No.224209

真恋姫無双 天遣三雄録 第十七話

yuukiさん

出会った青年と少女。
しかし、それは悲劇への序幕。

かもしれない?

2011-06-22 22:50:11 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4811   閲覧ユーザー数:3702

始めに、主人公を始めとした登場人物の性格にズレがあるかもしれません。

なお、オリキャラ等の出演もあります。

 

そして、これは北郷一刀のハーレムルートではありません。

そういうものだと納得できる方のみ、ご観覧ください。

 

 

第16話 悲劇では、終わらない       by一刀

     どこかで聞いたことか?そのセリフ by左慈

     ええ、聞いたことが有ります    by于吉

 

現在の都、洛陽と過去の都、長安のほぼ中心にある地には今、一つ天幕が張られていた。

外では董卓軍、北郷軍の両軍が睨みあうように対峙しており。

中では董卓軍、北郷軍の将と軍師達が探り合うように対峙していた。

 

「于吉。腹減ったんだけど」

 

「我慢してください。左慈」

 

左慈は顔を顰めながら、いつまでも来ない一刀と董卓軍の代表を待っていた。

対するように反対側に立つのは董卓軍の将。呂布とお付きの軍師、陳宮だった。

 

「ちんきゅ、、おなか減った」

 

「はい!お饅頭を用意していますぞ!」

 

呂布は陳宮から受け取った饅頭を頬一杯に頬張る。

左慈は羨ましそうにそれを見ながら、隣に立つ于吉の袖を引く。

 

「于吉。饅頭が食いたい」

 

「はいはい。帰ったら食べに行きましょう。今は我慢してください」

 

「ちっ」

 

左慈がそうやって舌打ちをしているのを呂布はジッと見ていた。

呂布は腕一杯に持った饅頭の山を一度見ると、左慈の元へと近寄っていく。

 

「食べる?」

 

「いいのか?」

 

呂布が差し出した饅頭を受け取ろうとする左慈。その時、軍師の二人は叫んだ。

 

「なっ、左慈。呂布は敵の将ですよ!そのような物を受け取って、もし毒でも入っていたらどうするのですか!」

 

「れ、恋殿~。ねねが恋殿の為に用意したお饅頭をそんな奴にくれてやることないです!その男は華雄隊を倒した敵なのですぞ!」

 

「はむはむ」

 

「もぐもぐ」

 

「「、、、、、、、」」

 

軍師二人の正論も何のその、武官二人は饅頭を美味しそうに頬張っていた。

その光景に思わず、軍師の二人は言葉を失う。

 

「于吉。敵だ、何だとか小さい奴だな!戦場じゃないんだ、敵も味方も無いだろう!」

 

「おなか減ってるのは、、、誰だって辛い」

 

戦場以外では完全に無防備な二人は案外、息が有っているのかも知れなかった。

そんな二人を見て、思わず顔を見合わせる于吉と陳宮。将軍に同じ悩みを抱える同胞がそこには居た。

 

 

 

そんな風に将軍二人、軍師二人が交流を深めていると天幕に董卓軍君主、董卓とその連れ達が入って来た。

 

董卓は于吉と左慈に頭を下げる。何に対しても礼を失わぬこと。それこそ董卓が一番大切とすることだった。

董卓のその姿に于吉はやはり、一刀の考えが当たっていたのかも知れないと考える。

ならば、何故両軍の将が衝突。下手をすると軍が正面衝突する事態になったのか、黒幕が居る筈だと試算を弾き出す。

 

「ちょっと、北郷軍の代表はまだ来ないわけ?」

 

賈詡は不機嫌な顔でそう言う。無論、支度が出来たら集合という話で集まった緊急の会談。

時間などは決めてはいないから、相手が来ていないことが有るとはわかっているが、黙って待っていては舐められると判断した言動だった。

 

「待っていろ。もうすぐ北郷はくる」

 

そう返す左慈を張遼は『こいつか』と呟きながら興味深そうに見る。

華雄はただ顔を逸らし続けていた。

 

董卓はもうすぐ来ると言われた北郷一刀がどんな人物なのかを考える。

会談を望んでいた董卓だったが、華雄が焦って北郷軍に突っ込み戦ったと聞いた時はもう駄目だと思った。

しかし、もしかしたらという望みで会談を持ちかけてみれば、あっさりと受け入れてくれた。

 

「(私達に非があるのに、話しあってくれる。きっと北郷一刀さんは善い人)」

 

それが董卓の出した答えだった。

 

その時、左慈の言葉通り一刀は天幕へと入って来た。

否、見た目少年の子を人質に飛び込んできた。

 

「この子がどうなってもいいのか!?」

 

「タ、タスケテ~」

 

「、、、、、、」

 

「、、、、、、」

 

「、、、、、、」

 

「、、、、、、」

 

「、、、、、、」

 

その光景に董卓軍の面々は言葉を失う。

当然だろう。話し合いに来た相手がいきなり、知りもしない子どもを人質にとって現れたのだ。

 

董卓にいたっては『北郷一刀はきっと善い人』などと考えていた時の笑顔のまま固まっていた。まるで剥製の様に。

 

「詠ちゃん。あの子、どう見ても演技してるよね?あれ、違うのかな?」

 

「駄目よ、月。深く考えちゃ。馬鹿になっちゃう気がするわ。あれは無視しなさい」

 

誰もが現状の確認に精一杯な状況で動く者が一人。

その名を呂布。いち早く現状を確認(誤認)した呂布は、仲達を救う為に一刀へと突っ込んだ。

 

「ほら、お譲ちゃん!とっとと、止まらねえと、怪我しちまうぜ!」

 

「そう言う三下のセリフは、、、死亡フラグ」

 

いきなりスーパーハイテンションモードの一刀の顎に、何処からか電波を受信した呂布は拳を打ち込む。

 

「がはぁっ」

 

強烈なアッパーと決められた一刀は天幕上へと打ち上がっていった。まるで打ち上げ花火のように。

 

臨界体制の軍の君主に相手の軍の将が乱暴を加えた決定的瞬間だったが、誰も咎めることは無かった。

呂布と仲達以外の全員はただ、言葉を失いながら天幕の天井に首を突き刺した一刀を見つめていた。

 

「、、、、大丈夫?」

 

「へ?は、はい。まあ」

 

「よかった」

 

「っっ、、、、」

 

呂布は危機から救った(誤解)子ども(誤認)を抱きよせながら呟く。

仲達は背の問題的に不可抗力で頭の上に乗っかる柔らかい胸の感蝕にただ赤くなっていた。

 

 

 

 

時間は少し巻き戻る。

 

一刀と仲達の二人は天幕への入り口で立ち止まっていた。

 

「ほ、本当にやるんすか?」

 

「ああ、もし董卓が本当に暴君だったら舐められるのはまずい。だから、俺も暴君になろうと思う」

 

目には目を、歯には歯を、暴君には暴君を。完璧すぎる対抗手段だった。

 

「絶対にその考えは間違ってる」

 

「文句を言うなよ。ほら、行くぞ!」

 

一刀は気合いを入れると、仲達の首に腕を回しながら天幕へと飛び込んで行った。

 

「この子がどうなってもいいのか!?」

 

「タ、タスケテ~」

 

仲達のイモ過ぎる芝居など気にせず。董卓が座る椅子を見た。

そこに居たのは淡い青色の髪で豪勢な服をきた儚げな少女だった。

笑顔のまま固まっているのが気になるが、気にしないことにした。

 

「(おいおい、あの子が董卓かよ。完全にストライクゾーンじゃん。幼女、いや、童女より少し上、まさに少女だな。メイド服とか似合うぜ、絶対)」

 

「(なに敵の親玉みて興奮してんすか)」

 

一刀と仲達がそんなことを呟きあっている間も、董卓達はただ言葉を失っているだけだった。

ただ、一人を除いては。

 

「(わっ!りょ、呂布だ。呂布が来るぞー!)」

 

「(あの子が呂布か。面白い!)」

 

慌てる仲達を見て、一刀は笑みを深くする。迫りくる人中の呂布に臆することなく男らしく叫んだ。

 

「はら、お譲ちゃん!とっとと、止まらねえと、怪我しちまうぜ!」

 

叫んだ内容はどうしようもなく情けないセリフ。

 

「そう言う三下のセリフは、、、死亡フラグ」

 

電波な呂布のセリフを聞き終わる前に一刀の意識は一瞬飛んだ。

 

そして気が付けば、天幕の天井に首から上だけが減り込んでいた。

一刀は首から下が宙に浮いているのに驚いたが。それ以上に驚いたのは外に居る兵士たちだった。

 

天幕の外から見れば、まるで天幕の上に北郷軍君主の生首が乗っているようにしか見えなかった。

 

北郷軍の兵士達は絶叫した。

 

「「「「み、御使い様の生首がああああああ!!」」」」

 

董卓軍の兵士達も絶叫した。

 

「「「「ええええええええええええええええ!!」」」」

 

一刀のおふざけで、危うく両軍は衝突しかけたのだった。

 

 

 

 

「あ、アンタねえ!何やってんのよ!危うく戦闘になりかけたのよ!?」

 

「思い付きでやった。今は後悔している」

 

首が突き刺さって身動きが取れなかったところを救出された一刀は今、天幕の中で正座していた。

賈詡は一刀を見下ろしながら怒鳴っていた。もしかしたら、十常侍と繋がっているかも知れない男。その上、天の御使いを自称している男だ。

まともじゃないかもしれないとは思っていたが、目の前で小さくなる男はまともじゃない所が異常だった。

 

「詠ちゃん。北郷さんも反省しているみたいだし、もういいんじゃないかな?」

 

「でも、月。こいつの所為で本当に大変なことになるところだったのんだから。謝ってすむ問題じゃないわよ」

 

「(でも、詠ちゃん。君主さんを余所の軍師が叱るなんて問題があるよ?左慈さんや于吉さん、司馬懿さんがなにも言ってないから今はいいけど)」

 

「(っっ、、、確かにそうね)」

 

董卓に耳打ちされた言葉で賈詡は平静を取り戻す。

確かに、言われたとおりだった。君主が君主を叱るならともかく、軍師が余所の君主を叱るなんて戦争に発展しかねないほど無礼な態度だった。

思わず、この男は叱りやすいな、などと考えていた賈詡は咳払いをしながら言う。

 

「ごめんなさい、反省してます」

 

「ま、まあ、わかればいいわ。ボクの方も、少しいすぎたかも知れない」

 

「ははは、まあいいよ。許してあげる。変わりに董卓ちゃんの頭を撫でていいかな?」

 

「ええ、仕方ないわね。、、、って、え?なんで私が許されてるわけ?、、ちょ、汚い手を月に近づけるんじゃないわよ!月も大人しくしてないで逃げて!」

 

笑顔で董卓の頭に手を伸ばす一刀を見て、賈詡は悟る。

この男は反省など欠片もしていなかったと、反省という言葉すら知らないのかもしてないと。

 

「何を怒ってるんだ?ああ、安心しろ。賈詡ちゃんの頭も後で撫でてあげるから」

 

「私は何に怒ってるのよ!?」

 

「いや、それは俺が聞きたいよ」

 

突然、心を読むようなことを頼まれて一刀は困惑する。

そして、自分の考えていることすらわからなくなっている眼鏡っ子に少し同情する。

 

「アンタと話してると口が疲れるわ、、、、」

 

「大声出さなきゃいいんじゃない?」

 

「くううう」

 

「お、落ちついて。詠ちゃん」

 

至極真っ当な助言をしたのに唸りだす賈詡に一刀は少しビビる。

なんだか誰かに似ていると思えば、桂花とよく似ていることに気付いた。

 

「(だからか、話していて楽しいって思ったのは。マイハニー達は元気にしてるかな~)」

 

「あの、本当にごめんなさい」

 

天幕の天井に空いた穴から青い空を眺め、感傷に浸っていると董卓が話しかけてきた。

見れば見るほど、とてもじゃないが暴君などとは思えないほどの美少女だった。

 

「私の軍の将が、乱暴をしてこと、改めて謝罪させてください。許されることではないとわかっています。けれど、どうか許していただけないでしょうか?」

 

「うん?別に善いよ。元はと言えば俺がふざけたのが原因なんだし」

 

礼儀正しく頭を下げた董卓は不思議そうに一刀の笑顔を見ていた。

何が起こっているか分からなかった。普通、別の軍の将に顎を殴られて笑っていられる君主なんているだろうか?

居る筈がない。器が大きいどころか、そんなフザケきった感性を持った君主など。

 

「な、あ、アンタ。何か恋に言うこととかないわけ?」

 

困惑する賈詡の表情と言葉を聞いて一刀は呂布を見る。

呂布は微動だにしなかった。謝罪の言葉一つない。呂布からすれば悪いことをしたわけではないから、謝る原因など何一つ無かったのだ。

一刀は肩を振るわせる。そして、親指を立てながらいった。

 

「ナイスアッパー!世界を狙えるな!呂布ちゃん」

 

「ん、、ありがと」

 

賈詡は言葉を失っていた。陳宮も固まっている。

 

「ぷ、あはははは。月っち、詠、ウチ。この兄ちゃんが十常侍と繋がってるとは思えん」

 

張遼は堪え切れずに噴き出していた。

自分を殴った将を褒め称えているのもそうだが、あの人中の呂布をちゃん付けで呼べる男が世界に居たことが可笑しくて仕方がなかった。

 

「はい。私もそう思います」

 

董卓はと言えば、笑顔な一刀を見て笑顔になっていた。

自分の考えは間違ってはいなかったのだと確信した。

 

「(この人は笑顔で人を許せる優しい人)」

 

そう董卓は結論付けた。

 

 

 

「はあ!?アンタ達が十常侍と結託して劉弁様を攫ったんじゃない訳!」

 

「違います。何故私達が皇帝を攫わねばならないのですか?貴方達の方こそ、劉協様を傀儡にしているのでしょう?」

 

天幕の中では腹の探り合いが続いていた。

一刀としてはもう董卓が暴君でないことは確実だと思っていたし、董卓もまた一刀が優しい人だと思い込んでいるから、敵対する必要なんてないのだが。

そうそう簡単に人を信じられないのが軍師という生き物だった。

 

「詠ちゃん。もういいよ。北郷さんは悪い人じゃないと思う」

 

「な、月。駄目よ。そんな簡単に人を信じちゃ!これまでだって、そんなに優しいから一杯苦労してきたじゃない。今、月が洛陽を治めなきゃいけなくなってるのも元はと言えば、」

 

「詠ちゃん。私は、劉協様に洛陽を任されたことを苦労だなんて思ってないよ」

 

「っっ、、うぅ」

 

唸る賈詡から視線を外し、董卓は一刀の方を見る。

 

「北郷さん。私達の勘違いでこんな事態になり、本当にすいませんでした」

 

頭を下げる董卓を一刀は腕を組みながら見ていた。

 

「嫌だ。許さない」

 

当然だろうと思う。幸い、戦闘は起きずに両軍に戦死者は出なかったが、その前は別。

呂布は確かに、左慈の部下を斬り殺しているのだから。

 

「っっ」

 

「許して欲しかったら、頭を撫でさせてくれないか?」

 

「へ?」

 

許さないと言われて落ち込んでいた董卓にかけられたのは予想もしない言葉だった。

董卓は戸惑いながらも首を縦に振る。

 

「は、はい。それぐらいで許していただけるなら、、」

 

「ちょ、月!駄目よ!頭撫でるだけとか言って何されるか!」

 

賈詡の制止を聞き入れず、一刀は董卓から許可だ出ると即、頭に手を伸ばす。

そして、ただ優しく頭を撫で始めた。

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

「、、、、、、、、」

 

沈黙が場を支配する。

当然だろう。先ほどまで戦争寸前までになっていた両軍の君主がこんなことをしているのだ。

片や、慈愛顔で頭を撫で。片や、されるが気持ちよさそうに目を細めていた。

 

「これからは気を付けろよ。董卓。俺達が判断を間違って、傷つくのは俺たちじゃない。兵や民たちだ」

 

「はい」

 

傍から見れば優しく妹を叱る兄という構図にも見えたが、よくよく考えてみると判断を間違えていたのは一刀も同じだった。

しかし、両者が納得しているなら、口を挟める人は誰ひとりとしていなかった。

 

 

 

「さ、左慈!」

 

「ん?なんだ、華雄か。お礼参りなら受けつけているぞ!」

 

「いや。違う。わ、私の方からも謝ろうと思ってな。焦って、突っ込んで戦闘を起こしたのは私の責だ。すまなかった」

 

「ふん。終わったことだ。気にするな」

 

「そうか、、、優しいのだな。左慈は」

 

「はあ?おまえ、大丈夫か?顔が赤いぞ?熱でもあるんじゃないのか?」

 

「い、いや。なんでもない、なんでもないんだからなあああああ!!」

 

華雄は走り去ってしまった。

 

「訳の分からない奴だ。なあ、于吉」

 

「、、、ふふ、ふふふ、ふふふふふふふふふふふふふははははははははは」

 

「、、、、ど、どうしたんだ?于吉」

 

「いえ、いえいえ!別段取り乱してなどいませんよ。しかし、、、よもや、泥棒猫が紛れ込もうとは。こんなことなら、董卓軍を皆殺しにするよう一刀君に進言するべきでしたねぇ。ふ、ふふふふふふ」

 

「、、、、、」

 

 

 

      後書き

 

忙しいから上げられる間にあげておこうと思う。

忙しいくて、あまりコメント欄に返事を書いている時間がない。

忙しくて、消えてしまいたくなる。

 

   ドロン

 

消えられない。現実の前では。


 
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