土野市のとある森の中。
木々が紅く染まり始める頃・・・
静まり返った森の中に野太い男たちの声と銃声が響いていた。
「お勤めご苦労さん、現状は?」
「はい、係の者には連絡を入れ、今は警官隊が応戦しています」
森の中の遊歩道を早歩きで突き進む男二人。
一人は皺だらけのコートを羽織った恰幅のいい、中年男性。
一人はパリっとした小奇麗なスーツに身を包んだ20台の青年。
「ん~、頑張って後20分ってとこかい?」
「いえ、相手の進行速度と残段数を考えると15分も持てば良い方かと」
中年男性は張り詰めた銃声の鳴り響く森の中を悠々と進んでいる。
対照的に青年の方は緊張した面持ちで何処か緊張した様子で歩いている。
「そうかぁ・・・係に連絡入れたのは?」
「20分ほど前です」
「じゃあ、もう来てもいい頃だねぇ・・・」
「はい、到着予定時刻は既に過ぎています」
青年は多少眉を吊り上げつつ淡々と話している。
「お、やってるねぇ・・・今回のはそんなにでかくはないか」
「はい、ですが相変わらず有効な傷は与えられておらず・・・足止めが精一杯です」
二人が銃声の近くまで来ると、何人かの警官が森の奥で動くものに向けて容赦なく発砲を繰り返していた。
だが、その標的は銃弾で怪我をすることもなく、ゆっくりとゆっくりと警官たちの方へ向かっている。
その何かに発砲している警官たちは皆、恐怖と緊張で顔が強張り、顔には冷や汗が見て取れる。
何かが1歩近づくたびに警官たちは1歩後退する。
その繰り返しだった。
青年も例外ではなく、その顔の緊張度合いが先ほどよりも更に増している。
唯一、中年男性だけはその張り詰めた空気とは対照的にゆったりとした雰囲気を醸し出していた。
「・・・中村さん!そろそろ・・・!!」
青年が堪りかねたように中年男性に声を掛けたそのときだった。
「どもー、遅れました。待った?」
中年男性、中村と呼ばれたその男性に負けず劣らずのゆるりとした声で一人の青年が二人の肩を叩く。
「おー、真司くん。遅かったねぇ」
「いやー、なにぶん歩きなもんで・・・」
二人はまるで友達が再会したかのように楽しそうに談笑している。
「・・・君が係の・・・?」
「あー、はい、俺が対魔征伐係の日比谷真司です。よろしく」
「・・・あぁ、僕は中村さんの部下で今井だ・・・歩きで来たって言ってたけど走って来れなかったのかい?」
青年・・・今井は敢えて感情を露にした顔で真司に不満をぶつけた。
「まぁ、連絡受けた感じではそれほど危険があるようなヤツでもなさそうだったし。現にこうして怪我人も出てないんだし、ドンマイドンマイ」
「ど、ドンマイって・・・君は・・・ッ」
へらっと応える真司に、遂には声を荒げる今井。
「んじゃ、さっさっと片付けてバイト行きたいし、中村さん、頼むわ」
「はいよ。お前らー、下がっていいぞ」
中村の掛け声により、発砲していた警官たちは一斉に発砲を止め、安堵のため息とともに後退していった。
そんな警官たちの中を掻き分けて真司は前へと歩みだす。
「中村さん、本当にあんな奴が・・・」
今井は初めて見る真司を微塵も信用していなかった。
「まぁ、見てろ、始まるぞ?対魔征伐係の仕事がな」
なぜなに!!征伐係!!
◇日比谷 真司(ひびや しんじ)
・18歳/176cm
・鎮守(しずめのもり)高等学校に通う高校3年生。
・現在は土野(はの)市で自由気ままなマンションでの一人暮らし。
・自宅近くのファミレス「ピアチューレ」でアルバイトをしている。
・幼少の頃から剣道を習う。大会などには面倒臭がって出たことがない。
・学校での成績は中の上。運動は上の中程度。
・誰とも仲良くなれるスキルがある。
・それ故、男女共々、友達と呼べる知り合いが多数居る。
・正義感が強いわけではないが、卑怯、陰湿なことは嫌い。
・女好き
・実はいい所の育ち。
・上記の理由もあってか、和菓子が大好き。
・一人暮らしをしている癖に家事全般が絶望的。
・恵理佳とは従兄弟同士で昔から兄弟のように育ってきた。
・妖怪退治の時は高嶺家の前頭首から譲り受けた霊剣土祓(くにばらい)を用いて戦う。
・結界術も使えるが、嗜む程度。ほとんどが牽制や布石で終わる。
・集中力も術もイマイチだが、何とか刀身にだけは霊力を用いての加工(コーティング)が可能。
◇中村(なかむら)
・43歳/165cm
・鎮守警察署に勤務する警部。
・妻子持ち、マイホーム持ち。
・キャリア的には机に踏ん反り返っていられる立場だが、自ら好んで現場に出ている。
・常に笑顔を絶やさず、滅多に怒ったりはしない。怒鳴り声を聞いたことがあるものは居ない。
・頭は相当キレる。とても柔軟な思考の持ち主で、波長的にか、真司とはウマが合う。
・最近はお腹の出っ張りと体力不足が気になってきた。
◇今井(いまい)
・23歳/181cm
・鎮守警察署に勤務する新米警官。
・高学歴の持ち主で、警察としての知能、体力、判断力などを買われ、新米にして鎮守警察署に配属された。
・初めて体験する超常現象相手の仕事や上司の中村に振り回されながらも必死に結果を出そうと誠意努力している。
・悪い人間ではないが、マニュアル思考が強く、融通が利かない。
・鎮守警察署で長年前線で、現役として結果を残してきている中村を尊敬している。
・今は仕事に手一杯で恋人は居ない。
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