No.221172

夢ユメ

tanakaさん

みんな鈴ちゃんを可愛がろうよ!

2011-06-06 21:07:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2194   閲覧ユーザー数:2098

「そろり、そろ~り――と」

 うん。一夏はまだ眠ってるみたいね。

 気持ちよさそうに眠ってる一夏……ふふ、バカみたいな顔をしちゃって。

 一体、どんな夢を見ているのかしらね。

 

「……ん、り…………ん」

 え……?

「んぅ、鈴……」

 えっ!? ちょ、ちょっと!? い、今あたしの名前を呼んだわよね!?

 も、もしかして一夏ってば、あたしの夢を見ているの!?

 何!? 夢の中でのあたしは何をしてるの!? 何をしてるの!

「……し、死ぬ……それ以上はさすがに……」

 ……あー。あまりいい夢じゃないみたいね。

 それにしても死ぬって、夢の中のあたしは一夏に何をしてるのよ。

 つーか、何でそんな苦しそうな夢を見るのよ。

 どうせ見るのならもっと素敵な夢を見なさいよね。

 た、例えば――

 

『鈴。好きだ。俺と付き合ってくれ』

『うん。一夏……』

『ん……ちゅ……』

『んぁ……あっ、ん……』

 

 ――みたいな感じの夢をさ!

 一夏があたしに告白をして、あたしがそれを受け入れてキスをする。

 ちょっとくらい、そんな夢を見なさいよ!

 苦しい夢より、こっちの方が楽しいわよ。

 だから一夏――そんな夢を見せてあげる。

 

「一夏。あたし一夏のこと大好きだよ」

 寝ている一夏の耳元で告白をする。

 これで一夏の夢に干渉出来るとは思わないけど、可能性はゼロじゃないもんね。

 うん。絶対にゼロじゃ……

「……俺も鈴のことが――」

「――っ、一夏」

 小さくて聞きとりにくかったけど、確かに聞こえた。

“好きだ”という言葉を一夏の口から。

 夢の中での出来事の言葉。そんなことは分かっているけど、それでも一夏はあたしに好きだと言ってくれた。

 それが嬉しい。何よりも嬉しい。

「ありがと一夏。あたしも大好きだからね」

 お礼の言葉と共に、一夏の頬にキスをする。

 これ以上先は我慢しよう。これはさすがにズル過ぎるから。

 この先に進むための資格。それを手に入れた時にはきっと――

 

 だから一夏。今度は起きてる時に今の言葉をあたしに。

 他の誰でもない。この凰鈴音に言ってよね。

 幸せになれる魔法の言葉を。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
8
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択