黄巾の乱編 第一章 1話『完結』
「てんほーちゃん!!せくしーぃだよ今日も!!」
「ちーちゃん!!今日も、その小悪魔ぷりで、俺達をいじめてくれー!!」
「れんほーちゃん、とにかく、めがね!めがね!!なんだよ!!」
「はぁ~・・」
そう遠くない距離から聞こえてくる、野太い声援に、俺のちいちゃな眉は曲がりぱなしだ。
「ほーちん!!今日も、ちびかわいいあなたを目で嬲らせて」
「ほーちん、ラブゆー、国民的おにんぎょうーさん♪」
「ほーちん!!一回でいいから、その可愛すぎる、おててを握らせて!!」
「はぁ~~・・」
そう遠くない距離から聞こえてくる、黄色い声援に、俺のちいちゃな顔が、全体的にゆがみばなしだ。
俺が、今いるのは、人気アイドルトリオ『張三姉妹』のライブ会場。
そして、今の俺の拾い主は、この三姉妹だ。
前の三人とは、風が、その洗濯板に無理やり、俺を、おさめようとして「ストン」と地に落ちた直後に。サザエさんよろしく、再び筋肉質な猫に咥えられ、連れ去られてから一月は会っていない。
「分っているわね。一刀」
「わ、分ってるよ。天和」
俺も、今日が大事な日だという事は・・。
「うまくしなさいよ・・。人の命がかかってるんだから」
「分ってるって。地和」
ここ数日、「まずい、まずい」って、皆で頭を抱え込んで相談してたんだし。まあ、俺は心が和むとかで、三人に「ぎゅー」っと、されてて悩む暇はなかったけど。
「失敗したら、私たち4人は、漢の反逆者になりかねないんですよ」
「だ か ら 分ってるって!!しつこいなぁ~!!三人とも!!」
ちぃちゃくて、頼れないかもしれないけど。・・俺も、今が、危機だって事は分かてるんだもん!!
そんなにしつこく言われたら怒るよ!!!プンプンだよぉ~!!
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
三人が黙った。
「・・ご、ごめん」
三人も、不安なんだよね・・。
それなのに俺、君たちを怒鳴ってしまって・・。
「「「お、怒ってる姿も萌え萌えよぉぉぉぉぉ!!!!」」」
へっ、ちがう?
怒られて「シュン(涙)」とかじゃなくて。単純に萌え悶えていて黙ってたいの、この三姉妹?
「「「みんな~、こんばんわ~!!」」
「うぉ!!!!!!!てんわちゃん!!!」
「ちーちゃん!!!」
「れんほうちゃん!!!」
それから数分後、ついにライブが始まった。
「ほら~。ほーちんも、皆さんに挨拶して」
ちなみに・・。
「み、みなしゃん・・。こ、こんばんわだぉ~」
「ぎゃああああああああああああ!!!!!!ほーちん可愛い!!!!!!」
「ほーちん!!!!!!!!私だけのお人形さんになって!!!!!!!」
俺も「ほーちん」というキャラで絶賛参加中だ・・。
猫に咥えられ三千里。
青州(猫に捨てられた先)で、俺を拾った張三姉妹は、始めこそ「お人形さん」的な扱いを俺にしていた。
たぶん、そのままなら、俺は、彼女達だけの「お人形さん」として、今も生きていたであろう。
だが、姉妹一の知恵者、三女の人和が一つの事に気づく。
『私たちを萌え狂わせるこの子は、アイドルとしての私たちの救世主になるかもしれない』
アイドル・・。
この一件、華やかで、非の打ち所のないように見える職業には、実は昔から宿命的克つ致命的な「弱点」が存在する。
それは・・。
同性人気である!!!
「なんだよ、嵐なんてよ!!」
「なにが、AKBよ!!」
長々、説明するもの面倒なので端的に上が顕著な例である。
そして、その例は張三姉妹にも当てはまり。
「なにが、張三姉妹よ!!恋姫SSじゃ、ただの使いにくいキャラじゃない!!」
・・とっ、なる。・・かなり、個人的な意見が含まれるが。
まあ、そんな理由で三姉妹には女性人気が無い。
とはいえ、人口の半分は女性である・・。アイドルという客寄せ商売をしてる以上、女性を無視しつづけるのは、数の理論でも無理だ。
なにより、その理論を打破してこそ。
三姉妹の最終目標である『国民的アイドル』、誰からも愛されるアイドルになれるのだ。かつての、聖子ちゃん(カットが同性に流行ったりした)のように。
そのため彼女らも、女性視点の歌を歌ったり、試行錯誤をしたが効果は余り見られず。彼女ら、三姉妹に集まるのは男性ファンばかりであった。
しかし、そんな彼女らに救世主が現れた・・。
それこそが、『北郷一刀』。
いやっ・・。その名、改め。
チビ可愛い貴女(きじょ)のお人形さん。
『ほーちん』である!!
女性は小さいものが好きだ、小さい「おむすび」をみただけで可愛いといえる猛者である。
なら、女装フリフリコスプレとかさせられたチビチビ北郷なら・・。
・・いわずもがなである。
そして、そのお陰で、張姉妹は(正確には、張姉妹のライブに参加する北郷により)女性人気を得た。
まあ、女装させられた上、変な萌えキャラを演じさせられて。北郷は、男としての尊厳を根こそぎやられたが・・。
それでも。
その効果は絶大だった。いやっ、絶大すぎたのだ。
「えーと。今日は、ほーちんから皆にメッセージがあるの」
・・今日の、このライブは、普通のライブではない。
漢への黄巾党(4人のファン倶楽部)蜂起の決起集会でもあるのだ。
・・乱れ腐った国政。
・・襲いつづける病と飢餓。
・・強者による正義という名の略奪。
そんな末期世界の元に降り注いだ。
「音楽」と「チビ可愛い萌え」の光。
そんな光を、人々は追い。
そして・・、光に更なる輝きを与えようと思う。
その思いの果てが、漢という光を遮る「暗闇」を潰す。
・・そんな結論にたどり着いた。
光自身(4人に)の確認も取らずに。
このライブが終われば、黄巾党は一斉に蜂起、漢の戦争が始まる。
とはいえ、その光りに、先が無い事など誰にでも想像できることだ。
4人は、ファンを照らすことぐらいは出来るだろう。
だが、所詮、ただの「アイドル」、国全体を照らすことなど不能だ。そんな事は誰でも分る、それなのに・・誰もが進む。
だから・・止めねばならない。
「(だから・・。俺は、覚悟を決める!!)」
北郷は、ファンたちの方をむく。
「み、みんな・・、戦争めーぇだぉ。戦争したらみんなきらいにちゃうぉ~(涙)」
恥をさらす覚悟を!!!
「「「「・・・・・・・・・」」」」
み、皆・・黙っちゃったよー。
・・お、怒ってる!?
こんな段階で「ひよった!!」のかと言われて、内ゲバられるかも!!
い、いやだよー。俺、まだ土の下に行きたくないよ!!
「・・わ」
「・・わ?」
目の前の、席の少女が声を挙げる。
たしか、俺の大ファンでリョカちゃんとかいったけ?
えーと、なにかいいたいのかな?
・・わ、湾で水攻めしてやるとか?
「・・う、う(涙)」
う、うぇえええん!!!
土の下もやだけど、水の下もやだよぉ!!!!!!
「わ、わかったよー!!ほーちん!!わ、私たち戦争止めるよー!!!!」
・・あれ?
「ほーちん、泣いてて可哀想ー!!ほら、男ども!!武器しまいなさいよー!!!」
「そうよ、そうよ!!か弱いほーちんに、なに武器なんて見せて怖がらせてるのよ!!」
「ほーちん殿は平和の使者じゃあ~。のう~トメさん」
「そうじゃそうじゃ~。ほーちん殿はやさしいいい娘(こ)じゃの~ウメさん」
「ほーちん泣かないで!!戦争するような男どもは、今からお姉さん達がしばくから!!」
「内ゲバよ内ゲバ!!ほーちんを泣かす男たちには死刑よ!!!」
「え、えーと・・」
身内(ファン)同士でも喧嘩されても!!
「ぎゃああ!!」
「ぐわああ!!」
あっ・・。男性の悲鳴が。
いや、女性陣は武器持ってないからヤラレテハ(殺)はないだろうけどさ。
「ひぇぇ!!!や、やめてくれ!!か、髪が、髪がもう!!」
「そ、そんなところ引っ張るな!!取れる!!取れる!!そんな所、取られたら女になっちまう!!」
「な、なぶり殺しにするぐらいなら!!さっさと殺せ!!」
うん、まあ・・。この地獄絵図のおかげでさ。漢との戦いはないって事は確信したけど。
で、でもね・・。
「う、うちゲバもメーぇ!!だぉ、みんなーーー!!」
あとがき
久々に、コメントが多かったので調子にノリ続きです(笑)
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北郷による、前回のあらすじ。
『俺、小さくなって3人(星、風、凛)と旅してたんだ。・・星の、胸に挟まれてさ』
以上。