古より人々に災いを齎す存在とされている「災忌」
その災忌を地下深くに封じたとされる土野市。
封印以降、土野市における霊的事件をはじめ、都市管理に及ぶ全てを統括している高嶺家。
災忌に対しては普通の人間では余りに無力であり、代々高嶺の者を始めとした「対魔師」が征伐の任に就いていた。
そしてまた、新しい対魔師が此処、高嶺の家で育てられていた。
-高嶺家-
「・・・なんだ?またあの習い事していたのか?」
「うん・・・」
豪華な和室。
広い広い部屋にちょこんと子供が二人、向かい合って座っている。
とても落ち込んでいる少女を見て、半ば呆れながら呟く少年。
「そんなにいやだったら、やめちゃえよ」
「・・・だって、おかあさんの子供だからやらなくちゃって・・・」
嫌なら止めてしまえば良い。
だが、そうはいかない理由があった。
少年は子供ながらにしてそう感じていた。
「・・・悪い人でも・・・けがをしたら痛いんだよ・・・」
「・・・」
少女が習っていることは悪者を懲らしめる、倒すための習い事だ。
少女は知り合ったときから虫すら殺せないような臆病で優しい子供だった。
いつもいつも習い事を終わったあとの顔はとても辛そうだった。
従兄弟で家も近かったので昔からよく一緒に遊んでいた二人。
少年は少女の笑顔が大好きだった。
そんな少女の笑顔を曇らせる習い事を何とか止めさせたかった。
少年はずっと考えていた。
そして、遂に答えが出た。
「えりか」
「・・・なに?お兄ちゃん・・・?」
一瞬の静寂。
「俺がえりかの代わりに悪い奴らをやっつけてやるよ!」
「・・・」
静寂。
少女は目をきょとんと開いてぽかんとしている。
何を言ったのか、言われたのか理解することに時間が掛かった。
「え、で、でも・・・お兄ちゃん・・・」
「いいから!えりかはここで待ってろ!!じぃちゃんにたのんでくるからっ!!」
少女の言いかけた言葉も聞かずに少年は部屋を飛び出した。
その後、少年・・・真司の必死の頼みにより、当時の高嶺家頭首、甚平は恵理佳の代わりに真司を対魔師として修行させていくことに決めたのだった。
元々性格上、恵理佳が対魔師に合わなかったということと、一応は高嶺の親族と言うことでの了承だった。
現在より8年前。
日比谷真司10歳、高嶺恵理佳9歳の出来事だった。
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