この小説は、北郷一刀、呉の主要キャラほぼ全てと華陀に
いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。
更に、オリキャラが出ます。
その点を踏まえて、お読みください。
「し、失礼しますぅ……。」
皆さん、始めまして呂蒙こと亞莎です。
今日は、雪蓮様と美蓮様から――。
「亞莎、一刀起こしてきて」
「あの子、今日非番だったら、起こさないとずっと寝てるからお願いね」
と言われましたので、一刀様のお部屋に入っています。
普段は、一刀様専属の侍女の、廿楽(つづら)さんと夕陽さんが起こすのですが、
お父上の喬玄様がお二人を連れてお母様のお墓参りに行ってしまったので、今日の仕事が少ない私"達"が声をかけられました。
「し、失礼します……」
そして、もう一人は私のお友達の周泰こと明命です。
私は父兄弟以外の男性の部屋に初めて入ったので緊張していますが、
明命は私以上に、物凄く緊張しているのが分かります。
「はうぁ~……。 亞莎、やっぱり他の方に頼みませんか?」
「私も、最初はそうしようと思いましたけど、雪蓮様と美蓮様が……」
この先は言わなくても分かったのか、明命は渋い顔をする。
私と同じでにやにやした表情で、首を横に振っているお姿が浮かんだのでしょう。
そして二人一緒に溜息をついて、一刀様の寝ておられる寝台に近づく。
「うぅん……」
『っ!?』
すると、見計らったかのように私達の方に寝返りを打ってきた。
自分より年上なのに、あどけない寝顔で幸せそうに眠る一刀様。
暫し私達は見とれたものの、役目を思い出して行動します。
ですが、揺すっても呼んでみても一刀様は、起きる気配が全くありません。
「どうしよう、亞莎」
「うーん」
困り果てていた私達ですが、
ガシっ
『へ?』
急に誰かに腕を捕まれました。
明命も驚いている所を見ると、この部屋に居るもう一人しかありえません。
そして、二人そろってそちらに振り向くと、ぐいと引っ張られ――。
『きゃむぅーっ!?』
私たちは、一刀様の寝台に引きずり込まれてしまいました。
素手で一鬼当千、万夫不当の如く戦う一刀様に、腕力で敵う筈がありませんし、
声を上げようにも一刀様の腕が、私たちを押さえつけ息をするのが精いっぱいでした。
「……?」
「あれ? か、一刀様?」
私達はこのまま純潔を奪われる、という妄想からでた恐怖にしばらく震えていましたが、
なぜか一刀様は、一向にそういったことをなさいませんでした。
それに抜け出すことはできませんが、先ほどより腕の力が弱くなっているように感じました。
「すぅ~すぅ……」
「ね、寝てます」
「寝ていてもこの腕力なんですか……」
不思議に思ってがんばって顔を上に向けると、一刀様のあどけない寝顔を見ることができました。
しばらく一刀様のお顔を観察すると、凄い発見をしました。
中性的で女の自分から見ても、羨ましくなるほど綺麗な睫、整った眉。
綺麗な目元、高すぎない鼻に、朝でも潤いを失わず、張りのある肌とぷるんとした唇。
「亜紗……」
「いけません明命……それ以上言っては、私たちは何か大切なものを失ってしまいます……」
唯でさえ瑞穂様がああなのに、もう私たちの女心がズタズタになってしまいそうです。
そのまま私達は、冥琳様が助けに来て下さるまでずっと一刀様の抱き枕になっているのでした。
「……やっちまったぁ」
一刀は起こしに来てくれた明命と亞莎に、寝ぼけていたとは言え、行き成りハグをしてしまった事を悔やんでいた。
その御蔭で朝から行き成り、
「クスクス……オニいさまハ本当ニセッソウがナイですネッ!」
「……。(私の方が、二人より長いのに、何故です一刀様。)」
「襲うなら、どうして僕じゃないんですか!」
蓮華がキレて俺に襲い掛かり、さらに思春は無言無表情で、
瑞穂は行ってはいけない道に誘い込むような発言をしながら、蓮華と一緒に襲い掛かって来た。
この時、偶々通りかかった蒼里が瑞穂の発言を聞いてしまい、
「(っ! 一刀様×瑞穂ちゃん!! 早速書かなくっちゃっ!!)」
と言った妄想を膨らませ、後に書にして販売し、国境無く女性陣に大好評の作品になるのだった。
閑話休題
本当に散々な目に遭った一刀だが、一応は江東の白虎と言われただけはあり、逃げ延びる事は出来た。
「だからと言って、何で俺の部屋に逃げてくるんだ」
「いいじゃん、固い事言うなよ」
行き成り自分の部屋に入り込んできた一刀を見て、凱は溜息をついた。
そして、徐に立ち上がり、
「残念だが、今日は街で診察をする日なんだ。 部屋を閉めるから、さっさと出ろ」
「な、何ですと!?」
そう言った。
一刀は、死刑宣告をされたにも等しかった。
今外に出れば、蓮華達に再び追い掛け回される。
「あ、そうだ。 この前この本の事を、教えるような事を言っていたよな。 それだけなら聞いてやるぞ」
そう言って凱は、『奥医書』を一刀に見せる。
「冷てえなぁ、まぁ仕方ねえ。 その本は、奇抜な格好した爺さんから貰ったんだよ」
「ん? 奇抜な格好?」
「ああ、たしか全身黄色の全身帯通(タイツ)に、白い幡徒(マント)をつけて、
髪型は鶏の鶏冠みたいな頭だったが……如何したんだ凱、顔色悪いけど」
一刀が、本を貰った人物の特徴を教えると、段々と凱の顔色が悪くなっていった。
「い、いやなんでも無い。 ああ、そう言えば明命と亞莎なら中庭にいたぞ」
「お、ホントか? 教えてもらって悪いな。 そんじゃ蓮華達に見つかる前に、二人に会って謝って来るかね」
そう言って、一刀は凱の部屋を出た。
一刀が部屋を出たのを確認すると、凱は椅子に腰掛け直した。
「……伯父さん、まだそんな格好してたのか……」
そう、実は先ほどの説明に出てきたのは凱の伯父だったのだ。
「街に行こう……」
凱は身内の恥を親友見られて変な疲れが圧し掛かったが、彼はものともせず、街に向かった。
一刀は、凱の部屋から出ると、即効で三人に見つかり、逃げ回ったが何度も見つかる
これを繰り返して翳虎を使って気配を消せばいいんじゃないのかと気が付いたのは、
すでに夕方になりつつあるころ合いになってからだった。
だが、一刀はまだ二人が中庭に居るという情報をつかんだため、急いで向かった。
途中、三人に何度も遭遇したが、やはり翳虎の御蔭で見つからなかった。
「え~っと、二人は……お、いたいた」
中庭で明命と亞莎は、二人でお茶お飲んでいた。
そんな二人を見つけた一刀は、そのまま二人の元に向かった。
「はうぁ……」
「はぅ……」
近づいてみると、何故か二人とも心此処にあらずといった状態だった。
とりあえず、一刀は声をかけることにした。
「よ、二人とも」
「はうぁっ!?」
「ひゃぁっ!?」
翳虎も使わず普通の声をかけただけなのに、驚きの声を上げる。
さも、今気が付きましたと言う様な反応だ。
だが、余りにも声が大きかったのか、何かが此方に近づいて来る気配を感じた。
「おにイさマァぁッ!」
「……」
「一刀さまぁっ!!」
言わずと知れた、蓮華、思春、瑞穂だろう。
「やっべぇっ!! 二人ともすまんっ!!」
「はうぁっ!?」
「ひゃぁっ!?」
二人を此処に置いたままでは、蓮華達が二人に何を仕出かすか分からないので、二人を脇に抱えて森の中に走って逃げた。
「ハァ、ハァ、ハァ、こ、此処まで来れば、平気、だろ……。」
一刀は、森の小川のある場所で、二人を下ろし肩で息をしていた。
かなりの距離を、錘付きで走ったため少し息が切れたようだが、直ぐに整った。
連れてこられた二人は、少し不安そうな表情を浮かべこう言った。
「あ、あの、初めてでしゅので……」
「や、優しく……うぅ……」
「は?」
それを聞いて一刀の脳は、少しの間フリーズしてしまったのは許される事だろう。
「………………はっ!! ちょ、チョット待て! 何時そんな方向に話が行ってしまったの?!」
暫く固まってしまった一刀だが、慌てて如何言う事か訊ねた。
「えと、雪蓮様と美蓮様が……」
「そ、その……うぅ……人目の無い場所に一緒に行ったらと、申されて下りましたので……」
「あ、い、つ、らぁぁぁぁっ!!!!」
つまりはそういうことだ。
今頃、雪蓮と美蓮で自分が困っている様子を想像し笑みを浮かべながら、
仕事――いや、酒盛りをしているのかも知れないと、一刀は思った。
「心配すんな、そんな事しねえよ。 そもそも、俺は無理矢理ってのはすかん。
やっぱりそういうことは好き合っていないとな」
一刀は、二人が持ってしまった自分への先入観を振り払う為、
出来うる限り優しく声をかけ、二人に笑いかけた。
「はうぁ……」
「あ……」
しかし、その行動が、逆に彼女等を引き込んでしまうと言う事には気付かずに。
一頻り撫でた後、一刀は口笛を吹いた。
すると、森の奥から多くの犬猫を引き連れた周々が現れた。
「ぐるぅ……」
「良し良し」
周々は一刀の背凭れになる様に、一刀の後ろに伏せた。
そんな周々を、一刀は優しく撫でる。
「お、お猫様がこんなに一杯、えへへ、もふもふ~♪」
「おいで、うん。 良し良し」
そして、二人は其々によって来た犬猫を思う存分可愛がる。
特に明命の表情は緩みっぱなしでだらしないと言っても過言ではないが、
普段が真面目な分、二人は日々の疲れを存分に癒す事が出来た。
「さて、二人とも。 唐突だが、少し話をしよう。 まぁ、おもに俺の名誉のためにだがな」
「あ、はいです」
「はい」
そう苦笑して、一刀は腰布から杯を三つ取り出し、二人に質問をした。
「二人とも酒は強い方か? んで、仕事は終わっているか?」
「いえ、余り強くありません。 仕事のほうは今日やる分は終わりましたので問題ありません」
「私も明命と同じです……」
明命と亜紗の返事を聞き、一刀はふむと頷き、
それならと呟いた後、中くらいの酒瓶と菓子を袋から取り出した。
「……か、一刀様いつも持ち歩いておられるんですか?」
「いや、そうでもないけど……まぁ、非番に限定するならほぼ毎日持ってるかな。 ほい、二人の分」
「あ、ありがとうございます。」
二人は杯を受け取りながら、一刀の言葉にすこし祭と同じお方なのかと思ってしまった。
かなり和んでいる明命とは反対に、まだ緊張が解れない亜紗に、一刀は少しおかしいと思って質問をしてみた。
「何をそんなに緊張してんだ? もしかして、そんなに俺が怖いか?」
「い、いえ! その、親戚以外で殿方とこうしてにお話するのが初めてでして……はぅ」
そう告白した亜紗は、恥ずかしさで顔を紅くしてその長い服の袖で顔を隠した。
そんな亜紗の様子に、一刀はキョトンとした表情をした後、小さく笑いながらこう言った。
「そうか、俺が初めてって事か、そいつは光栄だな」
「えと、その、こ、此方こそ?」
「ぷ! な、なんですか亜紗その言い方、ぷぷぷっ!」
「わ、笑うこと無いじゃないですか!」
おかしそうに笑う明命に、亜紗も少し緊張が解けた様で、そう返すことが出来た。
そして、思い出したかのように一刀は、酒を己の杯に注ぎ、酒瓶の口をまずは明命のほうに向ける。
「ほれ、注いでやるから」
「あ、ありがとうございます」
自分で注ごうとも思ったが、折角の好意を無碍にする事は無いと思い、注いで貰う事にした。
夕方の木漏れ日でキラキラと茜色に輝く酒からは、ほんのりと桃の香りが漂う。
「ほい。 じゃ、飲むか」
「はいです、ん」
「あ、はい」
二人は杯から零れない程度に注がれた酒を、口に含む。
強い酒独特の喉を焼くような感じは無く、ほんのり甘い桃の風味と爽やかな後味を演出する。
そして、甘さ控えめでどちらかと言うと、少し塩味のする菓子が絶妙にお酒の味に合っていた。
「おいしいです!」
「おいしい……」
それに驚いた二人は目を見開き、唯々感嘆の溜息を漏らし、酒を何度も口に含む。
「そうか、そいつは良かった。 俺が酒屋の店主と一緒に色々試行錯誤して作ったんだ」
「そうなのですか!?」
一刀が多趣味な人と言うのは聞いていたが、そんな事までしているとは知らなかった。
それから暫く、3人はお互いの趣味や、好きなものなどについて話をしていた。
だが、ふと明命は思ったことを聞いてみた。
「一刀様は如何して、そんなに色々な事を身に付けられたのですか?」
「あ、それは私も思いました」
そう、確かに是だけ出来れば人に自慢できるが、
それなら類稀なる武の腕でも良いはずである、明命には全く動機が分からない。
亜紗も同じようだった。
そんな明命の質問を受けた一刀は、ふむと呟く。
「質問に質問で返すようで悪いが、二人は人の『笑顔』を見てどう思う?」
「『笑顔』、ですか?」
「ああ、あんまり深く考えなくてもいい。 自分の思うが侭の事を答えてくれれば良い。」
唐突に返された質問に、二人は思案して彼の言うとおり思うが侭のことを答える。
「私は、気分の良くなる物、嬉しくなる物だと思います」
「私もです。 人の笑顔を見れば自分も、自然と笑顔になれますから」
二人がそういうと、一刀は満足そうに頷きながらこういう。
「だろう? 俺もそうなんだよ。 んで、その一番最初はな、俺の武を見せた時に雪蓮達の『すごい!』っていう笑顔を見てからなんだ。
でな、もっと見たくなってな、でも同じ事を続けても飽きられるだけだから、今度は料理に挑戦したんだ。
んで、沢山沢山練習して皆に俺の料理を出して、『美味しい!』って言う皆の笑顔を見た後、もっともっと皆の笑顔が見たくなって、
て言うのがずっと続いて行く内に、いつの間にか、今みたいになったって感じだ」
一刀のその言葉を聞いて、二人の内には敬意と驚嘆の念が渦巻いていた。
人の笑顔の為に此処まで出来る器の大きさ、それを身につける為に費やした努力。
その全てが、二人が一刀に対して敬意と驚嘆の念を抱かせた。
「でも笑顔ってのはな、戦が起これば必然的に無くなっちまう」
続けてそう言った一刀の瞳には、悲しみの色が映っていたのが二人には感じ取れた。
「だからこそ、俺はその笑顔を護る為に頑張らないといけない。 雪蓮の笑顔も、蓮華の笑顔も、小蓮の笑顔も……」
そして近しい人たちの名前を一人一人上げて行き、祭の名前をあげた後、自分の方を見つめ、
「勿論、明命、亜紗。 君達の笑顔もだ」
「はうぁ!?」
「ひゃう!?」
一刀の真剣な眼差しと、慈しむ雰囲気に二人は顔を真っ赤にして奇声を上げた。
一刀は全く意識して言っているわけではないのだろうが、
こうまでもはっきりと言われてしまっては、初心な二人は意識せざるを得ない。
二人は、自分の顔が熱くなるのを感じ、明命は少し伏せ亜紗は袖で顔を隠したが、それでも一刀の最後の言葉を聞く。
~SIDE明命~
「だから、供に歩んではくれないか?」
「一刀、さま」
そういうと、一刀様は私にゆっくりと近付き、肩に手を置く。
そして、ゆっくりと近づく一刀様のお顔と唇に、ぎゅっと目を瞑ったその直ぐ後――。
「や、やめて、明命! 早く起きて、明命!」
「……へ?」
突如一刀様のお声が、親友の切羽詰った声に変わり目を開けると、
其処には、顔を紅く染めたてんぱってる親友の亞莎がいた。
それも、あと少しで唇が触れてしまうような場所に。
「にゃ、にゃぁ~~~!?」
「わぁ!?」
目の前に亞莎の顔があった事に明命は驚き、亞莎を突き飛ばしてしまった。
床から起き上がると、自分の部屋の中で森の中ではなかった。
「いてて、もう明命、酷いですよぉ」
「あ、ご、ごめんなさいです、亞莎」
突き飛ばしてしまった亞莎を明命は、慌てて手を差し伸べ起こしてあげる。
起き上がった亞莎は、パンパンと服についた埃を叩きながら、恨めしそうに明命を見た。
「もう、起きて来ないからお越しに来たのに、突き飛ばされるとは思いませんでした。」
「ご、ごめんなさい。 そ、其れより私、おかしな事してませんでしたか?」
驚いたとは言え突き飛ばしてしまった手前、亞莎の恨めしそうな視線に耐えながら、自分が奇行をしていないか聞く。
「そうですよ、どんな夢を見ていたんですか?
床に近寄った私を掴んだと思えば、力いっぱい自分の方に引っ張り寄せるだなんて……」
「そ、そんな事を……はうぁ……」
夢の内容を思い出しながら、頬を紅く染めて俯く明命。
その様子に、亞莎は首をかしげながら、はっと思い出したように声を上げた。
「そうそう、明命。 祭さまが呼んでましたよ、朝の調練をしたいから早く来いと言ってましたよ」
「はうぁ!? そ、そう言う事は、早く言ってください!!」
祭の呼び出しに遅れでもしたら、どんな悪戯が待っているか想像に難くない。
準備をしている所に、部屋から出て行こうとした亞莎が止まって、
「明命、昨日そのまま寝てしまったんですね? 昨日のお酒の香りが残ってますよ?」
静かに笑ってそう言うと亜紗は部屋を出て行った。
確かに先ほどまでは少し興奮していた為か、お酒の臭いに気付かなかった。
そして、ほんのりと優しい桃の香りが混じっているのに気がつく。
『だからこそ、俺はその笑顔を護る為に頑張らないといけない。』
「あ……。 はい、私もがんばります一刀様!」
昨日の一刀の言葉を思い出し、明命は気分が引き締まるのが自分でも判った。
そして彼女は、そのまま部屋を出た。
その足取りは、彼女の気分を表しているように物凄く軽い物だった。
ただ、調練に供に参加した祭に、根掘り葉掘り穿り回される事になるのは、余談である。
そして、この会合の御蔭で明命と亞莎が一刀に好意を抱いてしまったのも、余談である。
オマケ
~一刀の部屋~
「……」
「……」
「あ、あの~なんで二人がここに居るのかな?」
夜、部屋に戻った一刀は、さて寝ようと思って部屋に入ると、蓮華と思春が待っていた。
そんな二人に、一刀が声をかけたのは許される行為だろう。
「え、えと……」
「私達は、一刀様に女にしてもらいに来ました」
少し言いよどんでいる、蓮華の代わりに思春がストレートに用件を言った。
その頬はほんのり朱に染まり、一刀と目が合うとさっと逸らし、チラチラとこちらを見てくる。
対する蓮華は、顔を真っ赤にして俯き、服の裾をぎゅっと握っている。
やがて決心したように、顔を上げて一刀を見て、
「一刀お兄様、わたし……蓮華はずっと、お兄様が大好きでした」
そう言って、一刀の方に一歩踏み出す。
「最初は兄妹としてでした。 でも、十を過ぎたころからそうじゃありませんっ!」
そう言って、思いっきり一刀の胸にしがみ付く。
と、後ろからも服を引っ張られるような感覚があった。
首だけ其方に向けると、いつの間にか、思春が其処に移動して顔を伏せてしがみ付いていた。
「……私も、始めは一刀様を上司として、尊敬していました」
そう言って、一刀の服を握る手に力が篭る。
「ですが、何時しか、私は己の中の女心が、一刀様を求めるようになってしまいました」
そう言って、思春は顔を上げる。
目じりに少しだけ涙を溜めていた。
「蓮華は、"女"として男であるお兄様が好きです」
「一刀様、一人の女として、お慕いしております」
『私達の想いを、受け取ってくださいますか?』
二人がそう言うと、一刀は二人を両腕で抱えて寝台に押し倒した。
「……ああ、女に其処まで言わせて黙っているほど、アホじゃないんでな。 俺も、お前達が大好きだぜ。」
そう言って、一刀は二人に一回ずつ口付けをした。
翌朝、三人仲良く一刀の部屋にて何も着てない状態で眠っているのを、
帰ってきた夕陽と廿楽に発見され、蓮華は美蓮と雪蓮に、思春は祭に弄られるのであった。
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ちわっす!
お久しぶりでございますっす、タンデムです!
今回は……あー、結局は一刀君ですねって感じですw
そして、義理とは妹とその従者までもその毒牙に……。
何処まで被害者が出るのでしょうかww
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