No.249077

真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第15話

葉月さん

リニューアル後、初の投稿です。
少々迷ってしまいましたがなんとか投稿完了!

一通の書簡により動き出す諸侯たち。
それは、袁招からの董宅討伐の檄文だった。

続きを表示

2011-07-31 00:21:21 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:10637   閲覧ユーザー数:7386

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第15話

 

 

 

 

【動き始めた大陸】

 

《斗詩視点》

 

「姫~!文ちゃ~ん!どこですか~~?」

 

私は一人、煌びやかな廊下を歩いて姫と文ちゃんを探していた。

 

「もう、姫も文ちゃんも何処に行ったんだろう」

 

私の名前は顔良、姫である麗羽様の武将です。

 

「斗~詩~~!」

 

暫く城内をウロウロしていると遠くから私を呼ぶ声が聞こえてきました。

 

「あ、文ちゃん!もう、何処に居たの?探したんだよ」

 

「あ~、それが姫がさ」

 

そう言うと文ちゃんは苦笑いを浮かべて言いよどみました。うぅ~なんだか凄く嫌な予感がするよぉ。

 

それでも私は聞かないといけないと思い。文ちゃんに聞いてみました。

 

「姫がどうかしたの?」

 

「それがさ、『きーーっ!あの田舎太守の董卓さんが洛陽を占拠してるですって!そんなの許せませんわ!』とか言い出してさ。もう大変だったんだぜ?」

 

「はぁ~、それより仕事手伝ってよ~。私一人じゃ終わらないよ」

 

「それは斗詩に任せた!」

 

「ええ!?だって文ちゃんの分まであるんだよ?!」

 

「あたいは、机仕事が苦手なんだよ。んじゃ、そう言う事でよろしくな~!」

 

「あっ!文ちゃん……もう!勝手なんだから文ちゃんは……はぁ」

 

私は溜め息を吐いて、来た道を戻りました。

 

「なんとか今日中のものは終わらせないと……」

 

執務室に戻った私はとにかく重要な書簡から片付けていきました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「ではこれをお願いします」

 

「かしこまりました」

 

「ふぅ~」

 

出来上がった書簡を女官に渡し、一息つく。

 

「……一刀様、今頃どうしているのかな~」

 

天井を見上げてポツリと呟く。

 

盗賊から助けてくれたあの方を思い浮かべる。

 

優しくてとても強い。私が初めて好きになった男の人。

 

私は引き出しから一枚の布を取り出して両手で握り締める。

 

「また、会えるかな……会いたいな」

 

「誰に会いたいんだ?」

 

「きゃあ!」

 

物思いに耽っていると行き成り文ちゃんの顔が目の前に現れて悲鳴を上げてしまった。

 

「うっわ!ひどいな、斗詩~」

 

「ぶ、文ちゃん!いつの間に入ってきたの?!」

 

「今さっきだけど……斗詩~、誰に会いたいって?」

 

文ちゃんはニヤニヤ笑いながら私を見てきた。

 

「え?!そ、そんなこと言ってないよ!」

 

「顔を真っ赤にして言っても説得力無いぜ斗詩」

 

「うぅ~……そんなことより、文ちゃん何しに来たの!」

 

私は無理やり話を切り替えた。

 

「ああそうそう、なんか姫が用があるから直ぐに来いって」

 

「そう言う事は早く言ってよ~。姫、遅くなると怒るんだから」

 

私は文ちゃんに文句を言いながら机の上を片付けて執務室を後にした。

 

もちろん、一刀様から貰った布は文ちゃんに見られないようにして机の引き出しに仕舞いました。

 

「ほらいくよ。文ちゃん!」

 

「待ってくれよ、斗詩~」

 

「もう文ちゃん、早く行くよ」

 

私と文ちゃんは急ぎ姫の居る玉座へと急いだ。

 

「遅いですわよ!文醜さん、顔良さん!」

 

姫は玉座で足を組み肘宛に指を打ち鳴らしていた。

 

「すいません、政務におわれていたので遅れてしまいました」

 

「そう、ならいいでしょ……さて!文醜さん、顔良さん!これを諸侯に送りつけてきなさい」

 

「?姫~これはなんすか?」

 

文ちゃんは姫から受け取った巻物を上にしたり下にしたりして聞いていた。

 

「あの忌々し田舎太守の董卓さんを懲らしめる為の檄文ですわ!」

 

「でも、この手紙だけで動くとは思えませんけど」

 

これだけじゃ誰も協力しないよね。どうするのかな姫は。

 

「お~っほっほっほっほ!わたくしが何も準備していないと思っているのですか」

 

「何かしたんですか?」

 

「当たり前ですわ!既に、あの田舎太守は洛陽で暴政を働いていると噂を流していますわ!」

 

「でもそれって斥候とかで直ぐに嘘だとばれるんじゃ」

 

「顔良さんは心配しすぎですわ。そんなこそこそと調べ周っている様な輩は既に排除いたしましてよ。お~っほっほっほっほ!」

 

姫は玉座に座りながら大笑いをしていました。

 

「うぅ~……いいのかなこんな事して」

 

「気にすんなって斗詩!あたいは強いやつらと戦えればそれでいいんだからよ!」

 

「文ちゃんはそれでいいかもしれないけど!はぁ~、バレたら大変な事になるのわかってるのかな」

 

「大丈夫だって斗詩!あたいが守ってやるから!がはははは!」

 

「もう、文ちゃんったら……」

 

私は諦めたように溜め息を吐いた。

 

………………

 

…………

 

……

 

「すいません。それじゃこれを諸侯に届けてくれますか?」

 

「かしこまりました」

 

一礼すると部屋を出て行く兵士。

 

「ん~~っ!疲れた」

 

私は伸びをすると暗くなった窓辺に近づき空から照らす月を見つめた。

 

「一刀様も連合に参加するのかな……」

 

名前は聞いけど何処に属しているかは聞き忘れていた。

 

「色々調べてみたんだけどな~」

 

方々調べたけど北郷一刀と言う名の人は見つからなかった。

 

「それに関羽さんも調べてみたけど一刀さまの家臣じゃなくて劉備って人の家臣みたいだったけど……」

 

「はぁ~、でもその情報も結構古い情報だったしな」

 

一刀様に助けていただいてもう半年以上も経っていた。

 

情報を得るには斥候を出して随時更新していかないといけないし。

 

私は私情で一刀様を調べている為、そこまで頻繁に斥候を出す事が出来なかった。

 

「よし!悩んでても仕方ないよね。明日の為に今日はもう寝よっと」

 

私は寝床に潜り込み眠りについた。

 

「一刀様。お休みなさい……」

 

数日後、私は反董卓連合軍内で一刀様に出会うことになるけど、今の私はまだ知らないでいました。

 

《一刀視点》

 

「それでは、朝議を始める」

 

愛紗は立ち上がり朝議の開始を告げた。

 

「まずは、朱里よ。町の方はどうなっているのだ?」

 

「はい。概ね順調に人が増えてきています。これにより、税も多く見込めるかと思います」

 

「うむ、人が増えてくれば徴兵も期待できそうだな」

 

「あ、一ついいか?」

 

「何でしょうか、ご主人様」

 

朱里は首をかしげて俺を見てきた。

 

「人が増えてくる事で問題が出てくると思うんだけど、今のところは出てきてないのか?」

 

「そうですね。多少の問題は起きているようですが、ご主人様が提案してくださいました『駐在所』のお陰で事件の解決が早くなったと報告を受けています。もうしばらくは様子を見て、もっと実用的にしていけばよいかと思います」

 

「そっか、それなら提案した甲斐があるってものだよ」

 

「はい、町の安全も守られ、かつ、兵の皆さんも自分が街を守っていると実感しているようで士気も上がっています」

 

「では、次の報告を……星、頼む」

 

「うむ。任されよう。兵の調練だが――」

 

こうして、みんなの報告を受け朝議は順調に進み、全ての報告が終わった。

 

「では、これで何もなければ解散とするが何か報告があるものは居るか?」

 

「あ、あの、少々よろしいでしょうか」

 

「朱里か、どうした?」

 

「はい、冀州の袁紹さんから文が届いたのですが……」

 

朱里は一通の手紙を取り出したがその顔には困惑の色がにじみ出ていた。

 

「なんて書いてあったの、朱里ちゃん?」

 

「そ、それがですね……」

 

「どうした?読み難いのなら私が読むぞ」

 

「いえ、そう言う訳ではないのですが……ごほん、では読みますね……」

 

朱里は咳払いをして手紙を読み出した。

 

「『お~っほっほっほっほ!諸侯の皆さん!わたくし、袁本招がみなさんにお伝えしたい事がありますわ!」

 

「今、洛陽に居る田舎太守の董卓さんは重い税で民を苦しめていますの!」

 

「ですから、このわたくし、このわ・た・く・しが董卓さんを懲らしめ様と思い立ちましたのですわ」

 

「そこで!みなさんのお力をお借りしたいと思いこの手紙を差し上げたしだいですわ!」

 

「もし来ないようなお馬鹿さんはいらっしゃらないと思いますが。来ない場合は、それ相応の対応をさせていただきますわ」

 

「お~っほっほっほっほ!いいお返事をお待ちいたしておりますわ。お~っほっほっほっほ!』……ふぅ」

 

「「「……」」」

 

「あ、あの、皆さん?黙らないでくださ~~~い!」

 

朱里は半泣きになりながら手紙を机に置いた。

 

「あ、ごめん、朱里がそんな声出せるとは思わなかったからさ、つい」

 

「つい、なんですか?引いたって言いたいんですか?いいですよ。私なんて……」

 

朱里はいじけてしまい、周りの冷たい目線が俺に刺さる。何とかしろっと。

 

「うっ……」

 

俺は朱里に近づき腰を下ろし朱里と同じ目線にした。

 

「そんな事ないよ。朱里は俺たちにとって大事な仲間なんだから引くなんてことあるわけがないだろ?」

 

「……本当ですか?」

 

「当たり前だろ?ほら、泣いてると可愛い顔が台無しだぞ」

 

「はわわ……」

 

俺は朱里の目じりに指を当て涙を拭った。

 

「これでよし……あれ?朱里、顔が赤いけど調子でも悪いのか?」

 

「はわわ!そ、そんなことはないでしゅよ!」

 

さらに赤くなる顔、するとそこへ。

 

「ご主人様!まだ、朝議の途中です!」

 

「あ、ああ、そうだったね。ごめん、それじゃ続けようか」

 

愛紗に注意されて俺は立ち上がり自分の席に戻った。なぜか数人が俺を睨みつけていたんだけどなんで?

 

「まったく……見境がないのですからご主人様は……」

 

「何か言ったか、愛紗?」

 

「何も言ってません!」

 

「は、はい、すいませんでした」

 

愛紗が怒っている理由が判らなかったが反射的に謝ってしまった。

 

「そ、それでその手紙の内容なんだけど、要は『董卓さんって人が暴政を働いているから退治しよう』ってことなんだよね。朱里ちゃん」

 

「そうですね。簡単に言えばそうなります」

 

「それだったら董卓さんって人をやっつけてみんなを助けてあげないと!」

 

「そうですね。このまま見過ごすわけには行きません」

 

「そうなのだ!ギッタンギッタンにやっつけてやるのだ!」

 

桃香の発言に賛同する、愛紗と鈴々。

 

「ちょっと待つんだ。桃香、愛紗に鈴々。落ち着け」

 

俺は桃香たちがやる気になっているところを止めに入った。

 

「どうしてご主人様は賛成してくれないんですか?困っている人が居たら助けてあげないと!」

 

「ああ、本当に暴政を働き民が苦しんでいるならね」

 

「どういうことですかな主よ」

 

「「「……」」」

 

朱里、雛里、雪華の三人は黙って俺を見ていた。

 

朱里と雛里には以前話をしたが、雪華もこの手紙には何かあると感じたのだろう。

 

「そのままの意味さ。桃香、この手紙を読んでみて何を感じた?」

 

「何って、董卓って人が民のみんなに暴政を……」

 

「それ以外にだよ」

 

「それ以外?」

 

「ああ、桃香。君の人を疑わない所は長所でもあり短所だ。桃香は手紙に書かれている裏が読めてない」

 

「裏?」

 

「いやいや、桃香、裏側じゃなくてね」

 

「難しい事は判らないよ!ご主人様はっきり言ってよ」

 

「判った。この手紙は多分、袁紹自身が書いたものだろう。私情が入りすぎている」

 

「私情?」

 

「ああ、この『洛陽に居る田舎太守』明らかに相手を見下してる言い方だ。それに『懲らしめよう』なんて普通言わないよ」

 

「そうですな。普通、『討伐』または『征討』と言うでしょうな」

 

「ああ。これじゃ『私は董卓に嫉妬しているから皆で寄って集って倒しましょう』って言ってるようなものだよ」

 

星の言葉に頷き言葉を続ける。

 

「で、でも、本当に民を苦しめていたら!」

 

「そうだね。本当に苦しめてたら助けてあげないと……朱里、雛里、首尾はどうだった?」

 

「はい、ご主人様の仰ったと通り斥候の報告では洛陽は活気に満ちていたとの報告が入っております。ですが、数名出した斥候も戻ってきたのは一人でそれ以上の状況は掴めませんでした」

 

「え!?いつの間に?」

 

「ごめん、俺の独断で朱里と雛里に無理を行って頼んだんだよ」

 

「そんな……それじゃ私は無実の董卓さんを倒しに行こうとしてたの?」

 

桃香は力なく椅子に座り込んだ。

 

「桃香様……」

 

「お姉ちゃん……」

 

「だけど、ここからが本題だ」

 

「え?どういうこと?」

 

「この手紙の最後に書いてあるだろ『来ない場合は、それ相応の対応』、きっと来なかった事を理由に領地を奪われかねない」

 

「そんな!では、我々には最初っから選択の余地がないではありませんか!」

 

愛紗は机を叩き立ち上がる。

 

「でも、民の皆を苦しめてないのに連合に参加するのは……」

 

「そ、それもそうですが……」

 

桃香の力ない言葉に愛紗の声も小さくなった。

 

「いや、連合に参加するよ。態々相手に付入る隙を作る必要はない。それに誰も助けられないってことはないよ」

 

「え?」

 

桃香は首をかしげた。

 

「それじゃ桃香に問題だ。この董卓は暴政をしていない。にも関わらず討伐されようとしている」

 

「うん」

 

「民たちは苦しんでいない。むしろ逆で住みやすくなっている。が、この連合が集まる事により苦しむ人が出てくる。それは誰?」

 

「えっと……」

 

桃香は考えているのか上を向き、人差し指を唇に当て考え始めた。

 

「あっ!わかった!暴政を働いてない董卓さんだよね!」

 

「そうだ。だから俺たちが董卓たちを助けてあげればいい」

 

「うん、うん!そうだよね!なら、董卓さんを助け「お待ちください!」愛紗ちゃん?」

 

愛紗は桃香の言葉を遮り立ち上がった。

 

「そのような事をしては逆に私たちが標的にされてしまうではありませんか!」

 

「ああ、だから秘密裏にやるんだ、その為の準備を今からする」

 

「なっ!本気ですか!?それに董卓の素性もわかっていないのですよ?どうやって探し保護するつもりですか!」

 

「俺らは知らなくても董卓軍の関係者なら知っているはずだ、まずはその人を捕まえてからかな……それと」

 

俺は懐からナイフを取り出し、自分の真後ろへと投げた。

 

「グハッ!」

 

(どさっ)

 

「なに!」

 

そこには一人の男が胸に俺の投げたナイフが刺さり倒れていた。

 

「この者は我らの仲間ではないぞ!」

 

「どうやらどこかの国の間諜が潜り込んでたみたいだな……」

 

「はわわ、ご主人様よくわかりましたね」

 

「まあね……さて、それじゃ連合に参加するってことで手紙を出してもらって、準備が整い次第出発しよう」

 

「御意っ!……では、朱里と雛里には兵糧の調達を星と鈴々には兵の調練および、連合に連れて行く兵の選抜をしてもらう」

 

「わかりました」

 

「御意です」

 

「うむ、まかされよう」

 

「おうなのだ!」

 

愛紗により担当を振り分けられた朱里、雛里、星、鈴々は部屋から出て行った。

 

「あ、あの私は……」

 

「む。そうだな……」

 

「ああ、雪華には俺から頼みたい事があるから付いて来てくれるかな」

 

「は、はい!わかりました!」

 

笑顔で答える雪華はとても嬉しそうだった。

 

「愛紗ちゃん、私は?」

 

「桃香さまは……」

 

「うんうん!何でも言って!」

 

「……書簡に目を通して判を押してください」

 

「えー!いつもの作業だよ~!もっと朱里ちゃんたちみたいにやる事はないの?」

 

「桃香さまに出来る仕事は今はそれだけです」

 

「うえーん、愛紗ちゃんが苛めるよご主人様~」

 

桃香は俺に抱きつきながら泣き言を言ってきた。

 

「はいはい」

 

俺は苦笑いを浮かべながら桃香の頭を撫でた。

 

「えへへ~♪ご主人様、手伝ってくれるよね?」

 

「そうしてあげたいんだけど、俺もちょっと用があるんだよ」

 

「え~、そんな~」

 

「ご主人様、私はそのような事は聞いておりませんが」

 

「うっ……あ、愛紗睨まないでくれよ」

 

「べ、別に睨んではいません!ただ、事前に報告をしておいて欲しかっただけです」

 

「ああ、今度からはそうするよ」

 

「判ればよいのです……して、どこに行かれるのですか?」

 

「町の鍛冶屋にね」

 

「鍛冶屋ですか?」

 

「ああ、ちょっと作ってみたいものがあってさ」

 

「作ってみたいもの?」

 

「ああ」

 

「へ~。何作るのかな~」

 

桃香はなんだか興味を持ったみたいで何を作るのか聞きたそうにしていた。

 

「ご主人様。この大事な時期に鍛冶屋へ行くのですか?」

 

「それは判ってるんだけどね。どうしてもさ」

 

そこへ、眼を吊り上げた愛紗が話しかけてきた。

 

「いいえ、ご主人様はわかっておりません!まだこの平原に着任してから日も浅いというのに!そうやってフラフラされては困ります!」

 

「そこを何とかさ」

 

「ダメです!」

 

「どうしても?」

 

「どうしてもです!」

 

「愛紗のけち」

 

「けちでもなんでもご主人様の安全のためです!」

 

引き下がらない愛紗に俺はちょっとイジワルな事を言う事にした。

 

「それじゃ、もう愛紗と稽古するの止めよっかな~」

 

「なっ!?」

 

「そうだ!愛紗じゃなくて星と手合わせするのもいいな、うん。きっと愛紗以上に強くなるぞ~」

 

「むむむ~っ!」

 

愛紗は唸りながら俺を睨みつける。

 

「えと!あ、あの!その……」

 

雪華はどうすればいいのか判らずオロオロとしているだけだった。

 

「あ、愛紗ちゃん落ち着いて、ほら。ご主人様もずっと居なくなるわけじゃないんだから」

 

「そ、それはそうですが……」

 

流石は三姉妹の長女なだけはある。なんとか愛紗を落ち着かせる桃香。

 

「はぁ、わかりました。ですが、行かれる前に稽古を付けてく頂きたい」

 

「ああ、わかった……そだ。雪華も俺と稽古するか?」

 

「ふえ?!い、いいのですか?!」

 

「ああ、かまわないよ。雪華が嫌じゃなければだけど」

 

「と、とんでもないです!是非、お願いします!」

 

雪華は何度もお辞儀をしてきた。

 

「そ、そんなに何度も頭を下げなくてもいいから」

 

「は、はぃ……」

 

雪華は自分のしていたことに恥ずかしくなり顔を赤らめた。

 

「ははは、雪華は可愛いな」

 

「ふ、ふえぇ~」

 

さらに顔を赤くする雪華に俺は心和んでいた。

 

「……ふっ!」

 

「いって!あ、愛紗?」

 

「すいません。足が滑りました」

 

「あ、足が滑ったって」

 

「滑りました」

 

「いや、だからね?」

 

「滑りました」

 

「……」

 

「滑りました(カチャッ)」

 

「わ、わかった。わかったから出来れば堰月刀を降ろしてくれないかな?」

 

「わかっていただけたのなら幸いです」

 

「そ、それじゃ準備するから一刻後でいいかな?あっ。愛紗は仕事の方とかは平気なのか?」

 

「問題ありません。元々今日は非番でしたので。急ぎの案件が出て来ない限り大丈夫です」

 

「そうだったね。雪華の方は……」

 

「その。まだどれくらい出来るかわからないとのことで朱里先生からはまだ補佐としてしか……も、申し訳ありません」

 

「気にしなくてもいいんだよ。少しずつ覚えていけばいいんだから。雪華には期待してるんだよ」

 

「は、はい!ご主人様の為!全力で頑張りたいと思います!」

 

「はっはっは。全力か!でも、偶には力を抜かないとダメだぞ。そのうち疲れちゃうからね」

 

「はい!」

 

雪華は元気な声で返事をした。

 

雪華は素直な子だな。まあ、素直過ぎるからよく星にからかわれてるみたいだけど。

 

「いいな~。雪華ちゃんはご主人様と稽古出来て。私、最近ご主人様と全然稽古出来てないよ」

 

「ごめんね桃香。近いうちに時間を取って一緒にやろうね」

 

「ホント!?約束だからね!」

 

「ああ。約束だ」

 

嬉しそうにする桃香に俺も笑顔になった。

 

《雪華視点》

 

「ご主人様の得物はなんですか?槍ですか?それとも太刀ですか?」

 

調練場に向う道すがら私はご主人様の得物が気になり聞いてみました。

 

「俺の得物は日本刀って言って。俺の世界の武器だよ」

 

「ふえ……そんなに細い得物で折れないのですか?」

 

ご主人様の持っていた二対の得物は鞘に入っていて桃香様が持っている直刀よりも細く驚きました。

 

「ああ、大丈夫だよ見た目ほど脆くはないからね。まあ、見てなよ」

 

「うむ。私も最初見たときは驚きもしたがその心配は皆無と言っていいぞ。なんせ私の一撃を耐えるくらいだからな」

 

「そ、そうなんですか?凄いですね……」

 

愛紗さんの一撃は何度か調練で見せてもらったことがありますが、その一撃は私では耐えられないと思っています。

 

「ご主人様、今日こそ一太刀入れて見せます」

 

「俺もそう簡単に入れられるつもりはないよ」

 

「ご主人様たちは凄いですね……あれ?あそこに居るのは朱里先生に雛里先生です」

 

「おっ!本当だ。おーい!朱里!雛里!」

 

途中、朱里先生と雛里先生を見つけてご主人様は大声で及びになりました。

 

「なんでしょうかご主人様」

 

「言い忘れてたんだけど、実は一月くらい城を空けることになりそうなんだ」

 

「あ、そうなんですか?……はわわっ!?ど、どうしてでしゅか!?」

 

「しゅ、朱里ちゃん噛んでるよ」

 

「はぅ~。そ、それで、何か理由でもあるのですか?」

 

「ちょっとね。やりたい事があって」

 

「「やりたい事?」」

 

「ああ。そういうことだからよろしくね。あっ。桃香には一月くらい空けるとか言ってなかったから伝えといてくれるかな」

 

「え?ええぇぇ!?ご、ご主人様!?そ、それはちょっと!」

 

「あわわっ!ご、ご主人様。待ってくださーい!」

 

歩き出すご主人様の後方でお二方は慌てていました。

 

「あ、あの。よろしかったのでしょうか?先生方慌てていましたが」

 

「大丈夫、大丈夫。二人は立派な軍師だからね」

 

「ですが、あれでは朱里たちが可愛そうです」

 

「そうだね、戻ってきたら謝らないとな」

 

「それだけで済めばよいのですが」

 

「なにかいったか?」

 

「いえ、何も……と言いますか私も聞いていませんよ一月も城を空けるだなんて!」

 

「あ、あれ?言わなかったけ?」

 

「言っておりません!流石に一月も城に居ないのは問題です!」

 

「そこを何とか」

 

「なりません!」

 

「愛紗だけが頼りなんだよ」

 

「うぅ……」

 

「愛紗」

 

「はぁ。分かりました。何とかしてみましょう。ですが出来るだけ早いお戻りをお願いしますよ」

 

愛紗さんは困った顔をしていましたが直ぐにいつも通りの顔に戻りました。

 

「ありがとう愛紗。これからも頼りにしてるよ」

 

「勿体無いお言葉です」

 

そう言う愛紗さんの顔は少し嬉しそうな顔をしていました。

 

調練場に着いた私達は各々軽く体を動かしました。

 

「それじゃ。始めようか。まずは、愛紗からかな」

 

「では、よろしくお願いします。ご主人様」

 

「ああ、いつでもいいぞ」

 

「すごい……お二人とも隙が無いです」

 

お二人とも向かい合うと一歩も動かずただにらみ合っていました。

 

「はぁ、やはりだめですねまだまだ、遠く及ばない」

 

「ふえ?」

 

急に構えを解いた愛紗さんに私は首を傾げた。

 

「あ、あの。私にはただ睨み合っている様にしか見えなかったのですが」

 

「ん?ああ、すまなかったな。今のはご主人様の隙を見抜く訓練だ」

 

「え……私には全然お二人に隙があるようには見えませんでしたが」

 

「そんなこと無いよ。愛紗の構えの中にも隙はあったよ。ちなみに俺も隙はあったよ」

 

「ふええ?!」

 

「む~、やはり一箇所しか見抜けなかったか……」

 

「い、一箇所見抜けたのですか?!」

 

「ああ、大体、右脇あたりにな」

 

「一つでも見抜けたのなら上出来だよ、上達してるじゃないか愛紗」

 

「ありがとうございます。ですが、まだまだです。もっと精進しなくては」

 

「お二人ともすごいです……」

 

私はお父様に教えて頂き多少ですが武には自信がありました。ですが、この間の星さんとの手合わせ、そして今しがたのやり取りを見て自信を無くしそうです。

 

「大丈夫だよ。雪華も素質は十分にあるんだから。鍛えればもっと強く慣れるよ」

 

私が落ち込んでいるとご主人様は頭を撫でてくれました。

 

「ほ、本当ですか?」

 

「ああ、もちろん。だろ、愛紗」

 

「そうですね。あの運動が苦手な桃香様ですら一兵卒くらいには剣が振れるようになったのです。雪華もご主人様に稽古をつけて貰えれば上達するでしょう」

 

「愛紗、それって結構酷い言い方だぞ?」

 

「なっ!私はこれでも褒めてですね!」

 

「わかってるよ。桃香も自分の身くらいはそれなりに守れるようにはなったよね」

 

「はい、別に戦いに勝たなくてもよいのです。桃香様には生き延びることを念頭に置いていただければ」

 

「そうだね……さて、次は雪華だ」

 

「ふえ?!で、でも、私はご主人様の隙を見抜くまでの力は……」

 

「誰だって最初はそうさ。愛紗だって最初っから見抜けたわけじゃないんだから」

 

「恥ずかしながら……」

 

「恥ずかしがることは無いさ。だから最初のうちは同じ場所に分かりやすいように隙を作るからそこに集中して他と違うって感覚がわかるようになってくれればいいよ」

 

「わ、わかりました。がんばります!」

 

「うん、その意気だ。それじゃ、はじめるぞ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

そして、ご主人様に教えていただきながら訓練を始めました。

 

「よし、ここまでだ」

 

それから半刻ほどしてようやく休憩になりました。

 

「ふ、ふえ~~」

 

私は集中し過ぎて疲れてしまい、その場に座り込んでしまいました。

 

「どうだった?」

 

「は、はい。何となくでしたが終わりの方は判ったような気がします」

 

「そっか。それじゃ次の調練の時もやってみようか」

 

「また教えていただけるのですか!」

 

「もちろんだよ。もちろん、雪華が良かったらだけどね」

 

「よろこんでお相手をさせていただきます!」

 

やっぱりご主人様は凄いお方です。私のような者にも分け隔てなく教えてくださるのですから。

 

「よし。それじゃ雪華は休んでて。次は愛紗と手合わせだ」

 

「私はいつでも大丈夫です。ご主人様」

 

愛紗さんは既に自分の得物を構えて待っていました。

 

「よし。俺もどこからでもいいぞ」

 

「では、参ります!」

 

そう言うと、愛紗さんは地面を蹴りご主人様へと向かって行きました。

 

「はああぁぁっ!」

 

「はっ!」

 

ご主人様は愛紗さんの突進からの薙ぎ払いを後退しながら軽く避けてしまいました。

 

「くっ!」

 

「ほらどうした?これで終わりじゃないだろ?」

 

「相変わらず、余裕を見せますね……こちらは全力だというのにっ!」

 

「なら、本気にさせてみるんだな。俺を本気にさせられたら対したもんだ」

 

「ならば、その本気を出させるまでです!はあああああっはあ!」

 

「ふえぇ~……すごいです。……ご主人様こんなに強かったのですね」

 

私は改めてご主人様の強さに驚きました。

 

あんなにお強い愛紗さんをいとも簡単にあしらっているのですから。

 

あれ?でもなんだかご主人様の戦い方が変なような?なんだろ?

 

私はご主人様の戦い方にある違和感を感じましたが、それが何かまでは判りませんでした。

 

「よし、これくらいでいいかな」

 

「はぁ、はぁ、今回も一撃も入れられなかった」

 

手合わせを始めて半刻くらいでしょうか。ご主人様の一言で愛紗さんの手合わせが終わりました。

 

「愛紗はもう少し緩急を付けるといいよ。そうすることで相手のペースを崩すことができるからね」

 

「ぺーす?とはなんですか、ご主人様」

 

「ああ、えっと……呼吸とか動きでいいのかな?」

 

「はぁ……」

 

「要は相手の思い通りの攻撃をさせない為ってことさ」

 

「しかし、私はそのような戦い方はしたことが無く、どのようにすればよいのかよくわからないのですが」

 

「そうだな……なら簡単なところから、歩き方を変えてみようか見てて」

 

「お願いします」

 

ご主人様は愛紗さんに緩急の付いた走り方を教えていました。

 

あんな走り方があったんですね。勉強になります!

 

「最初のうちはこけたりしちゃうかもしれないけど、体が覚えさえすれば強い見方になると思うよ」

 

「なるほど……確かにこれは覚えておくと戦で有利になりそうですね。早速、練習せねば」

 

「ああ……それと愛紗」

 

「はい?」

 

「その堰月刀さ……手入れしてる?」

 

「はい、毎日欠かさずしておりますが、それがなにか?」

 

「なんか違和感とか無いかなと思って」

 

「?とくにありませんが。それがなにか?」

 

「そっか、ならいいんだ。ありがとう」

 

「はあ……」

 

「よし、それじゃ次は雪華だ」

 

「っ?!は、はひ!」

 

「ははは、そんなに緊張しなくてもいいよ」

 

「愛紗ほどきつくはしないから」

 

「え、でも……」

 

私はチラリと愛紗さんの方を見ると目線に気がついた愛紗さんは微笑みながら言ってきました。

 

「ああ、私はご主人様に特別厳しくしていただくようお願いしたのだ。それ位ではないと特訓にはならないからな」

 

「と、いうことさ。最初のうちは雪華の戦い方が知りたいからいつものように戦ってくれればいいよ」

 

「わ、わかりました。では、行きます!」

 

私はお父様の形見である三節棍を構え、ご主人様に向かって行きました。

 

「はぁぁぁっ……てやっ!」

 

「よし。このくらいにしようか」

 

「はぁはぁ、あ、ありがとうございました」

 

「お疲れ様。疲れたか?」

 

「は、はい……っ!い、いいえ、まだまだ大丈夫です!」

 

「ははは、無理しなくてもいいんだよ。疲れたのなら疲れたでいいんだから」

 

「は、はい……」

 

疲れていないと訂正しましたが、ご主人様には直ぐに見抜かれてしまいました。

 

「雪華、一つ聞きたいんだけど、いいかな?」

 

「ふえ?、なんでしょうか?」

 

「雪華の棍は独学かい?」

 

「ふえ?!ど、どうしてわかったんですか!」

 

「あー、やっぱりそうなんだ」

 

「はい、これは父の形見なのです」

 

「形見?」

 

「お話しましたよね。邑が襲われたって。その時、焼け焦げた家で見つけたんです」

 

「そっか……それじゃ、それから一人で?」

 

「いえ。実は、お父様との稽古で見よう見まねでやっていたのですが中々上手く扱うことが出来ず」

 

「そっか。だから少しぎこちなく見えたんだな。まだ、武器に遊ばれてる感じがあったから」

 

「そんなことまでわかってしまうのですか!?」

 

「まあ、見た感じってだけで確証は無かったんだけどね。それじゃ元々は何を使ってたんだ?」

 

「えっと。槍です」

 

「そっか。槍に戻すつもりは?」

 

「無いです。私はこの父の形見でご主人様の掲げる天下泰平を成し遂げたいと思っています」

 

「雪華はお父さん思いで優しい子だね」

 

ご主人様は微笑みながら私の頭を撫でてくださいました。

 

「……ごほん!ご主人様」

 

「どうした、愛紗」

 

なぜか愛紗さんは顔を赤くしていました。風邪でも引いたのでしょうか?

 

「そ、その、ですね……このような場所でそういった行為は……」

 

「?ああ、愛紗も撫でて欲しいのか?」

 

「なぁ?!なぜそのような解釈になるのですか!」

 

「あれ?違ったのか?」

 

ご主人様は伸ばしていた手を寸前の所で止めて引き戻してしまいました。

 

「あっ……」

 

「ん?」

 

「な、なんでもありません!」

 

「??」

 

「ふふっ」

 

ご主人様は首を傾げていたが、私はなんとなくでしたが理解して笑ってしまいました。

 

「何を笑っているのだ、雪華よ!」

 

「ふえ?!あ、あの、その……あ、愛紗さんも女の子なんだなって思っただけで……」

 

「なあ?!」

 

「?何言ってるんだよ雪華」

 

「ふえ?」

 

「愛紗はどっからどう見ても、女の子じゃないか、こんなに綺麗なのにそれは失礼だぞ」

 

「な、なな、なーーっ!」

 

ご主人様に褒められた事で愛紗さんの顔は見る見る赤くなっていっていました。

 

「何を言っているのですかご主人様は~~~~っ!」

 

(バチコ~~ンっ!)

 

「ぐはっ!……ま、真昼間にお星様がっ!……ぐへっ」

 

愛紗さんの見事なまでの掬い上げの拳がご主人様の顎に決まり、ご主人様は宙に浮いて地面に倒れ落ちてしまいました。

 

「ふ、ふええええ!?ご、ご主人様~~~!」

 

「い、いいパンチだ……ガクッ」

 

「ふええええ!」

 

ご主人様が倒れて少し経ち、ご主人様は目を覚ましました。

 

愛紗さんはすまなそうに俯き。私は泣いていました。

 

「申し訳ありません。ご主人様、取り乱してしまい……」

 

「気にしてないから、そんなに落ち込まないで。雪華も、もう平気だから泣き止んでくれるとうれしいな」

 

「ひぐっ!、ひぐっ!……は、はい゛、す、すいません……ぐすっ!」

 

「ご、ご主人様っ!?」

 

「ふええ~」

 

一向に頭を上げない愛紗さんと泣き止まない私にご主人様は困った顔をしていました。そして私達の頭に手を乗せて撫でてくれました。

 

「二人とも、そんな顔してたら折角の顔が台無しだぞ?俺は笑ってる二人の顔が見たいな」

 

ご主人様は微笑みながら交互に私達の顔を見てきました。

 

「ふふ、あなたという人は……」

 

「ふえ~、くすぐったいですよ、ご主人様~」

 

「よし、二人とも笑顔になったな……っとそろそろ行かないと約束に間に合わなくなるな」

 

「それじゃ、二人とも、後のことは頼んだよ」

 

「はい。しかし、場所は教えていただけないのでしょうか?緊急の時に連絡が取れなくては」

 

「そうだな……それじゃ、町の鍛冶屋に顔を出してくれ、そこの人に場所を伝えておくから」

 

「わかりました。お気をつけて」

 

「ご主人様、お怪我をなさらないようにしてくださいね」

 

「二人ともありがとう。それじゃ行って来るよ」

 

ご主人様は手を振りながら調練場を後にしました。

 

その後、私と愛紗さんは桃香様の待つ執務室へと向いました。

 

「愛紗ちゃん、それに雪華ちゃん?何で私にも伝えてくれなかったのかな?(ニコニコ)」

 

出迎えてくれた桃香様はなぜか笑っておられました。でも、雰囲気はまったく別でとても怖いです。

 

「そ、それはですね。桃香様」

 

「朱里ちゃんから聞いたよ。ご主人様、一月くらいお城に居ないんだってね(ニコニコ)」

 

「ふ、ふぇぇえ~」

 

桃香様の凄みに私は背筋を震わせてしまいました。

 

「はわわ……」

 

「あわわ……」

 

良く見ると桃香様の後ろで朱里先生と雛里先生が抱き合って震えていいました。

 

「と、桃香様、どうかお怒りをお静めください」

 

「私はぜっっっっんぜん怒ってないよ?愛紗ちゃんと雪華ちゃんがご主人様と稽古している間、ずっっっっとお仕事してたけど、これは私がしなくちゃいけないことだもんね。全然怒ってないよ(ニコニコ)」

 

「うぅ、こうなってしまった桃香様は、取り付く島もない。ご主人様恨みますぞ」

 

愛紗さんは肩を落として目線を外へ向けていました。

 

「ひ、雛里ちゃん。桃香様は絶対に怒らせないようにしないとね」

 

「……うん。でもでも、ご主人様のことになったら……」

 

「……」

 

「ふったりとも♪、なに話してるの?」

 

「はわわーーーっ!?」

 

「あわわーーーっ!?」

 

こそこそと話していた先生方に桃香様はポンと肩に手を置くとお二人とも悲鳴を上げていました。

 

「ど、どうしたの二人とも?びっくりした~」

 

「な、なんでもないでしゅよ!」

 

「な、ないでしゅ……」

 

「?そう?ならいいけど、所で、連合軍に参加する準備はどうなってるのかな?」

 

「そ、そうですね。このまま順調に進めば早ければ、あと二十日ほどで準備が整うかと」

 

「そっか、ありがと。それにしても私に何も言わないで出て行っちゃうなんて。ご主人様にはお仕置きが必要かな?」

 

「はわわ……」

 

「あわわ……」

 

「と、桃香様どうか落ち着いてください」

 

「大丈夫だよ。私は落ち着いてるよ。あっ!暫くご主人様に全員の政務をやってもらうってどうかな愛紗ちゃん!」

 

「っ!と、桃香様!ご主人様も何か理由があってのこと!ここは寛大なお心で!」

 

「う~ん。愛紗ちゃんそういうなら……」

 

「「「ほっ」」」

 

皆して一安心と溜め息を吐きました。

 

「だが、主はどこかで逢い引きをしている可能性も……」

 

「「「っ!!」」」

 

何処からとも無く星さんの声が聞こえてきてみんなの表情が固まりました。

 

「そこか!星!お前なんて事を!今、そのような事を言い出せば!」

 

愛紗さんは窓を開け放ち横を向いて叫んでいました。多分、其処に星さんが居るんだと思います。

 

「ふ、ふふふ……ワタシ、信ジテルヨ?ゴ主人様ノコト……ウン、信ジテル。フ、フフフフ」

 

「ふ、ふえ~。と、桃香様が怖いです」

 

桃香様の眼からは生気が無くなりとても怖かったです。

 

「桃香様!お気を確かに!」

 

「おやおや。少しやりすぎたか」

 

「そんなのん気に言うな!まったく。とにかく桃香様!ご主人様に限ってそのような事は決してありません!ご安心ください!」

 

「ウン。大丈夫。大丈夫ダヨ愛紗チャン」

 

それから一刻ほど、なんとか桃香様を宥めた愛紗さんは疲労で少しやつれて見えました。

 

私は、ご主人様が皆さんに与える影響が大きい事に驚きつつも感激していました。

 

でも……

 

「ご主人様。早く帰ってきてくださーーいっ!!」

 

そう叫ばずには居られませんでした。

 

《To be continued...》

葉月「サイトリニューアル後の投稿でーーーすっ!!」

 

愛紗「うむ。かなり変わっていたな」

 

葉月「はい。一体何処で投稿するのか分かりませんでしたよ。それと普段、恋姫ラウンジをROMってるんですけどラウンジもどこからいけるのかが最初まったく分かりませんでした!」

 

愛紗「まあ、私には関係ない話だ。よって、物語の話に戻ろうか」

 

葉月「いや、もっと話させて」

 

愛紗「戻そうか(カチャ)」

 

葉月「は、はい!物語の話に戻りましょうか!だ、だから偃月刀を収めてください!」

 

愛紗「うむ。今回からいよいよ反董卓連合軍編だな」

 

葉月「やっとここまでこれました!」

 

愛紗「いや。まだ、前半だと思うのだが?」

 

葉月「何を言います前半は黄巾党。中盤は反董卓連合軍。そして、後半は赤壁の戦い」

 

愛紗「つまり、まだ中盤に入ったと言うことだな。まだまだ先は長いな」

 

葉月「げふ……そ、そう言うことを言いますか?」

 

愛紗「これくらい言わせてもらえないとな。桃香様のご機嫌を直して頂くのにどれほど苦労した事か」

 

葉月「あ、あ~。ご苦労様です」

 

愛紗「うむ。本当に苦労したぞ……さて、どう償ってもらおうか」

 

葉月「……へ?」

 

愛紗「お前もそう思うだろ雪華よ」

 

雪華「そ、そうですね。正直もうあのような桃香様を見たくありません」

 

葉月「あ、あれ?雪華は呼んでいないのですが?」

 

愛紗「私が呼んだ」

 

雪華「酷いです葉月さん!本当に怖かったんですからね!」

 

葉月「す、すみませんでした。だから泣かないでください」

 

雪華「ふぇぇ。な、泣いてません!」

 

愛紗「……おい。なぜ雪華の時はそんなに素直に謝るのだ?」

 

葉月「え?そういえば……なぜでしょうね?素直だから?」

 

愛紗「ほほう……私は素直でないと。そう言いたいのか?」

 

葉月「別にそうは言ってませんが……あっ、でも。一刀に素直な気持ち伝えてないからそうなるのかな?」

 

愛紗「な、なぜそこでご主人様が出てくるのだ!」

 

葉月「だって一刀の事好きなくせに全然告白しないじゃないですか」

 

愛紗「なっなな……なーーーーーっ!!」

 

雪華「ふえ?愛紗さんもご主人様の事好きなんですか?」

 

愛紗「私もだと!?で、では雪華もご主人様の事がす、すす好きなのかっ!?」

 

雪華「はい!私、ご主人様の事お父様みたいで大好きです!」

 

愛紗「……」

 

葉月「うん。雪華はそのまま、綺麗な心でいてください」

 

雪華「ふえ?……はい!」

 

愛紗「ぅ……雪華の笑顔がまぶしい……わ、私は、私は……あ~~~~っ!!」

 

雪華「ど、どうしたんですか愛紗さん!}

 

葉月「今はそっとしておきましょう」

 

雪華「は、はい。それで次回のお話はどうなっているんですか?」

 

葉月「そうですね。次回は取り合えずそれぞれの思いを書こうかと思っています。曹操、孫策、そして董卓。どんな思いで参加するのかを書こうかと」

 

雪華「なるほど!それは楽しみですね!」

 

葉月「……雪華。今度から愛紗の変わりに奥付一緒にしませんか?」

 

雪華「ふえ!?そ、そんな!私のような未熟者に勤まるはずがありません!ここはやはり愛紗さんが適任だと思います!」

 

葉月「うぅ~。ええこや!雪華はええこやな~」

 

雪華「ふぇ~。あ、頭を撫でられるよ恥ずかしいです」

 

葉月「ああ、このままここに居ると雪華をお持ち帰りしたくなっちゃうので今日はこれで終わりにしましょう!それではみなさん!また次回お会いしましょう!」

 

雪華「え、えと、えと……私は何をすれば!」

 

葉月「皆さんにご挨拶ですよ」

 

雪華「あっ!そ、そうですね!えっと……皆さん。またご主人様の活躍を見に来てくださいね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「わ、私の心は穢れているのか……あ~~~っ!ご主人様、私は一体どうすればーーーっ!!」

 

葉月「ある意味で、愛紗もピュアですね。雪華と違った意味で」


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
62
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択