早苗は突如、頭に重みを感じた。
(これ…諏訪子様の帽子?)
そう思った刹那
「!?」
早苗を襲う頭部の圧迫感、上部に引っ張られる感触。
「ぐ…痛いいたいイタイ!」
そう叫んでみても治まる気配は無い。
上を見上げようとすると視界がどんどん暗くなっていく…帽子の柄がどんどんと下に迫っているのだ。
(…もしかして、私を飲み込もうとしてる?)
早苗は想起していた。人間の里に降りた時に聞いた妖怪の山の神社の神様二柱(ふたはしら)の噂。
「聞いたか?小さい方の神様、帽子が神としての本体らしい…」
やがて、視界が完全に闇に包まれる。徐々に、頭部の感覚が無くなっていく。
(どうなるのかな、私?)
感覚が失われていく範囲も時間とともに増えていく、首を伝って呼吸する空気の流れ、豊かな膨らみの奥で鼓動する心臓、女が物事を思考する中枢という子宮の営み…
体全ての感覚が消えた早苗に残されたものは、虚空の中を漂う意識1つ。
(これ、多分夢だな)
早苗はそう考えることにした。
そもそも、最初からおかしかったのである。どうして諏訪子様の帽子が私の頭の上に被さったのか?そもそも、痛いと感じ叫びながら、どうして『体を動かして』抵抗しなかったのか?
(もう、どうでもいいや。どうせ夢だし)
そんな事を思いながら早苗の意識も闇の中に溶けていった…。
ちゅんちゅん…雀が鳴いている。てらてら…日差しが瞼越しに網膜を刺す。どちらも自己主張で早苗を目覚めさせようとしている。
(ん…朝か)
寝起きで朦朧とした意識の中、早苗は妙に寝苦しい感触を感じていた。(あれ?昨日は何も掛けずに…寝たはず…)
言うなればシーツが自分の体に掛かった状態。
(あれ?そもそも昨日どうやって寝たっけ?あんな夢見たせいで忘れた?)
早苗の思考が混乱している。ひとまず顔でも洗おうと、起き上がり立った…しかし
ずるり
立った瞬間に何かが落ちた。下を見る。自分のスカートが落ちていた。視界を正面に戻す。視界が低い、明らかに低い。もう一度下を見てみる。自分のスカートが落ちている。昨日まで視界の半分を占領していた山2つが綺麗さっぱり無い。っていうか服が大きい。よく見たら袖もずれおちる直前だ。
「…あれ?ってあ!?」
声を出してみたらいつもより高く聞こえる。早苗の顔が(早苗の脳内で)青ざめていく。
「まさかっ」
早苗はそのまま洗顔所に走り出す。走りにくいが構わず走る!洗顔所に到着。息も絶え絶えに鏡を見る。
そこにはぶかぶかの巫女服を着た金髪ショートの少女が1人。昨日まで諏訪子様と呼んでいた少女の鏡像が投影されていた。
「!?!!?!?!」
「あ、起きた?」
唐突に声を掛けられる。聞いたことのあるような無いような声。声の方向に振返ってみる。
早苗の視界に映ったのは、昨日まで諏訪子様が着ていた服を着けた別人。
明らかにサイズが小さすぎる上下の服。2つのメロンによって胸部の膨らみが強調され、服が上部分に引き伸ばされて臍が見えている上半身。大きな臀部の圧迫でスカートが破けそうになっている下半身。
昨日まで自分の体だったものが諏訪子の服に押し込められていた。
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某しんのさんの絵茶でSSを即興で書くことになり1時間リアルタイムで書き続けた代物。タイトルでオチが読める。これはひどい。