真・恋姫†無双~赤龍伝~第70話「狩りへの誘い」
赤斗たちが修行に出てから、三ヵ月が過ぎた。
一時は平静を保っていた諸侯間の争いが、再び起きようとしていた。
曹操は大軍を率いて、劉備のもとに攻め込んだのである。
孫呉にも曹操からの使者が訪れて、孫策に書簡を渡していった。
冥琳「曹操はなんと?」
玉座の間には、雪蓮に呼ばれた冥琳と藍里がいた。
雪蓮「簡単にいうと、私とあなたで狩でもしない? だって」
冥琳「…獲物は劉備だな。降伏しなければ私たちも滅ぼすということね」
雪蓮「そうでしょうね」
藍里「どういたしますか?」
冥琳「曹操に降伏するか戦うか。内部でも割れるでしょうね」
そう言いながら冥琳は書簡に目を通す。
雪蓮「…………藍里」
藍里「はい」
雪蓮「赤斗たちを呼び戻してきてちょうだい」
藍里「わかりました」
冥琳「ここで風見を呼び戻す…か」
雪蓮「前に劉備への援軍を断って以来、同盟を破棄されるほどに今の劉備との関係は険悪。でも、再び劉備と同盟を組まないと、今の私たちは曹操には勝てない。悔しいけどね……」
冥琳「……確かにな」
藍里「赤斗様に同盟のための使者として、劉備さんの元に行っていただくのですね?」
雪蓮「赤斗なら、きっと何とかしてくれると思うの。だから、藍里お願いね♪」
藍里「はい! 準備を終え次第、出立致します!」
雪蓮の命により建業を出立した藍里は、半日ほど馬の上で揺られながら目的地までやってきていた。
藍里「この辺りだと亞莎ちゃんが言っていたんだけど……」
連絡役の亞莎に言われた場所まで来たものの、そこには赤斗たちの姿はなかった。
藍里「どこに行ったのでしょう?」
馬を降りて藍里は、赤斗たちを探し始めた。
一時間後……。
藍里「はぁはぁ……いったい、どこに行ったんでしょうか……」
赤斗たちを探していた藍里だったが、疲れ果てて地面に座り込んでしまった。
藍里「つ、疲れました……」
ガサガサ
茂みから何やら物音がした。
藍里「!! ……赤斗様、ですか?」
ガサガサガサ
物音はだんだんと大きくなっていく。
そして、茂みの中から男が三人姿を現した。
男A「おっ! 騒がしいと思ったら」
男B「ぐへへっ、いい女じゃねえか」
男C「お姉ちゃん、な~にやってんのかな~」
そう言いながら男たちは、藍里の身体を舐め回すように見る。
その視線に気がついた藍里は、懐にある護身用の短刀・風切羽の柄を握り、男たちを睨む。
藍里「…………」
男A「そんなに怖い顔するなよ」
男B「俺たちと遊ぼうぜ」
男C「くっくくくく…」
藍里「これ以上、近づかないで下さい!」
懐から風切羽を取り出して男たちの前に出すも、気にせずに男たちは近づいてくる。
そして、男たちの手が藍里に触れようとした時。
亞莎「藍里様っ!」
男C「ぐはっ!」
茂みの中から新たに亞莎が姿を現して、一人の男に対して飛び蹴りを喰らわせた。
藍里「亞莎ちゃん!」
亞莎「やはり藍里様! どうして、ここに?」
藍里「雪蓮様の命で、赤斗様たちを呼び戻しに来たんですが……」
亞莎「そうですか。なら早く赤斗様のところに参りましょう」
そう言うと亞莎は、まだ地面に座り込んでいる藍里に手を伸ばす。
男A「ちょっと待てよーー!」
男B「この女! よくもやってくれたなっ!!」
仲間をやられ、残った二人は怒りを爆発させていた。
亞莎「藍里様少々お待ち下さい」
藍里「亞莎ちゃん?」
亞莎「すぐ終わりますから。……“流水”」
亞莎の周りの空気が変わった。
藍里(この感じ、…赤斗様に似てる)
男A「おんどりゃーーーっ!」
男B「めちゃくちゃにしてやるぜーーっ!」
男たちは叫び声を上げながら亞莎に襲いかかった。
亞莎「遅いです」
そう呟くと亞莎は、男たちを流れるような動きで、あっと言う間に倒してしまった。
亞莎「ふぅーー。お待たせしました」
藍里「亞莎ちゃんスゴイです。今のは、まるで……赤斗様みたいでした。あっ、そうです。赤斗様はどこですか?」
亞莎「はい。今日は向こうの山まで行っています。私が一足先に戻ってきて良かったです」
そう言いながら亞莎は赤斗がいる山を指さした。
赤斗「…………」
山中で赤斗は気を練っていた。
赤斗「ふぅーーー」
大きく息を吐いた。
恋「……赤斗、終わった?」
近くでずっと見ていた恋が赤斗に声をかけた。
赤斗「うん。終わったよ」
恋「じゃあ、ご飯…食べよう」
赤斗「そうだね。シャオと嶺上は?」
恋「……先に行ってる」
赤斗「そうか。じゃあ早く行こうか」
恋「うん」
小蓮「赤斗ーーっ!」
赤斗「あれ、シャオどうしたの? そんなに慌てて、先に麓に行ったんじゃなかったの?」
小蓮「それどころじゃないんだって、藍里がやってきたの!」
赤斗「藍里が?」
小蓮「うん。今、亞莎と一緒に麓まで来てるの。雪蓮お姉ちゃんの命令で来たみたいなんだけど、何だかとても急いでいるみたいなの」
赤斗「わかった。なら、早く行こう」
赤斗は急いで山を降りる事にした。
藍里「赤斗さまっ!」
赤斗「藍里! ひさしぶりだね。今日はどうしたんだい?」
藍里「はい。実は……」
藍里は事の成り行きを説明した。
赤斗「そうか。曹操が……」
嶺上「赤斗どうするんだ?」
赤斗「…………建業に戻るよ」
藍里「あ、あの修行はよろしいのですか? それに虎徹様はどちらに?」
赤斗「……先生ならもういない」
そう言って赤斗は少しだけ暗い顔になる。
藍里「えっ!」
赤斗「僕の修行を終えて、天の世界に戻っていったよ。……だから、帰ろう。呉へ」
先程までの顔と違い、赤斗は笑顔で藍里や小蓮たちに言った。
藍里「はい♪」
つづく
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雪蓮のもとに華琳から書簡が届きます。
話は赤壁の戦いへと近づいていきます。
この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に
脱線することもあります。また、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。
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