No.222806

そらのおとしもの二次創作 今と昔のお話~その1~

月野渡さん

そらのおとしものの二次創作です。こんな出だしですが実はギャグです。
今回はイカロス編です。ニンフ編、アストレア編、カオス編、智樹編の五部構成ですが基本一話完結です。

過去の作品
リトルバスターズEX

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2011-06-15 08:18:30 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2562   閲覧ユーザー数:2466

 ……私は戦略エンジェロイドタイプαイカロス……兵器です。

 兵器である私はかつてシナプスのマスターの命令でシナプスへ侵攻しようとした国を滅ぼしました。武器を手に立ち向かってくる人も、恐れ、逃げ惑う人々も全て焼き払った……

 ……私は感情制御機能が乏しいエンジェロイドです、ですがあの時のことを思い出すと動力炉が引き裂かれるような痛みを覚えます。あの時、涙を流していなくてもきっと私は泣いていたのです。

 ……それから程なくして凍結された私は、気がつくと記憶と感情にプロテクトをかけられたまま新たなマスターの元に送られていました。

 ……新しいマスターは不思議な方でした。エンジェロイドはマスターの命令を聞くことが存在意義の道具です。ですがあの方は私を道具として扱うことはありません。私は初めはただ戸惑うばかりでしたが、いつしか私はこの方の傍にずっといたいと、そう願うようになっていたのです。

 ……マスターは言いました「兵器とかは嫌だ」と。その時は記憶にプロテクトがかかっていたので気にかけてはいなかった一言でしたが、ニンフと再会し、記憶のプロテクトが解けた時に私は兵器である自分を取り戻すと同時にマスターに嫌われることに恐怖しました。

 ……マスターに隠し事を続けている、という後ろめたい日々はしばらく続きました。しかしマスターは言いました「隠し事の一つや二つあるのが人間だ、言いたくなったら言えばいい、家族なんだからな」と、私は隠し事をマスターに咎められなかったことと、何より『家族』という言葉に涙を流しました。私は初めて嬉しい時にも涙は流れるものだと言うことを知ったのです。

 ……そしてついにマスターに私の兵器としての素性が知られる時がきました。ハーピーに打ちのめされ、羽を引きちぎられたニンフを見た時に私は何があったかを悟りました。可変ウイングを解放し。戦おうとする私を気遣い、ニンフは私を止めようとしました。けれども私は……いえ、だからこそ、私を庇って傷ついたニンフのためにもマスターに知られることになっても戦う決意を固めました。可変ウイングを解放した私はマスターの目を真っ直ぐ見ることが出来ませんでした。決意を固めたとはいえ、私が兵器だとマスターに知られたことでマスターに嫌われることが、もしくは恐れられることが恐ろしかったからです。ですがマスターの反応は私が恐れたいずれでもありませんでした。マスターは知っていたのです、私が兵器であると言うことを。マスターが「兵器は嫌だ」と言っていたのは私が兵器であることがかわいそうだと思ったからだと、それでいて私が兵器でよかったと、そしてニンフを助けるために力を振るうことを許可してくれたのです。私は再び嬉しくて泣きました、そしてマスターに後押しされたその戦いは、今までにないほどに力がわきあがってくる想いでした。

 ……第二世代エンジェロイドタイプεカオス、あの子と戦った時に彼女は私に言いました「愛を教えて欲しい」と。私はその問いに答えることが出来ませんでした。……マスターのことを想うと動力炉が痛い。マスターがニンフやアストレア、そはらさんと仲良くしているのを見ると動力炉が痛い。マスターが悲しむと思うと動力炉が痛い。……私は壊れてしまったのかもしれません、何度自分をスキャンしても何の異常も見当たらないのに、この痛みは確かにあるのです。……これが愛……なのでしょうか?

 ……この動力炉の痛みが愛なのかどうか、それは私には分かりません。ただ確かなことはこれからもずっと……できることならニンフやアストレア、そはらさんやマスターのマスター、会長さんたちと一緒にマスターのお傍に……それだけが私の望みです。

 ふむ、まずは自己紹介から入るとするか、私はダウナーどもにはシナプスのマスターと呼ばれているこの世で最も偉大な男、名は……あれ? うん、ちょっと待てよ……む? ああ、ちょうどいいところに……

「おい、そこのハーピー」

「はい、なんでしょう? マスター」

「うむ突然でなんだが……私の名前は何だったっけ?」

「はい?」

 私が尋ねるとハーピーの奴はまるでハトが豆鉄砲を食らったかのような顔をした。鳥なだけに、今うまいこといったよな? な?

「いやマスター、なんでエンジェロイド相手に自分の名前なんか聞くんですか?」

「それがだな、周りから「マスター」とか「あなた」以外の呼ばれ方をしなくなってもう随分経つのでな。気がつけば忘れていた」

「……」

 む、なんだその目は? ……どこかで見たことあるような眼だな。なんというかアストレアのやつがボケをかましたときの周りの視線のと同じようなものを感じる……

「……いえ、なんでもないです。そうですね、とは言っても私もマスターのことはずっとマスターとお呼びしてきましたので本名の方はちょっと……」

「ちっ、鳥頭が、使えねえ」

「ええっ!? なんで自分の名前忘れた人に鳥頭呼ばわりされてるの!?」

 だってオメー鳥だもん。

 さて、少し話が脇にそれてしまったな。そう、確か空の女王(ウラヌス・クィーン)について聞きたいのだったな?

 では少し昔を語るとしよう。そう、あれは空の女王の名がシナプスを震撼させた時のことでもあり、それほどまでに強力なエンジェロイドを凍結させざるをえなくなった忌まわしき事件のことだ……

 

 ……そう、あれは今となってはもう何年前のことかすら分からぬほどの随分昔のことだ。かつて地上に存在したダウナーどもの大国が、分をわきまえずにシナプスに乗り込まんと巨大な塔を建設していた時だった。

 私は連中の思い上がりを正さんと私は空の女王を玉座の間に呼び寄せた。

「お前を呼んだのは他でもない、ダウナーどもが愚かにもこのシナプスに進攻せんと塔を建築している」

「……」

 空の女王はひざまづいたまま、微動だにせずに私の話を聞いていた。

「行け! 空の女王よ! あの身の程知らずの思い上がった愚か者どもを一片たりとも残さず殲滅するのだ!」

「……了解」

「って私じゃな……ぐぼぁあ!?」

 なんと私の命令を聞くや否や空の女王は迷いなく私へと攻撃を仕掛けてきたのだ。

「……まず喉を狙う」

「#*¥%&$+&!?」←声にならない声

 突然攻撃を食らった私は何がおきたのか理解もできずにただのた打ち回るばかりであった。

「……命令復唱、身の程知らずの常に半裸の無様でヘタレでグズな態度だけは人並みはずれて大きい思い上がった愚か者を二度と足腰立たなくなるようにぶちのめす」

「%&¥@#$!」←そんなことは一言も言ってない、と言っている。

 どうやら私が命令した「愚か者」を私自身だと認識しての攻撃だったようだが初めに食らったアブドーラ・ザ・ブッチャー顔負けの地獄突きの一撃で喉を完全に粉砕された私には命令を撤回することはおろか、声を出すことすらままならなかった。

 そして芋虫のように転がりまわるだけの私をひとしきりフルボッコにしたあとで放たれたアルテミスの全弾発射は、一発残らず私の股間へと炸裂した……

 ……この事件がきっかけとなり空の女王の名はシナプス全域において畏怖の対象となり、最強のエンジェロイドは凍結の憂き目を見ることとなったのである。

 

 ……今思い出しただけでも恐ろしさで震えが止まらない。ぶっちゃけちびってしまいそうなくらいだ。

「マスター、昨夜マスターが空の女王の夢を見てお漏らしした布団干し終わりました」

 ばらすなよ鳥頭め!


 
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