No.244712

【ボカロ】家族のカタチ【歌手音ピコ&miki】

七莉ひおさん

お気に入りボカロのピコとmikiの二人メインであったかいお話を書いてみようと思いました。ミズキに弟が出来ると聞いたピコの心中は……。以前に別サイトに投稿したものと同じ内容です。

2011-07-29 17:14:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:661   閲覧ユーザー数:656

 

 

 

いつも物静かなミズキが珍しく興奮しながら弟が出来る事になったと報告してきた。

そしてピコに一通り話した後、別の人にも伝える為に駆け足で去って行った。

「弟かぁ……本当に嬉しかったんだな」

当然の事だがピコにそういった話はない。

自分自身がまだ世に出て半年も経っていないのだ。

次の話など出てなくて当然だろう。

(「次があるかも分からないけど」)

もしも自分がキューンでは最初で最後のボカロになるならば家族というものはできない事になる。

そうなるかどうかなんてもちろんまだ分からない。

(「あれ? 何だろう……何かもやもやする」)

 

 

 

 

 ++ 家族のカタチ ++

 

 

 

「ピコくん♪」

「わ! ミキさんか」

気づけば目の前にミキがいた。

これだけ近くまで来て気づかないとは随分と考え事に気をとられていたらしい。

「はいっ!」

ずいっ、と目の前にソーダアイスが突きだされる。

「ダブルソーダ買ったの。一本あげるね!」

「あ、ありがとう」

いきなりだがミキにしては珍しい事でもない。

受け取り一口食べると、ソーダ味特有の清涼感が口の中に広がる。

「おいしい」

「おいしいねー♪」

ピコが座っていたベンチの隣にミキも座ってくる。

「これ本当は誰にあげるつもりだったの?」

「誰もいないよ。ミキが食べたくなったから! ピコくんがいてよかった」

いつもこんな感じなのだ。

自由奔放な彼女に最初は戸惑う事もあったが、今では慣れたもの。

「ピコくん、何か元気なくない?」

「え? そんな事ないよ」

そうかなーと言いながらアイスを思いっきりかじる。

「そうだ、ヤマハさんとこの新ボカロのお話聞いた?」

「聞いたよ。ミズキさん凄く喜んでた。初めての家族だもんね」

「ピコくん、羨ましい?」

「え」

あまり深く考えず行動しているように見えるミキだが、時々酷く鋭い。

その言葉にピコの中で理由も分からずつかえていた何かがすとんと落ちて楽になる。

(「そっか。このもやもやは羨ましい、って事なんだろうな」)

「ピコくんまだ来て半年経ってないんだよ。家族が増えるのはこれからだよ~」

「そうかな」

話しながらも早々にアイスを食べ終わったミキは立ち上がり、ピコの前に立つ。

「ミキさん?」

「じゃあ、ミキがピコくんのお姉ちゃんになる!」

「おね……ほえっ!?」

唐突な姉宣言に変な声を出してしまった。

「同じ『開発コード』仲間だし見た目も似てる雰囲気あるでしょ」

「そう言われればそうかな」

「決定ね! ピコくんに弟や妹が出来るまでミキがピコくんのお姉さん!」

言うが早いかピコの頭を抱え込むように抱きしめる。

「わっ!」

間一髪の所で手にあったアイスの残りは避難させた。

まるで子供をあやすかのように、ゆっくりとその髪を撫でる。

「何かあったらお姉ちゃんに相談してね」

「う、うん。ありがとう……」

それだけ言ったら満足したのか、ぱっと身体を離す。

「では今日はミキのお家で一緒に夕食ね!」

「二日前にもご馳走になったばかりだよ。それは悪いって!」

そう。二日前にはキヨテルとユキに帰り道で会い、話の流れで夕食をご馳走になっているのだ。

「今日は皆で手巻き寿司だよ~。好きな具入れて巻き巻きしようね!」

しかしミキは聞く耳持たずといった様子でピコの手を引っ張る。

こうなってしまうともう抗う術はない。

引かれるままにミキについていく事にした。

 

 

「あ、リリィちゃん」

道の途中で会ったのは買い物帰りらしいリリィ。

「ミキちゃん。ピコくんも一緒なのね」

「今日は一緒にご飯食べるんだよ。手巻き寿司なの!」

あら、とリリィが残念そうな声をあげる。

「ピコくん夕食に誘おうかと思ってたんだけど先に取られちゃってたか」

「今日はミキ達と一緒なの。また今度ね!」

「いいわよ。今日はミズキちゃん来てくれるから。ピコくんは譲ってあげる」

そういえば五日前にはリリィの家で昼食を頂いていたのだ。

その時はミズキも一緒だった。

「ピコくん、またうちにも遊びに来てね」

「はい!」

 

 

 

(「僕にはまだ同社という意味での家族はいないけれど」)

 

「まっきまきすしすし♪ 手巻きずし~♪」

「何の歌なのそれ?」

「手巻き寿司の歌! 今作ったの!」

「ミキさんのオリジナルか」

 

(「家族のように受け入れてくれる人達がいる」)

 

「サーモン♪ 梅肉♪ 納豆混ぜて♪」

「えー……それは美味しいの?」

「知らない! ピコくんやってみて♪」

「僕がやるの!?」

 

(「それって凄く幸せな事だよね」)

 

おかしな歌を唄っている間に見えてくるのは二日前にも訪れた家

「ピコくんはミキの弟になったんだから、ただいまでいいんだよ?」

「ええっ? それは皆に変に思われるんじゃ」

「それ以外駄目だからね~」

勢いよく扉が開かれる。

 

「ただいまー!」

「……ただいま」

 

そして返ってくるのは

 

「おかえりなさい」

 

 

 

end

 

 
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