No.227752

そらのおとしもの+  超帝国の新天地(ドリーム)  前編

BLACKさん

この話の時系列は「劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀天使」の後となっています。一応、ネタバレにならないようにはしております。
そして今回の話は「映画ドラえもん のび太と夢幻三剣士」を基にして作られたものです。(正確には先に述べた話をそらのおとしものキャラに加え別作品のキャラ(主にBLACKが書いた作品のキャラ)に置き換えたもの)
また作者(BLACK)の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てきます。
今回の話は前編、中編、後編の構成です。

2011-07-13 09:16:01 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1263   閲覧ユーザー数:1193

 

 

ある日のことであった。

 

「智君、起きて! 智君!」

 

桜井智樹の夢の中、ダイダロスが夢の中で眠っている智樹の体を揺らして起こそうとする。

 

「うん? ふぁ~あ」

 

智樹はのんきに起きる。

 

「え~と……ダイダロスだっけ? どうしたんだ?」

「智君大変なの! 夢が侵略……」

 

ダイダロスが何か伝えようとしたが、突然智樹の夢が終わる。

 

「!」

 

シナプスにある自分の部屋でダイダロスが起きる。

 

「これは……カオスの時と同じ? いえ、これはそれ以上のことが……。

夢を無理矢理終わらせられた……」

 

ダイダロスが急いでエンジェロイドの調整室へと向かう。

 

「急がないと……!」

 

ダイダロスは今回の事態が自分の思った以上に深刻だと感じた。

 

 

同時刻 桜井家

 

 

「………」

「おはようございます、マスター」

「今日は早いのね」

 

智樹が起きるとそこには普通に起きているイカロスとニンフがいた。

エンジェロイドは眠らない。そのためイカロスとニンフは智樹達が寝ている間も起きていて、やることがないとして智樹が起きるまで智樹の部屋でただ待っているのだ。

 

「いや、それがさ……ダイダロスだっけ? その人から夢が………なんだっけ? 危ないとかだったか?

なんて言ってたか忘れちまった」

(………)

 

イカロスとニンフは眠らないため夢を見ることもできない。

そのため智樹の言葉を聞いてもイマイチ状況把握ができなかった。

 

「まあ今日は目がさえちまったから、このまま起きてそはらを待つか」

 

それから智樹達は隣の家にいる智樹の幼馴染の見月そはらと共に普通に学校へと行った。

 

「なんか、今日は学校休んでる人多いね」

「そうだな」

 

そはら達が教室を見ると妙に空席が目立っていた。

そして朝のホームルームが始まった。

 

「今日は大半の生徒が体調不良で学校休むと連絡があったけど、今日はいつも通り授業するからな」

 

先生の言う通りいつも通り授業が行われる。

調理実習で隣のクラスとの合同授業の時も隣のクラスの人間の大半がいなかった。

 

「じゃあ、日和ちゃんのクラスも休んでる人多いの?」

 

そはらが親友の風音日和に尋ねる。

この風音日和は元はシナプス人であったが、諸々の事情でエンジェロイドに改造されたいわば改造人間である。

 

「はい。皆さん、体調が悪いとかで……」

「どうしたんだろうな?」

「それはさすがに……」

 

そんなこんなでその日の学校の授業が終わる。

 

「何、そんな夢を見たのか」

 

新大陸発見部の部室で部長の守形英四朗と守形の幼馴染で生徒会長の五月田根美香子、イカロス達と同じエンジェロイドのアストレアに今日見た夢を話す智樹。

 

「はい、そうなんっす」

「守形、何かわかる?」

(……ダイダロスは一体智樹に何を伝えたかったのか……)

「守形君?」

「憶測でしかないが、夢を見ることが危ないと言うことだな」

「夢を見ることが危ない?」

「ああ、それ以上のことはよく分からん」

「夢を見ることが危ないって桜井君、大変ね~」

「え!? 俺限定!?」

 

智樹は少し戸惑う。

 

「ニンフ」

「なに?」

「ダイブゲームをしたいが、いいか?」

「いいけど……」

 

守形はニンフに貸してもらっていたダイブゲームをするための装置をニンフに返して、ニンフに操作をしてもらうが……。

 

「なにこれ!?」

「どうしたんですか? ニンフ先輩」

 

ニンフが驚きの声を上げ、アストレアが尋ねる。

 

「どの夢にも入れない!? 智樹だけじゃない。そはらの夢にも守形の夢にも……。

それだけじゃない。地蟲(ダウナー)の夢全部に……」

「人間すべての夢に入れない?」

「以前、桜井君の夢にプロテクトがあったって言ってたけど……」

「そのプロテクトとは全く別物……。ダメ! 私でも破れない!」

 

ニンフがお手上げ状態になる。

 

「ニンフさんでもダメなんて……」

「相当固いプロテクトがされてるんだな」

 

そこに臨時教員として空見中学で働いている秋山総司郎がやって来る。

秋山は異世界の人間で体の内に『邪悪なる闇の魂』と呼ばれるものを秘めており、その力でこの世界にやって来た。

またその力は異世界に行くだけでなく様々なことを起こしたり、とんでもない能力を使うことも出来る。

しかし秋山はあまりに異世界で力を使いすぎるとその世界を崩壊させる恐れがあるので、秋山はあまり使いすぎないようにしている。

ちなみに最初にこの世界に来た時は短い黒髪であったが、現在は白い長髪である。

 

「秋山先生」

「何があったんだ? かなり深刻そうな顔だな」

 

ニンフはさっきまでのことを秋山に話す。

 

「なるほどな」

「どうにかならない? あんたの力で……」

「…出来んこともないけど、今は様子見をした方がいいと思うな」

「なんで?」

「その時じゃないと俺も介入しにくいからな。

とりあえず夢を見るのは危険ってことだろ?

じゃあこれやるよ」

 

秋山がそう言って枕カバーを召喚して、智樹達に渡す。

 

「枕カバー?」

「ただの枕カバーじゃないぞ。そいつは夢を意図的に見せないようにする能力がある。

ダイダロスには悪いが、ひとまずはこいつで防いでくれ」

「分かりました」

「とりあえずは今日は解散していいんじゃないのか?」

 

秋山の言葉を聞いて一同は今日の集まりを解散した。

 

 

そして翌日になり、智樹達は普通に学校に行った。

 

「本当に夢見なかったね」

「不思議だよね、あの枕カバー」

 

智樹達が教室に行ってみると昨日以上に空席が目立っていた。

 

「休んでる奴多くね?」

 

それからしばらくしてホームルームが始まる時間になるが、教室にやって来たのは担任の先生ではなく臨時教員である秋山であった。

 

「あれ? 秋山さん」

「なんか休む人が生徒だけじゃなく先生にも出てきた」

「先生にも……」

 

生徒達がざわめきだす。

 

「と言うわけで学校は今日は休みだ。帰っていいぞ」

 

こうしてその日の学校は学級閉鎖ならぬ学校閉鎖となり、休みになった。

 

「智樹」

 

帰ろうとする智樹達のところに3年生の守形、美香子と臨時教員の秋山がやってくる。

 

「話がある」

「え?」

「とりあえずはお前の家に全員行くぞ」

「なんで俺の家!?」

「一番集まりやすいからだ」

 

こうして智樹、イカロス、ニンフ、アストレア、そはら、日和、守形、美香子、秋山は智樹の家へと向かった。

 

「それで話って…」

「今日のこと、おかしいと思わなかったか?」

「おかしいって……」

「学校を休んでることだ。それも生徒だけじゃない。教師の半分も休んでるんだ。

しかも何にも連絡なしでな」

「連絡がない?」

「ああ。しかも昨日休んだ生徒の親御さんからも連絡がなかったんだ。昨日はちゃんと連絡してきたのにな…」

「それってどういうことなんですか?」

「異常事態ってところだ」

 

秋山がそれとなくテレビの電源をつける。するとテレビでは緊急ニュースをやっていた。

 

『世界各地で人々が目覚めないと言う現象が起きています』

「何よ、これ…」

『実際どのような状況かご覧ください』

 

ニュースキャスターがモニターを見せる。

 

『信夫! 信夫!』

『お母さん! お母さん!』

 

映し出された人全員が嘆いていた。

 

『何故このようなことになったのか現在、起きている学者達が一生懸命……』

 

秋山はテレビの電源を切る。

 

「なんなの、あれ……」

「ダイダロスの言葉から考えるとこいつは……」

 

そんな時であった。突然桜井家の家の屋根から何かが落ちてくる。

 

「うわっ!」

「なんだ?」

 

全員が落ちてきたものを見てみる。するとそこには……。

 

「お兄ちゃ~ん」

 

なんと落ちてきたのは第二世代エンジェロイドのカオスであった。

カオスも桜井家に居候しているのだが、少し前に里帰りとしてダイダロスの元で再調整をしていたのだ。

 

「カオス……」

「お兄ちゃん、大変だよ!」

 

カオスがいつになく焦っている。

 

「どうしたんだ?」

「夢が侵略されてるよ!」

「はぁ?」

 

 

 

 

 

そらのおとしもの+   超帝国の新天地(ドリーム)

 

 

 

 

 

「カオス、どういうことなんだ?」

「それがね……」

「人間の夢によく分からない連中が、侵略してきて夢の世界を支配しようとしている。

お前と言うかダイダロスが言いたいのはそういうことだろ」

「秋山お兄ちゃん…」

「え? どういう……」

「実は昨日の夜、俺が色々調べてな。どうも夢の世界が異常事態になってるんだ」

「具体的には?」

「本来、眠る時に見る夢ってのは個別だ。皆が同じ夢を見ることなんてまずない。

だけど、一つにして支配しようとしてる奴がいる」

「それって……」

「こことはさらに別の世界……いや、夢の中にしかいない存在『アステヅーマア』って奴がやってるんだ」

「『アステヅーマア』?」

「そういう名前の存在ね。そいつが本来個別だった夢を一つの世界として形成させたんだ」

「形成させたって具体的にどんな世界なんだ?」

「すごく簡単に言えばよくあるRPG的な世界だな。

そんでもってそいつが『ネガミス帝国』と言うのを作ってその作った夢の世界を完全に支配しようとしてるんだ」

「支配してどうするの?」

「それと今回のこととどう関係してるんだ?」

「そいつが夢の世界を支配する。つまりは寝てる人間を支配することになる。

まあ俺も難しいことは分からんし説明が下手だからな、端的なことしか言えんから心して聞けよ。

そいつは寝てる奴全員の夢を一つにしてその世界を作り出し、そしてその世界に飲み込まれた人間は起きることができない」

「なるほど、そういうことか」

「まだこの世界の人間全員じゃないが、時間の問題だな。もしかしたらこの世界とは別の世界にも影響が出てる可能性があるな」

「そんな大変なことが……」

「でも秋山先生、どうやってそこまで調べたんですか?」

 

日和が皆が思っていた疑問を尋ねる。

 

「簡単さ、俺が一度その世界に行ってきたからだ」

『ええええええ!?』

「でもその世界に行ったら起きれないんじゃ……」

「俺はなんだと思ってるんだ? 俺は人間でも普通の人間とっくに超えてるんだぜ。

精神攻撃とかそう言った類は効かないのさ。そんでもって昨日寝ることで何とかその夢の世界に入って来て、その夢の世界に囚われた人達から色々聞いてきた。

そん時にその夢の世界で何が起こってるのか聞いた。そんでもって夢に囚われた人達は何かしらRPGみたいに適当な役回りを持ってたな」

「ふぅ~ん」

「秋山先生ってどんな役だったんですか?」

「俺は役なんてないよ」

「え? でもその世界に行ったら役回りがあるんじゃ?」

「俺は基本的にどの世界言ってもイレギュラーな存在なんだ。この魂が元あった世界以外はな……」

 

秋山が意味深なことを言う。

 

「まあそんなこともあってな適当に探ることが出来た。そんでもって今回の事態を知ったってわけだ」

「あれ? 秋山さんの力でぱっぱとやっつけちゃえばいいんじゃないんですか?」

 

アストレアが短絡的なことを言ってくる。

 

「そりゃあ俺の力があれば簡単に『アステヅーマア』を倒したり、『ネガミス帝国』なんか潰せるさ。

たださあ…さっきも言ったように俺はどの世界でもイレギュラーの扱いだ。

そんなイレギュラーな奴が好き勝手やったら世界が崩壊しちまう。

だから俺が潰しちゃダメなんだ。…かといって、夢の世界に強制的に取り込まれた人間じゃ『アステヅーマア』は倒せん」

「じゃあどうすればいいのよ?」

「俺の力使って、その夢の世界に行けば何とかなる」

「行けばって……」

「その世界に行けば起きれないんじゃ?」

「だから俺をなんだと思ってるんだ? 俺の力使えば世界中の人間は無理でもお前達くらいなら簡単に起こせるさ。

それにそうしないための装置をすでに作っておいたぜ」

 

秋山がその装置の一式を居間に召喚する。

 

「なにそれ?」

 

ニンフが尋ねる。

 

「名前は特に考えてない。こいつを使ってその夢の世界の様子を見たりできる。

とりあえずは布団を用意してくれ。とりあえず……智樹、そはら、守形、美香子分な」

「分かりました」

 

イカロスが布団の用意をする。

 

「え? ちょっと! あんたは!?」

「俺はこいつをいじったりしたいからな。それにもう少し様子を見たいからな。俺の本格介入はそれからでいいだろ。

安心しろ、お前達がやばくなったら速攻で起こしてやるから」

「それならいいんだけど……」

 

智樹が不安がりながらもとりあえずは秋山を信用することにした。

そして智樹、そはら、守形、美香子が布団に入る。

 

「それじゃあ、夢の世界にご案内するか」

 

秋山が装置をいじる。すると人間を眠らせる特殊な催眠音波が流れ、智樹達は眠りにつく。

 

「マスター達、大丈夫なんでしょうか?」

「その様子を見るためにこの装置がある」

 

秋山が装置についてるモニターを点ける。

すると夢の世界が映し出される。

しかし画面は暗いままであった。

 

「これって誰から見た映像なの?」

「え~と……智樹のになるんだ」

「お兄ちゃん、何になってるのかな~?」

「とりあえず意識があの夢の世界に行ってる最中になるのか。……もう少ししたら普通に映像が出るぞ………って出た出た」

 

モニターに映像が出てくる。

 

 

「ここは……」

 

智樹が気が付くと辺りは森で広がっていた。

 

「なんだここ? 森……」

「とりあえずマスターはその森を進んでください」

「うん? この声……」

 

智樹は突然声がしてきたので辺りを見渡すが、誰もいない。

 

「気のせい……」

「マスター」

 

すると突然智樹の前にイカロス達が映っているモニターが現れる。

 

「どあっ!」

「大丈夫ですか? マスター」

「マスターって……痛っ!」

 

智樹は頭を抑える。

 

「マスター!?」

「大丈夫だ」

 

心配するイカロスに秋山が声をかける。

 

「この世界に行けば元の世界の記憶がないからな。

俺達がこうやって介入したから元の世界の記憶も入って来る。今の智樹はその記憶が入ってる最中なだけだ。害はない」

「イカロス……」

「マスター……」

 

智樹が元の記憶を手に入れ、イカロスの名前を呼ぶ。

 

「トモキ! 大丈夫!?」

「お兄ちゃん!」

 

イカロスの映し出されるモニターにニンフやカオスも出てくる。

 

「ニンフ、カオス」

「大丈夫のようね」

「アストレア…」

「さてと、それで智樹、とりあえずお前はこのまま森を突き進め」

「何か出てきたりしない?」

 

智樹が不安そうに秋山に尋ねる。

 

「大丈夫だ。……まあお前にとっては魔物とかよりもおっかないのはいるけどな」

「魔物よりおっかないって……」

「健闘を祈る」

 

秋山がモニター通信を一方的に切る。

 

「あ! ちょっと! ……たく、魔物よりおっかないものってどういうことだ? しかも俺にとってって……」

 

智樹はしぶしぶ森の中に入っていく。

 

「いったい何が……」

 

そんな時であった。

突然猪が智樹の前に出てくる。

 

「どわああああああ!!」

 

智樹は驚きの声を上げる。

すると突然猪の上に一人の女性が猪のやって来た茂みからやって来て、猪を倒す。

 

「これでよしと…」

「仕留めたか?」

 

すると先ほどの茂みから今度はメガネをかけた男が出てきた。

智樹は冷静に二人を見てみる。そして二人の正体に気づく。

 

「守形先輩に会長!」

 

そう。現れたのは守形と美香子であった。

 

「誰? あなた?」

「俺達はそんな名じゃないぞ」

 

元の世界の記憶がないので守形と美香子は何のことか分かっていない様子。

そこに………。

 

「よう」

 

秋山のモニターが守形達の前に映し出される。

 

「お前は…っ…」

「これって…」

 

二人の元の世界の記憶が戻る。

そして秋山は一応の説明をした。

 

「そういえばそはらはいないんすか?」

「見月さん? いいえ」

「俺達がこの世界に来た時から見ていないな」

「そうっすか。イカロス、そっちの方で何かわかる?」

「イカロス、そっちのダイヤルをいじれってくれ。ニンフはそっちのスイッチ押して。カオスはそっちのモニターで座標チェックを頼む」

「これですか?」

「これね」

「え~と」

 

イカロスとニンフとカオスは秋山の指示通りに動く。

 

「はいは~い! 私は何をすればいいですか!?」

 

アストレアが元気よく尋ねる。

 

「………」

「…………」

「……無視無視」

 

秋山が小さくそんなことを言う。

 

「あはっ……」

 

アストレアが思わずそんな声を漏らす。

 

「これでいいの?」

 

モニター座標を見ていたカオスが尋ねる。

 

「え~と……それでいいな。どれどれ……あ、こいつは………」

「どうした?」

「なんか、馬にしがみついてるな」

「は?」

「そっちにモニター映してやるよ」

 

秋山が装置を操作して夢の世界にいるそはらが映っている映像を流す。

するとモニターには暴れるように走っている馬に一生懸命にしがみついて振り落とされないようにするそはらが映し出された。

 

「なにしてんだ、そはら」

「見月さん、馬に乗れないのね~」

「そもそも馬に乗る機会ないすっから」

「でもこの見月さん、男装してるように見えるけど?」

「言われてみれば……」

 

そはらの格好は男の剣士のような格好をしており、大きな胸はどうやったのか不明だが、男の平らな胸のようなように見えた。

 

「え~と……、ニンフ、今度はそっちにある黄色のスイッチ押して」

「分かったわ」

 

ニンフがスイッチを押すとその夢の世界のそはらの設定表が映し出された。

 

「なになに……こいつは驚きだ」

「どうしたの?」

「どうやらそはらはその夢の世界にある国のお姫様だぜ」

「見月さんが…」

「お姫様ーーー!?」

 

そのことを聞いて一番驚いたのは智樹であった。

 

「そんでもって、男装してる理由は、親父さんが『アステヅーマア』を倒した男を婿にするとか言ったらしくそれが嫌になって抜け出しちまったそうだ」

「魔王倒した男と結婚って……」

「その親父さん役、数学の竹原だぜ」

「あの竹原ーーーーー?」

「そう、あの竹原」

「そりゃあ、なおさらそはらが嫌になるわけだ」

「とりあえずそはらの現在地はお前達とはかなり離れてるな。すぐに合流は無理そうだな」

「お前の力でどうにかならんのか?」

「ここからだとどうにもな……。まあそんなことより、今はお前達の方だな」

「俺達がどうした?」

「その森には『アステヅーマア』を倒せる武器があるみたいだ」

「え? 敵のボスを倒せる武器?」

「ちょっと待て」

 

守形が止める。

 

「何故そのようなものが存在する? そんなものが無ければ『アステヅーマア』と言う存在は永遠に不滅じゃないのか?」

「そうなんだけどな……。どうも俺が調べた時に俺もおかしいと思ったんだが、そいつにも俺みたいに欠点があるみたいだ」

「欠点?」

「どんなに大きな力を持ってる奴でも絶対欠点がある。

俺の場合は異世界じゃ完全なイレギュラーな存在で世界に干渉しすぎてはいけないと言う欠点がある。

となると『アステヅーマア』の欠点は自分の作り出した世界に、自分を倒せる武器とかをどこかに置いてく必要があると言ったところだ。

まあそいつが自分を倒せる存在はいないとたかくくってるって可能性もあるけどな。

とは言っても対策とかはされるだろうがな……」

「不憫ね」

「まったく……。まあとにかくこの森の奥の大きな木にあるみたいだ。探しに行ってくれ」

 

秋山がモニターを切る。

 

「あ、ちょっと!?」

「とにかくこの森の奥に行ってみるとしよう」

「大丈夫すか? さっきのような猪つうか、獰猛な魔物とか……」

「大丈夫よ。何かあったら桜井君を置いて逃げるから~」

「俺置いて!?」

 

美香子の怖い発言に困惑する智樹。

そんなこんなで三人は森の奥へと進んでいく。

進んでいく中、一応凶暴な動物などが来たりしたが、何とか逃げたりして、森の奥の大きな木にたどり着く。

 

「ここだな」

「本当にでかいっすな~」

「それでどうすればいいのかしら?」

「……」

 

守形が木の周りを叩いてみる。

ある場所を叩いてみると空洞を叩いたような音が聞こえてくる。

 

「!」

「音が違う」

「空洞ね」

「ああ」

 

守形が空洞部分の木を細かく叩いてみる。

すると何故かスイッチのようなものがあった。

 

「これだな」

 

スイッチのようなものを押すと、空洞の音が聞こえたところが開かれる。

 

「おお!」

「この奥にあるんだな」

 

三人が木の中に入っていき、少し進んでいくと目の前に一つの宝箱があった。

 

「あれっすかね?」

「気をつけろ、罠かもしれん」

「それじゃあ……」

 

美香子が智樹の方を見る。

 

「……まさか」

「いってらっしゃ~い♪」

 

智樹が強制的に宝箱を開ける係になった。

 

「くそ~」

 

智樹はしぶしぶ宝箱を開ける。

すると宝箱からまばゆい光が放たれる。

 

「うわ!」

「! 智樹!」

 

光が広がり、三人を包み込む。

 

 

『よくぞ来た、選ばれし者達よ』

「なんだこの声は?」

「あの宝箱から?」

『我はこの夢の世界を管理する者』

「夢の管理者?」

『そう。だが、「アステヅーマア」はこの世界から生まれた存在であった存在でありながら全ての夢を一つにして夢の世界全てを支配しようとし始めたのだ。

その手始めに奴は我を封印した』

「その場所がここって……」

『この森は少し前まで封印されており、誰もこの森のことを認識できてなかった。

だが、異世界を行き渡ることのできる「闇の神の魂を持つ者」がこの世界に一度来たことにより、封印が解かれたのだ」

「『闇の神の魂を持つ者』って……」

「秋山のことだな。あいつは最初に俺達と会った時にそう言っていたからな」

「それでどうすれば『アステヅーマア』って奴は倒せるんだ?

『奴を倒すには我の力が必要。だが、我自身に施された封印は奴を倒さない限り解かれることはない』

「じゃあどうするんだよ!?」

『我の力をお前達に分け与えればいい。だが今の我の力では一人にしか力を与えることしかできない』

「一人ね」

『我は我を封印していたこの箱を開いたお前に力を与えようと思う』

「俺!?」

 

智樹が自分を指差す。

 

『そう、お前だ』

「でも俺、特別な力とかそんなもの……」

『心配ない。我の力を持ってすれば信じる力がそのままお前の力となる』

「信じる力…」

『そうだ。お前にはその信じる心があると我は見抜く。そしてその力を引き出すための武器をお前にやろう』

 

すると智樹の前が強く光だし、目の前には金色の篭手が現れ、智樹の両手に着く。

 

「これは…」

『それは今の我の力を凝縮し、お前に合う武器として具現化させたもの。名前はお前の方で考えろ』

「俺が決めるのか……」

『………闇の神の魂を持つ者よ。聞いているであろう』

 

夢の管理者が尋ねると秋山達が映し出されたモニターが現れる。

 

「なんだ?」

『この者達の助け……頼むぞ』

「言われるまでもないな。それでこの後はどうしたらいい?」

『ひとまずはこの者達を一度現実世界へと起こせ。

そして準備が整ったらこの森から南の方にある「鬼の谷」へ行け。

そこで「モーデン」と言う鬼と会い、その者から力を貸してもらえ。

そいつはこの世界に取り込まれた人間ではなく、元からこの世界にいる存在だ』

「……一筋縄でいかない気がするが?」

『当たりだ。奴は自分に近づく者をことごとく銅像にしているからな』

「銅像!?」

『奴は普段は右目を閉じているが、右目が開かれるとそこから放たれるビームで生き物を銅像へと変えてしまう。

くれぐれも気を付けるんだぞ。では……』

 

夢の管理者の話が終わると辺りを包んでいた光が止み、空間は元の状態に戻る。

 

「戻ってきた……」

「ひとまずはお前達を起こすぞ。そこでじっとしてろ」

 

秋山がモニターを切る。

 

「それでどうするのよ?」

 

ニンフが秋山に尋ねる。

 

「簡単なことだ」

 

秋山が寝ている智樹達のところに近づき、手をかざす。

すると秋山の手から何かが放たれ、その放たれたものにより智樹達が目を覚ます。

 

「う……う~ん」

「おはようございます、マスター」

「実はまだ午後の4時だったりする」

 

秋山はちょっとした一人ツッコミをする。

 

「なんかとんでもないことになっちまったな」

「そうだな」

「え? 何?」

 

まだ夢の中で何が起こったのか分かっていないそはら。

 

「見月さん、あの場にいなかったから分からないのね~」

「それじゃあさっきまでのことを見せてやるよ」

 

秋山が装置のモニターでそはらに智樹達が夢の世界で体験したことを見せる。

 

「そんなことがあったんだ」

「智樹達はともかく、お前は記憶が戻ってない状態でこっちに戻って来たから、次どんな役回りであの世界に行くか分からないからな」

「え? そうなんですか?」

「まあこの装置を使えばさっきと同じ状態で再開できるけどな」

「……」

「守形君、どうしたの?」

「いや、あの夢の管理者が言ってたことが気になってな」

「どこがっすか?」

「秋山が来たことで森の封印が解けたと言ってたな。それは何故なんだ?」

 

守形が秋山に尋ねる。

 

「簡単な話だ。俺の中に溜まってた崩壊エネルギーの影響だ」

「崩壊エネルギーが?」

「ああ」

 

秋山は世界にとってイレギュラーな存在であるため、干渉しすぎるとその世界が崩壊する。

しかしその崩壊を防ぐ方法の一つとして秋山は世界を崩壊させるエネルギーを自身の中に封じることが出来る。

ただし崩壊エネルギーを秋山の中に入れると体内で崩壊エネルギーが発散されるまで秋山は一部の能力が使えなくなり、また別の能力の性能も落ちる。

 

「昨日夢の世界に行ったって言ったろ?

俺はその時、肉体だけをこの世界に残して精神や闇の力を夢の世界に持ち込んだ。

その持ち込んだ中に崩壊エネルギーあったんだ。

んで、俺も無意識のうちにその崩壊エネルギーが夢の世界に漏れ出したんだな。

崩壊エネルギーは世界を崩壊させるからな。そのエネルギーの影響として、本来その世界で起こらないことが起こるんだ。

まあ起こらないことってのはほとんどが悪い出来事なんだけどな。

今回の場合はその夢の世界を作り上げた『アステヅーマア』にとって悪いことが起きたんだな」

「すごい偶然ね」

「正直俺も予想できてなかった」

 

秋山は少し苦笑いをする。

 

「まあそれはそうとして、晩飯食ったりしてきちんと寝る時にまた行くとしよう」

「俺達だけどな」

 

智樹が冷静にツッコム。

 

「安心しろ。次はイカロス達も行かせる」

「イカロスさん達を?」

「だがイカロス達は眠ることが出来ないから夢を見ることすらできないだろ」

「カオスちゃんは除いて……」

 

エンジェロイドは眠ることが出来ない。

そのため夢を見ることが出来ず、ダイブゲームも行えない。

しかしカオスは例外で夢の中に介入することが可能である。

 

「大丈夫だ、イカロス達を行かせる方法はとっくに見出してる」

「その装置で?」

「いや、こいつとは別もんだ。その前に飯にしてからだな」

 

それからしばらくして皆で晩御飯を食べ、お風呂にも入り準備万端の状態になる。

 

「それでどうやってイカロス達を夢の世界に行かせるんだ?」

「こいつだ」

 

秋山がイカロス達を行かせるためのものを召喚する。

 

「なんですか? それ」

 

秋山が出したのは閉じたWの文字に見える特殊な機械であった。

 

「こいつはな、俺が見てた特撮テレビであった方法だ。これとこれを使う」

 

秋山はUSBメモリのようなものを2つ召喚する。

 

「その特撮の物とは少し違うけど、これが送信用、これは受信用。そんでもってさっき出したのはきちんと受信するための物だ。

特撮であったのはこいつを使って二人で一人のヒーローに変身するんだが、ある話である装置を使った人が夢の中に閉じ込めて起きなくさせる怪人が出てきてな。

それでヒーローに変身する二人は装置を使う際に、精神を一人の人間に転送させた状態にさせたんだ。

そうしたら一人の人間の体に二人の人間の精神が入った状態で夢の中に行ったんだ。

その結果、精神を転送させた人間は夢の中でイレギュラーな存在になって、怪人を追い詰めそうになるんだが、現実世界で別の怪人に襲われて失敗したんだけどな。

これはそのヒーローが使って物をこの夢に行けるように作ったものだ」

「なるほど、それを使ってイカロス達の精神を俺達の誰かに転送させて一緒に行かせると言うことなんだな」

「そういうことだ。それとな……」

 

秋山はメモリとドライバーをそれぞれ7つずつ召喚する。

 

「これで四人分だ。イカロス、ニンフ、アストレア、日和分。カオスは自力で行けるからな。別にいいだろ」

「うん」

「とりあえずお前達、ベルトを着けろ」

 

秋山がベルトになるドライバーをカオス以外の全員に手渡し、全員ドライバーを着ける。

 

「とりあえずイカロスは智樹、ニンフはそはら、アストレアは美香子、日和は守形のに対応してる。

それとメモリの力でイカロス達はこの現実世界と変わらない力で居られるから安心しろ」

「そう」

「それじゃあ頑張ってくれ。それとカオス、お前は別件があるから少し待機してくれ」

「うん」

「それじゃあ……変身!」

『え?』

 

秋山の変身発言に一同が一瞬戸惑う。

 

「ああ、その道具使ってる特撮ヒーローがメモリを差し込むときに言うセリフな。

イカロス達、エンジェロイド組はメモリをドライバーに入れて」

「はい」

「分かったわ」

「はいはーい! どっちの方に入れたらいいんですか?」

「自分から見て右側に入れろ」

「こうですね」

 

イカロス、ニンフ、アストレア、日和がメモリを挿入すると四人は倒れる。

 

「イカロス!?」

「大丈夫だ、意識がそのドライバーに行っただけだ」

 

秋山がいつの間にか新しく用意していた布団にイカロス達を寝かせる。

 

「それじゃあ次はお前達だ。……よしと」

 

秋山が装置をいじるとまた特殊な催眠音波が流れ、智樹達は眠りにつく。

 

「これでよしと」

「ねえねえ、秋山お兄ちゃん、私は何したらいいの?」

「とりあえずお前は直接行ってくれ」

 

秋山が装置をいじるとダイブゲームの時に出てくるゲートが出現する。

 

「これで直接夢の世界に行ける。ただ、相手に簡単に悟られたくないから智樹達とは遠い場所に転送する。

智樹達の位置は俺が教えてやるから安心して行きな」

「うん、分かった」

 

カオスはゲートをくぐり、カオスがゲートをくぐり終えるとゲートは消える。

 

「とりあえず俺は様子見だな」

 

秋山が装置をいじりモニターを映し出す。

 

 

 

智樹達が2回目の夢の世界に行く少し前。

暗雲がたちこもる場所に城が一つあった。

その城とは夢の世界を作った存在『アステヅーマア』の居城であった。

 

「むむむ……」

「アステヅーマア様、どうなさいましたか?」

 

老人のように老け、魔道士の姿をした魔物の一人がアステヅーマアに尋ねる。

 

「ズモーか。どうやらあの森の封印が解けていたようだ」

「あの森の封印が!? 何故ですか?」

「どうやら少し前に来たあのイレギュラーな奴が原因だったようだな」

「あのイレギュラーとは?」

「…まあいい」

 

アステヅーマアが質問に無視する。

 

「仮に奴みたいに自覚できたとしても私を倒すことは出来まい」

「魔王様、油断はなりませぬ。森の封印が解かれたと言うことは夢の管理者の力を手に入れた可能性もありますぞ」

「……そうだな」

「大丈夫ですわ、魔王様」

 

アステヅーマアのところに三人の女性と二人の男がやって来る。

 

「我々『影の月』部隊がいる限り大丈夫でしょう」

「それにうちらがおるん。そんな奴ら……」

「ぶっ飛ばしてやるけん」

 

女性達はそれぞれ鉤爪、斧、大砲を取り出す。

 

「ふん、頼もしいな」

「それじゃあうちらは適当にしておきます」

「我々も訓練に戻ります」

 

女と男達はその場を去っていく。

 

「魔王様、よろしいのでしょうか? あやつらはこの世界に取り込まれた人間達」

「構わん。戦力になるから使ってやるまでだ。使えなくなれば捨てればいいだけだ」

「さようでございますか」

「ふふふ、私を滅ぼそうと言う愚かな行為……身を持って知るがよい」

 

 

 

 

中編へ続く

 

 

 

 

 

 

 

中編予告(?)

 

 

 

???「おい、あいつらはどうした?」

???「それが分かりません」

???「おい、あれ出してくれ」

???「全然起きないな」

???「原因は……この世界みたい」

???「それじゃあ行くとするか。後よろしく」

???『はっ!』

 

 

 

 

???「なんであの三人起きないのよ?」

???「どうしたんだろ?」

???「大変です」

???「またお前か」

???「彼女達が起きないのは夢の世界に囚われてるからです」

???「仕方ない、行ってくるわ」

 

 

 

 

 

 


 
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