「そろり、そろ~り――と」
うん。一夏はまだ眠ってるみたいね。
気持ちよさそうに眠ってる一夏……ふふ、バカみたいな顔をしちゃって。
一体、どんな夢を見ているのかしらね。
「……ん、り…………ん」
え……?
「んぅ、鈴……」
えっ!? ちょ、ちょっと!? い、今あたしの名前を呼んだわよね!?
も、もしかして一夏ってば、あたしの夢を見ているの!?
何!? 夢の中でのあたしは何をしてるの!? 何をしてるの!
「……し、死ぬ……それ以上はさすがに……」
……あー。あまりいい夢じゃないみたいね。
それにしても死ぬって、夢の中のあたしは一夏に何をしてるのよ。
つーか、何でそんな苦しそうな夢を見るのよ。
どうせ見るのならもっと素敵な夢を見なさいよね。
た、例えば――
『鈴。好きだ。俺と付き合ってくれ』
『うん。一夏……』
『ん……ちゅ……』
『んぁ……あっ、ん……』
――みたいな感じの夢をさ!
一夏があたしに告白をして、あたしがそれを受け入れてキスをする。
ちょっとくらい、そんな夢を見なさいよ!
苦しい夢より、こっちの方が楽しいわよ。
だから一夏――そんな夢を見せてあげる。
「一夏。あたし一夏のこと大好きだよ」
寝ている一夏の耳元で告白をする。
これで一夏の夢に干渉出来るとは思わないけど、可能性はゼロじゃないもんね。
うん。絶対にゼロじゃ……
「……俺も鈴のことが――」
「――っ、一夏」
小さくて聞きとりにくかったけど、確かに聞こえた。
“好きだ”という言葉を一夏の口から。
夢の中での出来事の言葉。そんなことは分かっているけど、それでも一夏はあたしに好きだと言ってくれた。
それが嬉しい。何よりも嬉しい。
「ありがと一夏。あたしも大好きだからね」
お礼の言葉と共に、一夏の頬にキスをする。
これ以上先は我慢しよう。これはさすがにズル過ぎるから。
この先に進むための資格。それを手に入れた時にはきっと――
だから一夏。今度は起きてる時に今の言葉をあたしに。
他の誰でもない。この凰鈴音に言ってよね。
幸せになれる魔法の言葉を。
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