「なぁ、最近の噂知ってか?」
「あ? 何だぁ噂って?」
とある山の中にある洞窟の入り口で、山賊達が根城にしている此処に見張り役の男の一人が、相方に躊躇なく話をふる。
当然ながら、話をふられた相方の山賊仲間は訝しげに眉間を歪ませて聞き返した。
すると、話をふった男は自慢気に話を始めた。
「最近、俺ら山賊と言う山賊を片っ端がぶっ殺すそれはそれは美しい黒髪を靡かせた絶世の美女の山賊狩りがいるらしいぜ? おまけにその獲物は身長以上の馬鹿デケェ獲物だって噂だ」
「ハッ!馬鹿言うな、女がそんな獲物振り回せる訳ねぇだろうが!」
自慢気に話している男を否定するように、片腕をヒラヒラとふる相方。
それも当然、常識から考えてあり得ない。それが筋骨隆々な屈強な男ならば話は別だが、何せ噂が噂だ。そんな絶世の美女が本当に存在するならばこの目で見てみたいものだ、と男は思った。
「ま、噂だからな、所詮は」
そんな相方の反応に残念がる素振りをみせた男は首を横に振りながら相槌を打つ。
「………あ? 何だありゃ?」
「お?どした?」
相方の男が遠目ど見ているとその先に"何か"がのらりくらりと近づいて来た。
その"何か"は身体をマントで被せた人間だと判断出来る、しかし、その足取りは弱々しく、右へ左とゆらゆらとふらつきながら此方に歩みを進めていた。
「おいおい、何だありゃ~?」
「知らねぇ、旅人が何かじゃねぇか?」
率直な意見と感想を述べる山賊二人。
この時、冷静に考えればおかしな光景だ。
この山には山賊が出没する事は下界の農村でも知られ、もし、その旅人ならばうかつにそんな山に入山するなどとんだ命知らずだ。
しかし、そんな簡単な疑問すら浮かばない二人は互いに目を合わせてニヤリと顔を歪ませる。
"良い暇潰しが出来た"
ただでさえ付きたくもない見張り役を押し付けられていた鬱憤を晴らすにはまたとない機会。
旅人ならばなおのこと、金目の物を追い剥ぎ、リンチして殺してしまえばこれがかなりの憂さ晴らしになるのだ。 そんな事を考えながら、二人は歩み寄ってくるマントの人物に近付いた。
「おいおいおい、旅人さんよぉ~! こっからは通行料が必要だぜぇ?」
「命惜しかったら、金目の物全部置いていきな! 」
決まり文句を言う賊二人、しかし、もし、この世に神がいるのなら、それはあまりにも非情で残酷な運命だろう。
旅人が………ではない。
賊達が……だ。
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シリアス多め、ギャク少々。
これは、真・恋姫†無双の二次小説です。
苦手な方はブラウザバックで、そうでない方はこのまま進んで下さい。