?「あっちゃ~……これは下手打っちゃったわね~…」
袁術「――!! 今そっちに……」
?「来るんじゃない!!」
袁術「っ!!」
?「私はここまで……あなたはこっちに来てはいけないわ……、七乃…美羽を連れて早く逃げなさい」
張勲「しかし――様!! ………いえ、わかりました、美羽様こちらに……紀霊さんの部隊と合流して撤退します」
袁術「七乃!?」
?「ここは押さえる!! 早く行きなさい!!」
袁術「いやじゃ!! ――~~!!」
・
・
・
?「さて……これだけ時間を稼げば大丈夫でしょう……」
?「しかし、天はどれだけ美羽を嫌っているのかしらね……これからの事を考えるとあの子の周りは敵だらけ、私の所でさえ例外ではない……強く生きなさい美羽……」
?「愛しい、私のもう一人の娘……」
また今日という一日が始まる……
袁術「……………」
朝、袁術は自分の寝床の上で覚醒する。 まだ寝惚けているのか体を起こしただけで視点が定まっていない。
張勲「お嬢様~、朝ですよ~……あ、起きてらっしゃったんですね? 蜂蜜水飲みますか?」
そう言いながら部下である張勲は持ってきていた蜂蜜水を袁術の前に差し出す。 しかし袁術は蜂蜜水が入った入れ物を見るだけで……
袁術「七乃よ……朝からそんな甘ったるいもの飲めぬぞ…濃い茶を用意してたも」
しかめ面をしながら蜂蜜水を拒否する。 張勲は困った顔をしながら……
張勲「美羽様……駄目ですよ、他の者の目があるやも知れません……」
張勲の言葉に、はっとする袁術。 しばらく悔しそうな顔をして……
袁術「七乃よ、早く蜂蜜水をくれ」
張勲「は~い、お代わりもありますからね~♪」
袁術「うむ、よきにはからえ。 ぬはは~」
また今日という一日が始まる……
無能な君主を演じる一日が……
紀霊「袁術様……民への税収が重い気がするのですが……」
『そんな事はわかっておる……』
袁術「そうなのか? 七乃?」
張勲「そんな事無いと思いますけどね~……これ以上減らすと蜂蜜水の量を減らさないといけませんよ~?」
『民を苦しめるくらいならあんな物いらぬ……』
袁術「なんと!? それは駄目じゃ!! という訳でこのままじゃ!!」
紀霊「なっ!? そ、そうですか……」
紀霊が退出し、二人きりになった玉座の間。
袁術「七乃よ……」
張勲「わかってます……税収の抜け道を紀霊さんに助言するんですね?」
袁術「頼むぞ……」
張勲も退出し、独りきりになった玉座の間。
袁術「民よ……妾を恨んでくれ……」
早くに亡くなった親の尻拭いをするには無能を演じる袁術には困難だった。
孫策「あなたのお望み通り、黄巾党の本隊を殲滅してあげたわよ。 ……これで満足かしら?」
袁術「うむうむ、ご苦労なのじゃ」
孫策「それだけ? 労いの言葉じゃなくて、私が欲しいのは約束の履行なんだけど?」
袁術「約束? 何の事じゃ?」
孫策「……反故にしようと言うの? 時機がくれば呉の再建の為に兵を貸すと言う約束を」
『兵など貸せるならいくらでも貸してやるのじゃ……』
袁術「お~。 そう言えばそんな約束もしておったの~。 ……しかしじゃな、孫策よ。 妾にはまだ時機が来た様に思えんのじゃが?」
張勲「そうですよね~。 それに今は黄巾党が暴れ回ってて、そんな余裕もありませんし~」
袁術「張勲の言う通りじゃ。 ……まぁ、約束については追々考えて進ぜよう。 それで良いじゃろ?」
孫策「まぁいいわ……荊州に侵攻していた黄巾党の本隊は殲滅した。 分隊の方はあなた達で何とかしなさいな……」
『すまん……恩に着る…』
袁術「言われんでもすぐに殲滅して見せるのじゃ」
張勲「そうだそうだ~」
孫策「あっそ……じゃあお手並み拝見といくわ」
袁術「うむ……ご苦労孫策。 下がってよいぞ」
孫策「………」
苦虫を噛み潰した様な顔で下がる孫策。
張勲「お~、孫策さんの背中が怒りに燃えてますね~……」
袁術「のぅ、七乃……」
張勲「はい?」
袁術「孫策に兵を貸す事は出来んのか?」
張勲「出来ないことも無いですけど、黄巾党のせいで余裕が無いのは本当ですからね~……」
袁術「この際、孫策に呉を再建させてこの地も明け渡した方がいいんじゃないだろうか……」
張勲「だけどそんな事したら美羽様は今までの仕返しに殺されちゃうかもしれないですよ?」
袁術「今まで民を苦しめてきた罰として受けるならそれでも良いと思……」
張勲「じゃあ駄目です♪ 私は美羽様に生きていて欲しいですから♪」
袁術「七乃……」
『じゃがもう遅いか早いかで、結末は変わらんと思う……』
張勲「美羽様、今からでも無能な振りはやめて真面目な統治をしませんか?」
夜、寝ようと床についた袁術に張勲が提案をする。
袁術「味方が七乃しかいないこの状況でかえ? 親の代からの臣下は己の私腹を肥やす事しか考えておらんのだぞ?」
張勲「紀霊さんなら味方になってくれそうですけどね~……」
袁術「あやつは妾には勿体無い臣下じゃ……妾の元に何かいないで自分の力を発揮できる所に行くべきじゃと思う」
張勲「それは美羽様に言われて私が一度促したじゃないですか、そしたら紀霊さん」
紀霊『我、二君にまみえず。 袁術様はまだ幼いだけ……いつか正しく統治してくださると私は信じています。 その為ならこの命いつでも差し出す所存です……』
袁術「……………」
張勲「それに楽就さん達もいますよ」
袁術「あの4人か……」
張勲「これだけ味方がいれば大丈夫です、少しずつ……変えていきましょう?」
袁術「条件がある……天の御使いが妾の元に降りたら考える……」
天の御使い、『黒天を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。その流星は天の御使いを乗せ、乱世を沈静す。』 最近噂になっている人物。 もちろん根も葉もないもの……袁術は暗にこのままを貫くと言っているようなものだ。
袁術「この話は終わりじゃ、さぁ寝るぞ……」
その時、窓からまばゆい光が差し込む。 驚いた二人が視線を向けると流星が見える。 しばらく呆然とそれを眺めていて近くに落ちるのを確認する。
張勲「流星…………天の……御使い?」
袁術「っ!?」
張勲の呟く様な言葉に袁術は立ち上がり部屋を出る。
張勲「美羽様!?」
袁術「何をしておるのじゃ七乃!! 早く流星が落ちた場所に行くぞ!!」
張勲が追い付くのがやっとなぐらいの速さで走る袁術、その顔は苦しさと希望に満ちたのが入り混じった顔をしていた。
袁術「妾は……妾はもう無能を演じなくてもいいのかの? その機会を与えてくれるのか? 教えてたも……天の御使い様!!」
どうも茶々零です。
新連載『真・恋姫†無双 ~覚醒美羽様と行く袁術√~』プロローグ
いかがだったでしょうか?
元々お気に入りに登録していただいている方限定で公開していた話の修正版です。
皆様の後押しで今回の投稿に踏み切らせていただきました。
西涼の方は董卓編の大幅な修正の為、現在白紙の状態に戻しているため。
というのも一つの要因です。
「執筆遅いんだからやめとけよ」と言う意見もあると思いますが西涼もこちらも完結させるまでやめる気はないんでよろしければお付き合いください。
~結構重要な話~
いきなりですが一つアンケートを取らせて下さい。
袁術√で重要になってくる呉勢の立位置。
自分の中で選択肢が2つあります。
初期の呉勢は……
敵
味方
どちらかを選んでいただきたいです。
最終的に呉勢は同じ立位置になりますので問題ありません。
まぁもちろん過程は全く違いますが……
自分の読んでみたい方を選んでください。
明確な締め切りは設けませんが私が執筆を開始するまでとします。
でわまたお会いしましょう。
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皆様に後押しされて新連載でございますb