
「もっちろん。私はついてくよ~」
「なんで私達にはついてきてって言わないわけ?」
「姉さん達・・・私もいきます」
「お供します」
続いて一刀は仲間達に確認を取る。新たに兵に志願した葉雄を蹴に任せ、後のことを符儒に託すと一刀は華佗に声をかける。
「華佗。君に葉雄の治療代を払おうと思う。ついてきてくれないか?」
「気にしなくていい・・・と言いたいところだが、それじゃお前の気が済まないのだろう?」
「ああ」
「わかった。ありがたく受け取ろう」
華佗の承諾を得て、一刀達は元廃村だった始まりの村へ行くことになったのである。
これは、そんなみんなを引き連れた『おせっかい』の物語である。
「あれ、おいしそう~。わ~、あっちもいいな~」
「こら、璃々!ちゃんと前を向いて歩きなさい。人にぶつかっちゃうわよ」
「だいじょう・・・わぷ!?」
「っとと、危なかったね。お母さんの言うこと聞かないとダメだよ?」
「えへへ、は~い」
紫苑の言うとおり、余所見していて危うくぶつかりそうになったが、一刀が抱きしめるように自分のところに寄せたことで回避したのだった。その光景は微笑ましく、本当の家族のような光景だ。
「にしても、確かにもうご飯時だからな。食べ物に目が行っちゃうのもわかる。どこかで食べようか?」
「「さんせ~♪」」
「姉さん!!」
一刀の一言は歌姉妹の強力な後押しもあり即決だった。そこで一行は近くの飲食店に入ることにしたのだが、一つ問題が浮上した。今いるメンバーが、一刀を始め、仙花、紫苑、璃々、劉弁、劉協、天和、地和、人和、卑弥呼、華佗、貂蝉と10人を越す大所帯である。いくらそれなりの大きさを持っている店を選んだからといって、全員が同じ席に座ることが出来るの方が稀なのだ。
「申し訳ありません。3人席と6人席なら空いているのですが・・・」
案の定、入った店にこの人数を座らせられる席がなく別れて座ることになるのであった。その席分けなのだが、どう分けようか考える前に卑弥呼がいの一番に意見を言ってくれた。
「ふむ、知り合い同士なら気兼ねないだろうからの。わしらが三人席に座るかのう」
「そうだな」
その一言に華佗が了承し、卑弥呼、華佗、貂蝉の三人が三人席に座ることに決まったのである。一刀としても、その案が妥当であり、時間も大してロスせずに昼食にありつけられるので反対することはなかった。
さて、残った6人席であるが、残りの人数を考えると3席ほど足りないのである。しかし、一刀、紫苑は特に問題視していない。それは何故か?答えは残っているメンバーの年齢である。
「じゃ、座ろうか」
「璃々。こっちにきて」
「は~い!」
一刀の一声で席に座りだす面々。座るのは天和達三姉妹と仙花、紫苑、一刀の年上組である。年少組はまだ立ったままであったが、紫苑が璃々を呼び寄せ自分の上に座らせたのである。
ここまで書けばおわかりだろう。そう、年少組を誰かの上に座らせれば六人席でも問題ないのである。これは母親である紫苑や、子供達の世話になれている一刀にはごく普通に浮かぶ考えであった。それを見た仙花や天和達はすぐに納得したのであったが、劉姉妹は戸惑うばかりである。慣れない人達と一緒であり、自分との血のつながりがあるわけでもない。ましてや、まだ幼い二人にそんなことを察しろと言う方が厳しいのだ。
「ほら、おいで。劉弁ちゃん」
「あなたもですよ。劉協ちゃん」
「「ふえ?」」
そんな二人に優しく声をかけたのが、一刀と仙花である。
何故、声をかけられたか理解していない二人に優しく微笑みかけ、一刀は劉弁の腕を引いて・・・。
ヒョイ
ポスン
「あっ・・・」
脇に手を入れたと思った瞬間、劉弁は持ち上げられ、一刀の膝の上へと乗っけられたのである。思わず声を漏らした劉弁だったが、隣を見ると自分と同じことをされている劉協の姿が見えたのであった。
「あ、あの・・・」
「何が食べたい?食べたいのを選んでいいよ」
戸惑う劉弁に笑顔でのたまう一刀。ここで困ったのは劉弁である。
慣れない環境での戸惑いもある。いきなり、一刀の上に座らされたことが拍車をかけていることもある。が、一番は彼女は頼み方を知らないのである。幼い頃から朝廷で過ごし、食事もやることも全て部下が用意してくれていたのだ。その為、庶民達の店での常識などなど知らないことがたくさんあるのだ。よって、一刀の言葉に困惑するしかなかったのである。それは、隣の劉協も同じであった。ただ違うとすれば・・・。
「あの・・・おねえちゃん。どうすればいいの?」
年下である劉協は素直にわからないことを質問できたということである。
「どうって・・・わからないの?」
「うん。はじめてだもん」
「そうなの。でも、簡単ですよ。食べたい物を教えてくれるだけでいいの。そうしたら、後は私達が頼みますから」
「う~・・・でも、どういうたべものかわからないの・・・」
「・・・なるほど」
劉協の言葉に一刀は理解を示した。恐らく、いつも劉協達が食べていた物は、この店にはおいていなかったのだろうと。考えてみれば、劉協達は仮にも帝である。そんな高貴な身分の人物に庶民達が食べるような物を出すだろうか?答えはノ-である。そんなことは考えられない。よって、彼女達に好きなのを頼んでいいよと言われても困ってしまったのであろう。
「そっか、それは失念してたな・・・」
「どうしましょう、一刀様」
「わからないんじゃ仕方ないな。じゃ俺達が適当に頼むから一緒に食べよう。それでいいかい?」
「「うん(はい)」」
しばらくすると、一刀達の前に複数の料理が並べられる。劉協達に了承を得た後、一刀達年上組が話し合った結果、一人一品ではなく、一品を複数の人間が食べるようにし、一人が複数の料理を食べられるようにすればいいということになったのだった。
「あ、私それ食べた~い」
「すいません。レンゲをとってもらえますか?」
「あ、餡がないんだけど・・・取ってくれない?」
料理が並んだので早速、自分の皿に盛り始める天和達。対して子供を上に乗せている一刀達はまず、自分より先に子供達に食べたいものを聞くのであった。
「何が食べたい?」
「えっと・・・・あの・・・」
「何が食べたいですか?」
「・・・いいの?」
「ええ、遠慮なく言ってください」
「じゃ・・・あれ!」
仙花、劉協組は早くも劉協が順応したのか、スムーズに食事を始めることが出来ていた。しかし、一刀、劉弁組はなかなか自分の希望を言うことが出来ない劉弁を一刀が根気強く待っている為、食事を始められないでいるのである。
「えと・・・」
「うん。遠慮せず言ってごらん?」
「うぅ~・・・」
「これ、おいしいね!おねえちゃん!!」
「そうですね。まだ、たくさんあるからどんどん食べていいんですよ?」
「ほんとう!?わぁ~い!!」
「あぅ・・・」
まだ間誤付いている自分とは違い、おいしそうに料理を平らげている異母妹の様子に複雑な想いで唸る劉弁。そんな様子に気付きながらも、自分から言い出してくれるのを根気強く待つ一刀なのであった。
きゅぅうううう
「はぅ!!」(カァアアアア///)
やがて、空腹を訴えるように劉弁のお腹が可愛く鳴ってしまった。恥ずかしさで真っ赤になって俯いてしまう劉弁。これ以上は可哀想だと思ったのか一刀は漸く助け舟を出すことにした。
「俺はこれを食べようかな。劉弁ちゃんも一緒に食べよう?」
「あ・・・え・・・・は、はい!」
「よかった。ちょっと待っててね」
一刀は自分の皿に料理を盛ると、レンゲで一口掬い劉弁の口へと運んで行く。
「え?」
「ほら、口を開けて。あ~んって」
俗に言う、『はい、あ~ん♪』である。これには劉弁もたまらず言った。
「あ、あの・・・ひとりでたべられますよ?」
「だ~め。ちゃんと自分が食べたいものを言ってくれない劉弁ちゃんへの罰です。素直に口を開けて食べてね?」
「ふ、ふぇ・・・」
「はい、あ~ん♪」
「あ、あ~・・・・ん」
「良く出来ました♪」
劉弁の精一杯の反抗も、軽く流して一刀は料理を彼女の口に運ぶ。この一刀の攻勢についに全面降伏した劉弁はゆっくりと口を開くのであった。
「おいしい?」
「は、はい。おいしいです・・・」
実際は、緊張して味が分からないのだが、ここで意見を言わないと今度は何をされるのかわからない為、無難に答えている劉弁。そんな二人の姿を羨ましそうに眺める視線が。
「う~、いいな~。私もやりたいな~」
「姉さんに出来るの?」
「も~、失礼だよ。地和ちゃん!!出来るも~ん!!」
「でも、あの空気に割り込めないよね」
「そうなんだよね~・・・今は我慢しておく~」
さすがの天和でも、今の一刀達が醸し出す空気に割り込めないようで悔しそうに料理を口に運ぶ。そんな彼女らにもおせっかいを働くのが一刀である。
「天和。これ食べる?」
「うん!頂戴♪」
「ほら、あ~ん」
「あ~ん♪(パクッ)おいし♪」
「じゃ、皿頂戴。盛ってあげるから」
「ありがと~♪」
一刀側にあった料理を天和達の皿に盛っていく。先ほどの羨ましそうな顔が一変して笑顔になる天和だった。
「姉さん・・・羨ましいってそっち?」
末妹の呆れたようなツッコミは残念ながら、誰も聞いていないのである。
「おいしかったね!」
「うん!!」
食事が終わり、ご満悦の璃々と劉協。二人ともすっかりと馴染んでいるあたり、同年代というのが大きいのだろう。仲良く手を繋いで歩いている。そんな二人と対称的なのが劉弁であった。
「さあ、出発しようか」
「あぅ///」
会計(一刀が払った)を済ませた後、一行は一刀の立て直した村への移動を再開した。みんなを促している一刀の手は劉弁と繋がれていて、繋がれている少女の顔は真っ赤になって恥ずかしがっていた。そんな劉弁を羨ましがる天和・・・ではなく。
「いいな~、りゅうべんちゃんいいな~。おとうさんとつなげていいな~」
璃々である。
「璃々ちゃん。もう片方があいてるよ」
「わ~い♪つなぐつなぐ~♪」
一刀の言葉に反対の空いている手を小さな手でぎゅっと繋ぐ璃々。一刀と繋いでいる手と反対の手は劉協と繋がれていた。
「わ、わたしはどうすれば・・・」
「協ちゃんは私と繋ぎましょう?」
「いいの?おねえちゃん」
「ええ、もちろんよ」
「わ~い♪」
璃々を羨ましそうに見ていた劉協も、仙花が名乗り出ると途端に笑顔になった。この二人も食事ですっかりと仲良くなったようである。そんな家族のような光景を見て・・・。
「うぅ・・・璃々、いいわ!その調子よ!!」
鼻を押さえながら、自分の娘を応援し悶える母もいれば。
「決めた!!」
「いきなり何?姉さん!!何を決めたっての?」
「私、お母さんになる!!」
「はあ!?」
突拍子もない決意を固める長女がいたりする。
そんなこともありながら、一行は移動を続けるのであった。
ブブブブブブブ・・・・
森の道を歩いた先にある村への入り口。普通の街ならば、門番が立っている場所。だが、その村には門番も、見張りの人すらも立っていない。そこにいるのは羽音を響かせる大きな蜂の群れである。この蜂こそ、一刀が代表を務めていた村を守る守護虫と呼ばれているスズメバチであった。
「「ひっ!?」」
初めて目の当たりにした光景に怯える姉妹。そんな姉妹の反応に、初めて見たらそうなって当然だろうなと思った一刀は声をかけようとしたが。そんな一刀よりも先に声をかけた人がいた。何を隠そう、その人物とは天和である。
「大丈夫だよ。このハチさん達は一刀の友達だから」
「「ともだち?」」
「そうだよ~。見てて」
天和の言葉で一刀に注目が集まった。その期待に応えようと姉妹の対応を天和に任せ、一刀は久しぶりにあったハチへと言葉をかける。
「久しぶりだな。こっちは俺のお客さんだよ。通してくれないか?」
「・・・・」
「そっか~。もっと頻繁にこれればいいんだけど。ごめんな~」
「・・・・」
「わかったわかった。ありがとな。じゃ、通らせてもらうよ」
会話が済んだようで、一刀がみんなの方へ振り向いたと同時にハチの群れが左右に分かれる。まるで。ここを通っていいよと言っているようだ。
「ここが俺が最初に住んでいた村だ」
「「うわ~・・・」」
「貂蝉、お主が連れてきたときは誰もいなかったのだろう?」
「・・・ええ、そのはずだったんだけど」
「おいおい・・・こんな光景見せられたらそんなこと言われても信じられんぞ?」
ハチの門を通り過ぎ、村へと入村した一行へ紹介を始める。紹介された面々はその村の様子を見てそれぞれが異なるが、一様に驚いた様子を見せていた。復興したといっても、小さな村である。決して人が多いわけではない。それでも、皆が浮かべているのは笑顔であり、人数以上に活気があるように感じられていた。
「新鮮な魚が手に入ったぜ!!」
「野菜が安いよ!!」
「いらっしゃい!!」
と様々な人の呼び声が聞こえたり。
「ねぇねぇ。聞いた?」
「あの話でしょ?聞いたわよ~」
と井戸端会議をしている奥様達がいたり。
「・・・・すごいです」
「・・・・うん」
そんなどこにでもあるような光景を劉姉妹は羨望の眼差しで見ていた。
それは姉妹のいた洛陽ではなかなか見られなかった光景だからだ。というのも彼女達の身分がおいそれと街へと出て市民の様子を見ることなど出来るはずがない。彼女達が知りえた情報は全て宮遣えの人達から話を聞いての物でしかなかった。そんな彼女らからして、すごい光景の中、自分達姉妹を含め一行はゆっくりと進んでいく。
「紫苑、悪いけどこの子達のこと少しの間、お願いするね」
「わかりましたわ」
しばらく歩いて辿り着いたのは以前に一刀が住んでいた家である。行政を行う為、拠点を移した一刀であったが、住んでいた家は村人に頼んで管理してもらっていたのだ。そこで璃々達子供組を普段から扱いの慣れている紫苑に頼み、一刀は華佗を連れて家の裏へと向かう。一刀の意図を察していた紫苑も何も言わず見送ると、子供達の世話と一刀の意図を仙花達に伝えに家の中へと入るのであった。
「こ、これは!!」
「これが、君に贈る報酬だ。好きなだけ採ってってくれ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!宝の山だああああああああああああああ!!いいのか?本当に!?」
「ああ、それだけのことをしてもらったからな」
一刀が家の裏に華佗を連れてきてされた会話である。華佗は目の前に広がる光景にひどく興奮していた。それは彼にとってまさに宝の山であったからだ。
「これは胃薬に、これは熱病に、これは・・・」
片っ端から手にとっては、「これは○○に・・・」と口に出しては次々と懐に収めていく。一体彼は何にそんなに興奮しているのか?その正体とは・・・。
「まさか、薬の材料がこんなにあるとはねぇ・・・」
「そうじゃな。医師である彼にとってまさに宝の山じゃろうて」
そう、彼に見せたのは全て薬の材料に使われる植物だったのである。医師もいない村であったことと、当初は一人しかいなかったことで、念のためにと育てていたもので、実際に何度か世話になっていたものであった。
「困ったときの為にと備えていたことが、こんなことに役立つんだもんな。育ててよかったよ」
華佗の様子を笑顔で眺めて呟く一刀に、卑弥呼達も笑顔でうなずくのであった。
「あっ!おとうさんだ!!」
「お?璃々ちゃん。どうしたの?」
「いまね!べんちゃんたちとあそんでたの!!」
「そっか。怪我しないようにね?」
「うん!おとうさんもいっしょにあそぼ!!」
「いいの?なら、一緒に遊ぼうか?」
「うん!!」
華佗への報酬受け渡しが終了し、戻ってきた一刀の前に何かから逃げるように走っている璃々の姿が。声をかける前に、璃々も気付いて元気に声を出して駆け寄ってくる。
どうやら、劉弁達と遊んでいるところらしい。仲良しになれてよかったと一刀は嬉しく思っていたら、遊びのお誘いをされたので二つ返事で承諾する。その答えを聞いてますます笑顔を深める璃々、早く早くと一刀の手を引く。そんな璃々に苦笑しながら、一刀は後ろの華佗達に家に戻ってくれと伝えると璃々に引かれるままに連れていかれるのであった。
連合軍に敗走してから、幾日目か経ち屈強な猛者揃いと謳われていた呂布軍は見るも無残な姿へと変えていた。日々、会う人会う人からの非難の声と軽蔑の眼差し、様々な罵倒の言葉を反論も出来ずに浴びせ続けられ、食糧の確保すらもままならず、断食が続いていたからだ。腹は空腹を訴え、衣服も調達出来ない為、ボロボロである。唯一出来たのは途中にあった小川での水分補給と水浴びであった。
「陳宮様・・・」
「今日はここで野営するです」
「は・・・」
山道を通ると人に見つかってしまう為、彼女達は獣道すらも通らず、自ら道を切り開いていた。が、それは彼女達の体力を通常の数倍以上使うことである。さらに、夜が更けると獣や野盗に襲われないように代わり代わり見張りにつく。睡眠不足になって精神的に疲弊していた。同じく、人目につかないように狩りも控えめに行わなければならない。よって、食糧は山菜などが主であり、兵士である彼女らにとっては足りなすぎるのである。そんな肉体と精神のダブルパンチを食らい続けてきた者達の中でついに限界に達した者が出てしまった。それは次の村へ立ち寄ったときのことだ。
「あの・・・すいませ「どけ・・・」な、なんですか!?」
「はい?どうなさ・・・」
「ここにあるありったけの食糧を出せ。さもないと、首と体がお別れすることになるぞ」
「ひぃいいい!?」
いつもどおり、交渉を試みる音々を押しのけ、一人の兵が村人へ話しかけた。いや、話しかけたのではない。この者は恐喝に走ったのだ。剣を突きつけられた村人は腰を抜かし、悲鳴を上げるしかない。
「な、何やってるのですか!!」
「はっ・・・決まってんだろ?賊軍は賊軍らしく略奪しようってこった」
「それでは、噂が本当に・・・「何甘ったれたこといってんだ?」え?」
「もう、誰もが俺達を悪者だと決め付けてる。誰も信用しちゃくれない。職にもつけず、食にすらありつけず、ただ目的もなく彷徨うだけ・・・そんな生活に耐えられるわけねぇだろ!!」
「そうだ・・・そうだ!そうだ!」
「もう、我慢の限界だ!!」
「俺達は思うがままにやったろうじゃねぇか!!」
一人の兵の言葉に、次々に同意し武器を掲げる兵達。もはや武力を持たない音々にはどうあがいてもとめられないところまで来てしまった。いつもなら、ここで恋がその武力を持ってとめてくれただろうが、今の恋は生ける屍と化しておりそれも無理である。このままでは村での略奪が始まってしまう。本当に呂布軍は賊へと成り下がってしまう。絶望感に目に涙を浮かべる音々だった。
「さぁ、みんな!いく「ザシュッ」べ?」
略奪を先導していた兵が、突撃の号令を出そうとした時、その兵の首が飛んだ。突然のことでその場にいた誰もが硬直する。首から上がなくなった体は膝をついて倒れた。その首を飛ばした人物は・・・。
「これがあの、精鋭揃いと称えられた呂布軍の同僚だと思うと虫唾が走るわ・・・」
とんだ首を軽蔑の眼差しで見つめながら吐き捨てるのは女性であった。薄紫色の長髪を後ろで二つにわけている(ツインテールではない)。その顔は整っていて美女と言えるのだが、目つきが鋭すぎるきらいがあり、美しいよりも恐ろしいが先にきてしまう程であった。その女性は、持っていた剣を一振りして血を払うと高らかに宣言した。
「さぁ、このゴミに賛同した奴。前に出なさい。全員、同じ目に合わせてあげるから」
「お、俺はしてないぞ?」
「ぼ、僕もだ」
「私も!!」
その女性の言葉に次々に弁明の言葉が上がったが・・・。
次の瞬間、その弁明した者達の首が空に舞う。
「言ってなかったが、わが身可愛さに嘘を言っても無駄だ。全員覚えているからな」
女性は持っていた剣の切っ先を略奪に走ろうとした兵達に向けて言う。その眼光は殺気を込めたことでさらに鋭さを増し、見ている者に恐怖を与えていた。それはまさに蛇に睨まれた蛙状態である。
「ひぃいい!!」
「こ、殺されるぅううう!!」
緊張感に耐え切れなかった兵達が逃げ出した。しかし、それは無駄な抵抗である。
ヒュン!
風斬り音の後、彼らの首は体とお別れしていたからである。
剣では決して届かない距離だったはず、まだ斬られていない兵達はどうして首が飛んだのか理解できていなかった。
「我が“追蛇”から逃げ切れると思っていたとは・・・愚かだな」
そして、また一振り。彼女の手で振られた剣。それは運動エネルギーがくわえられた途端、刀身が一定間隔で分離を始める。分離した刀身は一つ一つがワイヤーのような紐で繋がっており、まるで鞭のように撓った。これが、先ほど兵の首を飛ばした正体だ。
「蛇腹剣。または鞭剣と呼ぶらしいが・・・。我が頼れる相棒だ」
その蛇腹剣を使う彼女こそ、呂布軍副将にして、今の呂布軍を率いているのは実質、彼女である。さらに、彼女は恋に告ぐ武技を持っていた。名を高順という。
「さあ、その穢れた思考を抱いたことを後悔し逝け!」
その数分後・・・
略奪に走ろうとした兵達は一人残らず処刑されたのであった。
「陳宮・・・」
「高順・・・先に進みましょう。ここではもう無理です」
「そうだな・・・。みなの者、行くぞ」
こうして、音々達は村を後にした。
彼女達に希望の光はまだ見えない・・・。
みなさま、お久しぶりです。
はじめておせっかいをお読みするみなさま、はじめまして。
おせっかいが行くの作者、びっくりです。
長らくお待たせ致しましたおせっかい。ようやく更新が出来ました。
ここまで時間がかかってしまったこと。楽しみに待って下さっていたみなさまに大変申し訳なく思っております。
実はここ数ヶ月の間、周りの環境が目まぐるしく変わっていまして。
てんやわんやだったのです。
まず、仕事が修羅場りました。
おかげで休日返上で出勤する日々でした。最高で12連勤だったこともありました。
次に、引越し。
私、ようやく一人暮らしを始めまして・・・。
いや、せざるをえない状況になったので仕方なくなのですが・・・まぁ、家庭の事情なのでここは簡便してください。
で、引越してしばらくネット環境が整わなかったこともあり・・・。
今日、ようやく投稿することが出来た次第です。
仕事もようやく落ち着きを見せたのでこれからもちまちま更新していきたいと思います。
ただ、突然また修羅場ることもあると思いますが、完結目指して頑張りますので。
それでは、また次回の作品で。
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約数ヶ月の時を経て・・・私は帰ってきた~~~!!!!
久しぶりのおせっかいの更新です。