「ぐおうっ」
僕がそう言いながら炬燵に入ったまま体を捻ると、腰から骨の鳴る音がした。
「すごい音だね。私もぐおうっ」
そう言って同じく炬燵に入っている雪香が体を捻ってみるが、音は何もしなかった。
「なんでよ」
「知るわけないじゃん。腰が温まってるんじゃない?」
「なるほど。なら炬燵から出ようかな」
雪香は僕の意見に納得して炬燵から這い出た。
「ていうかそんなに、腰の骨を鳴らしたいの?」
「うん」
特別良いことがあるわけでもないし、特にメリットは無いと思うんだけどな。
「なんでそんなに鳴らしたいのさ」
「んー、特に理由はないんだけど。なんかカッコイイと思う」
いや、そんなことは無いと思うけど。
そう思いながら僕は、無意識の内にどっかのガキ大将みたいに冷えた指の骨を鳴らす。すると雪香が目を輝かせてその仕草を見ていた。
「それ、すっごくカッコイイよ!」
雪香は僕の手を両手で取って言う。その時の雪香の目は今までに見てきた人の中で、一番輝いていたと思う。いや、冗談抜きで。
「どうだろうね」
「いや、私がカッコイイと思ったんだからカッコイイよ! 他の誰が何と言おうと! 今のはカッコイイ!」
そこまで絶賛されるものではないと思う。
「ねぇ、やり方教えて!」
やり方って言われてもな・・・・・・。別に練習したわけじゃないし。
「んーっとな。まず左手の指を伸ばして、その親指以外を第二関節で曲げる」
雪香は僕の指示通りの動きをする。
そうそう、そうだよ。
「そんで右手でその曲げてる指の背の中心くらいをを、右手の指先で押さえる。そして一気に力を加えると音が鳴る」
ふんっ、と雪香が意気込んでやるが音はならない。
「なんでよ・・・・・・」
「別に無理にやる必要はないんじゃない? 個々はあくまで個々だから」
「なんか良いこと言った、みたいな顔してるよ」
「個々だから」
そう言って僕は炬燵に入ったまま寝そべった。
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引き続きイチャイチャします。
なんだこれ。
楽しいぞ。