飛び掛ってきた一刀に対してハサミを構えたシザーメン。
しかし、
ガキン!
一刀はハサミの支点の部分を蹴り上げた。
ヒュンヒュンとハサミが宙に舞う。
そして落ちてきたハサミを一刀がキャッチする。
「よくも女の髪を切ってくれたよな!!」
一刀はハサミを持ち直し、シザーメンに向ける。
「その中途半端に折れた首切断して!デュラハンにしてやらあ!!」
ハサミで首を狙う一刀。
シザーメンは手で首をガードしながら逃げ回る。
「・・・!!」
それを見た少年は一刀の方へ凄い速さで這いずって来た。
「ふん!!」
ゲシッ!
「ぐっ!」
少年がうめき声を上げる。
少年が足元に来た時、一刀は頭をおもいきり踏んづけたのだ。
「邪魔すんじゃねえ!」
一刀は興奮冷めやらぬ状態で少年を見下ろしながら言った。
ガタタタ・・・
部屋の中の家具が揺れ始める。
「・・・弟から足を退けてください」
シザーメンが恐怖で壁に張り付いている中、残った女性の幽霊が静かに言った。
「るせえ!だいたいアンタも女なら、髪をこんな風に切られる事の重大さが分からない訳ないだろうが!?」
愛紗を指差し女幽霊に向かって吼える一刀。
「それは・・・」
言葉を詰まらせる女幽霊。
「え~い!腹の虫が収まらん!てめえらそこに並べ!!」
一刀は少年の頭から足を退けると、アヤカシ三人組に向かってそう言い放ったのだった・・・
アヤカシ三人組は部屋のど真ん中に並ばされ、更に正座(少年は出来ないので、両手で体を真っ直ぐ立たせていた)させられていた。
一刀とようやく正気に戻った愛紗は、ベッドに腰掛けている。
「取り返しのつかないことしてくれたなあ?てめえら・・・」
一刀は冷たい視線で三人を見下ろす。
「・・・・・・」
愛紗は三人を見ないで、何故かチラチラと一刀を横目で見ていた。
「どうしてくれるんだ?ああん?」
まるで一般人を脅すチンピラやヤクザのように言う一刀。
「・・・すみません。父と弟は上手く喋れないので、私から謝罪します」
女幽霊は素直に謝った。
残りの二人も頭を下げる。
「まあ、この件は被害者の愛紗から裁きを下してもらうとして・・・何で俺たちを襲ってきたんだ?勝手に入ったのは悪かったけどよ・・・」
「・・・皆で決めた事です。面白半分で人の家に入ってきた愚か者共に天誅を下そう・・・と」
「いや、お前らもう死んでるんだろ?だったらさっさと成仏しろよ・・・」
「それが、その・・・」
女幽霊は言い辛そうにして目を逸らす。
「・・・私たちは強盗たちに殺されたんです」
「ああ、そうらしいな。死んだ強盗たちはあんたらが殺ったのか?」
「はい、その通りです」
頷く女幽霊。
「それで、恨みを晴らしたのはよかったんですけど、その・・・その時の恨みが強すぎて成仏できなくなってしまったんです・・・」
「・・・それは、お気の毒に・・・」
何故か同情してしまった一刀。
「しっかし、愛紗の攻撃で扉が壊れなかったのは何でだ?」
「あ、それは私が結界張ってるからです」
「・・・何でそんな事ができるんだよ?」
「私、子供の頃から不思議な力があって・・・皆が見えないモノが見えたり、占いなんかも良く当ててましたし・・・」
「・・・サイコゴーストってやつか」
「さい・・・何ですか?」
「いや、気にしないでくれ」
サイコゴースト
人間の頃強い霊力を持っていた人は、死後、除霊もできない凄い力を持った霊になる事があるのである・・・byぬ~べ~
「・・・さて、愛紗」
「なっ、何だ?」
一刀に見られて、顔を赤くする愛紗。
「こいつらどうする?」
三人を横目で見ながら言う一刀。
それに対して愛紗は、
「・・・もういい。早く帰らせてくれ・・・」
頭を抱えてそう言った。
「そうかい・・・って訳だから、俺たちをここから出してくれ。この家は国の力で立ち入り禁止区域に指定するから・・・」
「はぁ・・・それはいいのですが・・・」
「?」
「貴方達のお仲間だと思うのですが、先程から家のいたる所で攻撃が始まっていて、結界を解くことができません。解いたが最後、この家は穴だらけです・・・」
「・・・あいつらは・・・」
愛紗の横で、一刀も頭を抱えるのだった・・・
ガキーン!ガキーン!
家の外、いたる所でそんな音がしていた。
作戦会議の結果、玄関以外に、どこか入れる場所を探そうと言う事になった。
そしてそれぞれクジを引いた時の組になって入れる所を探していた。
・・・六番を除いて、確かめる方法は怪しい場所にとにかく一撃入れるという、とても荒っぽい方法だったが・・・
ガキン!
「ふむ、ここも駄目か」
「次はどこへ行きましょうか?」
七番の星、雛里は館の裏に回り、入れる所を探していた。
そんな時、
ヒラヒラ・・・
「む?」
館の二階から星たちの方に、一枚の紙が振ってきた。
「ハッ!」
星がそれをジャンピングキャッチで掴む。
その紙に目を通す星。
「・・・雛里、皆の攻撃を中止させるぞ」
「?」
可愛らしく首を傾げる雛里。
星は先程の紙を雛里に見せた。
そこにはこう書かれていた。
もう出られそうだから、攻撃止めて玄関で待ってろ・・・一刀
玄関前に集まる蜀の面々。
「本当に帰ってくるのか?」
翠が疑わしそうに言う。
「間違いなく一刀殿の筆跡だ。だとしたら、本当にもう出てくるだろうよ」
星がそう言った直後、
ギーーー・・・
玄関の扉が鈍い音を立てて開いて行き、
一刀と愛紗が中から現れた。
「一刀さん!愛紗ちゃん!」
桃香が二人に駆け寄る。
「おう、いま戻ったぞ」
「・・・ご心配おかけしました。桃香様」
「本当だよ!心配したんだから・・・?どうしたの愛紗ちゃん!髪が・・・」
愛紗の切られた髪を見て声を上げる桃香。
「・・・話すと長くなります。今日はもう帰りましょう、桃香様」
「だな。悪いが今日の肝試しは中止だ。帰って寝る。今日あった事は起きてから話すよ・・・ふあああああ・・・」
大きなあくびをして城に向かう一刀と愛紗。
皆は何があったのかちんぷんかんぷんだったが、とにかく城へ帰る事にした・・・
城にて
「あ~~・・・疲れた」
バッタリと部屋のベッドに倒れこむ一刀。
そのまま眠りにつこうとした一刀であったが、
コンコン
まどろんでいた所に、ノックの音が。
「・・・誰だ~~?」
「・・・私です」
扉が開く音と共に聞こえたのは愛紗の声だった。
「ん~?・・・どうした~~?」
眠そうに言う一刀。
「その・・・実は今日のことが・・・思い出されて・・・その・・・眠れなくて・・・」
もじもじしながら途切れ途切れに言う愛紗。
「は、はしたないとは思いますが、その・・・私と・・・」
「・・・ほれ」
一刀は自分の体をベッドの中心から右にずらし、掛け布団を捲り上げた。
「・・・すみません」
遠慮がちにベッドへ入ってくる愛紗。
「・・・今日はお疲れ。んじゃ、おやすみ・・・」
もう限界だったのか、目を閉じてすぐ寝息を立て始める一刀。
「スー・・・スー・・・」
「・・・今日はお世話になりました」
愛紗は少しの間一刀の寝顔を眺め、そして
「おやすみなさい。もう一人のご主人様・・・」
チュッ
「・・・んん」
一刀の頬へとキスをして
愛紗は一刀の横で眠りについたのだった・・・
その翌日
一刀と愛紗によって館での出来事は全て語られた。
ちなみに愛紗の切られた髪は、整えられていわゆるローツインになっていた。
皆、信じられないような表情だったが
「愛紗ちゃんが嘘つくわけないよ」
と言う桃香の言葉に全員が納得した。
そしてあの館は国の立ち入り禁止区域に指定され、あの家族達との約束は守られたのだった。
ちなみに桃香の言葉の後
「俺の事は信じないんかい・・・」
と一刀が少しいじけるように呟く姿があったのだと言う・・・
おまけ
「ところで、あんたら四人家族だったよな?父、姉、弟はいるとして、母親は?」
「・・・母さんは、二階の自室にいます」
「何で出てこないんだ?」
「・・・実は、お母さんも幽霊なんですけど、死んでから一歩も部屋を出ようとしないんです・・・」
「何やってんだ?」
「・・・前に少し、部屋を覗いた事があるんですが」
「ふむふむ」
「部屋中に殺、と言う文字を書きなぐっていました・・・・」
「・・・・・・」
そして一刀は考えるのを止めた・・・
どうも、アキナスです。
恐怖の館編終了です。
何かホントはちゃめちゃに終わってしまいました。
やっぱり自分にホラーは無理のようです(泣)
ちょっとア○ムスファミリーを思い出してしまいました(笑)
今度は誰の話を書きましょうかね?
それでは次回に・・・
「ゴッドファーザーボム!!」
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愛紗の髪を切られてキレた一刀。
今、怒りの炎が悪を燃やす・・・