No.224927

桔梗√ 全てを射抜く者達 第6射

黒山羊さん

なんか急に暑くなったせいか、寝苦しい日々が続き、長時間の睡眠ができなくなて、不眠症に掛ってしまいました黒山羊です。
寝酒とか言ってきつい酒をカッと飲むのが凶と出たのでしょうか?
そのせいで、更新スピードが落ちてしまいました。
楽しみにしている読者の皆さんすみません。
できるだけ、早く更新しますので、待っていてください。

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2011-06-26 21:06:37 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:6211   閲覧ユーザー数:5114

桔梗√ 全てを射抜く者達   第6射

 

 

 

 

視点:一刀

 

俺は今子供向けの童話を読んでいる。最近は大分勉強の時間を取れるようになった。理由は2つ。

まず1つ目が軍師の存在だ。杏里(あんり)の策で戦がスムーズに行き、こちらの軍の死傷者も少なくなった。

これまで真正面からぶつかり合っていたが、罠や伏兵などによって短時間で戦が終了するようになった。

ちなみに『杏里』というのは徐庶の真名だ。俺や劉備達が諸葛亮と龐統を救った事、俺達が杏里に活躍する場を与えてやれた事、杏里が俺を試した事を俺が許した事、三つの彼女の願いを叶えた礼に真名を俺は貰った。

どうやら、この世界の三顧の礼は徐庶の真名『杏里』という事みたいだ。

真名は俺だけにという訳では無く、桔梗さんや焔耶にも送られた。そして、二人とも杏里に真名を許した。

2つ目の理由は俺が天の御遣いであるということが黄巾党の間で噂になっているらしい。杏里が捕虜をワザと逃がして、俺の噂を流させている。噂の内容は俺が天の御使いであること、天の弓で射抜かれた者は挽き肉になること、天の国方式の拷問方法等だ。おかげで俺を恐れて此処を攻めてくる黄巾党はだいぶ減った。

おかげで天の御遣いは普段は誰に対しても優しいが、縄張りを荒らす者には容赦せず、全力で敵を喰らい殺すことから、狼のような男だというイメージが賊の間では定着したらしい。俺が狼ねぇ。

杏里曰く天の御遣いが畏敬の対象となれば、国が安定し、統治しやすくなり、桔梗さんや焔耶、杏里が少し楽になるのならと俺はその提案に乗ったのだが、まさかここまで誇張し、噂が広がるとは思わなかった。

まあ、そのおかげで、以前に比べて治安はだいぶ良くなった。

 

日課で、毎日訓練は欠かさず行っているとはいえ、子供向けの童話の本も読み飽きてきた。

多少、字も読めるようになってきたので、何か仕事は出来ないだろうか?桔梗さんと杏里に聞いてみた。

 

「きゃわわ♪その程度の読み書きで、文官の仕事をしようなど、片腹痛いです♬一昨日来やがれです♩」

 

「ふむ。……では警邏に行かないか、北郷?

街の人口が増えたおかげで問題が多発していてな、警邏の不備を見つけて、天の国の知識を授けてくれんかの?

丁度警邏に関する陳情書もこんなに送られてきておるしな。」

 

「それは良い案ですね。良かったですね♬読み書き年齢幼児の天の御遣い様♪」

 

「はい、桔梗様。では警邏に行きましょうか。」

 

「私は無視ですか。」

 

「あ、悪かったな。ドS幼女軍師杏里ちゃん♪」

 

これが俺と杏里の関係だ。杏里が俺を笑顔で罵倒し、俺が笑顔で罵倒し返す。笑顔で罵倒し合う関係。

しかも、俺の罵倒も杏里の罵倒も的確に相手の気にしている事などをズバズバと刺していく。

桔梗さんには俺達の会話は結構好評だ。なんとも清々しいらしく聞いていて面白いらしく、横で笑っている。

しかし、これが焔耶と杏里の会話になると、気の短い焔耶がキレるので、少々危険だ。

桔梗さんと杏里の会話になると、桔梗さんは笑ってすますか、自身の非について真剣に考えられる。

故に、杏里の罵倒には自身の非を見つめ直す機会を与えてくれる役割もある。

まあ、本人はすごく楽しそうだ。至上の笑顔をしている。

俺も今の罵倒で分相応という言葉について考えさせられた。もっと文字の勉強が必要だな。

 

ってか、桔梗さんと二人で警邏!

桔梗さんからこうやって誘ってくるなんて//////ヤバイ、ドキドキしてきた。顔が熱い。

違う!これはデートでは無い、何を勘違いしている!これは仕事だ!仕事に集中しろ!北郷一刀!

そうだ!仕事に真摯に取り組んで、桔梗さんに格好良いところを見せよう。

だが、あくまで、自然にだ。頑張り過ぎると空回りする恐れがあるからな。

よし、デート路線に持って行くのではなくて、真剣に警邏をしよう!それが良い!

でも、良く考えろ。これって直接アタックできないヘタレの考えじゃ無くね?ハァーー。恋愛って難しいな。

 

俺は大人しく、執務室を出て、警邏の準備をする。

警邏に行く時は聖フランチェスカの制服で懐に護身用ナイフを仕込んでいる。

未だに焔耶や桔梗さん相手に剣で挑まれても勝つ確率がとてつもなく低いままだ。

まあ、相手は三国志に出てくる将を相手にCQCがそれなりにできる一兵士の俺が勝てる訳が無い。

だが、俺のCQCは一般の兵士相手には通じるようで、相手が剣を持っていても勝てる。

 

準備もできたので、俺は待ち合わせの城門前に来た。桔梗さんは未だ来ていない。

良かった。こんな熱い中、女の人、特に好きな相手を待たせるのは男失格だからな。

俺は城門の日陰に行き、門の警備兵と喋りながら、桔梗さんを待った。桔梗さんはすぐに来た。

 

「北郷、待たせたな。」

 

「いえいえ、俺も今来たところですよ。」

 

「ほう、では儂が少し早く来ていたら、儂は待たされたということじゃな。」

 

「いや!その!」

 

「はっはっは!分かっておる!儂に気を使ってくれたのじゃろ。お前は優しいな。行くぞ、北郷。」

 

桔梗さんは笑いながら、城門をくぐり、町へと出た。俺は慌てて桔梗さんを追いかける。

 

 

 

 

町を周っていると警邏の改善点が幾つか上がり、対処法も自分なりに思いついた。

桔梗さんは警邏にもかかわらず、酒屋に行こうとする。俺は桔梗さんを止めようと思ったが、桔梗さんが俺に息抜きをさせるつもりで外に連れ出したということが分かったので、俺は桔梗さんにつきあうことにした。

そのため、この外出は警邏だけでなく、俺と桔梗さんの気分転換も目的に含まれることとなってしまった。

そんな桔梗さんの気づかいのおかげで俺は仕事をしながらも、リフレッシュできた。

そして昼時になったので、警邏の調査も切り上げて、城に戻ることになった。

 

「厳顔様、客人が来られていますよ。」

 

「儂に客?紫苑か?」

 

「いえ、李典様、楽進様、于禁様です。」

 

「ああ、あの娘達か。そういえば、前の点検からもう半年ぐらい経ちそうだな。」

 

「はい、客間で待って頂いています。」

 

「わかった。すぐにいく。」

 

「知り合いなのですか?」

 

「ああ、李典は儂の豪天砲の開発者じゃ。時々儂の城に来て、豪天砲の点検と整備をして貰っておる。

故郷から遠いのにここまで来るとは律義な奴じゃ。楽進と于禁は李典の同郷の友らしい。」

 

「へぇー。あの豪天砲の開発をですか?」

 

へぇー、あの豪天砲を作った人が李典だったのか。で、楽進と于禁が李典の同郷ね。3人共、魏の武将のはず、少し注意しておくか。俺は桔梗さんについて行き、三人がどういった人物なのか見定めることにした。

客間には三人の女の子が居た。年齢は焔耶より年下、杏里より年上と見える。

 

「厳顔のばっちゃん!豪天砲の定期点検に来たで!」

 

「久しぶりじゃな。李典。それから、儂はばっちゃんと呼ばれるような年では無い。」

 

「いったー!ばっちゃ…厳顔様、垂直落下型ゲンコツは無しやで、ホンキで痛すぎるで。」

 

「これに懲りたら儂をばっちゃん呼ばわりするな。儂はまだ若い!

しかし、珍しいな、真桜。楽進や于禁も連れてくるなんて。」

 

「せやねん。凪も沙和もばっちゃ…厳顔様ん所の天の御遣い様に会ってみたいって言うんや。

で、天の御遣い様って、どんな人なん?ウチも会ってみたいねんけど?」

 

「ああ、噂の天の御遣い様はこいつじゃ。」

 

俺は背中を押される。いきなり押された俺はよろけてしまい、前のめりに扱けそうになってしまう。

顔を上げると三人の女の子がこちらをジトーと見てくる。視線が何とも痛い。

 

「えぇー、このお兄さんが天の御遣いなの?なんだか弱そうなの。」

 

「沙和、見た目で判断するな。賊の話では姿を見せずに人を喰らう狼だと聞くぞ。」

 

「たしかにこの間絞め上げたあんちゃんはそう言っていたな。

でも、どう見てもちょっと変わった服着たひ弱な兄ちゃんにしか見えへんで?」

 

なんか年下の女の子にボロクソに言われている。何か凹みそう。

ってか、実際滅茶苦茶凹んでいます。orzってこういう状態なんでしょうね。

と落ち込んでいると、誰かが肩を叩いてきました。

 

「北郷はそんな弱くないぞ。」

 

「桔梗様…。」

 

「確かに我々武人に比べれば、近接戦闘術はそこらへんの兵卒が少し強くなりましたという次元の話で、儂が剣でも戦っても勝てるぐらい貧弱で、文字の読み書きもできないし、この国の常識を知らない世間知らずだ…。」

 

うわ、立ち直れなさそう…。

好きな相手にボロカス言われてますよ。北郷一刀さん。

 

「だがな、こやつの遠距離の射撃の腕は儂も一目を置いておる。まさに大陸一じゃ。」

 

やべぇ、マジでキュンと来た。泣きそう。もう、俺桔梗さんの為に死んでも良いわ。

さすがは桔梗さん、俺の評価を落としてから、最大限に上げる。これ以上に無い最高の褒められ方だ。普段俺をからかったりして遊んだり、まるで俺を子供のように扱うけど、時々こうやって俺の為に優しくしてくれると俺勘違いしそうになります。何で、桔梗さんはこうやって俺の心を射抜くのですか?もう俺、感激で死にそうです。

 

「では、天の御遣い様。失礼ですが、その射撃の腕を試させてもらって宜しいでしょうか?

私と御遣い様とで勝負をして、私の納得のいくものでしたら、私はこの陣営に入ろうと思います。」

 

「沙和もそれに参加するの!」

 

「ウチも参加するわ。人を喰らうって言われてる天の弓って言うのに興味あるし。」

 

三人は俺の方を見てくる。確かに、三人が桔梗さんの陣営に来てくれたら、人員が増えて助かる。

曹操の間者かもという疑念があったが、どうやらそうじゃないみたいだ。ここは絶対に勝たないと。

 

「分かった。そのかわり、勝負方法は俺が決めていいかな?」

 

「ええ、構いませんよ。」

 

「勝負方法は護衛と射撃。

楽進さんと于禁さん、李典さんが俺が用意する壺の護衛をして、俺がその壺を破壊する。

壺の場所は鍛錬場の真ん中に設置して、移動は不可。勝負は明日の正午から日暮れまで。

勝負の着け方は3人が日暮れまで壺を守り抜くか、俺を捕まえれば、君たちの勝ち。

日暮れまでに俺が捕まらずに、壺を破壊出来れば、俺の勝ち。

盾は10枚までなら使用可能だ。盾の配置も幾らでも変えてくれて構わない。

壺の位置が分かりやすいように大きな旗を設置すること。勝負開始は旗が設置が完了次第開始。

で、勝負開始の時は三人共壺の近くに居ること。そんなところかな?こんな内容で良いかな?」

 

「はい。その内容なら我々が不利になる内容は含まれていません。

純粋に御遣い様の射撃の腕を見ることが出来そうです。では、明日良い勝負を楽しみにしています。」

 

「では、その勝負、儂が審判をやろう。明日は丁度非番じゃしな。」

 

「では、桔梗様。明日非番でお休みの所申し訳ありませんが、お願いします。」

 

 

 

 

視点:凪

 

噂に聞いていた天の御遣いは思っていたモノとすごくかけ離れているものであった。

筋肉隆々の豪傑のような武士(もののふ)を想像していたが、実際は普通より少し筋肉のあるだけの平凡そうな青年だった。姿勢やしぐさからは武の心得は少しあるようだ。

見た目から判断するに、天の御遣い様の年齢は私達より少し年上。見たことも無い白く輝く衣を羽織っていた。

 

そして、今日は私達三人で天の御遣い様を試す。

天の御遣い様の射撃がどういったものか、見定めさせていただきます。

私達は勝負開始一刻前に鍛錬場に行くとそこには昨日と違った服装の天の御遣い様が居られた。

 

「それが、今回の勝負中に私達が護衛する壺ですか?」

 

「ああ、人を護衛するのと同じような感覚でしてもらうためにこの大きさにしたんだ。

んで、これが盾。好きなように配置してくれ。

勝負の時間になったら、桔梗様が壺の近くに旗を立てて下さるので、それがすんだら勝負開始だ。」

 

天の御遣い様はそう言うと盾を置いて去って行った。

天の御遣い様が渡してきた盾はかなり厚い物で矢を通すことなんてできそうもない代物だった。

このような盾を十枚も置いて私達が壺を護ったとしても、天の御遣い様は壺を破壊することが出来る自信があるのだろう。この勝負、気を引き締めて行かないとすぐに負けてしまうな。

 

「真桜、沙和。このような厚い盾を天の御遣い様が準備なさったという事はどういうことか分かるか?」

 

「どう、考えたってこんな厚い盾を撃ち抜いて壺を壊すなんてできないの。」

 

「豪天砲やったら可能やけど、かなり近づかなアカンから、近距離戦になるんちゃうの?」

 

「沙和、真桜。昨日厳顔様は何と仰られていたか、覚えているか?」

 

「儂をばっちゃんと呼ぶな?嘘嘘!冗談やって凪!本気にせんんとってや!

で、ばっちゃんは昨日なんて言っとんたんやったけ?」

 

「天の御使いは遠距離射撃の名手だと言っていた。

真桜、この盾を弓で破壊する方法があるとすれば、それはどんな方法だか?」

 

「ありえへん話しするで。」

 

「構わん。相手は天の弓を使う天の御遣い様だ。私達の予想を超えた方法で来るぞ。」

 

「せやな。竹やりかウチの螺旋槍みたいなごっついモノを矢にするな。

つまりや、天の弓はかなり大きなものと見てええと思う。で、そんな大きな弓やと移動が不便や。

おそらく一発で決めようとするはずや。外れたら、撃ってきた場所がばれてまうからな。

で、撃ってくる場所はあっちの方の木がたくさん植えられている所をちゃう?

あっこやと大きい物を隠しやすいと思うし。」

 

「なるほど。」

 

「おう、娘どもよ。勝負には勝てそうか?」

 

後ろから声が聞こえてきたので振り向くと厳顔様と魏延様、徐庶様が来られました。

厳顔様は酒を持っておられ、顔がほんのり赤いことから飲んでおられるようだ。

魏延様は長椅子と傘を持っておられ、徐庶様は料理を持っておられる。

どうやら、観戦しながら、酒宴をするようだ。真桜から聞いてはいたが、厳顔様はかなり酒が好きなようだ。

 

私はさっき真桜が私達に説明したことを厳顔様に言い、盾を一つの方向に纏め、勝負開始と同時に私が天の御遣い様を強襲し、真桜と沙和の二人で壺を護っていれば、すぐに勝負を終わらせることが出来ると言った。

厳顔様はニヤニヤと笑いながら『なるほど』と納得なさっておられる。

魏延様は腕を組んで黙って聞いておられます。

 

「これだけの情報からここまで推理出来るとは何処かの脳筋さんとは違うようですね。きゃわわ♪

もし仮に、その推理が正しいとしての話ですが、そのような大きな弓を複数配置できれば、逃走して、別の射撃地点に行き、第二射、第三射を別方向からすることができますね。

一つの方向だけを守備していては裏をかかれたら、それこそある意味勝負は一瞬ですよ。

あくまで、さきほどの話が正しくて、天の弓が複数あればの話ですけどね。」

 

なるほど。天の弓が複数あれば、別の場所から壺を狙うこともできるか。

私達は再度相談し、天の御遣い様が現れそうな場所を洗い出す。

飛距離が15丈と仮定した場合、真桜の話では6か所あった。私はその場所を最短で回れる道を探した。

天の御遣い様には悪いが、この勝負私達の勝ちだ。私は勝利を確信した。

 

 

 

 

視点:桔梗

 

儂が旗を立てると、北郷と李典達の勝負が始まった。

開始と同時に楽進は三人で決めた道を走しりだした。李典と于禁は盾に隠れながら周りの様子を窺っている。

いきなり轟音と共に盾が爆ぜた。方向は楽進が向かった方向の反対側。

盾が爆ぜる様子をまじかで見た李典と于禁、楽進は放心状態だ。何が起こったか分かっていないようじゃな。

儂も最初は自分の理解の範囲の超えていたため、放心したものじゃ。あの時は戦場だったから、そうもしていられる余裕がなかったがな。それに儂の場合、豪天砲で似たようなことが起きておるから少々耐性があった。

だが、娘どもが止まっている間にも北郷の攻撃は続く。2枚目の盾が分解しながら宙を舞う。

楽進が三人の中で最も早く正気に戻り、二人に激を飛ばす。

 

「沙和!盾を移動させて時間を稼いでくれ!真桜は壺の周りを掘って土嚢を作ってくれ!」

 

「分かったなの!」

 

「了解や!凪!」

 

そう言って楽進はバラバラになった盾の位置から北郷が狙撃している場所であろう方向へと走っていく。

李典は螺旋槍で地面を掘り即席の土嚢を作っていく。于禁は盾を移動させ土嚢が完成するまでの時間を稼ぐ。

隣から、杏里が小声で儂と焔耶に話しかけてくる。

 

「あの楽進と言う女の人。見事一刀さんの術中にはまっています。」

 

「どう言う事だ?」

 

「確かに盾が飛んだ位置から考えれば、一刀さんが居るであろう場所は楽進さんが走って行った方向です。

しかし、あの盾は真後ろに飛ばずに斜め後ろに飛びました。これがどういうことか分かりますか?」

 

「私はわからん。桔梗様は?」

 

「おそらくじゃが、北郷は最初から壺を狙って撃っていないとまでは考えられるが、何故そのような周りくどいことをするのかも分からんし、北郷の狙いも分からん。そのうえ、そこから先は分からん。」

 

「確かに、桔梗様の言う通りですね。一刀さんはわざと盾の足の部分を狙って撃っています。

理由は簡単です。そうすることで射抜かれた盾は不規則に飛び、一刀さんの位置を正確に判断させないためです。一刀さんは三人を混乱させ、正常な判断を削いで、壺を1発で狙撃出来る場所を探して、移動するという魂胆でしょう。」

 

「なぜ、最初から一刀は壺を1発で撃てる場所に移動しないんだ?それに最初から1発で決めることのできる場所に居なかったのは何故なんだ?」

 

「そこまで言わないと分からないのですか?焔耶さんは?相変わらず、の…」

 

「要するに移動中に楽進と鉢合わせしない様に、狙撃をすることによって楽進を誘導させたという訳じゃな。

最初の位置では1発で決めることが出来ると思っていたが、盾の配置で困難になってしまったからだろう。」

 

「そうですね。さすがは桔梗様。一刀さんも此処までは予想ついていたと思います。

しかし、一刀さんにとって誤算が生じた。それは分かりますか?」

 

「分からんな。」

 

「それは李典さんの螺旋槍ですね。

土嚢を積まれてしまったせいで、北郷さんは1発で壺を撃つことが困難になってしまった。

そのため、一刀さんは作戦変更をしなければならなくなった。

さて、ここで問題です。一刀さんはこれからどういう行動に出ると考えられるでしょうか?」

 

「突撃だな。」

 

「焔耶よ。北郷が近接戦闘で勝てると思うか?

儂が考えたのは今居る所から更に高い所に移動して、1発で撃つ。」

 

「桔梗様、目の付けどころが良いですね。

もう1つ策があるとしたら、身を隠しやすく探しにくい所もしくは一度楽進さんが探しに行った所に移動し、楽進さんが反対方向に行った所を狙撃で連射して土嚢ごと壺を破壊しようというのも考えられます。」

 

「なるほどの。」

 

「いずれにせよ。長期戦になるでしょうね。

北郷さんも地面を掘って土嚢を積んではならないという規定を作っていたら、こんなことにはならなかったでしょうね。もう少し考えて勝負の規定を考えるべきでしたね。きゃわわ♬」

 

「何処に行くんだ?」

 

「時間がかかりそうなので、執務室から書簡を取って来て、此処で仕事をします。

今日は非番では無いので、仕事をしなければなりませんからね。」

 

「どっちに行くんだ?執務室は向こうだぞ。」

 

「流れ矢を考えて道を選んで城に向かっています。私も挽き肉にはなりたくないです。」

 

「気をつけてな。」

 

杏里はすぐに書簡と竹簡を持って戻ってきた。

儂も焔耶と酒をチビチビ飲みながら、静寂の鍛錬場を見守っている。

まるで嵐の前の静けさの如く、鍛錬場は静まり返っている。しかし、退屈じゃな。

もっと、こうドンパチやったり、爆発が起これば、見ていて面白いのだが、全くそう言ったことが無い。

と思っていたが、儂の期待にこたえるように鍛錬場は戦場と化した。

突然、土嚢は宙に土を何度も吐き、形を崩していく。李典と于禁は混乱し右往左往している。

そして、壺の割れる音が聞こえた。

 

「勝負あり!勝者北郷一刀!」

 

「結局何が起こったか分からずじまいだったのー。」

 

「ホンマやで。竹やりみたいな矢が降ってくるんやと思ったら、盾と土嚢と壺が破裂するだけやし。

訳分からんわ。厳顔様、ホンマにこれ天の弓の仕業なん?」

 

「儂も最初は驚いたが、間違いなく天の弓だ。」

 

「すまない。真桜、沙和。天の御遣い様は見つからなかった。」

 

後ろから声が聞こえてきた。どうやら、楽進が戻ってきたようじゃな。

三人は最初に破壊された盾を見たり、周りに何か落ちていないかと探しまわっている。

とりあえず、このままでは明日の鍛錬が出来そうにないので、李典に元に戻すように言った。

片づけが終わると北郷が此処に来た。

 

 

 

 

「みごとじゃったな。北郷。」

 

「お褒めの言葉ありがとうございます。桔梗様」

 

「一刀、お前何処に居たんだ?」

 

「最初からずっと自分の部屋に居たぞ。」

 

「本当ですか!私確かに城中の部屋を全部見て回りましたよ。」

 

「ああ、結構最初の方にこっちに来たでしょ。楽進さんがこっちに来た時に狙撃銃を寝台の下に隠して、何時でも窓の外にぶら下がれるように準備して、俺の部屋に近づいてきた時に窓の外に出て窓枠に捕まってぶら下がり、楽進さんの足音が離れて行くと部屋の中に戻って狙撃体勢に戻る。

で、楽進さんが俺の居る場所から反対方向に行った時に連射して土嚢を潰して壺を破壊したってわけ。

最初に一気にかたを着けようとしたけど、李典さんのドリルを見て感動しちゃって動けなかった。」

 

「ドリル?」

 

「それそれ。」

 

「ウチの螺旋槍に見惚れて止まるなんて兄さんお目が高いな。」

 

「そう、それ螺旋槍って言うのか。いいセンスだ。」

 

「センス?」

 

「天の国の言葉で、良い感性をしているって意味。」

 

「ふーん。センス…。なんやええ響きやな。なあなあ、天の弓見してくれへん?」

 

「桔梗様、どうしましょう。」

 

「李典は凄腕のカラクリ師だから、真似されると儂の治める一帯にとって問題が発生するかもしれんから、儂の陣営に降るのなら見せてやろう。」

 

「それは大丈夫やで。さっき凪達と話して厳顔のばっちゃんに降ろうかってなったから。

ウチの真名は真桜。厳顔のばっちゃん、天の御使いの兄ちゃん、魏延様、軍師様、よろしく頼みます。」

 

「沙和の真名は沙和なのー。」

 

「私の真名は凪と言います。凪と呼んで下さい。

さきほどの隠密と射撃見事でした、天の御遣い様。私達の完敗です。」

 

「儂の真名は桔梗じゃ。」

 

「私は焔耶だ。宜しく頼むぞ。」

 

「私の真名は杏里です。きゃわわ♩玩具が増えたです♪」

 

「俺は北郷一刀。真名は無いけど、真名に匹敵するモノが一刀だから、一刀と呼んでくれ。」

 

「そういえば、真桜。」

 

「なんですか?桔梗のばっちゃん?」

 

「儂はばっちゃんなどでは無いと昨日言ったはずじゃが…。」

 

「あ!いったー。だから垂直落下型ゲンコツは痛いって!ばtt・・・桔梗様。」

 

こうして、真桜、沙和、凪が儂の陣営に入った。

杏里に三人の配置について相談すると真桜にはカラクリ開発を主にしてもらいつつ、凪と沙和と共に新兵の訓練や警邏を任せることになった。これで大分儂の陣営の人材不足が解消されたようじゃな。

これ以上に堅い話は明日の回すことになり、とりあえず、酒宴となった。

儂と焔耶が酒を用意し、杏里と北郷が料理をしてツマミを用意する。

この時初めて、一刀の作ってくれた天の国の料理の天ぷらを食べたが、美味かった。

真桜、凪、沙和の三人には酒宴を盛り上げる為に芸をしてもらったが、沙和の芸の北郷の女化はすごかった。

綺麗だった。なんか、女として負けたような気がしたが、認めたくないので、儂は口に出さない。

杏里や焔耶、凪や真桜もそのようだ。目が泳いでいる。儂が男だったら、絶対に惚れていたな。

…しかし、ふと思ったのだが、……儂は女で北郷は男。北郷は儂のことをどう思っているのじゃろう?

そんなことが少し気になった休日だった。

 

 

 

 

へぅ( ゚∀゚)o彡°黒山羊です。更新久しぶりですね。

最近急に暑くなったせいか、夜寝られず、昼間眠くなってしまい小説を書く時間が減ってしまいました。

眠い。常時眠い。

 

さて。今回はどうだったでしょうか?

凪、真桜、沙和が桔梗陣営に入りました。幾ら序盤とは言え、桔梗陣営が一刀、桔梗、焔耶、杏里の四人はキツイと思いオリキャラを考えてみようとしたのですが、自分の妄想力では無理でしたorz

どうやら、オリキャラを考えるのが自分は苦手なようです。

次に今回も出ました。北郷一刀が吐くMGSの名言。ちなみに前回の明言は分かったでしょうか?

「貴様に本当の終焉を見せてやろう。」です。ちなみに今回の名言は「いいセンスだ。」です。この名言を吐いたのはビッグボスとオセロットです。いつ見てもオセロットは渋い。俺もあんな爺さんになりたいモノです。

最後に桔梗さんが少し一刀の目を気にしましたね。これから少しずつデレますが、デレ過ぎるとキャラ崩壊しそうになるので、十分注意するつもりです。

 

次回の話は何となくは考えて、幾つか候補は出ているのですが、どれにしようかと悩んでいます。

まあ、気が向いたら、衝動書きして、更新するつもりなので、これからも応援やコメントをしていただけると嬉しいです。いつも読んでくださってありがとうございます。

 

では、いつも通り最後のアレと行きましょう。

それでは御唱和下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へぅ( ゚∀゚)o彡°

 

 


 
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