ある日の空見中学の放課後。
「先生、さようなら~」
「はい、さようなら~」
臨時教員として(一応)働いている秋山は普通に下校する生徒にさよならの挨拶をする。
そんな秋山の元にある女子生徒がやって来る。
「あの~、秋山先生……」
「うん?」
秋山が後ろを振り向くとそこには鈴のアクセサリーを長い黒髪の前髪につけ、背中には白い羽を生やした少女がいた。
この少女の名は風音日和。少し前まではこの空見中学に在籍する普通の女子生徒であった。
しかし事故で死亡。その時、シナプスにいた現実の風音日和が目覚めた。風音日和はシナプス人であったのだ。
そして絶望した日和を利用しようとしたイカロス達の元マスターは日和をエンジェロイドに改造。
操られた日和はそのエンジェロイドの力で空見町を襲った。
しかしイカロス達の奮闘、そして智樹との思い出を思い出し、何とか洗脳を解くことは出来たが、自身に仕掛けられた爆弾を止めることが出来なくなっていた。
その爆弾は時間干渉が一定の比率を超えると時空間消滅すると言うものであった。
日和は自身の力を振り絞って、何とか空見町や智樹達が爆発に巻き込まれないように上空へと飛び、爆弾は爆発し、一度は消滅した。
しかし消滅の際、異世界から帰ってきていた秋山が瞬間移動を使い、日和と共に消滅したため、消滅した空間には日和と秋山が居り、秋山は日和の持つ時間操作能力を利用して、何とか日和を連れて脱出。
日和は空見町へと本当に戻って来たのだ。
「あの、私本当にこれでいいんでしょうか?」
「これでいいって?」
「学校に居られること……」
「いいのいいの。もともとこの学校の生徒なら当たり前でしょ」
日和はシナプス人であったが、それは目覚めた現実の日和。
現実の日和はシナプスの装置で眠りについていて、その間は人間として作られた風音日和が地上にいた。
しかし地上にいた風音日和が死んだことで現実の日和が目覚め、エンジェロイドであるイカロス達以外の記憶から風音日和の記憶は消され、風音日和がいたとする証(写真など)からも姿を消した。
ただ例外として智樹だけは日和のことを覚えていた。
そのため日和は学校に在籍してないことになっていたのだが、秋山が世界の記憶から風音日和に関する記憶を取り出し、それを空見町全体に浸透させ、風音日和と言う存在を社会的に復活させた。
シナプスの装置はあくまで人間などから記憶を消し、世界から存在したことを抹消する。
しかし人々の記憶はともかくとして世界から消すのはあくまで表面上だけであり、世界の奥の記憶からは一度起こったことは消えることはない。
世界は一度起こったことは必ず覚え、その奥で完全に記憶し、忘れることはない。秋山はそれを知っていたためこの方法を取ることができるのだ。
そのおかげでシナプスの装置によって記憶を消されていたそはら達の記憶も元に戻り、日和は復学することは出来た。
日和がさっき言った「これでいいのかは」このことをさす。
ちなみに秋山が一度、この世界から長い時間離れた際に世界から自分の足跡を消したのは秋山の記憶が世界の表面上しか記憶されてないからであった。
「でもそのせいで秋山先生……力が……」
「いいんだよ、時間が経てばまた使えるようになるし」
秋山は日和の救出をしたり、日和の存在を復活させるために世界の記憶から日和の記憶を取り出したりした。
しかしそれらは本来なら世界崩壊を起こすことになりかねないものである。
秋山は世界崩壊のエネルギーを自身に溜めることで世界崩壊を阻止した。
だがその代償として秋山は体内に溜まった崩壊エネルギーが完全に無くなるまで一部の力が使えなくなった。
それでも秋山はあまり気にしてなかった。
「それで俺に話したいこと他にあるんじゃないの」
「そうなんですけど……」
日和が少しもじもじする。
「まあ帰り道にでも聞くか」
そう言って秋山は学校から出て行った。
「待ってください、先生」
日和はその後を追う。
『元生徒と臨時教員(?)』
帰り道を歩く秋山と日和。
「あの、秋山先生」
「俺のことは先生じゃなくて秋山でいいぜ」
「でも……」
日和は秋山を呼び捨てにするのに抵抗があるようだ。
「俺は元々この世界の人間じゃないし、臨時教員ってのも智樹達に近くにいるための身分だってだけだしな」
「そうなんですか」
「お前ももうこちら側の存在になったんだ。だから俺のこと先生って呼ぶ必要ないんだぜ」
秋山が笑い顔で語りかける。
「はい、秋山先生」
「だからな……」
秋山は頭をかく。
「けど、秋山先生はなんで私のこと知ってたんですか? 秋山先生も記憶が……」
「あ? 俺そういう記憶抹消とか精神攻撃とか一切効かないから」
「そうなんですか。…じゃあ秋山先生は私のこと最初っから……」
「ああ、どんな存在か分かってた。
ずっと前に昔のお前のような存在がそれなりにいた世界にいたことがあるからな。
その世界に似てるなと思っただけだ。とは言ってもお前が死ぬまで思い出せなかったけどな。
『どこの世界に似てたんだっけ?』ってくらいの認識だったな」
「そうだったんですか」
「そもそも俺はお前が智樹達と本格的に会った時、この世界にはいなかったからな」
「この世界に居なかったってどこに?」
「こことは別の異世界に行って色々してたんだ。
そんでこの世界に戻ってくる際に世界の記憶情報が俺の中に入ってきてお前のことをきちんと認識した」
「この世界に来ただけで私を分かったんですか…」
「俺は自分が興味を持った人間の周りの情報をその世界に入ったと同時に俺の頭の中に入って来るんだ。
そしたらいきなりお前が操られてイカロス達と戦闘中ってこと知って、カオスを拾って戻ってきたってわけだ」
「カオスさんってニンフさんより小さいあの女の子ですよね?」
「ああ」
「あの子もエンジェロイドなんですよね」
「そりゃあんな羽あるんだし、あんな炎出せたりするんだからな……」
そうして話が途切れる。
「………」
「ところでさ、お前自分のこと好きか?」
「え?」
「俺は正直自分のこと嫌いだけどな」
「どうしてです?」
「色々あるんだよ。だけど俺にとってはそれがどうしたって感じだな。
俺は俺の我を通すだけだ。そんでお前は?」
「私は……嫌いでした」
「なんで?」
「私も色々あります。けど今は好きです」
「それは智樹を好きになったからか?」
「……」
日和の顔が真っ赤になる。
「ま、いいさ」
秋山達に再び沈黙に入る。
しばらくして……。
「先生」
「今度はなんだ?」
「先生はどうして私を助けたんですか?」
「当たり前だろ。悪い奴に利用されてる人間助けるなんて…」
「でも私は……」
日和はそれ以上のことを言おうとすると……。
「それ以上言ってみろ。俺は結構自分勝手だ。だからお前の言ってること否定してやる!」
秋山は日和が何を言いたいのか分かっているため怒鳴るような声で日和に言う。
「シナプス人だから? エンジェロイドだから? ふざけんじゃねえぞ。
俺からしたらどっちも人間だ。人間じゃないってなら俺が否定してやる。
人間じゃないってのは人道から外れた奴のことだ。
それだったら俺はなんだよ?」
「あ……」
日和は思わず言葉を詰まらせる。
「普通の人間が時空間消滅に巻き込まれた普通死ぬだろ」
「………」
「っても俺はこんな力持ってても人間やめた覚え、これっぽっちもないぜ。
お前も……そういう口だろ?」
「…………」
「シナプス人だろうが、エンジェロイドだろうが、改造人間だろうが俺からしたら人だよ。
人の形をして悪いことしなかったらな。だからお前も人だ」
「…………」
日和は何か言おうとするが……。
「文句みたいなことを言うようなら叩くからな」
「先生……ありがとうございます」
「別に……」
秋山はいつもの調子で答える。
「…そういえばお前、野菜育ててるんだよな」
秋山が畑を見て日和に尋ねた。
「はい」
「俺野菜嫌いだけどな」
「先生、それ野菜に失礼ですよ」
「仕方ないだろ。子供のころから野菜系のほとんどは食えないんだからさ。
けど俺はともかく智樹の奴にはしっかり食わせな」
「!」
「とにかく俺が言いたいことは……これからも明るく生きろだ」
そうして秋山は一人で先に帰って行った。
「先生…ありがとうございます」
秋山の姿はなくても頭を下げてお礼を言う日和であった。
おまけ
作者「どうだったかな?」
一刀「公開から1週間でここまでするとはな」
作者「一応2回見たさ」
一刀「もう2回も見たのか」
作者「だが金がないから安い時とかじゃないと行けないのが難点だ」
一刀「まあいいんじゃない」
作者「とりあえずはこの作品を機に風音日和が解禁されました」
一刀「ゲームの隠しキャラみたいな言い方だな」
作者「ははは。ということで今後俺が書く『そらのおとしもの』シリーズは(元からとはいえ)完全な独自展開で行くぜ。でもアニメ3期ができたらそちらに合わせるようにしたいと思っている」
一刀「そんなことで大丈夫か?」
作者「いいんだよ。まあとにかくは今後の作品で日和も出るようにするからな!
それでは!」
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※今回の話は『劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀天使』のネタバレを含んでいます。
ただしそのネタバレの中身をこの作者の作品の独自展開と混ぜていたりします。しかしまだ見ていなかったりしてネタバレが嫌な方はここから先、見ることはお勧めしません。
見るとしたら、すでに見た人やネタバレでも構わない人でお願いします。
先ほども申し上げましたがこの作者の作品シリーズの独自展開となっておりますことをご了承ください。
またこの小説には作者の分身とも言えるオリジナルキャラクター(秋山総司郎)も出てきます。
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