No.221639 真・恋姫†無双~江東の白虎~第弐章 16節~反董卓連合~2011-06-09 18:16:30 投稿 / 全13ページ 総閲覧数:14720 閲覧ユーザー数:10609 |
この小説は、北郷一刀、呉の主要キャラほぼ全てと華陀に
いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。
更に、オリキャラが出ます。
その点を踏まえて、お読みください。
嫌悪される方は、ブラウザ左上の←または、右上の×をクリックすることをお勧めいたしますっす。
それでもOKという方は、ゆっくり楽しんでいってくださいっす。
今は忘れられた古城の前に一刀と紐パン一丁の筋肉モリモリマッチョマン、そしてその部下の兵器開発班がいた。
さらに、その後ろに巨大な何かがあった。
「それじゃあ、最後の試射実験行くぞぉ!!」
『応!』
「それじゃあ、はっしゃよおぉん! ぶうるるるるるらあああぁぁぁ!!!」
紐パン筋肉の大声とともに、巨大な何かから何かが古城めがけて発射された。
そして――。
ゴーン!!
ガラガラガガーン!!!!
袁紹の手紙が来てから約5日後、戦の準備を整え一刀たちは反董卓連合の合流地点に向かっていた。
「くかー……」
「ホントにグッシュリ寝てましゅ」
「うむ。 何をして居ったんじゃろうな?」
その最中、一刀は何故か周々の上で眠りこけており、蒼里と美羽がそれを支えていた。
周々も一刀が落ちては困る為か、普段は一刀以外乗せない背中に彼女達を乗せている。
その際、仁義無き女の戦い――。
「最初はグー!」
「ジャンケン!」
『ポン!!』
と言う名の、ジャンケンがあったのは言うまでも無い。
そして、その戦いに見事勝った二人は、美羽は後ろから抱きつき腰を安定させ、
蒼里は前に乗って一刀に圧し掛かられて、蒼里の胸を枕にして寝ている。
二人の幸せそうな様子を見て、周りから渇望の視線が多数向けられている。
そんな視線を無視して、隣で馬に乗っている凱がこう口にする。
「戦に出かける前に、5日間ずっと徹夜の突貫準備してたんだ。 許してやってくれ、美羽殿」
そう、一刀は戦の準備をしている間、その5日間の間ずっと起きてある兵器を作っていた。
その事は全員が教えられているが、何をしているのかは凱以外は全く教えてもらっていない。
だが、全員が彼の事を信頼しているので、全く文句を言わない。
それを知っているから、一刀も心置き無くそう言う事をする。
それでも、与えられている仕事はこなして、そう言う事もしているのだから、本当に凄い。
そして、その一刀の作っていた物の真価は、戦の最中に発揮されることとなる。
「うぅ~~~ん! やぁっと着いたぜっ!」
行軍してから一週間。
ようやく連合の集合場所に着いた一刀達。
周々の背から降りて、伸びをする一刀を見て、
「おまえは、殆ど寝ていただろうに、良くそんな事が言えるな」
「そおは、ふえんれちょ~だい」
そう突っ込みを入れる凱に、欠伸をしながら答える一刀。
そんな一刀を見ながら、溜息をつく凱。
と、其処に紗那が天幕外から声をかける。
「おはようございます、一刀様。
寝起きの所申し訳ありませんが、軍義が開始されますので、中央にある大きな天幕までお願いします」
そう言った後、気配は遠ざかった。
恐らく準備などがあるためだろう。
「じゃ、起きたなら『コレ』飲んで軍義に顔出せよ。 俺は準備があるからじゃあな。」
そう言って、杯に入った蒼麒麟を渡して天幕を去った。
一刀も、ぼうっとする頭を切り替える為、蒼麒麟を飲み自分の天幕を出て中央の天幕に向かった。
~中央の天幕~
『…………』
多くの諸侯が、集まる天幕の中は、会話も無く殆どの者が沈黙を保っていた。
陣留の曹操、幽州の公孫賛、平原の劉備、名家の袁紹、西涼の馬騰などといった人物達だ。
美羽や雪蓮達も、一応自己紹介は済ませたのだが、その居心地の悪い空気の中にいた。
「ん?」
だが、天幕の外から覚えのある気配が此方に近づいてきた。
「おーっす、遅れた」
入ってきた人物を、その場に居た人物全員が見る。
白い服に黒短髪で碧眼長身の男性、一刀だった。
一刀は、皆から向けられる視線を無視して、雪蓮達の方に近づき話しかける。
「おはよ」
「遅すぎよ、何時まで寝てんのよ」
「はぁ……」
「全くなのじゃ!」
「おはようございます、一刀様」
全く空気の読んでいない一刀の発言と態度に、雪蓮は呆れ、冥琳は溜息をつき、美羽は少しむくれ、七乃は苦笑気味にそう言った。
仄々とした空気が流れようとしたその時――。
「ちょっと、其処の貴方!
行き成り入ってきて、何なんですの!? 自己紹介ぐらいしたらどうなんですの!?」
と、袁紹が叫び声をあげた。
真相は、彼が袁紹以上に目だってその場に居る人達から注目を集めている事への、嫉妬からなのだが。
そんな様子の袁紹相手に、一刀は溜息をついてめんどくさそうに、全員のほうを向く。
「キャンキャン煩えよ。 上に立つものならもっとどっかり構えてるべきだぜ?」
「う、うるっ!?」
自分に対して、そのような態度をとる男に袁紹は、物凄く驚き固まってしまう。
「あ、貴方、この私にむかって……」
「俺の名は、孫江、王虎だ。 知ってる顔もあるけど、大体が始めましてだな」
袁紹が怒りそうになるところを一刀が遮りながら、自己紹介をする。
そして、会ったことのある華琳と雪蓮達以外から驚きの視線と、探るような視線が送られる。
誰しもが、武の誉れと名高い江東の白虎の登場に、驚きと動揺を隠せなかった。
動揺しながらも、格諸侯が一刀に自己紹介をする。
「ちょっと無視しないでくださ……」
「で、紹介はコレくらいで良いとして、実際の所何処まで決まってるんだ?」
話もそこそこにと思って、一刀がそう話を振ると其処に居る全員が一斉に目を逸らした。
「ですから無……」
「それが、ですね!」
「まだ、総大将すら決まっておらんのだ」
「はぁっ!?」
言いにくそうにそう言った七乃と冥琳の言葉に、本当に信じられないといった表情で、一刀は叫んだ。
「はあ……其処まで決まってないとは、思って無かったぜ。」
そう言って、ジト目で周りを見ると全員が目を逸らした。
その様子に、一刀はまた溜息をつき仕方ないと呟き――。
「それじゃあ、俺が総大将やる」
『……へ?』
余りにも予想外の言葉に、其処に居た全員の誰もが呆けてしまった。
その様子に、ニヤリと哂って――。
「だって、決まって無かったって事は誰もやりたくないんだろ? なら俺がやっても構わんよな?」
と言った。
その一刀の表情を見て、雪蓮、冥琳、美羽、七乃、そして華琳は何かを感じ取った。
「待って、一刀。 貴男は私の将よ? それなら私がやるのが筋というものでしょう?」
「はぁ……」
まるで、一刀に便乗するように雪蓮が言う。
無論、そんな雪蓮をみて冥琳は盛大に溜め息をついた。
「待つのじゃ! それなら、主の妾がやっても言いと思うのじゃ!」
「お、お嬢様……」
一刀のニヤリと笑った表情から、美羽も楽しそうと思ってそんな事を言った。
そんな美羽をみて、雪蓮の様にならないか心配で七乃は少し嘆いていた。
「あら、誰がやっても良いのなら、私がやっても構わないわよね?」
「か、華琳様!?」
一刀の思惑に気が付いた華琳がそう口にして、後ろに控えていた夏侯淵が目を見開いて驚いていた。
華琳はそれを、目で見て黙らせ、ガヤガヤ言っている最中に入っていった。
そして暫く言い合っていると――。
「ああ、もう! 何を言っておりますの! この私がやりますわぁ!!!」
と、袁紹がそう叫んだ。
それを聴いた瞬間、先ほどまでガヤガヤ騒いでいたのがピタリと止み、
『どうぞ、どうぞ!』
「よいのじゃ!」
「ええ、構わないわよ」
と、一斉に全員が袁紹が総大将をする事を承認した。
余りの事に、袁紹はポカンとしているが、その場に居た一部以外の諸侯は戦慄していた。
一瞬で袁紹の性格を見抜いた洞察力の高さ、それを入れて自分から言わせる話術。
一刀は普通の将でない事が、このやり取りで証明された。
ただ――――。
「むむむ? 秋蘭どういうことだ?」
「え? え?? ねえ朱里ちゃん、如何言う事?」
頭の余り宜しくない人たちは、全く話について行けなかった。
「じゃあ、総大将殿が決まった事だしさっさと次に行こう」
その一刀の一言で、雰囲気が引き締まると思ったが、袁紹がそうはさせてくれなかった。
「では、劉備さん先鋒をしてくださいませんか?」
「へ?」
『はぁ?』
何の前触れも無く、そんな事を袁紹が言い出したので、一刀も含めた全員が呆けてしまった。
そして、フリーズから逸早く復活した美羽が袁紹に問いただす。
「お、お姉様? 普通は劉備の軍は後ろにして、お姉様の軍が先鋒なのでは?」
袁家なのにまともな事を言う美羽を見て、袁紹が突拍子も無いことを言った事より驚いていた。
袁家は馬鹿と言う事が、広まりすぎていると言うのが、コレで分かる。
「私は、総大将と言う事でやや中軍に位置致します。
公孫賛さんと馬騰さんは左翼、華琳さん達は右翼、美羽さん達は後局でお願い致しますわ。 詳細な作戦はお伝えしますわ」
それだけ言って、早々に天幕を出て行った。
そして残された皆は、余りにも自分勝手な行動に何も出来ず。
「……え、袁家の恥さらしぃ~~っ!!!」
後に響いたのは、美羽の悲痛な叫びだった。
~陣内~
軍議と言う名の茶番が終わり、天幕を出た所で一刀は声をかけられた。
「孫江殿!」
「ん?」
声をかけられたほうを向くと、茶髪のポニーテールで太い眉の女の子、馬超が居た。
「馬超ちゃん、如何したんだ?」
「ちゃ、ちゃん……ま、まぁいいか。 行き成り声をかけてすまない、実はお袋――馬騰の事で話が――」
と、彼女が一刀に母の馬騰が、病に侵されているという旨を話した。
何故、一刀に話したのかと言うと、神医(かむい)と名高い凱の親友と言う事で、
何とか取り次いでもらえないだろうか、と言う事だった。
彼女の表情を見るに、他勢力の者に声をかけるぐらいに切羽詰った状態なのだろう。
「あ……?」
それも今にも泣き出してしまいそうな馬超の表情に、
あの時の美羽が見えてしまい、一刀は優しく馬超の頭を撫でた。
「ななな、こ、子供じゃねえんだから、なでんなよぉ!」
そう言って、馬超は顔を若干赤くして、一人の手を振り払った。
その様子が、少し前の背伸びしていた雪蓮や冥琳に似ていたことに、一刀は忍び笑いを浮かべた。
「くっくっく。 わかった。 凱……華陀を連れて御前等の天幕に行くから、待ってろ」
「! ありがとう!!」
一刀の返事を聞くと、足取り軽く天幕の方に走っていった。
その頬が、ほんのり紅く染まっていたのは、人前で頭をなでられた羞恥だと思った。
一刀も、彼女を待たせぬように自陣で凱を見つけ――。
「いくぞ、凱。 詳細は行く途中に言うから」
「は? ちょ、待てって! 襟引っ張るなっ! 締まる締まぐえっ!」
襟を引っつかんで、引きずって行った。
~馬家の陣営~
「おっす! 馬超ちゃん、来たぜぃ!」
「ゴホッ……引きずるなよ」
一刀は凱を引きずって、馬家の天幕に行くと天幕の中から馬超に似た背の低い少女が出てきた。
「お兄さん達が孫江さんと華陀先生?」
「ああ、そうだぜ。 お嬢ちゃんは?」
「馬岱って言うの。 よろしくね孫江様」
そう言って、人懐っこい笑みを浮かべる。
一刀も、優しい笑みを浮かべて馬岱の頭を撫でる。
馬岱も、満更でもなさそうにそれを受ける。
「さて、そろそろ患者の所に行きたいんだが?」
仄々な雰囲気が流れている所に苦笑気味に凱が声をかける。
それを聞いて、一刀も苦笑をもらして、馬岱の頭から手を退ける。
馬岱は少し残念そうな顔をしたが、直ぐ普通の表情の戻り、天幕の中へ一刀達を案内した。
~天幕~
「お姉様、孫江さんと華陀先生がお見えになったよ」
「邪魔するぜ」
「失礼する」
馬岱に連れられ、天幕の中に入り、始めに目に映ったのは血の紅。
次に目に入ったのは、蒼い顔で馬超に支えられながら、寝床から起き上がっている女性――――馬騰だ。
「ゴフッ……ようこそ、孫江殿、華陀殿。 こんな姿で、すまない」
「お袋、良いから寝てろよ。 あたしが相手をしてるから」
咳き込む馬騰を心配そうに見て、支える馬超。
そんな彼女の言う事など無視して、馬騰は一刀達に話しかける。
「態々、ご足労頂いて感謝する。 だが、見ての通り私はもうあまり長くない。 医者からもそう言われている、すまないが――」
「…………」
言葉を紡いでいる馬騰を無視して、彼女に近づき
パァンっ!!!
「っ!?」
「なっ!?」
「……え?」
「……」
行き成り馬騰のデコを弾き、崩れそうになる馬騰の両肩を掴んで引き寄せる。
「ふざけるなっ!! 貴女はまだ生きてるだろうがっ!!
生きてる限りは、生きる事を放棄するんじゃねぇ!!!」
そう言った一刀の目は、有無を言わせぬものがあった。
近くに居た馬超や馬岱は、一刀の雰囲気に呑まれ微動だに出来なかった。
馬騰が既に諦めの目をしている事に、一刀は気付いた。
だから、一刀は怒った。
「人間ってのは、そう簡単には死なねえんだ。
確かに殺そうと思えば直ぐに殺せる、でもな生きようと諦めずに足掻く奴は中々死なねえんだ。
貴女はまだ生きてるんだろ? なら諦めちゃだめだ!」
「アンタ……」
そう語る一刀の瞳に、馬騰は魅せられた。
そして、同時にまだ死にたくないと言う思いが沸いて来た。
諦めていると思っていたのに、そんな思いがまだ燻っていた事に、馬騰は内心苦笑する。
「……ありがとう、孫江殿。 貴殿の言葉、我が魂に響いた」
「いや、こっちも行き成りデコピンかましてすまねえな」
掴んでいた両肩を離し、優しく包むように抱きこみ床に寝かせる。
そして、凱の方を向いた。
「凱、後は任せる。 生きる事を諦めなくなった彼女を助けてやってくれ」
「ああ、任せろ。 一刀、生きる意志をもつものを救えぬ五斗米道ではない、必ず助ける。
すこし、馬超と馬岱を連れて外に居てくれ」
そう言って、凱は籠手『牙王凱牙』をつける。
一刀はそれを見ると、馬超、馬岱をつれて天幕の外に出た。
三人が外に出るのと見ると、凱はもって来ていた鞄から札の様な物を取り出した。
「馬騰殿、貴女を助ける為には治療をしなければ助からない。 ただそのための準備があるから、少し待ってくれ」
そう言いながら、札を天幕の四方に貼りつけ右腕に氣を溜め
「空間湾曲結界……昵場韋出印具・努來葉(ディバイディングドライバー)!」
そう呟き地面に拳を叩きつける。
すると、部屋が淡い光に包まれた後天幕の中が歪んだのだ。
天幕の端に置いてあった卓、杯などが歪んで小さくなり狭い天幕の中が、広くなったのだ。
「これ……は!?」
余りの光景に、馬騰はそれ以上言葉が出なかった。
「気にするな、俺の治療は少し特殊だからコレをしないといけないんだ。 (祭殿のような被害者が出ないようにしなければならないしな。)」
そう、これは周りに治療の影響が出ないように結界を張ったのだ。
「さて、準備は出来た。 始めるぞ」
そう言って、凱は全身の氣を籠手にため氣鍼を発生させてた。
~天幕の外~
「かなり強引にしてしまってすまねえな、馬超、馬岱」
「いや、孫江殿がああ言ってくれなかったら、きっとお袋は聞いてくれなかったよ」
「ありがとう、孫江様」
外に出た後、一刀は二人に行き成り馬騰を打った事を謝っていた。
だが、二人も一刀の行いの意味を理解し、其処まで気にしていなかった。
それどころか、あの時の一刀に見とれていたのだが、そんな事は口が裂けてもいえないだろう。
「そうか、なら良い。 話は変わるが、馬騰殿は酒は好きか?」
「う~ん。 嗜む程度かな?」
「馬鹿飲みしているのは、見た事ないかな……」
行き成り話を振られて、二人は何の事やら分からなかったが、
二人の話を聞くと、一刀ふむとうなずいた。
「なら後で酒を届けよう。 詫びの心算だ。 向こうに帰った後にでもみんなで飲んでくれ」
「律儀だなぁ。 でも、ありがたく貰っておくよ」
「応、そうしてくれ」
そう言って、一刀は心からの笑みを浮かべた。
「っ! ……」
たったそれだけなのに、何故だか馬超はドキンと胸が高鳴ってしまった。
「ふーん。 くすっ」
そんな馬超の反応を見て、馬岱は面白そうにクスリと笑った。
「……昵場韋出印具・努來葉(ディバイディングドライバー)!」
「っ!?」
「始まったな」
そんな所に、天幕の中から凱の雄叫びが聞こえて来た。
「……なぁ、治療って叫んでやるもんなのか?」
「凱のはちと特殊でな。 氣功を使って人間の生命力を活性化させて、
病の元である病魔と言う物を、直接氣を纏った鍼で突き刺し破壊するって言う物なんだ」
「よ、よくわかんないけど……凄いんだねぇ」
正直、一刀の説明は頭では理解できるが、天幕から漏れる凱の叫び声に、二人は正直戸惑いまくっていた。
そして、暫くすると凱の声が無くなり天幕が開き凱が出てきた。
「……ふう、終わったぞ」
やはりというか、凱は疲弊していた。
「お疲れさん、凱。 歩けるか?」
「……ああ、すまん。 多分落ちる。 馬超、彼女が、起きたら……この薬を、飲ませてやってくれ……もう、病は、完治し……た」
そう言って、凱は朱で『辛』と書いてある瓶を馬超に渡した。
「おっと」
そして、凱は一刀に寄り掛かる様にして気を失った。
良く見ると、額に玉のような汗を浮かべ熟睡しきっている。
この様子を見るに、相当な体力を使った事が容易に想像できる。
そんな凱を背負い、一刀は二人を振り返る。
「じゃ、俺達はコレで帰るぜ。 あぁ、そうだ、この戦が終わるまでは彼女に酒飲ますなよ?」
「待ってくれ!」
そう言って、帰ろうとする一刀に、馬超は待ったをかけた。
「ん?」
「あたしの真名は翠、お袋を救ってくれたのに、真名も預けてないようじゃお袋に怒られるからな。
華陀殿にも言っておいてくれ」
少し顔を赤らめて、恥ずかしそうに馬超はそう言う。
「了解した、俺の真名は一刀だ翠」
「あ……うん!」
一刀に真名を呼んでもらい、嬉しさの余り、年相応にはにかむ馬超。
一刀は不覚にも彼女の表情に目を奪われた。
一刀は本当に嬉しそうに微笑む時の、人の表情というのは此処まで人を惹きつける物があるのかと、改めて思った。
「お姉様が許したなら、私も。 蒲公英って言うんだ、よろしくね一刀様」
そんな従姉を見て負けじと、蒲公英も一刀に真名を教える。
「おう、よろしくな蒲公英」
「うん♪」
本当に嬉しそうに笑う蒲公英に、一刀もいい気分になった。
「じゃ、そろそろ帰るとするよ。 凱を野晒しにしておくのも良くないからな。 またな、翠、蒲公英」
そう言って、一刀は呉の陣営に向かって行った。
~二時後~
「うっ……うぅん?」
馬騰が目を開けると、其処は見慣れた自分の天幕。
周りを見て、暗い事からかなり時間が過ぎた事が分かった。
そして、驚くべき事は今まで自分に纏わり付くように圧し掛かっていた疲労感と倦怠感が全く無かった。
強いて言うなら、お腹が減っている事と、寝起きの気だるさがあるぐらいだ。
「あ、お袋!」
「おば様!」
「翠、蒲公英?」
丁度体を起こした時に、天幕に愛娘の馬超こと翠と姪の蒲公英が入ってきた。
自分がもう無事だという事が分かると、二人して恥じらいも無く泣き叫んだ。
そして、暫くして二人は泣き止み、そんな二人を見て馬騰はおかしそうに笑う。
「ふ、アンタが泣くなんて、何年ぶりかしらね?」
「ひぐっ、うるさぁい! 良いだろうがよぅ!」
おかしそうに指摘した馬騰に、翠は涙を拭きながら不貞腐れる。
「もう、お姉様不貞腐れないの」
「……ふん」
そんな不貞腐れる翠を嗜めるかのように言う蒲公英。
「ふふふっ」
その様子を見て、微笑む馬騰。
場に穏やかな空気が流れる事を、馬騰は嬉しく思っていた。
長くない命であると、諦めていた時は、もう直ぐこの光景が見れないのかと淋しく思っていたが、
今はもう病を気にしなくて良いと言う事で嬉しく思った。
自分を治してくれた凱と、自分に生きる生きたいと思う気持ちを思い出させてくれた一刀。
二人には、真名を教えても良いとさえ思った。
「あ、そうだ」
そんな風に考え事をしていると、翠が小さい瓶を取り出した。
「先生が起きたら、コレ飲めってさ」
「薬かい?」
栓を抜いて渡された小さな瓶、少し渋い位顔をしながら躊躇なく中身を一気飲みした。
「っ!? 翠、コレ酒じゃ、な……い」
「え?! お袋!? おい! 確りしろ!!」
「お、お姉さま! おば様の、か、身体が!」
~一刀の天幕~
「うぅ……」
「お、おはよう。 今日はお疲れさん」
氣を失った凱を天幕に寝かせて約二時、漸く凱が目覚めた。
少しぼうっとするのか、頭を左右に振る。
「すまない、行き成り氣を失ってしまった」
「いいって事よ。 ほい、水」
杯に注がれた水で凱は、寝起きに乾いた喉を潤す。
冷えては居ないが、寝起きには丁度いい。
ふと、一刀が凱に聞いた。
「なあ、そこに置いてあった戦勝用の酒知らねぇか?」
「ん? あれじゃねえのか?」
そう言って、卓の上に置いてある朱で文字の書いてある瓶を指した。
「いや、あれの中身はお前の薬だったぞ?」
「!? ……なんだと?」
一刀の説明を聞いて、凱の頭の中に考えたくもない憶測が浮かんでしまい、顔から血の気が引いた。
「なぁ、一刀ちなみに聞くがその酒瓶どんな酒瓶だ? まさか、その外側に朱で文字の書いてあった奴ではないよな?」
「え? ああ、そうだが……!? ま、まさか」
一刀も凱の言わんとしている事に気が付き、体を膠着させた。
「……ちなみに聞く。 そこの酒瓶なんて書いてある」
「……『幸』って書いてあるな」
「そうか……それは完全に俺の『薬瓶』だな」
「ってことは……」
少し気まずい空気が流れる其処に、天幕の外が少し騒がしくなっている事に気付いた。
「なんだ? この嫌な予感しかしないのは……」
「……同じく」
二人は、外から聞こえる複数の声に、聞き覚えがあった。
「旦那、美人が旦那に会いに来てますぜ?」
「逝ってらっしゃい、一刀」
「あ、後で覚えてろよてめえ・・・・・」
一刀は凱に恨みまがしい視線を向けて、天幕を出て騒ぎの元に向かった。
「まだ? 早く孫江殿に合わせてって、言ってるでしょう!」
「そうよ合わせなさいよ。 私なんて一刻は待っているのよ?」
「で、ですからもうちょっと待ってください。 今、旦那を呼んで……」
騒ぎの元に行くと、翠に似た女性と、見覚えのある華琳を大人っぽくしたような女性がいたが居た。
対応している兵士も、しどろもどろになりながらも待たせていた。
「如何した?」
「だ、旦那! よかったぁ……じゃ、あっしは失礼しやすんで、それではー!」
そう言って、対応していた兵士はすたこらさっさと逃げ出した。
一刀が来たのが分かると、華琳に似た女性は行き成り一刀の右腕に抱きついた。
「ん~大きくなったわねぇ一刀君」
「……その声は華南さんだよな」
「うん! おひさしぶりー。 会いに来てくれないから逢いに来たよ」
「む!」
そう言って満面の笑みを浮かべる華南。
そんな彼女に負けじと、に似た女性が左腕に抱きついた。
「え? ちょ、どうしたんだ翠!?」
「あら、やっぱり翠と思ってたのね?」
「もう、今は私の番でしょう!」
と言うセリフが帰ってきたことに、嫌な汗がたれる。
「もしかして、馬騰……殿?」
「せーいかい♪」
そう一刀に抱きついたままニッコリと笑った。
ドキンと来てしまったのは、内緒だ。
「本当にありがとうね。 華陀先生から貰った瓶の中身を飲んだら、若返っちゃってさ♪」
「あ、あなたもなんだ。 私もね~お酒大好きだったから、
みんなの目を盗んで飲んだら、こんなになっちゃったんだよね~」
明けらかんにそういう二人をしり目に、一刀は心の中で絶対に凱を一発ボコると誓った。
「(二人ともキャラめっちゃ変わってる。) 二人とも大分性格変わりましたね」
「あらコレが素だもの」
「私もこれが素なんだよ~? 驚いたかしら?」
思った事を一刀言ってみたのだが、普通に素ですと返された。
今まで、二人とも物静かなタイプの女性と思っていたのだが、真逆の性格のようだ。
「貴方のあの時の声、あたしの魂に響いたわ。 惚れちゃう位」
そう言って、色っぽいく上目遣いで一刀を見上げる。
「んふふ~私もね~。 一刀君の顔が病気の時にずっと浮かんでてね? 君のお陰で今ここにいるんだよ?」
そう言って、その豊満なモノを一人の腕に押し付けた。
「如何したの……一刀。 何してるの?」
「……コレは如何言う事だ? 一刀」
さらに、其処にタイミング悪く雪蓮と冥琳が現れる。
「しぇ、雪蓮、冥琳……」
「ふ~ん、くすっ」
「ああ! んふふふ~」
そして、二人の反応を見て馬騰と華南は、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
一刀はとんでもなく嫌な予感がしたが、時既に遅し。
「んぶっ!?」
「んちゅる……」
『なぁっ!?』
何と行き成り、一刀と唇をあわせ、深い口付けを雪蓮と冥琳に見せ付けるかのようにした。
「んはっ。 ご馳走様」
「んじゃあ、今度はあたし~。 むちゅ~」
「んむぅ!?!」
『!?!?』
馬騰が唇を離したその瞬間、今度は華南が一刀の顔を自身のほうに向かせ、
馬騰と同じく深い口付けを、雪蓮と冥琳に見せ付けるかのようにした。
「ぷっは~。 ごちそうさま~。 あ、お嬢さんたち~私は、曹巨高よ~。
一刀君の妻になる予定だから覚えててね~」
「私の真名は茜よ、孫江。
じゃあね、この馬寿成、狙った物は絶対に逃がさないから、覚悟してなさいね」
そう彼女たちは一方的に言って、去っていった。
そして、後ろから突き刺さる絶対零度の視線。
振り向きたくないが、恐る恐る振り向いた。
「へぇ~、西涼の馬騰と、曹操のお母さんにまで手を出したんだぁ?」
「しか病に伏せていたと聞いたのに治っているように見え、しかもあの若さは恐らく凱の……。
一刀、曹操とその母だけに飽き足らず、西涼軍にまで手を出すのか……」
「え、えとぉ……」
視線は絶対零度なのに、表情は物凄くいい笑顔、しかしまったく目は笑っていない。
しどろもどろになっていると、二人に肩をガシッと掴まれ、
「ふふ、今夜は楽しみだわぁ♪」
「ああ、本当に楽しみだ」
ズルズルと二人の天幕に引きずられていく。
「か、神様なんてだいっ嫌いだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
一刀の叫びは、夜空に淋しく響いた。
というわけで、一刀君は、雪蓮と冥琳、
事情を聴いて怒った美蓮と病化した蓮華に絞られるのでした。
ちわっす~。
タンデムです。
ご試読ありがとうございますっす~。
皆さんのおかげで、また続けられそうですっす。
さて、それではアンケートの結果といきますっす。
1位――6票
美蓮
2位――4票
冥琳
雪蓮
犬猿の仲(雪蓮VS紗那)
熟女組み
病華
3位――3票
祭
紗那
優しき主従(美羽&七乃)
―――――――――――――――入選外の方々。
下記2票
蓮華
孫姉妹
文系師弟(冥琳&穏&亜紗&蒼里)
隠密(思春&明命)
下記1票
亞紗
美羽
七乃
瑞穂(魯粛)
仲良し姉妹(大喬、小喬)
下記0票
思春
小蓮
明命
穏
結羽(周竺)
適度体系同盟
蒼里(諸葛瑾)
という結果にって……オリキャラが頭一つ出て1位っておかしくないっすか!?!?
しかも、ほかにもちらほらとオリキャラとこっそりカオス成分の病華様って!?!?
しかも、1,2,3にすべて熟女キャラ入賞って!?!?
あれか!
そんなにみんなババアがい――――
しばらくお待ちください……
しばらくお待ちください……
しばらくお待ちください……
しばらくお待ちください……。
「で、あたしが何だって?」
ハイ、美蓮様はオネエサンデス申し訳アリマセンデシタ
「よろしい。 ほら早く続き続き」
ごほん……
え、皆さん何か見えましたか?
気のせいです。
皆さん、憑かれているんですよ。
さて、ではこの集計結果をもとに、どこかで拠点を書かせていただきますっす。
そのあとまた皆さんのお許しが出たら、アンケートを取らせていただきますっす。
ただし、今回のアンケートで1~3に入ってしまったものは外して記入いたしますのでそこはご了承くださいっす。
ではまたのご試読お願いいたしますっす。
これからもタンデムと江東の白虎、魏の龍をよろしくお願いいたしますっす。
ではでは~
Tweet |
|
|
82
|
11
|
追加するフォルダを選択
やってきました、反董卓連合!
サイトにうpするときの難産が思い出されました。
炎症(誤字にあらず、誤字にあらず大事なこと(ry)の使いどころが難しかった。
前回のアンケートの結果も載せておりますので、どうぞごゆっくりお楽しみくださいっす。