No.228489

真恋姫無双 天遣三雄録 第二十四話

yuukiさん

反董卓連合編
戦いの始まり。

2011-07-17 15:40:58 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5048   閲覧ユーザー数:3985

 

始めに、主人公を始めとした登場人物の性格にズレがあるかもしれません。

なお、オリキャラ等の出演もあります。

 

そして、これは北郷一刀のハーレムルートではありません。

そういうものだと納得できる方のみ、ご観覧ください。

 

 

第24話 俺様達が子供のころはラジオ体操って毎日会ったけど、今は違うらしいな。 by左慈

 

 

「ん、んん~。あー、いい天気ね。なんか、今日は良い日になる気がする」

 

反董卓連合、遂に進軍当日の朝。

孫策は天幕から出て、空を見上げながらそう言った。

 

「雪蓮。今日から進軍だ。戦闘も始まるだろう。兵士も気が立っている。そういうことは、外では言うな」

 

続いて出てきた周瑜は警告するようにそう言うが、孫策はどこ吹く風である。

 

「も~、心配性ね。冥琳は。けど、大丈夫でしょ。先陣をきる北郷軍が、朝から歌なんて歌ってるんだから」

 

「なに?」

 

耳を澄ませば、風に乗って聞こえてくる。

 

「「「「新しい朝が来た~。希望の朝~だ。喜びに、胸をひ~らけ。おおぞ~ら、仰げ~」」」」

 

「、、、あの者達は、朝から何をやっているんだ?」

 

「さあ?あ、見てよ。冥琳。君主や将軍も兵に混じって並列してるわよ。前に立ってるのは、確か北郷軍の軍師じゃなかったかしら?」

 

確かに、見れば兵士の横には北郷一刀や、左慈の姿が有った。

 

「いったい、何が始まるんだ?」

 

「面白そうね、見に行きましょ」

 

「ちょ、待て。雪蓮!」

 

走り出した孫策を周瑜は追いかけて行った。

 

 

『それでは、これより北郷軍恒例。朝のラジオ体操を始めます』

 

何故だか、于吉の声は広い陣内の隅々まで聞こえている。

その正体は最近何故か仕えるようになった妖術なのだが、まあ、左慈のバケモノじみた足の速さもあったので当人たちはさして驚いてもいなかった。

 

『この世界は、なんか色々起こる、自由な世界なのだろう』

それが一刀達三人の見解だった。

 

「へぇ~、らじお体操をやるそうよ。冥琳」

 

「なんだ?らじお体操とは?」

 

「体操でしょ?らじおの」

 

「、、、答えになってない。というか、見間違いか?劉備軍の者達の姿もある気がするのだが、、」

 

「あ、本当。劉備のところのおチビちゃんが飛び跳ねてるわ」

 

 

ちゃん ちゃららん ちゃん ちゃんららん~♪

 

『腕を前から上にあげて背伸びの運動から』

 

ちゃちゃちゃちゃちゃ~ん♪

 

『はい』

 

「「「「壱、弐、参、四」」」」

 

『背筋を十分伸ばしましょう。手足の運動』

 

ちゃん ちゃかちゃんちゃん 

 

「「「「壱、弐、参、四」」」」

 

『腕を振って体を捩じります。腕を斜め後ろに大きくー』

 

「「「「壱、弐、参、四」」」」

 

ちゃんちゃららんらん ちゃんちゃららん

 

『両足飛びの運動です』

 

「「「「壱、弐、参、四、開いて、閉じて」」」」

 

『はい。深呼吸です。深―く息を吸ってー。はいてー』

 

「「「「すー、はー、すー、はー」」」」

 

ちゃん ちゃん ちゃん~

 

 

そして、曲がやんだ瞬間。規則正しく並んでいた者達全員が走りだす。

 

『はい。ではスタンプを押しますので、皆さん一列に並んでください』

 

「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」

 

規則正しさを吹き飛ばし、誰も彼もが紙一枚(スタンプカード)を握りしめて于吉の元に走っていく。

 

先行するのは左慈、そして鈴々。

 

「誰も俺様の前は走らせねえ!」

 

「にゃにゃにゃー!鈴々が一番なのだー!」

 

そして、その後ろに続く一刀と星が二人の背を追っていた。

 

「星!」

 

「うむ、承知!」

 

二人はこのままでは前の二人を抜けないと悟り、互いに顔を見合わせてニヤリと笑う。

 

「左慈!」

 

「鈴々!」

 

「む?」

 

「にゃ?」

 

「あ、あんなところにデンライナーが走ってるぞ!」

 

「な、なんと!空に空飛ぶ肉まんが飛んでいる!」

 

「なにぃ!どこだ!モモタロスが実在したか!?」

 

「にゃにい!空飛ぶ肉まん!?どこ、どこなのだー!!」

 

思わず足をとめた二人の横を颯爽と星と一刀が駆けて行く。

 

「はっはは、去らばだ。先頭は俺が貰ったー!」

 

「はっはは、これぞ策の勝利というものよ!」

 

「「卑怯だああ!!」

 

騙されたことに気付いた二人は咄嗟に、前を行く二人の足に飛びついた。

 

「はでぶっ!」

 

「なぁっ!」

 

ズザザー。二人は砂埃を巻き上げながら、前のめりに倒れ込んだ。

そして、結果からみれば先頭を走っていた四人が転んだことで漁夫の利を得ようとする者達が居た。

 

「い、今だ!今しかない!御使い様達が転んだぞ!行くぞ、俺達も!」

 

「「「「おおおおおおおお!!!」

 

北郷軍の兵士たちであった。兵士達は次々と、倒れている四人の横を走り抜けて行く。

 

「な、お、お前ら!俺を誰だと思ってんだ!君主様だぞ!お前達の主だぞ!?助け起こそうとか思わない訳!?」

 

「申し訳ありません。御使い様。普段ならば、貴方に命をささげている我らですが、今だけは!らじお体操の時だけは!譲れぬものが有るのです!!」

 

そういって、兵士達は大声を上げて走りぬけていく。

 

「うああああ!有給休暇ぁぁぁああ!!」

 

「女の子の居る部署への移動ぅぅうう!!」

 

「うおおおお!昇給は俺の物だあああ!!」

 

兵士の姿を見て、一刀は愕然と呟いた。

 

「な、なんて、欲望に忠実な奴らなんだ、、、」

 

 

 

 

そして、先頭集団から遥か後ろ。生存競争に参加しなかった者達の集団が有った。

 

「え、え~と。これは何なの?仲達さん」

 

「なにって、らじお体操の後の、すたんぷ争奪競争すよ」

 

仲達は懐から取り出した、紙一枚(スタンプカード)を取り出しながら言う。

 

「北郷軍で、毎朝開催されるらじお体操に参加すると、于吉先輩にすたんぷを押してもらえるんすよ。そして、そのすたんぷをこの紙一杯に溜めると、色々な特典と交換できるんす」

 

「色々、な特典?」

 

雛里がそう呟くのを聞いて、仲達はそちらを見る。

 

「あ、あわわ。、、ごめんなさいですぅ」

 

「いや、いいすっよ。一刀さんに聞いた。昨日のあの後、全部、劉備さんに話したんすよね?」

 

雛里はコクンと小さく頷く。

 

「なら、僕はもう呆れてない。僕の知ってる二人に戻ったなら、それでいい」

 

仲達がそう言って、朱里と雛里に笑顔を向ければ、二人は満面の笑顔を浮かべていた。

その笑顔をみた仲達は、照れるのを隠しながら説明を再開する。

 

「特典ってのは、色々あります。三日の有給休暇に、一ヶ月間の昇給。能力が適正なら、部署の移動願いが受理されやすくなったりもする」

 

「そうなんだ、、でも、それって、諍いとかを生むかも、、」

 

「そうでもないよ。軍に入ってる者なら、誰だって参加できるし、条件は一兵卒も君主も軍師だって平等すっから。基本的に、すたんぷを貯めれば希望は叶うし。、、、、流石に、一刀さんが女の子の居る部署に行きたいって、経理への移動願いを出してきた時は、無効にしましたけど」

 

「そっか、」

 

雛里は仲達と話せたことが嬉しいようで、何度もコクコクと小さく頷き続けていた。

 

「でも、どうしてそんなことをしてるの」

 

「寝坊とか遅刻の防止と、やる気が有るかを見てるんです」

 

「うーん、確かに朝、体操をすれば眼が覚めるのはわかるけど。やる気が有るかってどういう意味?」

 

「一応、参加は自由ってことになってるすっけど、らじお体操に毎日参加してるなら、何かを続けられるだけの熱意が有る。やる気が有るってことがわかる。まあ、これは全部、于吉先輩からの受け売りですけど」

 

「へえ~。愛紗ちゃん。私たちもこれ、取りいれられないかな?」

 

「そうですね。健康的ですし、確かに朝の体操は気持ちが良さそうです。考えておきましょう」

 

「やった!」

 

喜ぶ桃香を愛紗が笑顔で見守っている横で、朱里は仲達に問う。

 

「あの、でもこれって足の速い人が得をしませんか?すたんぷをもらう時に。遅い人は、毎回押してもらえないんじゃ」

 

「あ~、それは勘違いっす。別にスタンプを押す数に制限ないし、参加さえすれば絶対に押してもらえる」

 

「えっ、じゃあ、どうして皆さんは我先にと走っていったの?」

 

「、、、、一刀さん曰く、ノリ。だそうっすよ」

 

「、、、、そうなんだ。ノリ、、なんだ」

 

 

 

 

そして、そんな慌ただしい北郷軍の朝を遠巻きに見ていた孫策は、最近悩んでいたことが解消されたとばかりに、笑顔でいった。

 

「決めた。北郷と、蓮華を会わせましょう。北郷一刀、あの男は、王として蓮華には足りない物を持っている」

 

「、、、、、逆に、蓮華様に足りない物しか持っていないという気もするがな」

 

 

 

 

 

そして、残念ながらなのか幸運ながらなのか、慌ただしい朝を終えた後、汜水関へ向けた連合軍の進軍は滞りなく進んでいった。

なんか、こう、隕石が落ちてくるとかカエル型宇宙人が地球を侵略に来るとかして、反董卓連合自体がご破算になってくれると嬉しかったんだけど、世界はまるで俺に優しくない。

 

汜水関の前に各軍が陣取る。後ろには袁招軍。その後ろに、袁術軍。左右にはそれぞれ、曹操軍と孫策軍が並列していた。

勿論、我が北郷軍と友軍、劉備軍は前曲に居る訳だが。あまり、状況は芳しくなかった、、、

 

「、、、出てこないな。華雄」

 

「出てきませんね。どうしましょうか?」

 

おかしい、と俺と于吉は二人で捻っていた。言い間違えた、唸っていた。

華雄の性格ははっきり言うと、左慈にそっくりだ。

直情的で、真っ直ぐで、何より自尊心の塊みたいな奴だ。

だからこそ、俺はその誇りを穢す発言をすれば乗ってくると思ったし、下手をすると十文字旗を見た瞬間、飛び出してきてもおかしくない筈だった。

 

しかし、華雄はその期待を裏切って。冷静だった。クールだった。クールガールだった。

正直、、似合わねえ。

 

「先ほどから、何度も城門の上で華の旗が揺れています。おそらく、華雄さんが出陣しようとしているのを、張遼さんが止めているのでしょう。ご苦労なことです」

 

「そっか。う~ん。どうするかな、、あんまり時間をかけてると、袁招とかに小語と言われるよな?まあ、俺が怒られるくらいなら良いんだけどさ。桃香ちゃんには迷惑かけたくないな。せっかく上がった好感度を落としたくないし」

 

「気楽なものですね。一刀君は」

 

「気楽じゃねーよ。仲君が何吹き込んだか知らないけど、劉備陣営の中では俺は完璧超人な君主様ってことになってんだぞ?俺は華琳じゃねーっての。過度な期待は胃に悪いよ。絶対あいつら、俺を胃潰瘍にする気だ」

 

于吉は苦笑いをした後、しかし――と、続ける。

 

「ジョーカ―は早々に切れませんよ。、、、左慈を使うときは本当に最後の最後。もう手が無くなった後です。私も、そこまで鬼畜にはなれませんから」

 

出来れば、使いたくない手です――その言葉で終わった。

 

「まあ、俺もそうだよ。左慈にも、辛いだろうしな。でも、ならどうするか。時間はあんまり、使いたくないんだけどな」

 

そう思って、空を見上げていると。

 

「なら、私たちが手を貸してあげましょうか?」

 

何処からか声がして。それは、聞き覚えのある美人の声だった。

振り返ると、桃香とは種類の違う桃色の髪と、褐色の豊満な体を男の劣情を駆り立てる服装で包んだ美人さんが、笑みを浮かべて立っていた。

 

「勿論、条件付きだけどね」

 

「こりゃ、また、華琳ちゃんとは違う趣味っぽいサドが来たものだ」

 

俺は思わず、ため息交じりにそう呟いた。

 

「さど、ってなにかしら?なんとなく、とても失礼なことを言われた気がするけど」

 

「まあ、うん。一部の男から見れば、魅力的な女性って意味だから気にするな。で、何の用だ、孫策。道にでも迷ったのか?なら、ほら、あそこに立ってる孫旗を目指して真っ直ぐ進むんだ、お家に帰れるから、な?」

 

「、、、違うわよ。何処に自分の軍の場所もわからない指揮官がいるわけ?なんどもいわせないでよ。手を貸してあげましょうか?って、言ったのよ。親切心でね」

 

孫策はそうとてつもなく加虐的な笑みで言う。

 

「それは、どうみても親切な人が浮かべる笑顔じゃないだろ。あと、力になるって何の?言っとくけど、兵士なら桃香の兵隊借りれば十分だぞ」

 

「へぇ~、劉備ともう真名を交換する仲になったんだ。乗り遅れちゃったな~」

 

、、、、話がかみ合ってねえ。あと、そのニヤニヤを止めろ。うざいな。

 

「別に貸せるのは兵士だっけって訳じゃないでしょ?実は私、孫家は華雄と少し因縁があるのよ。だから、華雄を汜水関から引っ張りをすのを、手伝ってあげることも、、出来るわよ?」

 

「、、、、で、その条件は?」

 

「あら、乗ってくれるの?」

 

「、、、、条件しだいでな。」

 

「そっ、よかった」

 

渋々そう言う俺を見て、とてつもなくニヤニヤされるのは以上にむかつくが、俺は私情を仕事に持ち込まない立派すぎる君主様だったから耐えたよ!

 

それに、ジョーカ―である左慈を華雄にぶつけたくないってのも、少しあった。

 

「条件は簡単よ。私の妹、孫権にあって欲しいの。それだけ。簡単でしょ?」

 

俺は于吉に視線を送る。

 

「良いのではないですか?たったそれだけのことで協力を得られるというのなら、お買い得という物でしょう。孫権に合うことが、一刀君の利益に著しい下落を招くという訳でもないでしょうし」

 

「、、そうかな?もしかしたらなんかあるかも知んないじゃん。会った瞬間に襲いかかって来り。縄で手足を拘束されて嬲られたり。変な薬を投与されたりしないかな?」

 

「、、、どれだけ、私たちを信用してないのよ」

 

俺の発言に流石の孫策も浮かべた笑みが引き攣っていた。

しょうがないじゃん。いきなり協力するとか言われてもさ、いまいち信用は出来ないだろ。

俺はシティーボーイだから、詐欺とかには敏感なのだ。

 

「まあ、けど、『その程度で協力が得られるなら良いか。』わかった、孫策。その条件を呑むから、協力してくれ」

 

俺が返事をすると、途端に孫策の顔から笑みは消え。消えた笑みの倍は輝く笑顔が現れる。

 

「あなた、いい男ね。うん、貴方なら絶対に蓮華にいい影響を与えてくれるわね」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「なんでもないわよ。じゃ、妹を連れてくるからそこで待ってなさい。ああ、期待していいわよ。私に似て、とっても可愛い子だから」

 

「って、おい!会うのっていまなのか、、よ、、、、もう居ねえし」

 

突然現れて突然消えて行った孫策。わけが分からん。

取りあえず、

 

「なんか、また過度の期待を押しつけられてる気がする」

 

「案外、正当な評価なのかもしれませんよ?」

 

そんなわけあるか―そう、呟いて、空を見上げた。

 

 

 

そして、しばらくたった後。

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、はは、はぁ」

 

なんかよく分かんないけど俺は女の子二人に視姦されていた。

孫策と同じ桃色の髪になんかよくわからない髪飾り?をした女の子が孫権。

その横に付き従う丸いボンボンみたいな髪飾り、シニョンだっけ?をしたもの凄い目付きの女の子が甘寧らしい。

 

「あのさ、孫権。さっきからなんで凝視してくるかな?悪いけど、俺には見られて興奮するような趣味は無いからさ、出来れば止めてくれるとありがたいんだけど」

 

「そうですね。蓮華様。このような男から蓮華様が学ぶことは何一つないでしょう。もう、此処に居るのは止めにしましょう。眼に毒です」

 

、、、、眼に毒って。言いすぎじゃね?

なんでかな、いきなり好感度が氷点下な気がする。桂花といい、賈詡といい、最初会った時の愛紗といい、何処の軍にもこういうキャラクターがいるのかな?ツンデレキャラは必須なのか?

 

「しかしね、思春。姉様は私に無い、君主として大切なものをこの男が持っているとそう言っていたわ。それが本当なら、私はそれを、、、君主として必要な何かを見なければならないわ」

 

そういう孫権の顔は真剣そのもので、誰も寄り付かせず射殺す眼をしていた。

なんか、、怖いな。ある意味では華琳より怖い。こういう子が君主になったら暴走した挙句、国を巻き添えに自爆しそうだ。

、、、ああ、なるほど。孫策はそれを心配してたわけね。

 

「けど、、俺に出来ること無いだろ。そんなの、様は自分の気の持ちようなわけだし」

 

そう呟くが、孫権からは何の反応も返って来ない。あんまりにも、頑なすぎるみたいだ。

孫権の目は、俺を見てはいるけど見ようとはしてなかった。

なんか、もう、どうでもよくなった。

 

そうして孫権から顔をそむけ前を見ると、前方で孫策による華雄の挑発が始まっていた。

何を言っているかは遠くて聞こえないけど、城壁の上の旗が激しく揺れているから効果はあるみたいだった。

 

孫策による舌戦は続き、終わった。結局、華雄は出てこなかった。

城壁の上の旗は、一度は引っ込んだが、また現れただけだった。

前に出ている孫策がこちらを振り返り、舌を出して顔の前で手を合わせてくる。

手を振り返して笑顔を送った。

別に、華雄が出てこないのは孫策の所為じゃないしな。挑発するという約束は守ってもらったし、文句を言う積りは無い。

 

「けど、そうなるとジョーカ―を使うしかなくなる訳だ」

 

振り返らなくてもわかる。隊列を組んだ兵士達を押しのけて、後ろから近づいてきていることに。

背を向けたままでも感じる。怒りと、悄愴を浮かべるその気配が。

 

「北郷、最初に言っておくが、、、お前が俺にやらせようとしていることは下劣以外の何物でもないぞ」

 

「わかってるよ。わかって、理解してる」

 

下劣だというのなら、俺が此処に立っていること事体が下劣極まりない。

汜水関の中から、十文字旗に向けられる視線は怒りそのもの。

声が聞こえてくる気すらする。

――何故、裏切った――

憎しみの声が。批判の声が。断罪の声が。

 

「、、、行ってきてくれ。左慈。この戦争を終わらせに」

 

「ああ、わかったよ」

 

最後まで不満そうに、苦々しく顔を顰めながら左慈は前へと出て行った。

 

慈の旗を掲げ、何を言ったかは此処からじゃ聞こえない。

華雄という女の子に、どれだけの悲しみがあったかもわからない。

けど、城壁に掲げられた旗は孫策の時とは比べ物にならないほど大きく揺れ、城門が開いた。

 

晴れ渡る青空を見上げ、俺は言う。

 

「今日は、死ぬにはいい日かな」

 

人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死ぬらしい。

 

 

 


 
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