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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第12話

葉月さん

第12話投稿完了です。

今回で黄巾党編終わりになります。
最後の戦いに向かう北郷たち。
そして、曹操は戦場を見て何を思うのか……

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2011-06-25 17:52:11 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:12176   閲覧ユーザー数:7565

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第12話

 

 

 

 

【黄巾党の最後】

 

《雛里視点》

 

「ねえねえ。朱里ちゃん、雛里ちゃん」

 

「は、はい!なんでしょうか桃香さま」

 

夜。夜空の下、焚き木を囲んで朱里ちゃんとお話をしていると桃香さまが話しかけてきました。

 

「ご主人様ってさ。どう思う?」

 

「どう思うとは、どういうことでしょうか?」

 

「えっとね。ご主人様って私達が悩んでたりすると直ぐ気がついてくれるじゃない?それなのに女の子の気持ちにはすごく鈍感だと思うの」

 

「た、確かに。そうですね」

 

朱里ちゃんは桃香さまが言った事に苦笑いを浮かべて同意していた。

 

「雛里ちゃんもそう思うよね?」

 

「そ、そうですね。で、でも、ご主人様はとてもお優しい方ですし。あの時だって」

 

「「あの時?」」

 

「あっ」

 

「なになに?何かご主人様とあったの?」

 

「雛里ちゃん。私、何も教えてもらってないよ?」

 

桃香さまと朱里ちゃんは興味津々に私に詰め寄ってきました。

 

「あぅ……実は白蓮さんのお城に居た時に……」

 

………………

 

…………

 

……

 

「あぅ……またやっちゃいました……」

 

一人廊下をトボトボと歩く。

 

はぁ、どうして上手く喋れないんだろう。

 

それは先程の朝議での事です。

 

街で起きた事の報告や今後の方針などをご主人様や他の皆さんと話し合っていた。

 

会議も後半に差し掛かったときだった。

 

『それじゃ、他に意見はあるか?なければこれで終わるぞ』

 

白蓮さまがそう伝えて周りを見回していた。

 

『あっ『もうないからこれで終わるのだ!』……』

 

『そうか?ならこれで解散だな』

 

私の声は鈴々ちゃんに遮られて発言できないまま、朝議が終わってしまいました。

 

「もっとしっかりしないと、ご主人様に笑われちゃうよ」

 

握り拳を作って強く頷く。

 

「俺がどうかしたか?」

 

突然後ろから声を掛けられ驚きながら振り返るとそこにはご主人様が立っておられました。

 

「はきゅっ!ご、ごしゅじんしゃま!あぅ……」

 

また噛んじゃいました。

 

「ぐす……」

 

「ええ?!お、俺なにか悪い事したかな!ごめんね、雛里!」

 

「あわわ、ち、違います。ご主人様は悪くありましぇん!」

 

「え?じゃ、どうしたんだ?」

 

あぅ、本当のこと言ってご主人様に笑われたらどうしよう。

 

ご主人様は私の目線まで腰を下ろし微笑んでいた。

 

「どうしたんだ雛里?」

 

あわ、あわわ。ご主人様のお顔が目の前に。

 

私は恥ずかしくなり帽子で顔を隠してしまった。

 

「ん~、困ったな。このままじゃ話にならないし……そうだ、雛里こっちにおいで」

 

「え?……あわわ!」

 

わわ!ご、ご主人様が私の私の手を!あわわ!

 

「ひゃう!ご、ご主人様何処に行くんですか?!」

 

「この近くにいいところを見つけたんだそこに行こう」

 

「え?え?ええ?!」

 

あわわ!ま、まさか、お外でご主人様とい、一線を越えてしまうのでしゅか?!

 

「はぁ……」

 

なんて考えた私はダメダメさんでしょうか……あぅ。

 

「あ~、やっぱり気持ちいいな雛里」

 

ご主人様は木陰で寝転びながら話しかけてきました。

 

「そ、そうですね……ふぅ~」

 

そうでした、ご主人様は鈍感さんでした。

 

「やっぱり元気無いな、なにかあったのか?」

 

ご主人様は起き上がり、心配そうに雛里の顔を覗いてきた。

 

「大丈夫だよ、笑わないし、誰にも言わないから」

 

「あわわ……」

 

頭を撫でてもらっちゃった。ご主人様の手って何でこんなに温かくて気持ちがいいのかな。

 

……うん。ご主人様に相談してみよう。きっと笑わないで聞いてくれると思うし。

 

私は悩んだ挙句にご主人様に相談してみる事にした。

 

「あ、あの実はですね」

 

私は人前だと上手く喋れない事や、愛紗さんについても話した。

 

「そっか、知らない人の前だとあがっちゃって喋りたい事が喋れない、か」

 

「はい……どうしても怖くなっちゃって」

 

「そっか。でも、愛紗はそんなことないだろ?」

 

「はい、それはもちろんです。でも、なんだかいつも不機嫌そうで……その」

 

「話しづらい?」

 

「あわわ……そ、その、はい」

 

「ん~、愛紗はとても優しいんだけどな。だって、いつも雛里のこと心配してるんだぞ?」

 

「え?愛紗さんがですか?」

 

あわわ、愛紗さんに心配されるような事、何かしたでしょうか。

 

「ああ、『雛里はいつも私を見ると怯えたようにしている』とか言ってさ『どうすれば雛里と仲良くなれるでしょうか、ご主人様?』なんて聞いてくるくらいだぞ」

 

「愛紗さんが、ですか?」

 

「ああ、愛紗はああ見えて面倒見がいいからね。雛里のことを結構心配してるんだよ」

 

そうだったんだ……ちょっとうれしいかな、えへへ。

 

「うん、やっと笑顔になってくれたね」

 

「あわわ」

 

「やっぱり、女の子は笑ってる方が可愛いからね」

 

「は、はぅ~!」

 

あわわ、可愛いと言われてしまいました、恥ずかしいけど、ちょっとうれしいです。

 

「それに、みんな優しいから兵士のみんなも、『あんな可愛い子が軍師をやってるんだ。俺らも頑張って守らないと』って言ってるくらいだからね」

 

「あぅ、そうなんですか?」

 

「ああ、だから何も心配する事なんてないぞ。雛里は自分に合った速さで皆に合わせていけばいいんだよ」

 

「は、はい」

 

「うん、それじゃそろそろ戻ろうか、みんなが心配しちゃうしね」

 

「あわわ、そうですね。朱里ちゃんも心配しちゃいますね」

 

………………

 

…………

 

……

 

「と言う事があったんです」

 

「へ~。そんなことがあったんだ~」

 

「そういえば雛里ちゃん、最近あんまり愛紗さんのこと怖がらなくなってたもんね」

 

「うん、ご主人様に教えてもらって怒ってるわけじゃないってわかったから」

 

「そっか、よかったね雛里ちゃん」

 

「はい♪」

 

桃香さまは自分の事の様に喜んでくれていました。

 

「それにしても、ご主人様って……」

 

桃香さまはそういいながら愛紗さんと鍛錬をしていたご主人様にお顔を向けたので私も朱里ちゃんも同じようにご主人様を見た。

 

「なんであんなに鈍感なんだろうね」

 

桃香さまの一言に私も朱里ちゃんも苦笑いを浮かべるしかありませんでした。

 

「ん?どうしたんだ三人とも。俺の顔に何かついてるか?」

 

見られているのに気が付いたご主人様が話しかけてきました。

 

「な、なんでもないよご主人様。ね!朱里ちゃん、雛里ちゃん!」

 

「はわわ、は、はい。なんでもないでしゅ!」

 

「あわわ、です」

 

「?ならいいけど。明日も朝早いんだから早く寝た方がいいよ」

 

「そうだね。明日はいよいよ決戦だもんね!」

 

桃香さまうんうんと頷きながら握り拳を作っていました。

 

「でも、それはご主人様も一緒だよ?」

 

「ああ。俺と愛紗ももう少ししたら休むよ」

 

「ええ。ご主人様との鍛錬は教えられるところが多く、時間を忘れてしまいますね」

 

「あ~。もしかして長すぎる?なんなら短くするけど」

 

「そ、そんな事は決してありません!むしろもっと教えてもらいたいくらいです!」

 

「そ、そうか。ならよかったよ」

 

愛紗さんの勢いにご主人様は一瞬、引いていました。

 

「はいはい。愛紗ちゃんもこれ以上ご主人様とイチャイチャしてると明日起きれなくなっちゃうよ?」

 

「いちゃっ!?そ、そんなことはしていません!私は純粋に武人として!」

 

「はいはい。それじゃみんな~。今日はこれで解散だよ。って鈴々ちゃんはもう寝ちゃってるんだよね」

 

愛紗さんを無視して桃香さまは話を進めていた。

 

「それじゃみんな!明日はがんばろぉ~!おーっ!」

 

「「お、おー……」」

 

「ほらほら、みんな声が小さいよ。もっと大きな声で、おーっ!」

 

「「おっーー!」」

 

ご主人様も愛紗さんも苦笑いを浮かべながら腕を振り上げて叫んでいました。

 

《桃香視点》

 

「ご主人様。曹操軍から兵が到着しました。」

 

翌朝、朱里ちゃんはパタパタ走ってきて、曹操軍から兵が到着したと報告してきた。

 

「よし!それじゃ関羽隊と張飛隊、残りは本陣とそれぞれに振り分けてもらえるかな」

 

「御意です」

 

そしてまた。忙しくパタパタと走って行った。

 

「これで本当に終わるんだね」

 

「ああ。これで少しは平和になるだろうね」

 

そういいながらもご主人様の顔に少し翳りがあるように見えた。

 

「何か気になることでもあるのご主人様?」

 

「えっ。なんでそう思うんだ?」

 

「だって。なんだか喜んでるように見えないから」

 

「そんな事ないよ。ちょっと考え事してただけだよ」

 

「考え事?」

 

「ああ。些細な事だよ。だから、桃香が気にする事なんかないんだよ」

 

「で、でも……」

 

「ほら。移動するみたいだぞ。俺たちも行こう」

 

ご主人様は無理やり話を終わらせて歩き出しちゃいました。

 

「……」

 

「如何なさいましたか桃香さま」

 

「あっ、愛紗ちゃん。うん、あのね。なんだかご主人様の様子がおかしくって」

 

「おかしい?」

 

「うん。なんだか悩んでるような。そんな感じ」

 

「桃香さまもそうお感じになられたのですか?」

 

「えっ、それじゃ愛紗ちゃんも?」

 

「はい。昨日、ご主人様と鍛錬をしていましたが時折、考え事をしているような何処か上の空というかそんな感じが見受けられました」

 

「そうなんだ。どうしたのかな?」

 

「さぁ。何か思うところでもあるのでしょうか」

 

愛紗ちゃんは心配そうにご主人様の事を見ていた。

 

「……ふ~ん」

 

「な、なんですか」

 

愛紗ちゃんは私の態度に少し身を引いた。

 

「なんでもないよ~。ただ愛紗ちゃんもよくご主人様の事見てるな~って思って♪」

 

「なっ!?」

 

愛紗ちゃんは顔を真っ赤にして驚いていた。

 

「何を言い出すのですか突然!」

 

「だって~。良く見てないとそう言う事ってわからないと思わない?」

 

「うぐっ!」

 

「や~ん。愛紗ちゃん可愛い~」

 

顔を赤くして押し黙る仕草が可愛らしくて思わず愛紗ちゃんに抱きついた。

 

「と、桃香さま。お止めください!皆が見ています!」

 

「な、何してるんだ二人とも」

 

「な、なんでもありません!」

 

「ふふっ♪そうそう、ご主人様には関係ないお話だよ♪」

 

「?まあ、そう言うなら。それより、ここら辺は足場悪いみたいだから気をつけてね」

 

「もう、大丈夫だよご主人様。心配しすぎっ、きゃ!」

 

「おっと、ほら、言わんこっちゃ無い、大丈夫か?」

 

歩き出した途端に何かに躓きこけそうになったところをご主人様に助けてもらった。

 

うぅ、言ってる傍からこけそうになっちゃったよ。

 

「う、うん、えへへ。ありがとうご主人様」

 

「桃香は何も無いところでも転ぶからなー」

 

「ぶー、そんな事ないよ」

 

「そうか?」

 

「そうだよ~。ひどいよご主人様、私、そんなに間抜けじゃないよ。ねえ、雛里ちゃん?」

 

「な、なんと言いますか否定できない気がします」

 

隣で雛里ちゃんが苦笑いを浮かべながら答えていた。

 

「雛里ちゃんひど~い!」

 

「ははは、ほらほら手繋いであげるから機嫌直してよ」

 

「ぶ~……えへへ、なら許しちゃおうかな」

 

頬を膨らませながらもご主人様が手を繋いでくれるって言ってくれたからその手を握った。

 

「あわわ、桃香様上手くご主人様と手を繋いだね朱里ちゃん」

 

「私たち、軍師なのに出し抜かれちゃったよ雛里ちゃん」

 

兵の振り分けから戻ってきた朱里ちゃんと雛里ちゃんは少し肩を落としていた。

 

「ふっふふっふ、ふ~ん♪」

 

私は上機嫌で鼻歌を口ずさみご主人様の横を歩いていた。

 

「負けてられないね雛里ちゃん!」

 

「うん、私たちも頑張ろうね朱里ちゃん」

 

そんな私とご主人様を見ていた朱里ちゃんと雛里ちゃんはお互い手を取り合い力強く頷いた。

 

「ご主人様!」

 

「あれ?愛紗ちゃんだ。どうしたんだろう」

 

ご主人様と歩いていると曹操さんのところの兵士さんと話していた愛紗ちゃんがこっちに駆けてきた。

 

「ご主人様、曹操軍より伝令がありました」

 

「ありがとう。なんだって?」

 

「五里ほど先に黄巾党の本陣があるようです、数は約六万とのことです」

 

「わ~、随分多いんだね」

 

「我らの軍は曹操殿から借りた兵一万を加え一万六千、曹操殿の軍が四万、数では負けています」

 

「ええ!?それで勝てるのかな?」

 

「大丈夫だよ桃香」

 

「はい、所詮やつらは烏合の衆、我らのように統率は取れていません」

 

慌てる私に、ご主人様と愛紗ちゃんは大丈夫だと言ってくれた。

 

「そうですね、愛紗さんの言うとおりです。それに今回は全てを相手にするわけでは無いので前回のようなことにはなら無いと思いますよ」

 

朱里ちゃんも笑顔で答えてくれてるからきっと大丈夫なんだと思う。

 

「そっか、それなら大丈夫だね!」

 

「ははは、でも、伏兵が居るかもしれないぞ?」

 

「そうしたらご主人様が助けてくれるよね?」

 

「桃香様……他人任せ過ぎです。少しはご自身で守ってください、その為にご主人様に稽古をつけていただいているのですよ?」

 

「も、勿論、自分の身は自分で守るよ?でも、まだ上手く剣が扱えなくて」

 

「ははは、大丈夫だよ。桃香も強くなってるよ」

 

「本当!?」

 

「ああ、でも、実践じゃ上手くいかないことが多いから油断したらダメだよ。危ないと思ったら逃げること。いいね」

 

「うん!危なかったらご主人様が助けてくれるんだもんね!」

 

私は満面の笑顔でご主人様に聞いた。

 

「まったく、仕方の無いお姫様だ。仰せのままに」

 

ご主人様はひざまついて、私の手を取り手の甲に口付けをした。ってええええっ!?

 

「~っ!」

 

「お手手にちゅーしたのだ!」

 

「はわわ~」

 

「あわわ~」

 

「な、なんだか恥ずかしいよ、ご主人様」

 

きっと今の私の顔は恥ずかしさで頬が赤くなっていると思う。だってすっごく顔が熱いんだもん。

 

「桃香はおてんば姫だからな」

 

「あ~!ひどいよぉご主人様!」

 

そんな私の気も知らないでご主人様は笑いながら答えた。

 

そんな私達の周りは和やかな空気が包んでいた。

 

《一刀視点》

 

「よし。それじゃ、最後の確認だ。朱里、雛里お願いね」

 

「「はい!」」

 

元気良く返事をしてくれた朱里は地図を広げて説明しだした。

 

「まず、私達は先行して黄巾党をおびき寄せます。そして曹操さんたちの軍は後ろへ回り込み挟み撃ちにして敵を殲滅。これが大まかな流れになっています」

 

「そして、私達の役目はその黄巾党を出来るだけ引き付けて本陣を手薄にする事が目的です」

 

朱里と雛里が交互に説明をしてくれた。

 

「でも、敵を引き突けるって難しいんじゃないの?だって、曹操さんから兵を借りてるって行っても、一万六千人だよ?いくらなんでも六万人の黄巾党相手だと一刻も持たないんじゃないの?」

 

「そうですね。ですが、それは攻め込む場合であって今回の場合は逆にこの人数じゃないとダメなんです」

 

「?どういうこと?」

 

首を傾げる桃香に今度は雛里が説明をし始めた。

 

「それでは、桃香さまの兵が一万人だとしましょう」

 

「うん」

 

「そして、攻め込んできた盗賊さんは五千人。桃香さまならどうしますか?」

 

「え?う~ん。こっちに被害が出ないようにみんなで攻める、かな?あ、でも少しは本陣に兵を残しておかないと危ないよね」

 

「そうですね。では、その五千人に対して、九千人で当たるとしましょう」

 

「うんうん」

 

「ですがその五千人の盗賊さんたちは囮で十分本陣との距離をとられた後、桃香さまたち本陣の後ろから二万人で攻めてきたらどうなりますか?」

 

「ええっ!?そ、それじゃ対応できないよ!……あっ!そういうことか!」

 

桃香は納得したのか顔をパーっと明るくして微笑んでいた。

 

「すごいね!こんな作戦もあるんだね!」

 

「では、我々は本陣から黄巾党を引き剥がすのが仕事という事か?」

 

「はい。ですが、これは非常に危ない賭けでもあります」

 

「機を見あまると黄巾党の軍勢に飲み込まれ私達は負けてしまいます」

 

「その逆に早すぎると本陣の黄巾党が多すぎると曹操さんの軍が大きな被害を受けてしまいます」

 

「ふむ。ではどうするのだ?」

 

「とにかくまずは黄巾党を引きずり出さなければいけません。その為、一度真っ向から当たり暫く後反転、敗走する振りをします」

 

「了解。それじゃその判断は朱里たちに任せてもいいかな?」

 

「御意です!頑張ろうね雛里ちゃん」

 

「うん」

 

「よし!それじゃ行動に移ろう!今回は派手に暴れて逃げるぞ!」

 

「「おおぉぉぉっ!」」

 

「それじゃ愛紗!」

 

「はっ!」

 

「まずは愛紗たち関羽隊が黄巾党に一当てしてくれ」

 

「はっ!必ずや成功して見せましょう!」

 

「鈴々は!ねえ、鈴々は!」

 

「鈴々は朱里と一緒に愛紗の手助けだ」

 

「わかったのだ!」

 

「朱里もよろしくね」

 

「はい!」

 

「そして、本陣には俺と桃香、それと雛里だ。雛里は状況を見てどの時期で撤退するかを見定めてドラを鳴らしてくれ」

 

「わかりました」

 

各自に命令をし戦いに備える。

 

「それじゃ行くぞ!平和な時を手に入れるために!」

 

「「おおおおおっ!!」」

 

………………

 

…………

 

……

 

「ふぅ。こんなものかな」

 

「お疲れご主人様」

 

桃香が横に並び労いの言葉をかけてくれた。

 

「ありがとう桃香。でも、俺なんかが戦に口を出していいのかな?」

 

「いいえ。そうする事で兵士達の士気を高める結果になるのです。ですから、ご主人様は堂々となさっていてください」

 

「うん。わかったよ」

 

雛里も俺の横になって話しかけてきた。

 

「……」

 

俺はじっとじっと前を見詰めていると。

 

「……ねえ。ご主人様?」

 

「え?な、なに?」

 

「何か気になることでもあるの?」

 

「なんでそう思うんだ?」

 

「だって。今のご主人様凄く怖い顔してるよ?」

 

「そ、そんなに怖い顔してるか?」

 

「うん。こ~んなに目を吊り上げて。ね、雛里ちゃん」

 

「そ、そうですね」

 

桃香は指で目尻を吊り上げていた。そ、そんな顔してたのか俺?

 

「ご主人様。私達に言えない事?」

 

「そういうわけじゃないとよ。ただ、確証が持てないから話してもいいのかなって思ってさ」

 

「確証?」

 

「ああ。だからもう少し待っててくれるかな。必ずみんなに話すから」

 

「わかったよ。それまで待ってるね。でも、絶対に話してね?」

 

「わかってるよ。ちゃんと説明する」

 

「うん♪」

 

納得してくれたのか桃香は俺の腕に抱きついてきた。

 

「お、おいおい。今は作戦中だぞ?」

 

「えへへ♪だって嬉しかったんだもん♪」

 

「?」

 

何がそんなに嬉しかったんだ?

 

「ご、ご主人様。愛紗さんたちがそろそろ黄巾党と接触します」

 

雛里が望遠鏡を覗きながら報告してくれた。

 

「そうか……」

 

無事で居てくれよ愛紗……

 

《愛紗視点》

 

「怯むなっ!あのような連中!お前達の敵ではない!一気に攻め込むぞ!」

 

「「おおぉぉぉっ!」」

 

すでにこの作戦の主旨は兵達に伝えてある。

 

だから無理に戦わず、されど相手に悟らせぬように戦わなければならない。

 

「関羽将軍!前方から黄巾党が攻めてきます!」

 

「よし!では、作戦通りに行くぞ!わかったか!」

 

「「おおおっ!!」」

 

「良い返事だ!ならば行くぞ!私の旗を見失うなよ!」

 

「「おおおっ!!」」

 

「突撃いいいぃぃぃっ!!」

 

大声で叫び黄巾党に特攻をかける。

 

「はあああぁぁぁっ!!」

 

(ザシュッ!!)

 

「ぐはっ!」

 

(ザシュッ!!)

 

「ぎゃあああぁぁっ!!」

 

「こんなものか!このこし抜けどもがっ!!」

 

「くそっ!こっちの方が数が多いんだ!数人で囲め!」

 

「ふんっ!貴様らのような雑魚が複数で来ようとも私には敵わぬぞ!」

 

「う、うるせぇえっ!行くぞお前ら!」

 

「ふん。馬鹿共めが……はあああぁぁぁっ!!」

 

鼻で笑い私は愛刀を振り回す。

 

「がはっ!」

 

「お、おい大丈っ」

 

「何処を見ている!」

 

「ぐがっ!」

 

「くそ!もっとだ!もっとこい!この女を囲め!」

 

「関羽将軍!」

 

「私は平気だ!お前達は目の前の敵に集中しろ!」

 

「なに余裕ぶっこいてるんだよ!この人数で勝てると思ってるのか!」

 

「……ふっ」

 

「こ、こいつ鼻で笑いやがった!」

 

「ああ、笑ったとも。所詮お前達は下の下。いくら集まろうとも私には到底敵わぬからな」

 

「くっ!だ、だが、戦はお前一人でやってるわけじゃないんだ!この圧倒的戦力差で何処まで持つかな?」

 

一瞬怯みながらも自分らがまだ有利である事を強調してくる。

 

「ならやってみるがいい」

 

「くそっ!舐めやがって!行くぞお前ら!いくら強くたって人間なんだ!そのうち疲れるに決まってる!」

 

「うおりゃぁぁぁっ!!」

 

「死にやがれっ!!」

 

次々に襲い掛かってくる黄巾党を受け止めるわけでもなく体の軸をずらしながら避け、すれ違いざまに叩き伏せていく。

 

だが、それも時間が経つに連れて徐々に押され始めた。

 

「くっ!」

 

「はぁはぁ、へへ。やっと疲れが出てきたみたいだな」

 

「ふん。お前らこそ随分と疲れているようだが?」

 

まだか?まだ合図は無いのか?

 

あれから半刻くらいだろうか?最初のうちは余裕で対処していたが流石にこの人数だ。私でも捌ききれなくなってきたぞ。

 

「関羽将軍!大丈夫ですか!」

 

「ああ。大丈夫だ!そっちは大丈夫か!」

 

囲まれながらも仲間の兵に状況を聞く。

 

「何とか持ちこたえています!ですが、時間の問題かと!」

 

「へへ。そろそろ終わりってか?」

 

下衆な笑いが私の耳には言ってくる。

 

「ふん。まだまだだっ!」

 

「へへ。その威勢もいつまで続っ(ジャーンジャーンジャーンッ!!)な、なんだ!?」

 

そしてようやく待ちに待った合図が来た。

 

「来たか!はああああぁぁぁっ!!」

 

(ザシュッ!!)

 

「ぎゃああああぁぁぁっ!」

 

本陣からの撤退合図だ。

 

「みなのもの!撤退するぞ!このままでは負けてしまう!一旦合流だ!」

 

「「おおおおっ!!」」

 

一斉に向きを変え本陣へと走る。

 

「なっ!逃がすな!追え、追えええぇぇっ!!」

 

「……作戦通りだな」

 

黄巾党共は私達が不利になったと勘違いをして追いかけてきた。

 

「愛紗~~~~っ!!助けに来たのだ!」

 

「鈴々!」

 

暫くすると前方から鈴々が駆けてやってきた。

 

「今なのだ!弓を放て~~~っ!!」

 

鈴々の合図で空に向かい一斉に矢は放たれた。

 

その矢は我々を通り越し後ろから追いかけてくる黄巾党へと向かっていた。

 

「助かる!」

 

「えへへ。殿は任せるのだ!」

 

「ああ。気をつけろよ!」

 

「鈴々は強いから大丈夫なのだ!うりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

そう言うと鈴々は自分の得物を振り回しながら黄巾党に迫っていった。

 

「まったく。元気な奴だ」

 

「愛紗さ~~~ん!ご無事でしたか!?」

 

「むっ、朱里か!ああ、こちらは問題ない。黄巾党の状態はどうなのだ?」

 

走りながら朱里に話を聞く。

 

「えっとですね。大分敵を引き付けられています。あとは曹操さん達が本陣を強襲してくれれば、今度はこちらが反撃の番です」

 

「そうか。では、作戦通りというわけだな」

 

「そうなります。多分、そろそろ曹操さんたちも動き出すと思います」

 

(ジャーンジャーンジャーンッ!!)

 

『『『『うぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!』』』』

 

そんな時だった。後方からけたたましいドラの音と共に怒号が聞こえてきた。

 

「始まったかっ!」

 

「はい!それでは皆さん!もう少し進んだら反転して、そのまま黄巾党を倒しちゃってください!」

 

「よし!みなのもの行くぞ!」

 

「「おおおおっ!!」」

 

「本陣もすぐ居に合流します!頑張ってください愛紗さん!」

 

「ああっ!」

 

そして私は再度、黄巾党に向っていった。

 

《曹操視点》

 

「そろそろかしらね」

 

劉備たちが敵を引き付けてくれたおかげで本陣が大分手薄になってきた。

 

「それにしても、あの関羽とか言う娘もやはりいい武を持っているわね」

 

小高い丘に陣を取っていたので戦の状況が良くわかった。その中でも関羽の所だけは押されずその場に踏みとどまっていたからだ。

 

「華琳様。まさか……」

 

横で待機していた秋蘭は一瞬困惑した顔をした。

 

「ふふっ。武も有り、あの容姿。北郷と共に欲しいわね」

 

「か、華琳様!?私ではダメなのですか!?」

 

戻ってきていた桂花は驚きその場にへ垂れ込んでしまっていた。

 

「今は少しでも使える駒が欲しいもの。私が天下を統一する為にはね」

 

「で、ですが!」

 

「まあ、北郷と一緒で一筋縄では行かないでしょうけどね。とにかく、今はこの戦いを終わらせることが先決よ。早速、張三姉妹を捕縛してきなさい!」

 

私は立ち上がり腕を振る。

 

「「御意」」

 

春蘭と秋蘭は礼を取ると自分の隊へ向っていった。

 

「桂花は戦況を見て、逐一私に報告しなさい」

 

「はっ」

 

「ではドラを鳴らしなさ!そして黄巾党の本陣を一気に叩き潰すのよ!」

 

「はっ!」

 

桂花は近くに居た兵士に指示を出す。

 

「所で桂花」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

「北郷はこの戦に参加しているの?」

 

「北郷は劉備と共に本陣で待機しています」

 

「そう……まあ、この戦いで北郷が出てきてしまえばすぐに終わってしまいかねないものね」

 

それでは、挟み撃ちにする意味が無くなってしまう。

 

「……あ、あの華琳様」

 

「なにかしら?」

 

「なぜ、あのような男に興味をもたれるのですか?確かに武は春蘭以上でしょう。それに頭も大分切れるように見えます。ですが、所詮は男。いつ裏切られるかわかったものではありません」

 

桂花の言う事も最もね。

 

なんせ、今のこの状況を作り出した元凶こそ。欲に眩んだ男共なのだから。

 

私腹を肥やし。自分さえ良ければそれで言いと考え。民を苦しめ、その結果、黄巾党を生み出してしまったのだから。

 

「ええ。確かにそうね。でも、北郷はそんな事をしないと思うわ」

 

「なぜですか?」

 

「なぜかしらね?」

 

「え?」

 

「何故か私にもわからないの。でも北郷はそこいらの下衆な官とは違うと確信を持っていえるわ」

 

「華琳様にしては。随分と曖昧ですね」

 

「確かにそうね」

 

私は根拠のない事を一切信じては居ない。勿論、占いなども私は信じていない。自分の目で見て、耳で聞いたものしか私は信じない。

 

だから最初は天の御遣いの噂もただの民達が苦しさを紛らわすだけに生み出した噂だと思っていた。

 

でも違った。北郷を見た時に全て霧散してしまった。

 

やつの立ち居振る舞い。それにあの強さだ。噂で聞く呂布の黄巾党を一人で三万人を倒したと言う噂なんかより目の前で起きたことの方が信じられる。

 

あの強さは誰も持ち得ないものだ天候を操るなど、今までに見たことが無い。あれこそまさに神の所業。天の御遣いと言わしめるに足りる理由だ。

 

そして北郷は優しすぎる。そこがあいつの良いところでもあり弱点でもあると私は思っている。

 

別段。優しいことは悪いことでは無いわ。でも、あいつはその優しさを襲ってくる相手にも感じてしまっている。

 

賊の身に落ちた奴などもう人ではない。獣だ。人を喰らう獣も同然なのだ。だから駆除しなければいけない。でもやつはそうとは見ていない。あくまでも賊になっても人として扱っている所が北郷にはある。

 

それを感じたのはあの戦の時だった。私達の計画にまんまと乗ってしまい一人で二万の黄巾党に挑んだあの時だ。

 

戦を終えて私達の陣営に来た時の北郷の顔は普段と変わらないように見えた。いいえ、普段と変わらないように努めていたという方が正しいわね。でも、私には直ぐにわかった無理をしていると。賊を殺めることに抵抗を感じているということに。

 

でも、そんな事を思っていてはこの乱世を乗り越えられない。何れ心が壊れてしまうわ。だから、私達は何れその心を捨て、そして何も感じなくなる。

 

だけど私は北郷からはそれ以外のものを感じていた。北郷の眼はまったく淀んでいなかった。いえ、むしろ力強く輝いていた。きっとあいつは信じているんだわ。この世が必ず安心して暮らせる世になることを。

 

その時、私はあいつに今まで以上の興味を持った。もっと北郷一刀と言う人物を知ってみたいと。

 

「とにかく。今はこの戦いを早く終結させる事が第一。桂花、頼んだわよ」

 

「はいっ!」

 

「ふふっ」

 

元気良く返事をする桂花を微笑ましく見詰める。

 

ホント、可愛らしいのだから。

 

(ジャーン!ジャーン!ジャーン)

 

ドラが鳴り私は高らかに叫んだ。

 

「さぁ!この戦いで黄巾党を根絶やしにするのよ!全軍、突撃っ!!」

 

《一刀視点》

 

結果は曹操軍が主犯格である張角らを討ち取り、統率が取れなくなった黄巾党は徐々に討ち取られるか、敗走していった。

 

「お疲れ様。愛紗、鈴々」

 

戻ってきた愛紗と鈴々に労いの言葉をかける。

 

「ご主人様もご無事で何よりです」

 

「ははっ。ずっと本陣に居たからね。危険な事は一度も無かったよ」

 

「それは何よりです。ところで……」

 

愛紗は目線を横にずらして桃香を見ていた。

 

「……なぜご主人様に抱きついているのですか桃香さま」

 

「え?それは……えへへ♪」

 

「っ!ご、ご主人様!?」

 

「ええ?!ま、まだ何にもしてないよ!な、なあ雛里!」

 

「えっと、その……」

 

「ま、まだですと?!」

 

「い、今のは間違い!桃香に手を出すつもりは!」

 

「え~。別に私は手を出してもらってもいいんだよ?」

 

「ちょ!と、桃香!こんなところでその発言は!」

 

「ふ、ふふふ……私が命がけで戦っていたといいのに……ご主人様は……」

 

愛紗は俯き肩を震わせながらブツブツを喋っていた。まずい、この状態は非常にまずい!

 

「お、落ち着け愛紗!話せば判る!」

 

「っ!」

 

顔を上げた愛紗の後ろに般若が!般若がぁぁぁっ!!

 

「もう、愛紗ちゃん。ご主人様を困らせたらダメだよ?」

 

おおっ!桃香がここで救いの手を!

 

「そうだ!それだったら愛紗ちゃんもご主人様に可愛がってもらおうよ!」

 

「はぁ!?」

 

な、何言い出してるんだ桃香は!

 

「えええっ!?な、何を言い出すのですか桃香さま!?」

 

「はわわっ!さ、三人で!?」

 

「あわ、あわわ……ぶぷっ!」

 

「雛里ちゃんしっかり!」

 

行き成り雛里は鼻を押さえだし、それを朱里が心配そうに面倒を見ていた。

 

「ね、ね?いい考えでしょ♪」

 

「よ、良い考えではありません!何を考えておいでなのですか!」

 

「え~。だって、愛紗ちゃんだってご主人様の事、す」

 

「わーっ!わーっ!わーーーっ!!」

 

愛紗は急に大声上げて桃香の声を遮った。

 

「と、とにかく!黄巾党を倒したのです!これで大陸も平和になりましょう!」

 

「あははっ。そうだね。これで大陸も平和になるよね」

 

桃香は笑いながら愛紗に同意した。

 

「それで、朱里よ。今後我々はどうするのだ?」

 

「はわわっ!え、えっとですね。主犯格である張角さんを打ち倒したと言っても、まだ各地で黄巾党の残党が残っていると思うので暫くはそれの対処でしょうか」

 

「そっか。それじゃ、ここからは曹操さん達とは別行動の方がいいのかな?」

 

「そうですね。今まで以上の規模の黄巾党が現れる事はないと思いますので。ここで分かれるのが丁度良いかと」

 

桃香の質問に朱里はニコリと笑いながら答えた。

 

「それじゃ、曹操さんの所に言いに行かないとね」

 

「いや。その必要は無いみたいだよ」

 

俺の背後から誰かが近づいてくるのが分かり俺は後ろも見ずに答えた。

 

「え?」

 

「あら、良くわかったわね」

 

《曹操視点》

 

「いや。その必要は無いみたいだよ」

 

「え?」

 

「あら、良くわかったわね」

 

私が近づ居ているのがわかったのか北郷はこちらを見ずに劉備に答えていた。

 

「それで?私に何か用があるのかしら?」

 

「ああ、ここで分かれようと思ってね。張角も討ち取ったんだし、あとは各地に居る黄巾党の残党を退治するだけだからね」

 

「そうね。それではここでお別れね」

 

「はい、曹操さんにはお世話になりました!」

 

「ふふふ、それじゃ、いつか返してもらいに行くわ」

 

「ははは、それは勘弁願いたいな。出きればだけどね」

 

「それは無理な相談ね。私は欲しいものは絶対に手に入れる主義だから。もちろん、あなたのことよ北郷」

 

「ダメです!ご主人様は私たちのご主人様なんですからね!」

 

「そうだそうだ!お兄ちゃんは渡さないのだ!」

 

北郷を取られないようにする為か北郷の腕や足に抱きつく劉備たち。

 

「あらあら、随分と好かれているのね北郷」

 

「おかげさまでね」

 

「そうだわ。北郷、一つお願いがあるのだけれどいいかしら?」

 

「なんだい?曹操軍に加われってこと以外ならいいよ」

 

「その手もあったわね。でも違うわ、ちょっと二人だけで話がしたいだけよ」

 

「なっ!ご主人様と二人だけに出来るわけがないであろう!」

 

「そうです!華琳様、危険です。おやめください!」

 

「お黙り、桂花」

 

「は、はい……」

 

「どうかしら?たいした事ではないと思うのだけれど?」

 

「いいだよ。俺も曹操と話がしたかったところだ」

 

「ご主人様?!」

 

「大丈夫だから心配しないで」

 

「わ、わかりました……」

 

北郷が微笑みかけると関羽は呆気なく承諾してしまっていた。

 

「そちらもいいようね。それでは行きましょうか。くれぐれも着いて来ない様に」

 

「はい……」

 

「(秋蘭よ、こっそり着いていくぞ!)」

 

「(姉じゃ、華琳様は着いてくるなと仰っているのだぞ)」

 

「(わかっているが心配ではないか!)」

 

「(私は大丈夫だと思うぞ姉じゃ、それに……)」

 

まったく、まる聞こえじゃない。まあ、そんなところが可愛らしいのだけれど。

 

「あ、そうそう、こっそり着いてこようものなら今後閨には呼んであげないからね」

 

「っ?!も、勿論行きません!」

 

「ふふふ、いい子ね。それでは行きましょうか」

 

「ああ」

 

私と北郷はしばらく歩き周りが岩に囲まれているところまで来た。

 

「……そろそろいいだろ?で、その隠し持っている大鎌で俺の首でも取るのか?」

 

「流石ね。あの子達は騙せてもあなたは騙せなかったか……話が早い、私と手合わせをしなさい」

 

「なんでそんな事をしないといけないんだ?」

 

「あなたの力を見るためよ」

 

「俺の力なら前に見せただろ?」

 

「ええ、でも今この場で見たいの私が直々にね」

 

「参ったな……本気は出したくないんだけどな」

 

「私を見くびってもらっては困るわね」

 

「見くびってはいないさ……はぁ~、言っても聞かないよね」

 

「ええ、わかっているじゃない」

 

「仕方ない……先に言っておく一撃だけだ。俺が本気を出すのは」

 

「かまわないわ……来なさい!」

 

「では……」

 

「……」

 

お互い手に得物を持ち構える。

 

まったく隙が無い。北郷一刀、なんて男なの……

 

「……」

 

……っ!?今だ!

 

押し黙ったようにしていた北郷だったが一瞬意識がそがれたのか隙が生まれた。

 

「はぁ!」

 

私は北郷の一瞬の隙を突き大鎌を振り上げ飛び掛っていった。

 

「っ?!」

 

とったっ!……ーーっ!

 

私は勝ちを確信した瞬間だった、今までに感じたことのない殺気を感じ切りかかる寸前の所で飛びのいた。その瞬間、目の前を風が通り抜けていった。

 

な、なんだ?今の攻撃は……見えなかった?それに……

 

私の手は振るえ、絶の先を見ると大鎌の部分は切れて地面に突き刺さっていた。

 

この私が震えている?馬鹿な……けど、北郷のあの瞬間の殺気は春蘭と同等、いえそれ以上だったわ。

 

「曹操」

 

(ビクッ!)

 

声を掛けられた私は一気に体を強張らせてしまった。

 

「な、なにかしら?」

 

冷静を装いつつも北郷の殺気に当てられ一瞬どもってしまった。

 

「謝らないといけない事がある」

 

「あら、何について謝ると言うの?」

 

「今の攻撃、あれ本気じゃないんだ」

 

「なっ?!」

 

あれで本気ではないですって!?あの殺気もまだ本気ではないと?

 

「……ふ、ふふふ、あはははははは!」

 

「あ、あの曹操?」

 

「あれで本気ではないですって?あははは!面白い!ますますあなたが欲しくなったわ北郷一刀!」

 

私はうれしそうに先端の切れた鎌を北郷に向けて宣言した。

 

「この曹孟徳を震えさせ、私の得物である絶をも切り落としたのはあなたが初めてよ北郷一刀。やはり私の天下統一にはあなたの力が必要だわ」

 

「だから、俺は曹操の力にはなれない。求めるものが違いすぎるからね」

 

「あなたが求めるものは劉備が言っていた『みんなが笑顔で暮らせる世界』、だったかしら?」

 

「ああ、きっと曹操から言わせればくだらない事なんだろうけど、俺はくだらないとは思わない。だから桃香の求める理想に俺は力を貸そうと思ったんだ」

 

「随分と矛盾しているわね。理想を実現するには周りの諸侯がそれを邪魔するわ。何れ国と国との争いが起こるのは必至、その時点で人を殺めないで済む筈は無いのではなくて?」

 

「ああ、そうだな。でも、手を取り合ってくれる国もあるはずだ。甘い考えかもしれないけど俺は信じたいんだ。曹操からしたら馬鹿げているように見えるかもしれないけどさ」

 

「ええ、そうね。とても馬鹿げているわ。でも、嫌いではないわよ、自分の意思を貫く事はとても大変な事なのだから……だから私は天下統一を目指すのよ」

 

「相容れぬって所かな」

 

「そのようね。でも、私はあなたを諦めないわ。必ず私はあなたを手に入れてみせる」

 

「ははは、もし、俺が桃香じゃなく、曹操と先に出会っていれば惚れちゃってたかもな」

 

「っ!」

 

私は北郷の笑顔に見とれてしまった。

 

「あ、あの曹操?」

 

「っ!な、なんでもないわ。戻るわよ」

 

「あ、ああ」

 

何を見惚れているの私は……

 

私と北郷は皆が待っている場所へと戻っていった。

 

《一刀視点》

 

「待たせたわね」

 

「ただいま」

 

「華琳様!」

 

「ご主人様ご無事で!」

 

戻ってくると一目散に曹操には夏候惇が、そして俺には愛紗が駆け寄ってきた。

 

「ははは、大げさだよ愛紗は」

 

「ご、ご主人様!頭を撫でないでください!皆が見ています!」

 

「いいな~愛紗ちゃん」

 

「愛紗だけずるいのだ!」

 

「はわわ、愛紗さんいいな……」

 

「羨ましいでなぁ」

 

「と、桃香に鈴々、朱里たちまで?!」

 

「~~~~っ!」

 

桃香たちに詰め寄られ、しどろもどろになる俺に恥ずかしさの余り顔を赤くして俯く愛紗。

 

「ふふふ、その恥じらい良いわ、関羽……やっぱり関羽も欲しいわね」

 

「か、華琳様?!」

 

「っ!んん!なんでもないわ。では北郷、また逢いましょう」

 

「ああ……また?」

 

「ええ、何れ逢う事になるわ。こんな世の中ですものね」

 

確かに、何れは戦う事になっちゃうんだよな……なんせ目指すものが同じなんだから。

 

そう言うと曹操たちは踵を返して自軍へと戻っていった。

 

「行っちゃったね、ご主人様」

 

「ああ、それじゃ俺らも行くとするか」

 

「うん!困ってる人たちの為にがんばろー!」

 

「「おー!」」

 

俺たちは曹操たちとは逆の方向へと軍を進ませた。

 

数日たち、一刀たちは、今回の活躍で桃香は平原の相に就任した。

 

《To be continued...》

葉月「黄巾党編これにて終了でーーーーす!」

 

愛紗「ご苦労だったな」

 

葉月「もう、大変でした!」

 

愛紗「ではいよいよ。反董卓連合軍の話に入るのか?」

 

葉月「いえ。少し小休憩して。日常の話を書いてから入ろうと思います」

 

愛紗「なるほどな。では、そろそろ?」

 

葉月「はい。そろそろ第二弾。拠点争奪人気投票を行うと思います」

 

愛紗「うむ。と言う事は今回も前回と同じ人数でやるということだな」

 

葉月「……え?そんなわけ無いじゃないですか」

 

愛紗「なに!?どういうことだ!」

 

葉月「もちろん。次の方を登場させるに決まっているじゃないですか」

 

愛紗「登場、だと!?誰だ!一体誰が出てくるというのだ!」

 

葉月「ぐ、ぐるぢぃ……首!首絞めてます!」

 

愛紗「いいから言え!一体!誰が!出ると!言うのだ!」

 

葉月「ぐ、ぐは……」

 

??「はっはっは!それでは葉月が死んでしまうぞ」

 

愛紗「むっ!誰だ!」

 

??「まだ姿を晒す事は出来ないのでは次回まで楽しみにしておくのだな!」

 

葉月「げほっげほっ!た、助かった……」

 

??「散々であったな葉月よ」

 

葉月「おお!あなたは!次回登場する――じゃないですか!」

 

??「うむ。私も愛紗を弄れると思うと今から楽しみで仕方が無いぞ」

 

葉月「――っ!」

 

??「葉月よ!」

 

??・葉月「(ガシッ!)」

 

愛紗「何を力強く手を繋いでいるのだ!私は弄られキャラでは無いぞ!」

 

葉月「……え?」

 

??「……はぁ」

 

愛紗「な、なぜそこで首をかしげるのだ!そして溜息を吐くな!」

 

葉月「だって……ねぇ?」

 

??「うむ。天然とは恐ろしいですな葉月よ」

 

愛紗「ぐぬぬっ!ええい!いい加減に姿を」

 

葉月「おっと!そろそろお時間が来てしまいましたね」

 

愛紗「ちょ!まだ話が」

 

??「うむ。もう殆どの者が分かっているかも知れぬが次回は私が華麗に登場するぞ。楽しみに待っているといい」

 

愛紗「だから、私の話を」

 

葉月「では皆さん」

 

??「また会おうぞ!」

 

愛紗「私の話を聞けえええぇぇぇっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月「やっぱり弄られキャラですよね。愛紗は」

 

??「うむ。これからは頼むぞ葉月よ」

 

葉月「ええ。もちろん」

 

??・葉月「(ガシッ!)」

 

愛紗「だから力強く手を握るな!」


 
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