ボクは先頭で汽車を待っている。
さっきまで命を狙われていたけど、気を落ち着けて。
ホームには人がたくさんいる。とても混む時間
なのだろう。
汽車が目の前に止まる。ドア越しに、ちまっと
した人が見える。後ろ姿で性別まではわからない。
ドアが開き、さあ乗ろうとした時、後ろから
ぞくぞくと人が車内へ入ろうとする。ボクは勢い
よく押され、自分の意思とは関係なく、ものすごい
スピードで反対側のドアの前にいた人にぶつかる。
ゴチーン!!
「ううッ」女の子の呻く声。
「あ、ああ……」ボクにはダメージがない。
少女はゆるりと、こちらに振り返る。涙目で
下からボクを見ている。
(か、かわいい……あ、い、いや)
とにかく不可抗力とはいえ、謝らないと。
「ごめんなさい」もうこれしかない。
少女は、おでこを押さえながらも「大丈夫です」
と答える。少し間が空いて、何かに少女は気づく。
マスク越しだけど表情が明るくなったような気がした。
そして少女は目を輝かせて「ありがとう」と言った。
……
「え??」感謝されることなどしていない。
でも、少女は「ありがとう」と言っている。ボクは
「あッ!」と発し、顔の血の気が引いた。
(この娘、頭をぶつけて、おかしくなったんだ)
とにかく医者か魔導士のところへ連れて行き
この娘をみてもらわないと。
「あの、これから城へ行くところなんだけど一緒に
どうですか?」
あ、怪しい、まるでナンパだ。
「わたしも、お城へ行くところです。それに助けて
もらった、お礼もしたいです」
まさかの展開。でもやっぱり頭を打って、おかしく
なっているんだ。早く医者か魔導士の元へ。
そうだ、名前、頭を打ったショックで名前を忘れ
ちゃっているかもしれない。
「あ、あの名前……ボクはオーダー」
「わたしはオリンズ」
ボクはホッとした。名前は忘れてないみたいだ。
オリンズはボクが一喜一憂する姿をみて、ちょっと
だけ不思議そうにみている。
ボクたちは終点に着き汽車から降りる。
駅から出ると、そこは城下町。ボクはオリンズに
「今から城へ行く前に、医者か魔導士のところへ行こう」
と、伝える。オリンズは、きょとんとしている。
「オーダーどこか具合が悪いの?」心配そうにこちらを
見ている。
「いや、オリンズさっき頭をぶつけただろう」
「あ、もう大丈夫です、心配しすぎ」元気に答える。
「だめだよ、だって感謝されるようなことしてないのに
オリンズはさっきからボクに、ありがとうって言っている
でしょ?」
「あれは悪い魔法にかかっていたところに、オーダーが
ぶつかってきて、その拍子で魔法が解けたから」
……ええ!!
「ってことは、ボクの早とちりってこと?」
オリンズはクスクス笑っている。
ボクもホッとしてオリンズにつられて笑う。
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ファンタジー小説です、続きものです。