風が。
風が心を突き抜けて行く。
空っぽ。
何もかもが空っぽ。
全部。
全部確かにそこに存在するのに。
まるで。
まるでそこに無いみたいだ。
透明感、いや、虚無感、だろうか。
色彩などではなく、もっと根本から、この国は何かがおかしい。
雑多な心を持つ他の国の者を徹底的に寄せ付けないこの場所は
地平線に横たわる夕日から、こう名付けられた。
夕焼けの眠る場所。
また一つ、風がクロノアの耳を揺らした。
この世界に来た時からずっと聞こえていた声が近付いているのを感じる。
暖かい気候とは裏腹に、その声はずっと深く、しかし何故か懐かしくあった。
もしかしたら異なる夢としての自分の体が、どこかで受けた同じ様な哀しみを覚えてるのかも知れない。
急に足取りが重くなる。
この先で待ち受けてるものは一体なんなのだろう。
「おい、クロノア、どした?」
自分の様子が変だと思ったのか、ポプカが心配そうにこちらを見つめる。
「なんでもないよ、なんでもない」
「そっかぁ? なーんかさっきっからボーッとしてるからさ」
「クロノアさん、哀しみの国に入ってからずっとそんな調子ですものね」
リングの中から、ロロが話しかけてきた。
そっか、自分はこの国に来てから、ずっとこんな様子だったのか。
「これから哀しみの国の鐘に行くんだろぉ? こっから正念場だぜ、しっかりしろよ、ナァ?」
「うん、ごめんごめん」
その時、びゅうっと音を立て、また一陣の風が吹いた。
さっきよりも強く、自分に訴えかけてくる。
・・・うん、分かったよ。
二人に気付かれないように、クロノアは頷いた。
今から君を、助けに行くよ。
助けて・・・。
助けて・・・。
助けて・・・。
クロノア・・・。
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風のクロノア2より、夕焼けの眠る場所