<蜀 街>
<一刀>
さ~て、今日も今日とて街をぶらぶら。
ふっ、ぶらリスト北郷と呼んでくれ。
……何でもないです。
軽く自己嫌悪…。
それにしても、あ~、いい天気。
こっち来てから好天が続いてるなぁ。
ま、水不足とかにならないなら良いことだよな。
今日も街は賑わってる。
ふと考えた。
カフェが有るとか、オレの知る世界とは全然違うとは言え、干渉しちまっていいのか?
言わばオレは、存在するはずのない知識を持ったイレギュラーな存在だろ。
……それでも…オレは皆がずっと普通に笑っていられるようにしたい。
そこは多少世界がおかしくなろうと譲れない!
それが万が一罪と後に言われようと構わない!
もしそうなってもそれはオレが一生背負うんだ。
オレは覚悟を決める。
誰かが飢え、誰かが苦しむ姿は見たくない。
こんな時代だからこそ、皆で少しづつ手を差し出せば豊かに暮らせるんだ。
―じーーっ。
…ん?
久しぶりに真面目な思考に浸っていたら昨日の子供の中の一人がオレを見てた。
「どうした~?」
とりあえずしゃがんで話しかけてみた。
「お兄ちゃん。変な顔してどうしたの~?」
んがっ!!
へ、変な顔って。
オレだってたまには真面目な顔するんだよ!!
つーか、あっちにいた時なんてその方が多かったんだからなっ!畜生!
「な、何でもないぞ~、それより何か用か~?」
多少笑顔が引きつってしまう。
「うん!今日も遊んで!」
おお、今日も相変わらず元気いっぱいだな。
何か良い事でもあったのかい?とか言っちゃいそうだ。
「おお、いいぞ!皆連れて来な。」
「うん!待っててね!」
言うが早いか走り出していった。
…転ぶなよ~。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
待つこと数分。
お、来た来た。
…
……
………あれ?
何か多くありません?
うん、多いね。昨日の1.5倍くらいいるね。
……ま、まぁ皆で遊んだほうが楽しいよな。
「よ~し、今日もいっぱい遊ぼうな~。」
「「「「うんっ!!!」」」」
子どもたちは素直に頷いてくれる。
かわいいな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
で、あっという間に数時間後
…子どもってパワフルだよな。
オレも鍛えているはずだがさすがに疲れたぞ。
なんていうかハチャメチャが押し寄せてくる。って感じだ。
ちなみに今日は缶けり(使ったのは缶じゃないけど)も新しく教えたぜ。
しかし、すっかり懐かれたな。
「また遊んでね!ぜったい!ぜったいだよ!」
「わたし、おおきくなったらお兄ちゃんのおよめさんになる。」
「あ、ずるい~。わたしも~。」
「オレ、兄ちゃんみたいな大人になる。」
「またね~。兄ちゃん。」
そんな感じに口々に言ってくる。
嬉しく思いながら、オレは子どもたちに答えながら別れを言うことにした。
…ちょっとぐずられたけどさ。
何とかなだめてその場を後にし、また一級ぶらリスト(?)の本領を発揮すべく歩き出す。
子どもたちはまだまだ元気に遊んでいた。
…すっかり昼だな。
そういえばお腹も空いてきたぞ。
よし、屋台街の方に行こうかな。
…やっぱり誰か誘えば良かったな。
「お、兄ちゃん。元気か?」
「あんたもうここに慣れたかい?困ったことがあったらいいなよ。」
etc…etc…
歩いてる途中昨日話した人や、そうでない人からまで話しかけられる。
その度話し込んでしまった。
でも受け入れられてるって感じでやっぱり嬉しい。
店のおっちゃんや、おば…お姉さんたちも昼飯を買いに行ったらメチャクチャおまけしてくれるし。
…ゲプッ。
食いすぎた。
恋がいれば良かっただろうな。
ふう…
腹ごなしにもう少しぶらぶらするか。
ドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!
な、なんだ?この地鳴りのような音は?
「どこまでついてくる気だよ~!!わ~っ!来るな来るな来るな~!!」
ドタドタドタドタドタ・・・・・・・・・・・
「わぅんっ!」
「くぅ~んっ!」
「バウワウ!」
「わぉ~んっ!」
「ん?」
音のする方に目を向けると、女の子が大量の犬に追われていた。
いや、それよりも
……凄いスピードでこっちに向かって来てる~~~っ!?
そう思った瞬間、凄い衝撃とともにオレの世界は回った。
どーーーーーーーん!!!!
「あっちょんぶりけっ!!!」
あまりの衝撃に激しく転倒してしまう。
「いててててて。」
なんとか気を取り直して周りの状況を確認してみる。
……え~と。
オレの上には追いかけられていた女の子が乗っていた。
「あの~…。」
「…へっ?……わーーーっ!!」
「ごぼぁっ!」
い…いきなり…拳を振り落とすとは…。
…くっ…やるじゃない?
これなら分厚い岩盤もぶちやぶれるぜ?
彼女はすぐ立ち上がり「…(お館?)」何か呟いたようだったが絶賛悶絶中のオレにはよく聞こえなかった。
ちなみに犬達もびっくりしたのか立ち止っている。
「す、すまない。大丈夫か?」
「ああ。かすり傷程度だから全然平気だよ。そっちこそ大丈夫?」
「わ、ワタシは平気だ。」
見ると、マンガの神様作の某裏医者物語みたいな髪型をした背の高めの女の子がいた。
黒と白を基調とした格好のカッコイイ感じの娘だな…。
…ん?
え?
あれって、まさか…
ののののののの、“のーぶら”というやつでは…
―――ひやりっ。
「ひぃっ!」
またあの悪寒が…。
「?どーしたんだ?」
「い、いや、何でもないよ。それより…。」
オレは彼女の後ろを指す。
そこには犬の大群がこちらを見たまま佇んでいた。
「ひっ。た、助け……。」
「あ、ああ。わかった。とりあえず後ろに下がってて。」
彼女はコクコク頷くと、急いでオレの後ろに隠れる。
…気が強そうに見えるけど、かなり犬が苦手なんだな。
オレはひとまず手を広げて、犬達の前に立ちふさがった。
ん?良く見たら…セキトが先頭にいる。
「こらっセキト。ダメだろ。嫌がる人を追いかけたりしちゃ。」
「わぅ~。」
どうやら言葉は分からなくても怒られていることは理解したのか、セキトは尻尾をしゅんっと垂らす。
他の犬達はオレの声に反応してこちらを見ている。
「しっ…しっしっ…。」
女の子はそれでも後ろに回り込もうとしている何匹かを牽制しつつ、オレの服の裾を掴んでる。
まあ、こいつらも遊びたかっただけだろうし、悪気はないんだよな。
「ほら、お前達帰った帰った。」
オレは苦笑しながら、あまり乱暴にならないように犬達の身体を軽く叩く。
「セキトも後で遊んでやるから。なっ?」
そうして犬達はまだ女の子を気にしているようだったけど、一匹、また一匹と次第にその場から散り始めた。
やがて犬達は姿を消し、その場にはオレ達二人だけになった。
「す、済まなかった。い、今から反撃するところだったんだけどな。」
「ははは、いいよ。気にしないで。」
「名乗り遅れたな。ワタシは魏延、字は文長、ま、真名は焔耶だ。」
「真名までいいの?」
「い、いい。た、助けてもらったんだしな。」
「そっか、ありがとう焔耶。大切に預かるよ。オレは北郷一刀。真名は無いけど一刀が真名にあたるんだ。しばらくこの国で厄介になることになったんだ。よろしくな。」
「!?お前があの天の御遣いとかっていう胡散臭いやつか。最近桃香様をたぶらかそうとしているらしいな。もしも、桃香様に何かしようものなら…覚えていろよ。」
「え?あ、うん。」
「とにかくだ!これを貸しだと思うなよ!」
「え?あ……。」
言うが早いか焔耶は一目散に駆け出してしまった。
う、う~ん。せっかく仲よくなれそうだったのにな。
オレってそんなに評判悪かったのか。
…しょぼ~ん。
それにしても、あれがこの世界の魏延か。
もう驚かなくなったな。オレ。
・・・・<焔耶>・・・・
「何をしてるんだワタシは……助けてもらっておいて、あんな風に逃げだすなんて……。でも…………。…………。ええい。なんなんだこのもやもやした気分は…。」
「やっぱり………………。」
・・・・<一刀>・・・・
はあ……。
気を取り直していくか。
なんか今日はついてないのかな。
とぼとぼ……。
とぼとぼ……。
ん?
「…おー…ほ…ほ………。お………ほっほ…ほ。」
な、なんだ?この甲高い声は。
視線を声の方に向けると何やら店先で揉めているみたいだった。
「お~ほっほっほ。ど~してこのワタクシがそんなことをしなくてはいけませんの?」
「ちょっ…ひ、姫は黙ってて下さい。」
「すいません。ほんと~にすいません。」
うぉっ!な、なんだ、あの髪は!?
ド、ドリル…だと…。
…ゲッターもびっくりだ。
じゃなくて、近付いてみると金髪大量ドリルの高飛車な女性と、黒髪ショートの真面目そうな娘、それに薄緑髪ショートでボブカットの活発そうな娘が露天のおやじさんとなにやら話していた。
「ウチの品物をこんなにしちまいやがって、弁償しねえか。」
「なんですの。その口の利き方は…モガ…。」
「だ~か~ら。姫はちょっと黙ってて下さいってば!」
「すいません。今ちょっと持ち合わせが少なくて…ちょっとだけ待っててもらえますか?」
………やれやれ。
困ってる人はほっとけないよな。やっぱり。
「すいません。」
「なんだい。兄ちゃん今ちょっと忙しいから後にしてくれるかい?」
……
………
…………
で、何とかオレが弁償費用を立て替えるということで一応場が収まったが…正直…あまりあのカオスな状況は思い出したくない。
……主にあの人の…。誰とは言わないけど。
「あ、あの~。」
「ん、ああ。」
「ほんと~にすいません。すぐにお支払いしますから。」
黒髪ショートの娘はしきりに頭を下げていた。
…うん。苦労人だな。この娘。
「いや、そんなに気にしないでよ。困った時はお互い様だよ。」
「いえ、でも…。」
「そ~だぞ~。斗詩~。あんまり気にすんなよ。な!」
「も~、文ちゃ~ん。」
…ま、いいか。
「そういえば、まだ名乗ってなかったね。オレは性は北郷、名は一刀。よろしくね。」
「あ、こちらこそ申し遅れました。私は顔良って言います。」
「あたいは文醜だ。」
そう言って二人と握手を交わす。
二人とも一瞬顔が赤くなった気がしたけど…気のせいだよな。
「それで、あ、あの私の真名は斗詩っていいます。」
「え、いいの?」
「は、はい!」
「ん~。斗詩が許すんならいいか。あたいは猪々子だ。よろしくな、アニキ。」
「あ、アニキ?」
「なんか呼びやすいんだよな。いいだろ、別に?」
「あ、ああ。そうだ、オレは真名は無いけど一応一刀が真名に当たるらしいからよろしくね。斗詩、猪々子。」
「ちょ~っとお待ちなさい。この高貴なワタクシを無視しないでくれますこと?」
…ちっ。
「アア、ゴメン。オレハ北郷一刀ッテイウンダ。ヨロシク。」
「お~ほっほっほ。ワタクシは三公を輩出した名門袁家の当主、袁本初ですわ。よろしくしてさしあげてもよろしくてよ。」
「ヨロシク。」
一応握手を求めると、意外に普通に応えてくれた。
袁紹は一瞬ぴくっとしたかと思うと、
「と、特別にワタクシの真名を教えて差し上げますわ。れ、麗羽と呼んでもよろしくてよ。」
「え、え?いいのか。」
「ワタクシがいいと言ったらいいんですのよ!」
「あ、ああ。わかった。オレのことも一刀って呼んでくれ、麗羽。」
まあ、悪い人ではなさそうだな。
良くも悪くもお嬢様ってとこか。
袁紹に文醜、顔良ね。
なんで蜀にいるかは分からんが、まあ恋だっているしな。
やはりさすがにもう慣れたな。
話を聞くと三人とも食客として城に住んでるらしく、お金はまあ追々ということになった。
三人はもう城に戻るらしいけど、オレはもう少し散歩したかったからここで別れることにした。
…しっかしやっぱり大分違うよな。オレの知ってる世界とは。
…帰れるんだろうか。オレ。
でも、なんだろう。やっぱり胸に引っかかるものがあるんだよな。
まあ、いいや。
とりあえずは、街のことを見て回ろう。
…
……
………
とか言ってる内に日が暮れちゃったよ。
まあ、しょうがないか。
明日からは、農業とか開墾とかの方にも足を伸ばしてみるか。
オレは昼にこの世界に干渉する覚悟を決めた。
それは嘘じゃない。
こうして気持ちも新たにオレは城へと帰って行った…。
・・・・<とある荒野>・・・・
煌々と煌めく月の下
昼夜の区別も曖昧に
5人の少女が馬を駆ける
先頭の少女が呟く。
「…待ってなさいよ。一刀。」
邂逅の時はもうすぐそこまで迫っていた。
<あとがき(いいわけ)>
お久しぶりです。
作者失踪じゃないっす。
3月のあの後、仕事が鬼のようになりまして
そのあと転勤あり~の
その他もろもろあり~ので
とても書ける状況じゃなかったんです。
ようやっと落ち着いたのでこれから更新を再開します。
ちょっと更新は遅いですが、少しずついけると思います。
今回、難しかった~よ。焔耶も袁紹も。
ということで改めて色々スルーでお願いします。
次回は…まだなにも決まってませんが作者的に楽しくなってきました(笑)
がんばれ一刀。
では、これからもどうかよろしくお願いします。
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お久しぶりです。
いいわけはあとがきでします。
では、久しぶりの駄作をこっそりと…