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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第13話

葉月さん

少し早く書きあがったので投稿します。
今回はいよいよあの方が登場します!それ以外にも……?
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

それ以外にも、人気投票もあるので子のこの拠点が見たい!と言う人が居れば投票をお願いします。

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2011-07-01 00:41:49 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:12379   閲覧ユーザー数:8488

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第13話

 

 

 

 

【新たな仲間】

 

「うぅ~……ご主人様~仕事が多いよ~」

 

「そ、そんなこと言われてこっちも手一杯だぞ」

 

桃香と俺は執務室に篭り山積みになっている書簡やら竹簡を一つずつ片付けていた。すると、

 

(コンコン)

 

「失礼します。ご主人様、新しい案件をお持ちしました」

 

「ま、まだあるの?!」

 

「えー、愛紗ちゃんも手伝ってよ~、これじゃ今日中に終わらないよ~」

 

「そうしたいのは山々ですが、兵の調練もしなくてはいけませんので」

 

「そうだよね~。朱里ちゃんたちも忙しいみたいだし……あ~ん、お腹空いたよ~」

 

桃香は筆を置き机にへばりついてしまった。

 

平原の相になり桃香の夢に一歩近づいたのはいいのだが、流石にこの案件の量には苦笑いを浮かべるしかない。

 

まあ、それだけ前の相が仕事をしていなかったってことなのか、桃香に期待をしているってことなんだとは思うんだけど。

 

「桃香様、だらしが無いですよ」

 

「だって~」

 

「だってではありません!これでは他の者に示しが付きません!」

 

「う~、愛紗ちゃんが苛めるよ~」

 

「ははは。桃香、それじゃ食べてきていいよ。俺は桃香が戻ってくるまで出来るところまでやっておくから」

 

「本当?!やった~!ありがとうご主人様!」

 

「はぁ~、ご主人様、桃香様に甘すぎです」

 

「そうかな?」

 

「そうです。私にも少しは優しくしていただきたいです……」

 

「え?何か言った?」

 

「いえ!何も言ってません」

 

「えへへ~、愛紗ちゃん可愛い~♪」

 

「~~~っ!とにかく!桃香様はお早く食べてきてください」

 

「は~い」

 

「愛紗も食べてきていいぞ」

 

「いえ、私はまだ減っていませんので」

 

(くぅ~)

 

「「……」」

 

かわいらしい音が愛紗のお腹から聞こえてきた。

 

「……で、では、お言葉に甘えて私もた、食べてきます!」

 

「あっ!待ってよ愛紗ちゃん!私も行くよぉ。それじゃ行ってくるねご主人様!」

 

「ああ……ゆっくりしておいで」

 

愛紗は顔を真っ赤にして執務室から走って出て行き、桃香も慌てて追いかけて出て行った。

 

「ふぅ~、やれやれ……」

 

まあ、ほのぼのしてていいんだけどね。

 

「……そろそろ、出てきたらどうだい?」

 

(っ?!)

 

「大丈夫だよ、別に捕まえたりしないから、逆に出てこないなら俺の方からいこうか?」

 

「……なぜ私が隠れていると判ったのですか?」

 

観念したのか天井裏から一人の黒髪の少女が降りてきた。

 

「気配かな、でも、流石は隠密、わかり難かったよ」

 

「おんみつ?」

 

「ああ、えっと、斥候みないなものかな」

 

「なるほど」

 

納得しつつも、女の子は俺を睨みつけいつでも攻撃できる態勢を崩さないでいた。

 

「で、君は何処の斥候かな?」

 

「それを言う事は出来ません」

 

「だよね。でも、このまま返すわけには行かないんだよね」

 

「っ!……ではどうすると言うのですか?」

 

女の子は背中に背負っている身長よりも長い刀に手をかけた。

 

「さっきも行ったけど、別に捕まえるつもりは無いよ。そんなに警戒しなくてもいいよ。俺の武器は君の後ろにあるからね。捕まえたくても捕まえられないさ」

 

「……変わったお人ですね。普通、ばれたら捕らえて情報を聞き出すとかすると思うのですが」

 

「ん~、君はそんなに悪い娘には見えないからね。それに、可愛い女の子に拷問なんて俺には出来ないから」

 

俺は微笑むと、女の子は一瞬呆気に取られた顔をながらもすぐさま目を吊り上げて言ってきた。

 

「……わ、私は、武人です!可愛いなどと言わないでください!」

 

「そんな事ないさ。君はとても可愛いよ」

 

「はうあ~、こんなこと言われたの初めてです。天の御遣い様だからでしょうか」

 

「ん?俺を天の御遣いって知っているってことは、俺を調べてたのかな?」

 

「はうあ!しまったです!うぅ~、孫策様、私はダメな子です」

 

「……あの、主の名前まで言っちゃってるよ」

 

「え?……はうあ~~~~~!し、しまったです!」

 

自分の失態に気づき両手で頭を抑えて天を仰ぐ女の子。

 

「ははは、孫策さんってことは孫伯符だよね……」

 

「なんで字までしってるのですか!……?何を書いておられるのですか?」

 

「ちょっとね……よし、出来た。これを周喩、公僅さんに渡してもらえるかな、字が汚いから読み難いかもしれないけど」

 

「っ!なぜ周喩様まで知っておられるのですか?!」

 

「まあ、色々とね。あ、それと孫策さんに近いうちに会いましょうって伝えて貰えるかな」

 

「それはいいのですが」

 

「ん?他にも何か用でもあるのかな?」

 

「太守っぽくないのです」

 

女の子の一言に俺は胸を貫かれるような痛みが襲った。

 

「ぐはっ!き、きつい事をさらりと言うな~」

 

「当たり前です。普通ならもっと偉そうに喋ります」

 

「あ~、やっぱりどこの太守も偉そうな感じなんだ」

 

「……」

 

忍び込んできた女の子は無言で頷いた。

 

「所で、天の御遣い様」

 

「ちょっと待った」

 

「?」

 

俺は手を前に出して喋るのをやめさせた。

 

「その天の御遣いって止めてくれるかな、俺はそんな大層なもんじゃないよ」

 

「で、では、どのようにお呼びすればいいのでしょうか?」

 

「まずは自己紹介だな。俺は北郷一刀。字と真名はない。で、君は?って忍び込んできた娘に名前なんて教えてくれるわけ無いか」

 

「申し訳ありませんが……」

 

女の子は本当にすまなそうにお辞儀をしてくれた。

 

「あ、いいよ、気にしてないから。任務も大事だからね。それで何かな?」

 

「はい、えっとでは一刀様と呼ばせて頂きます。一刀様はこの町をどのようにしたいのでしょうか」

 

「そうだな~……やっぱり、皆が笑って安心して暮らせる町にしたいかな」

 

「民から税を搾り取って贅沢な生活をしようと言った考えはないのですか?」

 

「ええ?!民から搾り取るだなんてなに言ってるんだよ。民が居なきゃ国は成り立たないんだぞ?そりゃある程度の税はとるけど苦しめてまで取ろうなんて考えは無いよ。それに、俺は贅沢がしたくてなったわけじゃないからね。皆が笑顔で居てくれればいいさ」

 

「そうですか……やはり、一刀様は変わったお方ですね。でも、嫌いじゃないです」

 

「そっか、そう言ってくれるとうれしいな」

 

「~~~っ!」

 

俺の笑顔になぜか顔を赤くする女の子。

 

「で、では、私はこれにて失礼します!」

 

「ああ、気をつけて帰るんだよ」

 

そう言うと女の子は音もなく姿を消した。

 

「ふぅ、あとは……」

 

一刀は立ち上がり朱里と雛里の居る部屋へ向かった。

 

(コンコン)

 

「朱里、雛里居るかい?」

 

『は、はわわ!ご、ご主人様!?』

 

『あわわ、ちょ、ちょっと待ってくらしゃい!』

 

声を掛けると扉の向こうで朱里と雛里は慌しく動いていた。しばらくして朱里が顔だけを覗かして

 

「ど、どうぞ、ご主人様」

 

「失礼するよ……ん?寝床の下になにか……」

 

「はわー!な、なんでもないですよ!」

 

寝床の下から何か紙らしきものがはみ出していたけど、朱里は慌ててそれを背中で隠してしまった。

 

「あわわ、き、気のせいでしゅ」

 

う~む。やっぱり、見られたくない物を隠す場所って定番なのかな?

 

「そうか?まあいいや、ちょっと相談があってきたんだけど」

 

「なんでしょうか?」

 

「洛陽に斥候を出して欲しいんだ」

 

「?なぜ、とお聞きしてもよろしいでしょうか」

 

「今はまだ言えないんだ。でも信じて欲しい」

 

俺は朱里と雛里の目を真剣に見つけた。

 

「それは以前に言っていた。事と関係があるんですかご主人様?」

 

雛里は俺を見上げて聞いてきたので俺は黙って頷いた。

 

「わかりました。では、数名を向かわせましょう。何をお知りになりたいんですか?」

 

そのやり取りを見ていた朱里は何を調べたいのかを聞いてきた。

 

「とにかく、洛陽の状況を把握したい。些細な事でもかまわないから色々情報を集めてくれ」

 

「わかりました。では、数日中に向かわせましょう」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

「はわわ~、えへへ」

 

「いいな、朱里ちゃん……!あ、あわわ」

 

朱里の頭を撫でると雛里が羨ましそうな顔をしていたので雛里の頭も撫でるとうれしそうに顔を赤らめた。

 

「それじゃ、俺は政務に戻るから。よろしくね」

 

「はい、お任せくださいご主人様!」

 

「かならず、成功させて見ます」

 

俺が部屋から出た後、扉の向こうで朱里と雛里は興奮気味に話していた。

 

『雛里ちゃん、がんばってご主人様に褒めてもらおうね! 』

 

『うん、がんばろうね。でも、ご主人様は洛陽の何を知りたいのかな?』

 

『う~ん、わからないけど、きっと何かの役に立つんだと思うよ。だから色んなことを調査してもらわないとね』

 

『そうだよね。それじゃ、洛陽に送る人を選ばないとね』

 

『うん、ご主人様にまた頭を撫でてもらえるように!』

 

『うん♪』

 

こうして?褒めてもらうために頑張る朱里と雛里であった。

 

そして政務に戻った俺はもくもくと作業を続けていた。

 

「う~ん、町の治安か……」

 

書簡は綺麗にまとまっていた。多分、朱里辺りが書いたのだろう。とても分かり易い、分かり易いんだけど……

 

「ん~、書面だけじゃ、実感沸かないんだよな……ちょっと町に行って来るか。腹も減ってきてるし」

 

(ガチャッ)

 

「ご主人様ただいま~」

 

「ただいま戻りました。ご主人様」

 

そう思い立ち上がると丁度、桃香と愛紗が昼から戻ってきた。

 

「あれ?ご主人様何処かに行くの?」

 

「ああ、町の治安について書簡を見てたんだけどなんか実感がわかなくてさ。町の人から直に聞いてみようかと思って」

 

「えー、なら私も一緒に行きたいな」

 

「ダメです!桃香様は先ほど食事に町に行かれたではありませんか!ご主人様に変わってもらった分、今度は桃香様がご主人様の変わりにやる番です」

 

「えー、愛紗ちゃんの意地悪~」

 

「意地悪ではありません。これも民の為です」

 

「うぅ~」

 

桃香は愛紗に民の為と言われ口を尖らせながらも渋々と作業を開始した。

 

「それじゃ、俺は町を回るついでにお昼も食べてきちゃうな」

 

「うぅ~、ご主人様~、お土産待ってるからね~」

 

「さっきお昼を食べたばかりだろ、まったく仕方ないな。帰りにお茶に合いそうな甘いもの買ってくるよ」

 

「本当!?ご主人様、だ~い好き!」

 

「桃香様、お早く仕事にお戻りください」

 

桃香は俺に抱きつこうと俺に近づいてきたが愛紗に服の襟を掴まれてあえなく椅子に引き戻されていた。

 

「あ~ん、ご主人様~~」

 

愛紗に襟を捕まれ椅子に座らされた桃香はバタバタと腕を振ってもがいていた。

 

「それじゃ行って来るよ」

 

「はい、ご主人様。ちゃんと護衛をつけて行って下さいね」

 

「……わかった」

 

付けていかないけどね。付けていったら皆避けるんだもんな。

 

「……やはり私がついていった方がよいのでしょうか?」

 

愛紗は俺が護衛をつけないだろうと察したのか自らが護衛に就こうと言い出してきた。

 

「愛紗ちゃんずる~い!さっき一緒に町に行ったのに~」

 

「私はご主人様の護衛として行くのです。決して桃香さまの様に遊びで付いていくわけではありません」

 

「ぶーぶー!愛紗ちゃんはご主人様と一緒に居たいだけなんだ!」

 

「なっ!なぜそうなるのですか!」

 

「だって愛紗ちゃん、ご主人様と居る時、いつもうれしそうにしてるよ」

 

「なっ!」

 

愛紗の顔は見る見る赤くなり慌てながら話し出し。

 

「そ、そのような事はありません!私はご主人様の事を思って!」

 

「でも、ご主人様、愛紗ちゃんより強いよ?」

 

「う゛……そ、それでも、複数人に囲まれれば!」

 

「二百人くらいに囲まれても直ぐに倒しちゃうのに?」

 

「う゛う゛……ふ、不意打ちを受けないとも限りません!」

 

「隠れてる星ちゃんを見つけられたのに?」

 

「う゛う゛う゛……」

 

どうやら、愛紗の完敗の様だった。

 

「愛紗は桃香についていてあげて」

 

「ですが!」

 

「その代わり、桃香をビシビシ鍛えていいからさ」

 

「え~ん、ご主人様ひど~い!そんな事言ったら愛紗ちゃんが」

 

「わかりました。この関雲長、ご主人様の命により桃香様を鍛え上げて見せましょう。ふふふ……覚悟してください桃香様」

 

愛紗の目は獲物を獲た獣のように口元を上げていた。

 

その笑いにその台詞、悪役と変わらないぞ愛紗。

 

「それじゃ、桃香頑張ってくれ」

 

「ふえ~ん、ご主人様も愛紗ちゃんも意地悪だよ~~。それよりも愛紗ちゃん、兵士さんたちの調練があるんじゃなかったの!?」

 

「それでしたら問題ありません。ここに来る前に鈴々に頼んできましたので」

 

「そんなぁ~~っ!!だからさっき鈴々ちゃんと話してたの!?」

 

桃香の泣き言を背に俺は執務室を後にした。

 

「これはこれは、御遣い様。本日はどのような御用で?」

 

「その御遣い様ってなんだかむず痒いから止めて欲しいんだけどな」

 

「なにを仰りましか。こうして、安心して店を出せるのも御遣い様、劉備様のお力があってこそなのです!」

 

「そう言ってくれるのはありがたいんだけどね」

 

俺は頬をかきながら照れていた。

 

「して、本日はどのような御用で?」

 

「ああ、町の様子について聞こうと思ってさ」

 

「そうですね……ああ、つい先日の話なんですが……」

 

店主は思い出したかのように話し出した。

 

こうして俺は店一軒一軒に、そして通行人にここ最近の出来事や不満、不安に思っている事を聞いて回った。

 

「なるほどな、主に道路整備に住居確保か、朱里が書いてくれた書簡の通りか……」

 

だけど、まだ少し治安が悪いか……朱里の方ではあまり重要視されてなかったけど実際にスリに窃盗は多いみたいだな。

 

俺は肉まんを頬張りながら町を回っていると。

 

「はぁ、はぁ……ふえっ!」

 

(ドンッ!)

 

「おっと!ごめん。大丈夫?」

 

「……(こくん)」

 

後ろからぶつかって来たのは俺より少し年下くらいの少女だった。

 

無言で頷いたその少女は身なりはみすぼらしく、足は素足で顔は少し痩せこけて、手には肉まんを持っていた。

 

少女に声を掛けようとしたところに遠くから怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「この盗人やろう!待ちやがれ!」

 

(ビクッ!)

 

少女は急に俯き震えだした。

 

「やっと見つけたぜ!」

 

「あぅ!」

 

先ほど立ち寄った店の店主が血相を変えて走ってきたかと思うと少女の髪を引っ張り上げた。

 

「お、おい、そんな乱暴に!」

 

「うるせぇ!……っ!?こ、これは御遣い様!失礼しました!」

 

「ああ、そんなのは気にしてないからいいよ。それより何があったの?」

 

「へぇ、それがですね。出来上がったばかりの肉まんをこいつが盗みやがったんですよ!」

 

「っ!?」

 

そういうと店の店主は少女を睨み蹴りつけると少女は苦痛に顔を歪めた。

 

「わかった、それじゃこの娘は俺が引き取ろう」

 

「え!で、ですが……」

 

「いいからいいから……はい、これ肉まんの分ね少し多めにしといたから」

 

「そんな!御遣い様からお金を頂くわけには!」

 

「そんな事してたら商売にならなくなるだろ?それに、おっちゃんの店の肉まん美味しいんだから潰れて貰っちゃ困るからな」

 

俺は笑いながらお店の店主にお金を渡す。

 

「はあ……御遣い様がそう仰るのなら……おい娘、御遣い様に感謝するんだぞ。これからはこんなことしちゃいけねぇぞ」

 

店の店主は注意しながらも少女の事を許してくれた。基本的にこの町の住人は気さくでいい人たちばかりだ。

 

「それでは、御遣い様。私はこれで……」

 

「ああ、また、立ち寄らせてもらうよ」

 

「……」

 

「さてと」

 

(ビクッ!)

 

俺は震えている少女を優しく抱きしめ髪を撫でた。

 

「もう大丈夫だよ、安心していいからな」

 

「……」

 

「お腹が空いてたんだよね?」

 

「……(コクン)」

 

「でも、盗むのは悪いことだってわかるよね?」

 

「……(コクン)」

 

「それじゃどうして盗みなんてしたのかな?」

 

「……かね」

 

「え?」

 

「お金が、無くて……それで、働く場所探したけど……見つからなくて……」

 

少女はポツリ、ポツリは話し始めた。

 

話を纏めると、この少女は黄巾党の残党に親を殺され、着の身着のままお金も無く、ここ数日は水しか飲んでいなかったらしい。

 

それでも諦めずにこの町で仕事を探していたが、服はボロボロで顔も泥だらけで何処も雇ってもらえなかったという事らしい。

 

「それで……それで……」

 

「もういいよ。何も言わなくていいよ。分かったから」

 

「……」

 

「今まで辛い思いをしてきたんだね。でも、もう大丈夫だから安心して」

 

「ふぇ……」

 

少女が安心出来るように出来るだけ優しく話しかける。

 

すると見る見るうちに両の目に涙を滲ませ始める少女。

 

辛い思いをしてきたんだな……

 

「落ち着くまでこうしててあげるからな」

 

「ひっぐ!ひっぐ!……ふぇぇぇぇん!」

 

その言葉を皮切りに、少女は大声で泣き始めた。

 

俺はそんな少女の頭を泣き止むまでずっと撫で続けた。

 

「すいませんでした……」

 

少女を思いっきり頭をたれ俺に謝って来た。

 

「気にしなくていいから、それよりもう少し詳しく教えてくれるかな?何があったんだ?」

 

「はい……、ぐすっ」

 

少女は見る見る目に涙がにじみ出てきてしまった。

 

「ああ!辛い事なら言わなくてもいいんだよ!」

 

「ぐすっ……いいえ、大丈夫です。実はつい数日前のことです……」

 

少女の話を聞いて一刀は愕然とした。

 

つい数日前に近くの邑が賊に襲われたと報告を受けた事があった。

 

その時は愛紗が兵を連れて討伐に向かったって話だったな。

 

賊の鎮圧は直ぐに終わったが愛紗の報告では生存者が居なかったと悔しそうに報告を受けたのを今でも覚えていた。

 

この少女はその村の生き残りだということだ。

 

丁度、村から買い物に出ていたため被害に遭わなかったのだが帰って来た時には村は焼け焦げていくつもの墓標が立っていたという有様だったらしい。

 

多分、墓標を立てたのは愛紗だろう。助け出す事は出来なかったがちゃんと弔ってやろうと思ったんだろう。

 

「それで、この町にやってきたわけか」

 

「はい、この町は賊も襲ってこず、太守は心優しい女性と聞き及んでいましたので」

 

「そっか」

 

「あっ、挨拶が遅れました、わたくしは姜維と申します」

 

「え?……き、姜維?!姜維って姜伯約?!」

 

「あ、あの、どうして私の字を知っているのですか?まだ、教えていませんが」

 

俺もそうだが、姜維ちゃんも自分の字を言い当てられ驚いていた。

 

な、なんでこんな時期にこんな場所に姜維が居るんだ?それにここら辺の出身じゃないはず……

 

俺は姜維と名乗った少女を見ながら考える。

 

「あ、あの……」

 

身体能力は……それほど高くは無いけど、それでも一般的な兵士よりは遥かに強いな。

 

それに俺の知っている姜維なら戦術に関しても……

 

「あ、あの!」

 

「え?あ、ごめん、何かな?」

 

「いえ、その……そんなにじっと見られると恥ずかしくて」

 

姜維ちゃんはボロボロの服を隠すように身を竦めてしまった。

 

「ご、ごめん!別に変な意味は無いよ!ただ、それなりに実力があるなと思ってさ!」

 

「え、見ただけで判るのですか?確かにお父様から戦う術を、お母様からは学を学びましたが」

 

「ある程度はね。きっと強いんだろうなって思ってさ」

 

「いえ、私などまだまだです。私よりも……えっと」

 

「あ、ごめん、名前がまだだったね。俺は北郷一刀だ。字と真名は無い。よろしくな」

 

手を差し出すと姜維ちゃんは恐る恐る手を取り握手をしてくれた。

 

「字も真名が無いのですか?それに先ほどの人が御使い様と……っ!も、もしや、天の御遣い様ですか?!」

 

「世間じゃそう呼ばれてるね。でも、俺はそう呼ばれるのは苦手なんだ。出きれば北郷か一刀って呼んでくれるとうれしいな」

 

「し、しかし!御遣い様と言えば乱世を収めるため、劉備様の主になられた方ではありませんか!」

 

「まあ、そうなる、のかな?」

 

まあ確かにご主人様って呼ばれてるんだからそうなんだろうけど……あんまりご主人様って待遇を受けてない気もするけどね。

 

「ふえ~~~~っ!」

 

姜維ちゃんは口を開けたまま固まってしまった。

 

「お~い、姜維ちゃん?……だめだ、固まっちゃってるよ。仕方ない……失礼するよ……よっと!」

 

「ふえ?きゃっ?!み、御遣い様!?」

 

「あ、戻ってきたね」

 

「え?なんで私、抱き抱えられて!え?え?ええぇぇっ?!」

 

放心状態から戻ってきた姜維ちゃんは俺に抱き抱えられていると知るとまた慌てだした。

 

「ほら、落ち着いて、深呼吸だよ。吸って」

 

「は、はい!すー」

 

「吐いて」

 

「は~」

 

「吸って」

 

「すー」

 

「吸って」

 

「す~!」

 

「はい止めて!」

 

「んん!?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「~~~っ!」

 

「はい、吐いて」

 

「は~~!し、死ぬかと思いました~」

 

「でも、落ち着いただろ?」

 

「っ!……」

 

俺は笑うと姜維ちゃんは頬を赤くしてまた固まってしまった。

 

「どうかした?」

 

「っ?!い、いえ!なんでもないれす!」

 

「?」

 

「そ、それより、何処に行くのですか?」

 

「そんな服じゃ、折角可愛いのに台無しだから服屋に行くんだよ」

 

「ふえ?!そ、そんな!お、御遣い様に服を買っていただくなど!恐れおおい!」

 

「余り暴れると落ちちゃうぞ、それと御使い様も禁止」

 

「ふえ?!で、ではどう呼べばよろしいので?」

 

「さっきも言ったけど、北郷でも一刀でも好きなように呼んでもらってかまわないよ」

 

「で、では……北郷様」

 

「うん、いいね」

 

「ふぇ~~」

 

姜維ちゃんはまた顔を赤くして俯いてしまった。

 

「さて、着いたぞ……おっちゃん!居る?」

 

「おお、これは御遣い様!新しい意匠でも出来たのでしょうか?」

 

店に入り店主であるおっちゃんを呼ぶと、すぐに奥から出てきた。

 

「残念ながら今回は違うんだよね。実はこの娘に合う服を見繕って欲しいんだ」

 

「ほう……これまた泥などで汚れていますがかわいらしい娘さんですな。どこで、口説いたのですか?」

 

「ふえ?!く、口説く?!」

 

「違う違う!誤解を招くような事は言わないでくれよおっちゃん!それに俺は口説いた事なんて一度も無いよ」

 

俺は慌てて訂正をし、ことの顛末を話した。

 

「なるほど、そうでしたか。しかし、娘さんやいいお方に助けていただいたな」

 

「は、はい……」

 

「では、御遣い様、少々お待ちください。では、娘さん、こちらに来ていただけますか?寸法を測らねばなりませんので」

 

「え、で、でも」

 

姜維ちゃんは不安そうに俺を見た。

 

「大丈夫だよ。寸法を測るのは女性の人だし。俺はここで待ってるから」

 

俺は優しく姜維ちゃんの頭を撫でてやった。姜維ちゃんもそれで落ち着いたのか頷き店主と共に奥に消えていった。

 

「御遣い様、お茶をどうぞ」

 

「ありがとう」

 

「いいえ♪」

 

女性の店員がお茶を持ってきたので笑顔でお礼を言うと女性の方も笑顔で返してきてくれた。

 

女性が戻っていくと奥の方から歓声のような声が聞こえてきたが俺は余り気にしていなかった。

 

「~~~っ!」

 

(ガバッ)

 

「おっと、どうした姜維?」

 

「……な、なんでもないです」

 

姜維ちゃんは戻ってくるなり俺に抱きついた。

 

「あらあら、ふふふ♪」

 

「何かあったんですか?」

 

「なにも、ありませんよ♪ただ、体が汚れていたのでついでに拭いて差し上げただけです」

 

「そうなんですか?」

 

確かに姜維ちゃんの腕や足、髪などからは汚れが取れて綺麗になっていた。

 

よくよく見ると肌は白くて髪も銀髪で凄く綺麗だな。

 

「では、今からその娘に合いそうな服を作りますので店主の所へどう言った服がよろしいのかお決めになってくださいな」

 

「わかった。姜維ちゃんも来るかい?」

 

「は、はい……」

 

姜維ちゃんは俺の服の袖を握り締め付いて行った。

 

「では御遣い様。どのような服をご所望でしょうか」

 

「そうだな……動きやすくそれでいて、清楚な感じで。あとは緑を基調に作ってみてくれるかな」

 

「かしこまりました。二刻ほどでお作りしますのでお待ちください。その間、市でも見て回られてはいかがです?」

 

「そうだな。姜維ちゃんはどうする?俺は町を見て回らなきゃいけないから行くけど」

 

「わ、私も着いて行きます!」

 

「わかった、それじゃおっちゃん。しばらく外回ってくるよ」

 

俺は店主に告げると姜維ちゃんと店から出た。

 

《姜維視点》

 

「この町は本当に賑やかですね」

 

「ああ、みんな活き活きしてるだろ」

 

「はい、すごいです。生きていくだけでも苦しい時なのにこんなに……」

 

私は感心したように町を見回していた。これが北郷様の力なんだなと思いました。

 

「そうだな。皆と力を合わせこれたから、ここまで来れたんだ」

 

「え?」

 

私は北郷様の言葉に疑問を覚えた。

 

「これは北郷様が成し遂げた事ではないのですか?」

 

「俺がやったのは切っ掛けを与えただけだよ。ここまでにしたのは皆の力さ」

 

「それでも、北郷様は凄いです」

 

「ありがとう」

 

「ふえ~~」

 

北郷様は微笑み私の頭を撫でくれました。ちょっと恥ずかしいですけどなんだかお父様に撫でられているようでとても安らげました。

 

しばらく市を歩いていると少し先の道から大声が聞こえてきた。

 

『来るんじゃねぇぞ!来るとこいつを殺すぞ!』

 

『うえ~~~ん!』

 

「っ!?今のは!姜維ちゃん、ちょっとごめんよ!」

 

「ふえ?ふわ!ほ、北郷様?!」

 

なんと北郷様は急に私を抱き抱え走り出しました。

 

わわ!また抱き抱えられてしまいました!でも北郷様の胸は温かくて安らげます、この方なら……

 

この時、私はある決意を固めていました。

 

「あそこか……姜維ちゃんはここで待ってて」

 

しばらく走っていると北郷様は人だかりを見つけ、私を降ろすとそのまままた駆け出そうとしていました。

 

「あ……」

 

「姜維ちゃん?」

 

私を降ろして人だかりに行こうとしていた北郷様の服の袖を私は無意識で掴んでいた。

 

「どうしたの?」

 

「い、行ってはだめです……殺されてしまいます」

 

「大丈夫だよ」

 

「でも……」

 

だ、だってまた一人に……

 

「ダメです。行かないでください……お願い、です」

 

そんな私の願いを北郷様は頭をかきながら困り果ててしまっていた。

 

「大丈夫だから、姜維ちゃんを一人残したりしないから安心して」

 

「……本当ですか?」

 

「ああ、俺は死なないよ」

 

「ふぇ……」

 

北郷様に頭をやさしく撫でられ私はすっと、掴んでいた手を離した。

 

「あ……」

 

私は思わず声を出してしまった。北郷様のお姿に、その凛々しいまでの横顔に心奪われてしまった。

 

北郷様、かっこいい……

 

北郷様はそのまま人ごみに入っていくと、子供を人質にとっている大男の前に立ちました。

 

「誰だ貴様!」

 

子供を抱き抱えた大男が声を荒げた。

 

「俺か?俺の名は……名乗る必要も無いか」

 

「なっ!」

 

「それよりその子を離してくれないかな?」

 

「誰が離すか!さっさとこの場から居なくなれ!さもないと……」

 

大男は子供の首に刃を向けると子供は今にも泣き出しそうな顔になっていました。

 

あのままだと子供が!

 

「そうか。なら仕方ないな……お前を捕まえる」

 

「なっ!貴様!この状態がわから……っぐは!」

 

「えっ!?」

 

私が気が付いた時には北郷様は大男の後ろに回り手刀で大男の首に一撃を与えていました。

 

大男は白目をむき、そのまま倒れ起き上がってきませんでした。

 

凄い……素手であんな大男を倒すなんて。

 

私は北郷様の優しさを持ちながらも武にも長けていた事に驚きつつも尊敬した。

 

もし叶うなら、北郷様の下で働いてみたいな。

 

「くそっ!なんなんだよあの男は!」

 

え?な、仲間が居たのですか!

 

私は後ろに振り返ると一人の男が逃げていくように走り出していくのが見えた。

 

「北郷様!一人逃げます!」

 

「っち!」

 

男は舌打ちすると全速力で走って逃げていく。

 

「くそ、待て!」

 

北郷様が走り出そうとしたときでした。

 

『ここは私が引き受けましょうぞ!』

 

「「え?」」

 

何処からとも無く声が聞こえてきたかと思うと逃げていく男の横から人影が飛び出しくるのが見えました。

 

「この趙子龍から逃れられると思うなよ!」

 

趙子龍と名乗った白い服を来た青髪の女性は逃げていく男の正面に立ちました。

 

「な!この!」

 

「ふっ、その程度か。はっ!」

 

「ぐはっ!」

 

「ふん、他愛無い」

 

その女性は槍の柄でひと当てすると男はくぐもった声を上げてその場に倒れこみました。

 

すごい。あんなに綺麗に鳩尾に……

 

「星!久しぶりだな、元気にしてたか!」

 

「え?」

 

北郷様は急に大声を上げて多分、あの女性の真名、なのかな?それを呼んでいました。

 

「お久しゅうございます。北郷殿もお変わりなく何よりです」

 

「しかし、会わない間に随分と実力をあげたな星」

 

「私とてただただ白蓮殿の頃で呑んでいた訳ではございませんゆえ」

 

「ははっ!星らしいな。しばらくここに居るのか?」

 

「そうですな。まあ、積もる話は皆に会ってからと言う事にしましょう。北郷殿」

 

「それもそうだな。……あ、その前に桃香に甘いもの買って帰らないとな」

 

「ふむ、桃香殿も相変わらずのご様子……して、彼女は?」

 

(ビクッ!)

 

北郷様の後ろに居た私に気が付いたのか青髪の女性は顔を覗かせてきたので思わず隠れてしまった。

 

「おやおや、嫌われてしまいましたかな」

 

なんだろ。この人はなんだか危険な気がします。色んな意味で……北郷様はこのお方とお知り合いのようですが……

 

「姜維ちゃん、彼女は趙雲。前に居たお城で世話になった人だよ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「うむ。我が名は趙雲。字を子龍。よろしく頼むぞ」

 

「彼女は姜維ちゃん」

 

「は、始めまして。名は姜維。字を伯約と言います。よろしくお願いします」

 

「星、あまり苛めないでくれよ?」

 

「これは心外な、初対面のものに対して苛めるなど、私は面白ければそれでよいのですぞ」

 

「……姜維ちゃん、彼女に余り近づいちゃダメだぞ」

 

「は、はい」

 

「北郷殿、姜維殿にいらぬ事を吹き込まないで頂きたい。これでは、弄れぬではありませぬか」

 

「はいはい、それじゃ、甘味を買って服屋に行こう。そろそろ出来てるだろうからね」

 

「むぅ。実に惜しい……愛紗と同じくらい弄りがいがありそうだというのに……」

 

一人ブツブツと呟く趙雲様を北郷様は苦笑いを浮かべながらも歩き出しました。

 

その後、お土産用のお饅頭を買った北郷様は、先程の服屋に戻りました。

 

「如何でしょうか」

 

「うん、すっごく可愛いね」

 

「ほう……これはこれは」

 

「~~~~っ!」

 

私は恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

私の服装は薄い緑を基調にして、最近私の住んでいた村で流行りだした膝よりも短いヒラヒラした白い布を履いて、そして太ももまである長く黒い靴下を履いていた。

 

「あ、ありがとうございます。こんな服まで頂いてしまって」

 

「気にしなくていいよ。それじゃ……」

 

あ、そうか、ここでお別れなんですね。そうですよね、私は平民で、北郷様は天の御遣いで……住んでいる世界が違います

 

私は自分と北郷様との間には越えられない壁があることに思い知らされた。

 

「姜維ちゃんもお城に行こうか」

 

「はい……はい?ふえええぇぇぇ?!」

 

い、今、北郷様はなんと仰いましたか?私もお城に?え?なんで?どうして?!

 

私はばだばだと手を振り回し首をキョロキョロと周りを見回していた。

 

「ほらほら、落ち着いて。吸って、吐いて」

 

「は、はい。すー、はー、すー、はー……もう大丈夫です」

 

「うん。それじゃいこっか」

 

「で、ですが。私などが行っても良いのでしょうか?」

 

「大丈夫だよ、心配しなくても」

 

「あ……」

 

北郷様は私の頭を撫でながら微笑んでくれた。

 

「まったく、北郷殿は女子と見ると見境が無いですな」

 

「そ、そんなわけ無いだろ?!と、とにかく星も城に来てくれ」

 

「ふふふ、あいわかった。久々に愛紗でもからかって見るか」

 

趙雲様はくっくっくと何かを楽しみにしているかのように笑っていました。

 

うぅ……やっぱり私はこの人が苦手かもしれません。

 

《桃香視点》

 

(コンコン)

 

部屋で愛紗ちゃんと政務をしていると扉を叩く音が聞こえてきた。

 

「あ、ご主人様かな?は~い、どうぞ♪」

 

「ただいま桃香、愛紗」

 

「やっぱりご主人様だ、お帰りなさい」

 

「お帰りなさいませ。町の方はどうでしたか?」

 

「うん、殆ど朱里の報告になったとおりだったけど。収穫もあったよ」

 

「そうですか。それはなによりです」

 

「ねえねえ、ご主人様!お土産は?」

 

私はご主人様の袖を取りねだる様に訊ねた。

 

「と、桃香様!」

 

「ははは、ちゃんと買ってきたよ。あとで皆で食べよう。それより、みんなに紹介したい人が居るから玉座の間に集まってくれるかな」

 

「誰だろ?私の知ってる人かな~?」

 

「わかりました。では、私は鈴々、朱里と雛里を呼んできましょう。」

 

「ああ。よろしく頼むよ」

 

「ご主人様。一緒に行こ♪」

 

私はご主人様の腕に抱きついて玉座に向う。

 

「ねえねえご主人様。誰に会わせてくれるの?」

 

私は道すがらご主人様に尋ねてみた。

 

「それはついてからのお楽しみだよ」

 

「え~、ご主人様の意地悪」

 

「ははは、桃香もきっと喜ぶと思うから皆が来るまで内緒だよ」

 

私とご主人様が玉座の間に着いた時には既に愛紗ちゃんに朱里ちゃん、雛里ちゃん、鈴々ちゃんが待っていた。

 

「ごめん、遅くなったかな?」

 

「いえ、私たちも今集まったところですよ」

 

朱里ちゃんが笑顔で答える。

 

「そっか、よかった」

 

「して紹介したい人物とは?」

 

愛紗ちゃんは早速本題に入ろうとしていた。

 

「ああ、入ってきていいぞ」

 

「待ちくたびれましたぞ。北郷殿」

 

ご主人様がそう言うと扉を開けて聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「久しいな桃香殿に愛紗、それに鈴々、朱里、雛里」

 

「「「「「星(ちゃん)(さん)(なのだ)っ!」」」」」

 

「久しぶりだね星ちゃん!いつこっちに着の?!」

 

「つい今しがた。ちょうど北郷殿が賊を追いかけていた所に出くわしましてな」

 

「そうだったんだぁ!」

 

「星も随分と力をつけたようだな」

 

「ああ、愛紗ほどではないがな」

 

「ふん、当たり前だ。ご主人様に稽古をつけて頂いているのだから」

 

「星さんはいつまでこちらに居るのですか?」

 

「うむ、そのことなのだがな。そろそろ腰を落ち着かせようと思ってな」

 

「では!」

 

「ああ」

 

愛紗ちゃんの問いに星ちゃんは頷いて答えていた。

 

「星ちゃんが仕える主って誰なんだろうね。雛里ちゃん」

 

「あ、あの桃香様?」

 

「うん。なぁに?」

 

雛里ちゃんはなんだか困惑した表情で私に話しかけてきた。

 

「あ、あのですね。星さんはこの地に来て腰を落ち着かせようと言ったのはですね」

 

「うんうん♪」

 

「ご主人様にお仕えするということですよ」

 

「そうなの?!」

 

「はい」

 

「星ちゃん本当?」

 

「うむ、そういうことですぞ、桃香『様』」

 

星ちゃんは苦笑いを浮かべて私の事を様と付けて呼んでくれた。

 

「わ~!良かったね愛紗ちゃん!」

 

「え、ええ。そうですね」

 

「では、今ここに趙子龍は天の御遣いである北郷一刀様と劉元徳様に一生の忠誠を誓いましょう。主、そして桃香様よ、共に太平を目指しましょう」

 

「ああ、これからよろしく頼むよ。星」

 

星ちゃんは跪いてご主人様と私に家臣の礼を取ってくれた。

 

「うん!これからよろしくね!」

 

「さてと、実はもう一人紹介したい子がいるんだ」

 

ご主人様はそういうと扉に向かい歩き出した。

 

「誰ですか、ご主人様?」

 

「うん、出ておいで姜維ちゃん」

 

「「姜維ちゃん??」」

 

愛紗ちゃんも同じように首を傾げていた。

 

すると扉から遠慮しがちに一人の女の子が顔を出してきた。

 

「は、はじめまして姓は姜、名は維、字は伯約です。町で北郷様にた、助けていただきました」

 

姜維ちゃんて名乗ってくれた女の子は何処かオドオドとして場違いな所に連れてこられたみたいな風に感じた。

 

「わ~、可愛い娘だね。こんにちは、私は劉備、字は玄徳よろしくね!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

ペコリと頭を垂れる姜維ちゃんはとてもお行儀が良くて私は直ぐに気に入っちゃった。

 

「ご主人様!このような何処のものとも知れぬものを連れてきて何をお考えなのです?」

 

愛紗ちゃんは姜維ちゃんを睨みつけながら喋ると、怖くなったのかご主人様の後ろに隠れちゃった。

 

「なっ!貴様!ご主人様!」

 

それを見た愛紗ちゃんは顔を赤くして今度はご主人様に抗議をした。

 

「まあまあ、落ち着いて愛紗。これから仲間になるんだから仲良くやろうよ」

 

「「「「「は?」」」」」

 

え?今ご主人様はなんて言ったの?

 

「ふえ?!え?えええぇぇぇ!?」

 

皆が唖然とするなか姜維ちゃんが最初に声をあげた。それを皮切りに皆がご主人様に話しかけていった。

 

「ご、ご主人様?今、なんて言ったの?」

 

「だから、姜維を仲間にするって言ったんだよ」

 

「「「「「えええええ?!」」」」」

 

「な、何をお考えなのですかご主人様!」

 

「まあ、待つのだ愛紗。主よ、なにか根拠はおありなのですかな?」

 

「うん。あるにはあるんだけど……」

 

ご主人様は愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、星ちゃんと順番に見て最終的には星ちゃんに向き直った。

 

「星、姜維ちゃんと手合わせをしてみてくれないか?」

 

「ふえ?!わ、私が手合わせですか?!む、無理です!敵うはずありません!」

 

「ああ、申されておりますが?」

 

「大丈夫。姜維ちゃんは強いよ。俺が保障するよ。それに星の実力も見てみたいしね」

 

「ふむ、ここで私の実力を見せるのも一興か」

 

「で、でも、あ、あの私は!」

 

「大丈夫だよ姜維ちゃん。力試しと思って気楽にやってごらん」

 

「ふぇ~。わ、わかりました」

 

ご主人様は姜維ちゃんの頭を優しく撫でると姜維ちゃんは頬を赤くしてこくんと頷きました。

 

もしかし……姜維ちゃん、ご主人様の事?ま、まさか……でも、あの態度って……

 

むむむ、これは由々しき事態かも!これ以上ご主人様の事を好きになっちゃう人が増えたら大変な事に……

 

ああ、でもでも!仲間が増えないと色々と大変だし……う~ん!私はどうすれば~~!

 

「鈴々も勝負したいのだ!」

 

そんな私の悩みを無視したように鈴々ちゃんは大きな声でご主人様に伝えていた。

 

「鈴々はまた今度な」

 

「ぶー、星だけずるいのだ」

 

「はっはっは。これもお役目。我慢するのだな鈴々よ」

 

あ、そうだ!私も聞いてみようかな?私も大分太刀を振るえるようになったし!

 

「ねぇねぇご主人様~、私も少しは戦ってみたいな?」

 

「桃香はやっと自分の剣が振れるようになったばかりだろ?まだ無理だよ」

 

「そっか、残念……でも、これからもご主人様が手伝ってくれるってことだよね?」

 

私は残念そうに言いながらもこれからもご主人様と稽古が出来る事が嬉しかった。

 

「そもそも、私はこの者が仲間になるのは反対です。……(まったく、ご主人様は女子と見れば……)」

 

愛紗ちゃんは私の横でブツブツと文句を言っていた。

 

「まあまあ、愛紗ちゃん。とりあえず星ちゃんとの手合わせ見てみようよ」

 

「桃香様がそう仰られるのであれば……」

 

私がそう言うと愛紗ちゃんは渋々ながらも了承してくれた。

 

「それじゃ、姜維ちゃんそれに星、調練場に案内するよ」

 

「はひっ!」

 

「うむ」

 

こうして皆で調練場に行く事になった。

 

《To be continued...》

葉月「ども~!等々ご登場の蜀の裏の問題児!星の登場でーーーす!」

 

星「問題児とは失敬な。そこは、蜀のメンマの伝道師と呼んでいただきたい」

 

葉月「……さて!いよいよ星が仲間に加わり話は徐々に反董卓連合軍の話へと変わって行きます」

 

星「むっ!話を無視されてしまった。しかたない。私は雪華をからかいに……」

 

葉月「おっと!そうは行きませんよ。今から雪華もお呼びするのですから。では、今作品の新キャラクター、姜維こと雪華ちゃんでーす!」

 

雪華「は、はじめまして!名を姜維といいます!えと、真名は雪華です!よ、よろしくお願いします!」

 

葉月「律儀な子ですね」

 

星「うむ。しかし。まさか新しい仲間が姜維だったとはな」

 

葉月「結構悩んだんですよ。まあ、それは置いといて……まずは雪華ちゃんのプロフィールからご紹介!」

 

雪華「ふええぇぇっ!?そ、そんなのあるんですか!?」

 

 

姜維プロフィール

 

姓:姜 名:維 字:伯約 真名:雪華(シェンファ)

 

身長:158cm

 

体重:「お、乙女の秘密です!」

 

B:「わーーっ!」 W:「い、いえません!」 H:「お、大きくありませんよ!」

 

使用武器:龍背九節棍 (りゅうはいきゅうせつこん)普通の棍より固く、まるで龍の背中の様に固くて丈夫。節が多い為、扱いが難しい。姜維の父親の形見武器。

 

体の特徴:肌は一般的な人より白く、髪は銀髪。

 

真名の由来:普段から良く笑う子で、その笑顔は一面の銀世界の中に一輪の花が咲いているように綺麗で可愛らしいところから付けられた。

 

性格:真面目な性格で何でも人の言う事を信じてしまう。そのせいもあり、よく星にからかわれている。

 

軍師として朱里の元で現在勉強中。ただ朱里より身長が高いせいもあり、傍から見ていると師弟逆転している。

 

順風満帆な生活を送っていたが、雪華が森の中へ果物を取りに行っている間に邑は黄巾党の残党に襲われ壊滅。その後、さまようようにして一刀たちが統治する平原へとやってきた。数日間水しか飲んでおらず、空腹から店の肉まんを盗み一刀とぶつかったことが切っ掛けで仲間になる事になった。

 

一刀の事は恋愛対象と言うより、『お父様の様に優しい人』又は『命の恩人』と見ており、どうにかして恩を返したいと奮起している。

 

 

葉月「こんなところですかね」

 

雪華「ふぇ~。はずかしいです……」

 

葉月「あっ。口癖は『ふえ~』です」

 

雪華「ふえぇっ!?そ、そんなことまで言うんですか!?」

 

星「くっくっく。やはりからかいがいがあるな」

 

雪華「うぅ~」

 

葉月「まあ、そんなこんなですが。雪華をよろしくお願いします」

 

雪華「よろしくお願いします!」

 

星「どこで、主に惚れるか見ものだな」

 

雪華「ふええぇぇっ!?」

 

葉月「さて、盛り上がってきたところで!お待たせしました!『はわわ!第二回!人気投票!』の開催です!」

 

星「ふむ。ここでやるか。して、投票方法は?」

 

葉月「はい。前回同様。一人二票を好きに投票してください。気になるキャラクターに票を分けてもいいですし。同じキャラに二票を投じてもOKです」

 

雪華「あ、あの。私も含まれているのですか?」

 

葉月「当たり前じゃないですか!その為に出したんですから!さて!今回のエントリーはこちらです!今回はみなさんのコメント付きです!」

 

 

1.桃香「うん!今度こそ一番取れるように皆さんよろしくね!」

 

2.愛紗「ま、まあ、なんだ……入れてくれると、嬉しいぞ。べ、別にご主人様とイチャイチャしたいというわけでは無いぞ!」

 

3.鈴々「今度こそ一番をとるのだ!だからみんなよろしくお願いするのだ!」

 

4.朱里「はわわ。前回は雛里ちゃんに負けちゃいましたけど。今回は負けないんだから」

 

5.雛里「あ、あの、その……よ、よろしくお願いしましゅ!あぅ、噛んじゃった」

 

6.星「はーーっはっはっはっ!私に一票投じてくれたものにはもれなく、自家製メンマを死ぬほど食わせてやろう!」

 

7.雪華「えと、あの!ふ、不束者ですがよろしくお願いします!……え?……ふえええぇぇぇっ!!そ、そんな意味だったんですか!?」

 

8.オマケ(天の声)「ぜっっっったいに!お兄様と幸せになるんだから!だから一姫に一票入れてよね!」

 

 

星「おや?今回もオマケがあるのだな。前回もたしか」

 

葉月「はい。まあ、もう、コメントしてる人でまる分かりですよね」

 

星「何気に前作も人気があるのだな」

 

葉月「ですね。たまにですけど。前作の話を書いてくれとショートメールとか頂きます」

 

星「そう言えば前作にいた。優未?はどうしておるのだ?」

 

葉月「あー……黙秘で」

 

星「ふむ。まあ今は聞かないでおくとしよう。それで、今回の掲載人数はどうなっておるのだ?」

 

葉月「今回も上位四人ですね」

 

雪華「あ、あの。確か、蜀の陣営って一番多いんですよね?最後の方はどうなるんですか?」

 

葉月「まあ、多くても五・六人ですかね。拠点を書くことによって本編も遅れていくと考えるとそれが限界かと」

 

雪華「そうなんですか。大変なんですね」

 

葉月「そう!大変なんですよ!分かってくれるのは雪華だけなんですね~」

 

雪華「ふぇ?そうなんですか?」

 

葉月「そうなんですよ!もう、いつも私の相手をしている愛紗なんて。私を書け、私を書けと煩いの何の」

 

雪華「あ、あの……葉月さん」

 

葉月「はい?」

 

雪華「そ、その……葉月さんの後ろに……」

 

葉月「私の後ろに何か?」

 

愛紗「……」

 

葉月「……さ、さてと!そろそろ、終わりにしましょうか!」

 

星「くっくっく」

 

葉月「そこ!笑わない!では、みなさん!投票期間は取り合えず次の作品が投稿されるまでです!」

 

雪華「え、えっと……ど、どしどし投票お待ちしております!これでいいですか?」

 

葉月「はい。いいかんじですよ。では皆さん!次回、無事ならお会いしましょう!さらばっ!」

 

愛紗「葉月っ!貴様ぁぁぁっ!今日と言う今日は許さんぞ!そこになおれえええぇぇぇっっ!!!」

 

葉月「ひえええぇぇぇっ!今日はお呼びで無い日だったのに!何で居るんですか!」

 

星「私が呼んだのだ。不味かったか?」

 

葉月「ホント、いい仕事してくれますね!いい意味でも悪い意味でも!やっぱり、蜀の裏の問題児は間違いじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「待てえええぇぇぇっ!」

 

葉月「ま、待ちませんよ!よ、よし。こうなったら!口寄せの術!出ろっ!一刀!(ボムッ!)」

 

愛紗「ご、ご主人様!?」

 

一刀「愛紗……愛しているよ……ちゅっ」

 

愛紗「あ、ああ、ごしゅ、ご主人しゃま……うきゅ~~~(バタンッ)」


 
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