虎牢関
「れ、恋殿~。洛陽の月様から、矢のような催促がきてるのですよー」
「・・」
「北郷を、早くコッチへ戻せと」
「・・むり」
「む、無理って月様の、主君から命令なのですよー」
「・・真面目、むり」
「いや、ですから」
「・・むり、むり、むり×7」
「無理の連呼って。な、なんでですか理由は・・」
「可愛すぎる」
「はぁ?」
「カズト・・可愛すぎるから」
そう答え、恋は顔を赤らめる。
その様と返答に、恋の軍師音々は肩を落とす。
恋は、先ほどからの会話中。
一回も、音々の方を向かずに一点、北郷を見つめていた。
「(音々の話に、全然興味が無いんですねー・・)」
この上の空の直接上司と、更に、その上の上司(月)に挟まれて・・。音々は中間管理職的な心のダメージを得ていた。
それもこれも・・。
「(ずずーっ)ふへぇ?こいよんじゃ?」
「よ、呼んでない・・」
「そう?なら食べるの続けるよ・・」
「・・う、うん。気にせず食べる」
チビ可愛いヤツ(北郷)のせいであった。
「し、しかし・・。恋の折角の好意で、極細冷やし中華作ってもらったけど・・」
そ、それでも俺の口の半分以上の太さがはあるし・・(むぐっむぐっ)。
「ひゃ、ひゃばり・・いっぽんでくちゅいっぱいになりゅよ(涙)」
「か、可愛い・・すぎる」
「す、すみません・・月様。わ、私も恋殿に同感です・・涙目は、ずるいのです~」
「・・ふぁ?」
な、なんだろ?
恋と音々が、俺を見つめている。
も、もしかして・・。
「2人もたべたいの?冷やし中華・・。お、俺、特製でちょっとしかないんだけど?」
本数にすれば、に、二本しかないのですが、麺は・・。
そ、それなのにそれを俺から取るの、取っちゃうの麺を(涙)
「ひゃああああああああははははははあああああ//!!!!!!!!」
「れ、恋殿!!い、いくら北郷が、餌を奪われた可哀想可愛すぎる雛にみえたからって!!壊れないでくださいですー!!」
「お、おおごえだして・・?ど、どうひへのふひゃひとも?・・ふぁ・・あっ、麺こぼしちゃった・・」
「ひぃぃははあああああああああああああああああ!!!!」
「れ、恋殿!!いくら北郷が、乳児のように母性本能を擽る、ご飯こぼしをしちゃったからって!!なんか2人ぐらいをパクらないでくださいですー!!」
「れ、恋?なに、叫んでるの?もしかして・・そんなに冷やし中華が食べたいの」
・・・(北郷)。
「んっ・・あげる(涙)」
「どぁあああああああああああはははは!!!!」
「ねええねねねねねねねえええええ!!!!」
「呂布将軍!!涙目になりながらも、冷やし中華を分けあたえようとする、北郷の優しさに壊れないでください!!陳宮将軍もです!!」
音々も、壊れたので・・。状況解説を近くの兵が行ってくれた。
こんな、このオン、オフが激しすぎる赤い人(恋に)。
俺が、ここに拉致られたのは、数日前。
「萌えで勇気・・100倍」
に、なるため俺を連れてきたらしい
ま、まあ・・。当人が、勇気100倍になるのは別に構わないが。
・・とはいえ、自分ばかりじゃなく、俺への、精神的負担を考えて欲しかったな。
特に、連れ去られた当日は一番やばかった・・。
俺は、恋に同行していた犬(セキト)に噛まれて、ここまで連れて来られたのだ。俺も、猫には数回噛まれ連れ去られた事があったが、犬は桁が違う。
犬歯が・・そう犬歯がマジ「ヤバイ」のだ。
しかも、この犬(セキト)、なにかと武名を馳せてる犬で・・。
この犬のせいで、地に倒れた者は数え切れない数だそうだ。
確かに、下手すれば、その牙は裁断機に近い、凄まじい殺傷具合の鋭さがあったし。
なにより。このご時世、犬用のアノ薬も打ってないだろう。
・・致死量が高すぎる、あの犬の病気が、あの犬歯には含まれているかもしれない。
そして、多くの犠牲者も、そっちの病気で倒れたのかもしれない。
・・俺はそんなやばいものに数時間噛まれていた。
しょ、正直・・。俺の体が、この先どうなるか分らない。
く、くそっ!!あの日の事は、その日限りの苦痛だけではなく、こうも長く俺の心を苦しめるのか!!!
「はぁ・・(絶対、俺のちいちゃい体・・。あの病気に、太刀打ちできないよな)」
「・・怖い?」
えっ、う、うん・・。犬独特の病気、俺、ものすごい怖いよ。
でも・・。俺、それを口に出してないよ?買主の恋に悪いし。
「戦場・・」
「戦場?」
「・・無理につれてきたゴメン、カズト」
「(あ、ああ・・。そういえば)」
ここ(虎牢関)は実はあと数日で戦場となるべき場所だ。
『反董卓連合』
よくわからないが、そんな敵が月を倒そうと、こちらに軍を向けているらしい。
「大丈夫、大丈夫・・恋も、大勢の敵を相手に勇気が欲しかったんでしょ」
「・・(コク)」
「そりゃあ、無理に連れて来られたのはなんだけど。でも、俺が居るだけで月軍、一の将軍様の助けになるなら、逆に喜ばしいぐらいだよ」
「・・カ、カズト」
「しかし・・問題は連合だよなー。恋と音々音は当然だし、月も詠も、みーんな、いい娘なのに攻めてくるなんて!!」
洛陽の主になった、月が、皇帝を好き放題に決めたり、自由気ままに政治をしてるとか。そんな大人の理由で攻めてくるらしいけど。俺には・・細かい理由はよくわかんない!!でも、やっぱり皆、いい子だもん。・・そんないい子を倒そうだなんて悪い奴らめ!!
「連合の奴らめ。俺は「ぷんぷん」だぞ!!」
「「・・(「ぷんぷん」・・怒りのテンプレ表現、萌え~//)」」
でも・・。
俺が、怖がるからって言って、月と詠は俺に敵が攻めてくることを教えてくれなかった。
それも・・。
「月と詠にも「ぷんぷん」だな・・。やっぱり、一週間無視の刑だ!!」
「「・・(二回目でも、良い物は良い)」」
「よーし!!俺も、鬼の中に飛び込む一寸法師の如く、修羅の働きで見返してやるぞぉーー!!」
うん、決めた!!
「恋!!」
「・・な、なに?」
「俺用の、ちちゃな武器用意してくれ!!」
「?」
「それで、悪い敵を懲らしめてやる!!」
「な、なにいってるですかー。そ、そんなちっこい体で!」
「恋も、ちっちゃいけど一騎当千の猛将じゃないか!」
「恋殿とは、小さいレベルがちがうのです!」
「そこは努力と根性で!!」
「そんなもので、どうにかなるわけないです!!恋殿もいってあげて下さいです!!」
「・・・・」
「・・あれ、恋殿なに黙ってるのです?」
「恋?」
そ、曹操相手に・・。
ちんまいカズトが、ちいちゃい棒キレもって立ち向かう。
「・・萌えな絵」
じゅるー。
あっ・・。恋からヨダレが。
数日後
「てぃ!やぁ!とぅ!!」
「「(ダラダラ~)」」
精一杯、剣術の練習を続ける北郷。
そして、そのちんまい北郷の剣術の練習を、ヨダレだらけで見ている恋と音々音(始めは文句を言っていたが、練習風景のあまりの可愛さに、音々も落ちたらしい)。
そんなヨダレ2人の元に急報が入る。
「陳宮さま!!当方に近づく軍勢の陰あり!!」
「は、はぇ・・ち、ちんまくて可愛いです~」
「・・・ちいちゃい・・いこーる・・正義」
・・一回目は、2人ともに無視されたが。
「陳宮様!!!!!!!!!!!」
「はっ!!・・つ、ついに・・来ましたか、連合軍の奴ら」
2回目には正気に戻れた。
「・・・おおき・・いこーる・・悪、・・恋が倒す」
恋は、爆走中だ。
「い、いえ・・それが、軍勢は洛陽方面から迫っております」
「洛陽から?と、なると月様の援軍?しかし、援軍だなんて、そんな話は聞いてないですー」
「陳宮さま、もしかして味方に偽装した敵兵なのでは?」
「それにしては数が多すぎるのです・・。やはり、なにかしらの理由があって月さまの本体が(ビュッ!!)・・き た のでわ?」
「ふにゃあああああああ!!!」
「か、かずと!!」
「な、なにゃんだ・・。いきなり何か、俺の頭の上に落ちてきた・・。矢?」
先が、丸くなってるとはいえ、なんでこんな危ないものが、こんな所に。
んー?なんか矢先に手紙が。
なになに、えーと。
「北郷を至急渡せ、さもないと謀反人として恋、お前ヤッルぞ♪」
「「「・・・・」」」
な、なにこれ?
「ねぇ・・」
「ヤラレル前に、ヤル!!」
「俺を渡して、穏便にいこ」
って、言う前に・・。恋が、最悪の覚悟決めちゃった♪
「決めちゃった♪じゃないよ!!音々!!恋を押さえて!!」
軍師の、君しか居ないよ!!止められるのは!!
「・・・」
音々?
「コレ(北郷)は、音々たちのものです。だから、やっちまいましょうですー(音々は、何行か前に言ったとおり「堕ちてる」のだ、そりゃあ骨のズイまでしっかりと)」
音々!!!!!!!!
まずいよ、まずいよ、まずいよ!!!
なにいきなり仲間割れする事、覚悟してるんだこの2人。
「・・音々音」
「はっ・・弓隊、構え!!!目標、洛陽方面から迫る敵軍ですー!!」
「えっ、いや・・。しかし、あれは月様の軍では??」
「あれは我らを騙し打とうとする、敵の偽装兵、かまわず打つのです!!」
「いやさきほど・・偽装兵ではないと」
「・・責任は我らが取るです、あと動かなければ恋殿の刀の錆びです」
「・・んっ(シャーキン!!)」
「お、お前ら準備急げ!!!!し、死にたかないだろ(味方の大将のせいで)!!」
「は、はっ・・。じゅ、準備終了しました・・し、しかしほんとうに・・」
「いいです!よーしー!!」
「えっ、ちょっと!!」
なに止める間も、突っ込ませる時間的余裕すら与えず!!淡々と戦闘を開始しようとしてるんだこの人は!!
「うつので・・!!」
嗚呼・・。
でも、もう間に合わない・・。
さ、最悪だ・・。
って、あれ?
「ワン!!!!!!!!」
「なっ!!」
「・・!!」
「あれ~?」
俺、飛んでる?
しかも、今度は、あの数十メートルある高い関の楼閣からだ。
なんでー?
「ワグウウウ!!!」
あっ?セキトに咥えられてるからだ・・。
「んんーー?」
犬に噛まれながら、数十メートルから落下。
=犬は当然として、俺も死。
「がああああああああああああああああ!!!た、たすけてぇえええ!!れんーーーー!!!!」
犬と、なんで心中しないといけないんだよーーー!!
「わう!!」
な、なに「落ち着け」みたいな目で、俺を見てるんだよセキト!!!
こ、こんな地獄ましっぐらで、落ち着けるわけ・・。
はっ!!
セキトの目が語っている。
「すまんな・・小僧。今、わが主たちを仲間割れさせるわけにいかんのだ。だから、両軍の目の前でお前を連れ去れる。さすれば、あの馬鹿あるじ達は、目標を見失い戦をやめるであろう」
「そ、そうなのか・・セキト」
なんて、思慮深い名犬なんだ、お前は。
ただの危ない狂犬病持ちだとしか思って無かったよ。
「で、でも・・。数十メートル上から落下して助かるの?」
「ふっ、馬鹿にするな小僧、飛将呂布の第一ペットである私だぞ・・。このぐらいでは死なんさ!」
「そ、そうか・・」
よ、よかった・・。でも、あれ?
「セキトが助かるのは分ったけど、俺は?俺は絶えれるの」
俺、貧弱だよ。前、俺がオイタした時、音々の細い指一本の「陳宮デコピン」で骨に罅が入ったぐらい。
「・・・まあ、物事、犠牲はつきものだ」
「はっ?」
「それに、我から、主の寵愛を奪った相手に情けなど必要あるまい・・」
「えっ?」
総合すると!!
「わん!!」
文句言う前に、ただの犬モードに戻りやがったこのワンコー!!!
まあ・・でも、そもそもさっきの会話も死ぬ間際の幻想的な俺の「アレ」世界の想像だしね。
セキト、ホントはさっきから「ワンワン」としかいってないし。
・・うん、死へGOGOだな。
あとがき。
今日はこれで投稿終了します。
・・質が確実に悪くなってるので。
修正しました。
ご指摘ありがとうございます。
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北郷による前回のあらすじ。
『俺、小さくなって詠に囲われてたら、赤い人に捕まった』
以上。