もっとも、アインハンダー乗りになろうなんて奴は戦闘機人でもそうそういないだろう。限りなくゼロに等しい生還率は、決死の覚悟を要求する。だから、志願者も解放を当てにした実験体、延命処置を目論む失敗作等、いわゆる訳ありの奴がほとんどだ。

 妖精のように跳ね回る白い放電は、特別攻撃兵に志願したことを告げた時の、彼女の涙を堪えた瞳を思い出させた。

「何故?」翠の瞳は、そう問いかけていた。

 私は妹を救いたいだけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第十話『スターソルジャー』

原作:アインハンダー

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も私はオーリス姉さんと二人、レビュールームの密室で情報のとりまとめをしていた。

 

 十四歳の小娘と十歳の小娘二人の会議という、就業年齢の低いミッドチルダの管理局でもそうそうない状況。

 姉さんは本気で私の解析能力をあてにしているというわけでもなく、私をそばにおいて説明することで情報を整理しやすくしている、とのことだ。

 そもそも私は戦闘要員であり、捜査や推理は専門外なのだ。

 

 お茶のカップを片手にオーリス姉さんが私に説明を始める。

 

 

「さて、以前のプラント制圧、そして先の基地制圧で捜査は大きく進展した」

 

 

 基地制圧は私が休日に呼び出されて戦艦を撃ち落したあの事件のことだ。

 

 月面攻撃を行えるような戦艦を格納していたのだ。

 重要拠点の一つだったのだろう。

 ここまでくると、捜査は芋蔓式に進んでいるはずだ。

 

 

「地方世界企業のテロの裏には、ミッドチルダのある大企業が関わっていた」

 

 

 私の前に広げられている書類をペンの先で叩きながら姉さんが言った。

 ミッドチルダにおける中解同の物資の動きを記した書類だ。

 

 中小企業解放同盟は、大企業に経済戦争で敗北した地方世界の企業が集まってできたテロ組織である。

 その性質上、技術力や資金力はこれほどまでに高くなるはずが無いのだ。

 

 弱小企業が集まるだけで資金が増えるなら、初めから連合グループを結成して経済の場で戦っていればいい。

 

 だが、実際は企業テロは次元戦争さながらの圧倒的物量で行われており、アウェイのはずのミッドチルダにプラントや基地を建造するまでになっている。

 書類上の資材の動きも中小企業などという規模ではない。

 

 

「支援者。いや、黒幕、というやつか。ミッドチルダ側に裏切り者が潜んでいた」

 

 

 オーリス姉さんはまた違う書類を紙の束から取り出し私の前に置き、人差し指を曲げて爪の先で三度叩いた。

 

 私は従うままに2in1で印刷された書類へと速読で目を通す。

 ある産業に関する企業の動向を一枚でまとめたものだ。よくまあ紙一枚に収められるものだ。

 

 紙を使ったアナログな打ち合わせ。全てが全て空間投射によるモニターが使われるわけではない。

 紙の本も店先から姿を消していない。古い技術はなんらかの形で残り続ける。

 

 足で稼ぐなどという私の世界でも千年以上前から行われてきた捜査方法も、未だに管理局で現役だ。

 

 

「ミッドチルダの高密度魔力の源である天体衛星。“月”を巡っての競争がかつてあった」

 

 

 書類についての要約を姉さんが語り始める。

 捜査上に上がった情報はこんな紙一枚では収まるようなものではないだろう。

 それをまとめて私達実働部隊に伝えるのもオーリス姉さんのような文官のお仕事だ。

 

 魔導師だけでは時空管理局は回らない。

 

 

「全ての月は新暦以来開発が進み都市化が進んでいるのはカガリも知っているだろう」

 

「ええ、月もミッドチルダの一部で地上部隊の支部もありますからね」

 

 

 ミッドチルダの月……この星を回る複数の天体衛星は、この世界が魔法文明の中心地になった要因の一つでもある魔力物質の塊だ。

 豊富な魔力素の源であり、月の並びは大魔法の行使に大きな影響を与える。

 

 勿論、月に近づけば近づくほど魔力の影響も強くなる。

 

 

「月の開発事業に成功するということは魔力資源に人と物の流通、そして月と月の間を結ぶ膨大な空間を手に入れられるということ」

 

 

 いつの時代もどの世界でも土地はお金に直結する。

 広大な次元世界が舞台であっても、それは変わらない。

 

 中心世界の魔力の塊などという土地は、いったいどれほどの価値があるというのか。

 

 

「月周辺の開発は二つの企業が十数年も前から覇権を争っていたんだ。八福星間開発公司とセレーネInc.だ」

 

 

 目の前の書類もその二社が月を巡ってどう動いてきたかについてかかれたものだ。

 

 

「そのどちらかが黒幕だった、というわけですか」

 

「まあそう急くな」

 

 

 話の途中で結論を急いだ私に、オーリス姉さんが待ったをかけた。

 結論まで一気に飛ばないということは、その過程に事件重要な要点があるということか。

 

 どうも姉さんは私を幹部への説明の練習台に使っているような気がする。

 

 

「八福星間開発公司は単独、セレーネはあの尽星重工やEI社などのミッド企業群と連合を組んで月の開発に当たった。どうなったかは解るな」

 

 

 今度は問いを私へと投げかけてくる。

 月の開発を巡る競争は私がミッドチルダに来る前に起きたことだろう。詳しくは知らない。

 だが、今の企業の情勢を考えると大よそ見当がつく。

 

 

「……技術力や経営力ではなく数の暴力に八福社側が負けた、ということですかね」

 

「その通り。大きな餌を前に企業戦争に負けた八福社がとった行動が、あれだ」

 

「中解同を使った企業テロ、ということですか」

 

 

 私の言葉にオーリス姉さんが頷いた。

 

 

「何というかまあダーティーな発想ですね」

 

 

 地方世界が中央世界の企業に対し行われてきた中解同の企業テロも、始まりは中央世界の大企業同士の争いだったのだ。

 なんというかまあ、因果応報というか関係ない企業は完全にとばっちりというか。

 

 

「ミッドチルダの企業なんてそんなもの。父さんが陸で実権を握って真っ先に手を入れたのも犯罪組織ではなくそれのバックボーンになっていた企業群だったらしいよ」

 

 

 オーリス姉さんから渡された書類の一枚、企業テロによる被害状況を見ると、セレーネや尽星社の被害は確かに大きい。

 この前撃ち落した月面攻撃戦艦も、これらの企業施設を主に狙う手はずだったのだろう。

 

 八福社にもいくらかの被害が出ているが、これは怪しまれないためにあえて行ったものということになる。

 

 

「これで事件の裏側は全て暴けた、と言いたいところだがセレーネ側もまた一筋縄ではいかなくてな」

 

「なんですか。八福社とセレーネ両方がテロ支援していたとかではないですよね」

 

「そこまで間抜けな話ではない。だがまあこちらはまだ推理でしか語れない段階だ。捜査官の中でも極秘扱いだな」

 

 

 そうまくしたて、オーリス姉さんはカップの中のお茶を一気に飲み干した。

 お行儀悪く音を立てて最後の一滴をすすり、カップの中を覗き込む。

 私しか見ていないからってこういう行動は止して欲しい。

 

 私がそう指摘すると姉さんは、はいはいと生返事をしてカップを持って立ち上がった。

 そのままレビュールームを出て行こうとする。

 

 

「あ、あれ? 極秘扱いだからってここまで話して私にも秘密ですか!?」

 

「急くな急くな。お茶のおかわりを淹れてくるだけ」

 

 

 カップをふらふらと振ってレビュールームから出て行くオーリス姉さん。

 

 一人待たされた私は、姉さんの残していった書類を初めから読み直した。

 ミッドチルダの企業と中解同との繋がり。

 前々からミッドチルダの犯罪組織が地方世界との仲介をしていると予想されていたが、ミッド内部の勝手な事情が外の世界を巻き込んだものだったとは。

 

 テロ、放棄地区、犯罪組織、魔法兵器。

 中心世界だというのに、いや、中心世界だからこそミッドチルダは混乱の渦中にある。

 

 文明が発展したからといって人が皆幸せになることができるわけではないということだ。仕方のないことなのだろうか。

 私たち一族は、文明の復興こそ幸せになるために必要、などと考えているのだけれど。

 

 

 しばらくして姉さんがカップ片手にレビュールームへと戻ってきた。

 姉さんは、さて、と小さくつぶやいて先の説明の続きを開始した。

 

 私だけしかいないからと普段のクールビューティさは吹き飛んでいるのだが。ストレスでも溜まっているのだろうか。

 

 

「セレーネの前身はな、中央技術開発局だったんだ」

 

 

 さらりと凄いことを言った。

 ここでこの単語が出てくるか。中央技術開発局、ヒュペリオン。プレシアさんからの証言によるわずかな繋がりだ。

 

 

「改めて調べたところ、二年前の戦闘機人事件の企業幹部にも中央技術開発局出身者が居た」

 

 

 だが、中央技術開発局は、戦闘機人、すなわちギンガさんへと関わる唯一といっていい情報だ。

 中解同を率いる八福星間開発公司、その中解同を叩く戦闘機人を抱えるセレーネ。

 確かにつじつまはあっている。あっているのだが。

 

 

「今のところはこじつけでしかない関わりだが、セレーネがアインハンダーを使って中企戦を潰しているというのが今のところ一番納得のいく推理だ」

 

 

 こじつけでしかない、つまり直接的な証拠が何も挙がっていないということだ。

 中解同や八福社を追ってもセレーネには辿り着かないだろう。

 

 個別の事件として追わなければならないだろうが、相も変わらず人手不足なのでセレーネが黒だったとしても大企業の手による隠蔽を暴けるかは解らない。

 

 

「でも、セレーネが本当に中解同と戦っているとして、八福社と企業テロの関わりを表に出さない理由は何でしょうか? アインハンダーの行動は、明らかに管理局より事の真相に迫っているからこそですよ」

 

 

 アインハンダーは企業テロを察知しどんな現場にも現れる。

 プラント制圧時には内部の隠し区画の場所まで掴んでいたのだ。

 八福社と企業テロの関わりなどとっくに把握しているだろう。

 

 

「痛い腹を探られたくないのだろうな。企業テロの被害者の中に混ざっていれば私達に目を付けられることもない。本来なら、な」

 

 

 オーリス姉さんはそこまでいうと、机の上の書類をまとめ始めた。

 話はここまで、ということだろう。

 

 

「で、だ」

 

 

 束ねた書類を縦にして机に軽く叩きつけ束をそろえながら姉さんが言う。

 

 

「話を理解したところでカガリちゃんにはお使いに行ってもらいます」

 

 

 誰がカガリちゃんか。

 

 

「あー……、もしかしてこの打ち合わせってそのために私個人に説明していたとか……」

 

「その通り。……八福星間開発公司に強制捜査が入るのは確実だけれど、もうそれだけでは企業テロは止まらない。そこで、ミッドチルダの中企戦の中枢を叩きに行ってもらう」

 

 

 企業テロの中枢。そんなものまで見つかっているというのか。

 中解同の無人機は機体の中に単独戦闘用のAIが搭載されているが、群れとして行動するための作戦を記録する媒体が搭載されていない。

 無人機は管理局の介入による戦況の変化にも対応して集団で動きを変えるため、無人機を統率する中枢施設があるのではないかと言われていた。

 

 技術班のサンプル解析でもその裏づけは取れており、中枢施設の発見が中解同壊滅に必要不可欠とされている。

 

 

「今度はどこですか。地上本部の真下とか言いませんよね」

 

「ああ、下ではない、上だ。宇宙へ行け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙へ来ました。

 と言っても単独で突入するわけでもなく、プラントのときと同様に精鋭で突入隊を作っての制圧作戦だ。

 

 目指すのは八福星間開発公司が建造を中止して宇宙に放置しているとされている、未完成の宇宙ステーション。

 月の一つを周るスペースデブリであり、建造中止以来完全に注目から外されてきた施設だ。

 なるほど、確かに地上に配置するよりははるかに発見されづらい。

 

 今回の戦いの舞台は宇宙となる。

 だが高位の魔導師と云えどそう簡単に宇宙に出られるわけでもないので、戦艦に乗っての出動だ。

 

 今回の作戦も本局との合同作戦。

 そこで用意されたのが、都合よくずっとミッドチルダに停泊中だったエース艦アースラだった。

 

 前のプラント制圧ではアースラは大気圏外から戦艦魔法によるサポートに徹していたためにクルーの人たちとは会わないままだったので、皆とは一年ぶりの再会となった。

 

 

 そして今、私とはやてさんはこの艦の艦長と面識があるということで突入隊を代表してブリッジに挨拶に来ていた。

 

 目の前には一年ぶりのハラオウン提督。

 相変わらず外見から年齢の推測できないダライアス一族のような人だ。

 

 提督は補助器を付けて自分の足で立っているはやてさんを見て自分のことのように喜んでいる。

 子供好きなところも変わっていないのだろう。

 

「良かったわ、ミッドチルダにいるうちに会えて。私、この任務が終わったら艦長職を降りて本局勤めになるの」

 

「それはまた……今話題のエース艦の艦長だというのに引退ですか」

 

 エースとして任される難事件をまた次々と解決すれば、さらに名を上げることも出来るだろうに。

 今のアースラのメンバーなら、それも可能であるはずだ。

 

 

「はやてさんの事件を解決したら、ずっと気が抜けて張り詰めていた何かが切れたような気持ちになったの。前線で仕事をするのももう潮時かしらって」

 

「それは……」

 

 

 長らく続いた闇の書事件を解決したアースラの艦長リンディ・ハラオウン提督は、かつて闇の書事件で夫を亡くした未亡人だということは地上本部でも有名な話だ。

 美談として話されるこの話も、本人にとってはどのような心境だったのであろうか。

 

「これからはのんびり本局で後人を育てていくことになるかしら。はやてさんも本局に来れば便宜をはかってあげられたのだけれど。今からでもこっちにこない?」

 

 地上所属の嘱託魔導師を目の前にして堂々とスカウトとな。

 なのはさんも同じようにスカウトされて管理局に入ったのだろうか。管理外世界に転送施設は強権発動しすぎだが。

 

 

「やー、あたしはしばらく地上部隊にいますわ。せっかくカガリちゃんが地上部隊に誘ってくれたわけですし」

 

 

 途端、艦橋の空気が冷えた。

 

 

 カガリちゃんが地上本部に誘ってくれたわけですし。

 

 

 私がはやてさんを陸へ誘導しゲイズ親子をハラオウン派へけしかけたのがこの一言で皆に勘付かれた。

 

 

「あら、そうなのー……」

 

 

 ハラオウン提督の笑顔の威圧が怖い。

 うわあ、嫌な汗が出てきた。

 

 艦橋に居るクルーの人達もこちらを見ている。

 あああああ、どうしようどうしよう。

 

 

「だから今回の作戦は輸送と支援で僕達は待機なんだよ」

 

「だけどなぁ。カガリちゃん達だけ送り出すというのは……」

 

 

 緊迫した空気を打ち砕くように、艦橋の入り口から声が響いた。

 反射的に声のしたほうへと振り向く。

 

 クロノさんとヤマトさんの二人が何かを言い合いながら艦橋へと入ってきたのだ。

 

「あ、カガリちゃん。ここに来ていたんだ」

 

 ヤマトが私に気づいて声をかけてきてくれる。

 何だろう、初めて彼の輝かしい容姿が神々しいものに見える。

 

「今回の作戦、アースラの武装隊は奥まで行かないらしいけど大丈夫? そりゃあ他の人達はまだ死ぬ時期じゃないだろうけど……」

 

 純粋に私を心配してくれるヤマトさん。

 私とはやてさんの顛末を全て知っているので彼なら他の人たちのような視線を向けることはないだろう。

 

 ああ、知り合いの中でも黒い裏とか気にしないですむのはヤマトさんくらいだ。

 人畜無害という単語がふと頭をよぎった。

 

「大丈夫ですよ。こういう任務は何度もしていますし」

 

 話を全力で逸らせていただこう。

 蒸し返される前に違う話題へ流れを持っていこう。

 

 先ほどまでヤマトさんと何やら論争を続けていたクロノさんへと視線を向ける。

 

「背伸びましたねクロノさん。ようやく年齢相応です」

 

 私とさほど背丈の変わらなかったクロノさんは、今では私より頭一つ分以上の差が出来ていた。

 ちなみにヤマトさんは元々長身なので、未だにクロノさんより年上に見える。

 

「……ああ、この一年でずいぶん伸びたんだ。やっぱりカガリも小さいとか思っていたのか」

 

「あの背丈で小さいと思われないほうが不思議ですよ?」

 

 私の言葉を聞いてはやてさんとヤマトさんとハラオウン提督の後ろでこちらをニヤニヤ見ていたエイミィ執務官補佐が話に加わってきた。

 

 上手くいったようだ。

 

 後ろからハラオウン提督のため息が聞こえたが聞こえなかったことにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中小企業解放同盟の中枢への突入隊は、以前のプラント制圧時の突入隊メンバーとほぼ変わらない面々であった。

 

 本局ミッドチルダ首都航空隊からティーダ・ランスター二等空尉。

 首都防衛隊からクイント・ナカジマ准陸尉、メガーヌ・アルピーノ准陸尉。

 シグナムさんは今回は来ていない。捜査官候補として、ゼストさんに付いてミッドチルダ地上側の八福社の強制捜査に参加するらしい。

 

 代わりのフロントアタッカーの補充としてミッドチルダ南部の陸士隊からヴィータ三等空士が派兵されている。

 

 航空魔導師隊からは、カガリ・ダライアス嘱託魔導師。

 そして先日空戦Aランクを取得した八神はやて三等空士が新たに加わった。

 

 本来ならAランク魔導師には任されることのない任務なのだが、ヴィータさんとはやてさんの人事評価は魔導師ランクAAA相当だ。

 

 私としては古代ベルカの騎士であるヴィータさんはともかく、はやてさんはまだ突入任務には早いと思うのだけれど、本人がやる気になっているのでどうしようもない。

 まあ後衛としての配置なので危険度は少ないだろうけれども。

 

 突入は八福社への強制捜査と同時に行われるので、アースラは現在月の一つの軌道で待機しているところだ。

 突入隊のメンバーは全員バリアジャケットを装着し、転送室近くの待機室に詰めている。

 

 前も顔合わせをした面々だが、はやてさんとヴィータさんはこの人達と初の邂逅だ。

 

「うわーちっちぇー。魔動少女が三人もいるぞちっちぇー」

 

 ランスター二等空尉はヴィータさんを気に入ったのか、バリアジャケットの赤い帽子を上から手のひらで何度も叩いてはしゃいでいた。

 

「ちっちぇー言うなこら!」

 

 沸点の低いヴィータさんが激昂するが、ランスター二等空尉

 

「いやー、だってうちの妹くらい小さいからさー。同士カガリー、大丈夫なんかこれ」

 

 小さい私に話を振られましても。

 まあだけれどフォローはしておこう。

 

「ヴィータさんはこれでもシグナムさんと同じ古代ベルカの騎士でして……ランスター二等空尉よりもはるかに年上ですよ」

 

「ええっ!? ヴィ、ヴィータおばあちゃん!?」

 

「誰がおばあちゃんだこらーっ!」

 

 もしやランスター二等空尉はヴィータさんをからかって遊んでいるだけなのだろうか。

 

「はやてさんは正真正銘私と同い年の女の子です。でも一応今までの中解同戦では立派な実績を残していますよ」

 

「へえ、こんな小さい子がー。遊びたいざかりでしょうに」

 

 アルピーノ捜査官が横から手を出し、はやてさんの頭を頭を撫でた。

 そういえばアルピーノ捜査官も一時の母だったか。子供を管理局にスカウトしようとするハラオウン提督とはまた違った感性を持っているのかもしれない。

 

 ミッドチルダは天才教育の発展のためか、一部のエリートの就業年齢は他の発展世界と比べて非常に低い。

 

 はやてさんは本来なら、魔法も知らずに第97管理外世界の日本で小学校に通っていたはずだった。

 日本ではこの年齢はまだ大声を出して外を走り回るような庇護すべき小さな子供なのだ。

 

 そんな幼い子供が、すでに強い信念を持ち戦場に身を投じている。

 それが良いことなのかどうかは、まだダライアス一族としての価値判断しか出来ない私には断言は出来ない。

 

 ただ、そんなはやてさんを私は少しでも手助けしてあげられたら良いと思う。

 まずはこの戦いから皆で無事に帰らなければ。

 

「陸を離れると妹が心配だなー」

 

 ヴィータさんの帽子を頭に被りながらランスター二等空尉がぼやく。

 というかバリアジャケットなのに頭からはずれるんだあれ。

 

「俺、この任務から帰ったら妹と遊園地に遊びにいってやる約束しているんだ。早く終わらせないと」

 

「それ死亡フラグですよ」

 

 アルピーノ捜査官が笑いながら言葉を返す。

 

 突入前だというのに皆自然体だ。

 だが、ブリッジからの通信が入ると皆表情が一変し、戦士の顔になった。

 

 戦いが始まる。

 

 

 

――――――

あとがき:当然のごとくミッドチルダにおける月や宇宙の設定はオリジナル設定です。結局ミッドの周りの月って何個あるんでしょうね?

 

 

SHOOTING TIPS

■八福星間開発公司

蒼穹紅蓮隊に登場する企業の一つ。

火星開発の権利独占のために企業テロを裏から繰り広げていたりする敵役企業。

一企業がテロ支援とか現代日本ではファンタジーですがミッドチルダでは違和感が無い不思議。

 

■セレーネ

アインハンダーに登場する月面国家。ミッドチルダの月の設定は不明点が多すぎるので月面開発企業に設定改変しました。

アインハンダーは月と地球が戦争を繰り広げている未来というSFな設定になっています。

 

■尽星重工

蒼穹紅蓮隊に登場する企業の一つ。

企業テロに対抗するため戦闘機を出動させ、裏に手回しをして自社が関わった証拠を消す様子が新聞記事という形で見られます。

一軍に匹敵しそうなテロの軍勢を戦闘機一機で壊滅したりしますがただの重工です。

 

■EI社

ケツイ~絆地獄たち~に登場する企業。EVAC Industry。

戦争が活発な時代に兵器開発をしていたために国連に壊滅させられるという可哀想な人達。

いやまあ密輸なんですけど。

 


 
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