都心から離れた山に、僕はやってきた。
最近は不景気のせいか、遠くに行くことはないが、よく山野を歩いたり、海・川に釣りに行ったりする。
「自然が好き」というわけではない。人混みが苦手な僕には昔から、自然の中にいることが多かった。
今勤めている会社に入ったときは、同じ同期の中【アウトドア好きと自称する人たち】で話題にもなったこともあったが、人見知りの性格や引っ込み思案のせいで、また人のあまり入らないところに行くことで、避けられるようになり、今では自分が会社にいることさえ知らないのである。
僕としても一人でいるほうが楽だし、人とあわせるのは煩わしい。だからこそ今の仕事は地下深くで作業をしているわけなのだが…。
まあ、最近はあるつながりを持ったモノたちと関係を持っているが、それはそれで楽しく感じている。
その話については今回はしないことにしよう。
戻って、自然の中で一人で遊ぶというのは、僕以外の人から見れば『寂しい奴だ』と思われているらしいけど、僕にとってはそんなことはなかった。
聞いたことがあるだろう?昔の日本には多くの人ならざるものたちがいたことを…。
科学文明が進み、そういった事象も見られなくなった(というより、人の目に映らなくなった)のだが、僕には昔から見ることができた。
なので、野山にいる見えざる存在といろいろと関わりを持てたことで、寂しいということはなかった。
だから、僕は自然に触れに外に出る。
インドアの引きこもりに思われることが多いけどね。
あ、言い忘れたけど、僕の名前は魅剣一刀【ミツルギカズワキ】。職業は今はどこにでもいる、プログラミングを生業にする、しがない会社員。人より少し、世界が見えるだけの存在…。
そして、僕は今、山の頂上から来た道を降りてきて、麓へ戻る途中だった。
最初はほかのハイキング客が登っていくのをすれ違ったりしていたんだけど、陽が落ちかけてきた今、誰とも会うことがない。
そして、どう考えても麓についていてもおかしくない状態にも関わらず、一向につく気配がない。
鬱蒼と茂る木々はまだまだ続くようである。
ーこれは…まさかの道に迷った?しかし、迷うことないまっすぐな道のはずなのに…どうして?
不安になった僕は、後ろを振り返る。
そこには、先ほど見ていた景色とは全く別の道が見えていたのである。
気づかないうちに迷ってしまった僕はとりあえず、元の道を登るより、降ることにした。
そうしているうちに周りはさらに暗くなる。
このままだと遭難してしまうと思うと不安も募ってくる。
「これは野宿かな?でもそんな装備ないぞ?」と思い初めた頃、ようやく民家が見えてきた。
民家が見えてきたことで、僕の足の歩みも自然と早くなる。
木々を抜けたそこには一件の大きな民家があった。
ただふつうの民家というよりはよく田舎にある、旧家という感じである。
白塗りの壁に覆われた、その民家の正面には大きな門柱の入り口。そこから母屋は少し離れて見える。そして、そこまでの道には暗くなった足下を照らすかのように、煌々と篝火が焚かれていた。
いつもの僕なら、こんないかにも怪しいと思うところには入ろうとは思わないが、今は違っていた。
少しでも中に入って、誰でもいいから会って話をしたいという普段思わない衝動にかられて、そのまま門柱の中に入った。
家の敷地内に入ると表から見るより大きいのがよくわかる。
母屋のほかに蔵や農作業の道具をしまう小屋、どこからともなく聞こえる、牛の声などなど…。
いかにも農家、それも昔の庄屋の風景がそこにあった。
母屋の正面の扉にたどり着く。
その扉は、曇りガラスが木枠にはめられた引き戸であり、家の中は煌々と明かりがともっているように見える。
僕は呼び鈴を探したが、そんなもの最初からないみたいに見あたらない。
「すみません…」と家の中に声をかけるが、誰も出てくる気配がない。
そして、その引き戸のガラスを割らないように注意して叩くがそれでもだれも出てこない。
不審に思った僕は、引き戸に手をかけてみる。
意外にも難なく、引き戸が開いたのである。
開いた引き戸から中をのぞき込むと、中に人がいるのか、玄関にいくつかの履き物が整然と並べられていた。
よくは聞こえないが、奥から人の声、おそらく家族の団らんであろう、会話が聞こえてくるような気がする。
僕はかまわず、暗くなりつつある外から、明るい家の中に入ることにした。
入った瞬間、よくわからないなにかを感じながら…。
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※Pixivから転載しています☆
【戦闘妖精(仮)】×【東方Project】のお話です。【戦闘妖精(仮)】はまだ文章として発表していない、温めているオリジナルの小説です。今回は【戦闘妖精(仮)】の主人公?である、魅剣一刀が出てくる、いわばキャラ紹介のお話です。東方に関してはタイトルでわかる方々が次の話ぐらいから出てきます。一応、こちらの世界の話なので幻想郷の住人は出てきませんが☆