睨みあ……見つめ合う三人の乙女達。
周りに漂う死の空気。
とても重くて、言葉を発するのも躊躇われる。
だけど、ここで負けるわけにはいかない。アタシは勝ちに来たのだから。
「この前、アタシと明久くんはデートをしたわよ」
「「っ!?」」
まずは先制攻撃。これで二人の戦意を砕く。
「へ、へぇ……まぁ、デートくらいならウチもしたことあるし」
「そ、そうです! デートくらい私だって――」
うぐ……っ、先制攻撃のつもりが、思わぬカウンターをくらってしまったわね。
二人とも、明久くんとデートしたことあるんだ……へぇ、そっか。
これは後で明久くんに聞かないといけないわね。勿論、身体に直接……ね。
「しかも、そのデートでアタシと明久くんは手を繋いだのよ」
「「なっ!?」」
「更に密着するように腕を組んだり――」
「「っ!?」」
「あの時の明久くん、凄く嬉しそうな顔をしてたわね」
「「――ギリッ!」」
休むことなく攻撃を続ける。何度も何度も連続で攻撃していけば、あの二人もきっと
心が折れるだろう。そう、防御なんてアタシの趣味じゃないの。
攻めて攻めて、攻めまくるのよ!
「これはもう、明久くんはアタシの物ってことでいいんじゃないかしら?」
「「 」」
アタシに完全勝利。もう声を出すことも出来ないみたいね。
これで、心置きなく明久くんといることが出来るわ。
「………………わよ」
「え……?」
勝利を確信して立ちあがろうとした瞬間、島田さんが小さく何かを言った。
「ウチはアキとキスをしたわよ」
「――なっ!?」
し、島田さんと明久くんがキスをした……ですって!?
「キスの前では、腕を組むとか弱いわよね」
ニヤニヤとした表情で語る島田さん。
悔しいけど、確かにキスはかなり強い。だけど、ここで引くわけにはいかないわよね。
前回は逃げ帰ったけど、今回は違う。
ちゃんと勝って家に帰るんだから!
「あ、あの……私、私だって――明久くんを抱き締めたり、キスをしたりしましたよ!」
姫路さんからの攻撃。
まさか、島田さんだけじゃなく姫路さんまで明久くんとキスをしたっていうの!?
アタシだけ……アタシだけまだキスをしてないじゃない!
これはさっきの件と合わせて、明久くんに問いたださないといけないみたいね。
「あんただけキスをしてないみたいだけど、これはもうウチか瑞希の勝利じゃないかしら?」
勝ち誇った顔の島田さん。まだ……まだ終わったわけじゃないわ。
最後の攻撃。究極の言葉をアタシは言い放った。
「明久くんに胸を揉まれたわ」
固まる二人の表情。そして余裕の表情のアタシ。
確かにまだキスはしてないけど、それは今度すればいいだけの話し。
胸を揉まれたのはただのアクシデントだけど、それを今ここで言う必要はない。
二人に勝つためならば、多少の嘘や誇張は必要でしょ?
「ごめん木下さん。ウチ、ちょっとアキに用事が出来たみたい」
「奇遇ですね。私もちょっと明久くんに用事が……」
勢いよく立ちあがる二人。どうやらこれから明久くんは二人にお仕置きをしにいくようだ。
「行ってらっしゃい二人とも」
「いくわよ瑞希!」
「はい! 美波ちゃん!」
ふふ、これで前回のリベンジは成功したわね。
ただちょっと明久くんには悪いことをしたかもしれないわね。
でも仕方がないでしょ? これは乙女の真剣な戦いなんだから。
それに――これはアタシからのお仕置きでもあるのよ?
ね、明久くん♪
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優子さんシリーズです。
今回は前回負けたあの二人へのリベンジです。
そして、どんどんキャラが崩壊していってるね。もう昔のキャラには戻れない……