No.220866

仮面ライダーEINS 第十一話 優しさとメダルと学園都市

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。

執筆について
・隔週スペースになると思います。

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2011-06-05 13:37:15 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:873   閲覧ユーザー数:869

これまでの仮面ライダーEINS

 

学園都市に渦巻く欲望

 

その学園都市の仮面ライダーである雨無一騎は、技術を護るためそして技術が悪とされないために日々戦いを続けていた。

 

知識という欲望の戦いはどこに行き着くのか

 

 * *

 

第十一話 優しさとメダルと学園都市

 

 

――時は遡り……2011年5月3日 11:15

――学園都市 中央学区 

――中央環状道路

 空はねずみ色に淀んだ空。晴れない空は誰の心を映しているのか。雨無一騎の今日はパトロールに費やされていた。

中央区を囲むように走っている環状道路をパトロールしていた一騎のガードチェイサーに通信が入る。

『一騎、中央区で喧嘩』

「警備部に任せろよ。俺のギャラは高いの知っているだろう?」

 と言いつつも一騎は環状道路を降りる道へとバイクを進めた。

『それがしゃべっているのが肉体言語らしくてさ』

「了解。そろそろ飽きたからカフェAOでサボろうと思ってたところだ」

・・・

・・

 理系学区手前にある健康診断と問診を専門としている病院。

その前で騒動が起こっているのは一騎も理解した。ただ喧嘩と言うには一方的だった。金髪の青年が黒い髪の青年に一方的に喰ってかかっている状況であった。

「だからアンク!後でアイス食べさせてやるから!」

「うるせえ!」

 よく見ると金髪の青年の右腕は羽に寄生されたような、まるで別の生物の形容をしていた。

「おいおい、ここは江戸じゃないぜ。喧嘩なら衝突試験器に対して試験して……」

「すいません!すぐに……」

 一騎と黒髪の青年の動きが止まる。

双方お互いの顔を確認し、驚きに変わるがこれもすぐに笑顔に変わった。

「久しぶりだな!映司!」

「雨無さん!?」

 顔見知りであった。

少し前に海外を旅しているときに出会ったこれまた旅人。異様なまでに気があった二人は、異様なまでに偶然の再会を果たしていた。

だが映司の横にいる、明らかに悪い環境で育ったため汚い日本語しか話せない世間知らずで引きこもりの外国人青年には見覚えがなかった。

「おい、映司。誰だこいつ」

「おい、映司。誰だこいつ」

 ほぼ同時に映司に問いただした。

「えっと……こいつはアンクって言って……まあちょっと訳あって」

「なんだ、相変わらずのほっとけない病か?不治の病になるぞ?」

 そう言って映司の背中を軽く叩いた。

お互い笑顔で、立場はお互いに大きく変わったかもしれないが、その笑顔は何も変わらなかった。

「おい、俺の質問に答えてないぞ!」

「どうだ?最近冒険に出ているか?」

「……いえ」

「?」

 外野ではアンクと呼ばれた青年がうるさくしていたが、それ以上に映司の様子が少しおかしかった。

「……そうか、まあ休むことも大事さ」

 それに一騎は気付いたがあえて言及しなかった。

 

 

――2011年5月3日 ??

――学園都市 ??

 学園都市に一つの影、そしてその後ろに左肩を上げた人影、小さな子供の影。計三人の集団が学園都市に進入していた。

「カザリくん、君の完全復活を優先するということでよろしいですか?」

「紫のコンボ、相当厄介だからね。相対できるようにはしておきたい。ドクター、この子はどうする?」

 そういってカザリは小さい寡黙な少年、アンクロストを指さした。

「オーズ側にはその子のコアもあります。彼の出方でその子のコアも奪えるでしょう」

 そこまで言うとドクター真木の足が止まる。先を歩いていたカザリとアンクロストもそれに釣られて歩みを止める。

「……どうしたの、ドクター?」

 ドクター真木の目線の先には、捨てられた携帯ゲーム機があった。

「人の娯楽に対する欲望……興味深いですね」

 ドクター真木がそう呟くと携帯ゲーム機にメダルの投入口が生まれる。

左肩に載っていた人形が持っていたメダルをそこに投入した。ドクター真木が生み出すヤミーの特徴として、最初から成長体で誕生し、彼らに敵対する仮面ライダーの戦闘力を大きく削ぐ能力を併せ持っている。

「ふうん、また面白いヤミーが生まれたね」

 暗がりだったのでシルエットしか見えていないが、そのヤミーが強大であることはカザリには良く分かっていた。

続いてドクター真木は、据え置きのゲーム機にメダルを投入する。

「ええ、これだから科学者は止められません」

 そう言うとドクター真木は肩に載せていた人形に視線を移す。

「それにこの学園都市のライダーの実力を計りたくもあります」

 ドクター真木の耳には学園都市の仮面ライダーは強力ではないと聞いていた。そもそも特徴がないのが特徴で、ドクターが作りだした仮面ライダーよりも圧倒的に劣ると聞いていたからだ。

だが調べれば調べるほど不思議な部分が多い。不可解というべきか?

スペックで言えば強化外骨格に毛が生えた程度だ。だがこれほどの戦歴を叩き出せるのは仮面ライダーの側ではなくおそらく……。

「雨無一騎。なかなかどうしてやるものです」

「楽しそうだね。ドクター」

「ええ、ライバルがいるというのがこんなに楽しいとは……正直驚きです」

 ドクター真木の肩に載っていた人形は彼の心情を表すように両手を挙げ万歳をしている。

「ですが君は余裕がないように見えます。珍しいですね、カザリくん」

「あの男……相当危険だよ」

 遠巻きから映司と一騎のやりとりを眺めていたカザリは、得体の知れない違和感を感じていた。

「それはどういうことですか?」

「……正体不明っていうべきかな?」

 

 

――2011年5月3日 14:12

――学園都市 中央区 基礎医療部

――学園都市立基礎医療病院 待合

「ほれ、映司」

 そう言って一騎は映司に健康診断書を手渡した。

と言っても普通の健康診断ではなく、健康ドッグに入った並のデータが羅列するものだ。ここ基礎医療部では理系学区ほどではないがかなり高度な診断と検診を行える。

「しかし学園都市くんだりまで来なくてもいいだろ。別の健康診断なら本土でも出来るぞ?」

 まあデータが多いに越したことはないが。と続けて健康診断書に書いているパラメータを説明した。

「知り合いのお医者さんに詳しく調べろって言われて……」

「でこの有象無象も付いてきたのか?」

「俺はこいつの監視で来てるんだよ!」

 そう言ってアンクは口にアイスを突っ込んだ。まだ肌寒い時期によくこんなに喰えるものだ。

「まあ映司は危なっかしいからな、気持ちは分からんでも無い」

「雨無さんまで……」

「知っているか、映司。糖尿病は自覚が無くても進行する。気付いたときには爆弾を抱えているんだ」

 そう言ってアンクを指さした。どうやら一騎はアンクをたいがいに気に入らないらしい。

「ああ?それはどういう……」

 そこまで喰ってかかったがアンクの態度が急変する。何かを感じ取ったかのような表情に映司の顔も鋭くなった。

「ヤミーだ」

「!……雨無さん。また後で!」

「おい、映司!?病院の中を走るな!」

 すいません!という声が聞こえるが、もう既に病院を出て行く寸前であった。

「どうしたんだ、急に……」

 そういう一騎のアインツコマンダーにも連絡が入った。たまに私用の電話もあるが、大体は学園都市内の厄介事の電話が多かった。

淡い期待を寄せつつも電話の主はもちろん晴彦だ。

『一騎、中央区販売部に怪人出現』

「……なに?」

 

 

――2011年5月3日 14:31

――学園都市 中央区 販売部

――アミューズメント実験棟

 端から見れば遊園地であった。ここアミューズメント実験棟では遊園地という名の、娯楽が人に与える影響を"ついでに"調査しているところであった。

そこに駆け込んだ映司はたくさんの観光客にすれ違い、ヤミー二体の存在を確認する。

「ヤミー?学園都市にも!?」

「映司!」

 アンクの言葉に反応した映司はオーズドライバーを取り出し腰に装着。ほぼ同じタイミングで、アンクの腕から赤、黄、緑のメダルが映司に投げられ、それを受け取った映司は既に腰に装着してあったオーズドライバーに挿入した。

そしてオースキャナーで三枚のメダルをスキャンする。

 

――変身!!

『タカ、トラ、バッタ!タ、ト、バ!タートーバー!タ!ト!バ!』

 

「映司が……オーズ」

 一騎も今追いついた。少し高台にアンクが居て、オーズ・タトバは二体のヤミーと対峙していた。

仮面ライダーオーズ。

つい最近復活した仮面ライダー。一騎も丁度データを閲覧したばかりであった。鴻上ファウンデーションによってメディアに圧力がかかり大々的には報道されないが、一部の情報通……情報特権階級はオーズの存在を認識していた。

「?どうしました?」

「いや、歌が……」

「ああ、歌は気にしないでください」

「いや、まあ、なんだ、その。嫌いじゃない」

「じゃあ雨無さん、逃げてください!」

 オーズは目の前の二体のヤミーに向き直った。タイプは最近出現し始めた幻獣系ヤミー。

片方はねじれた角を二本持ち分銅のような尻尾と、前足の骨格間に翼膜が発達した腕を持っている。もう片方は身体までよく似通っているが一本角が特徴的だ。

「映司がオーズ……ってことはあれがヤミーで……あいつがグリードか」

 見た目は普通の怪人とは変わらない。アレがセル(細胞)メダルという硬貨によく似た物質で構成されていると言うから驚きだ。

加えてアンクだ。警察機構の人間に憑依……もとい寄生していると聞いていたが、随分とまあ横暴な種族だ。

一先ず一騎はアインツコマンダーにコードを入力する。学園都市で大きな顔をされても困る。

 

――変身!!

『EINS』

 

 アインツドライバーから光のリングが飛び出し、それが回転を始め光球を作り出す。振り払われた光の中心に現れたのは、まだスプラッシュフォームが実装されていないアインツ・エナジーフォームだ。

「雨無さんも仮面ライダー?」

「くるぞ!映司!」

 アインツが身構えたとき、二本角のヤミーが咆哮した。その咆哮の威力は周囲の建物のガラスを破壊し、コンクリート舗装を砕いた。

『一騎!二本角はディアブロヤミー、一本角はモノブロヤミーとするよ!』

「おい!著作権は大丈夫か!?」

 著作権より前方を注意するべきである。一本角であるモノブロヤミーが既にこちらに向かって体当たりを敢行していた。

これをタイミング良く回し蹴りで迎撃したアインツだったが、体勢を崩したモノブロヤミーはそのまま尻尾の振りかぶりをイメージできず吹き飛ばされる。

「やるじゃねえか」

 だがこれで一方的にやられるアインツではない。着地は成功し、モノブロヤミーと対峙する。再びモノブロヤミーが突進を敢行しアインツに向かって突っ込んできた。

これに応じるようにアインツは必殺技のコードを入力する。

9――9――9

 

「ライダーキック!」

『RIDERKICK!!』

 その場でやや高めに跳躍する。タイミングは添えるだけ。右足は突き出すだけ。

空中にライダーキックを設置するような蹴り方は、モノブロヤミーの頭部に直撃した。その威力はトドメを刺すには至らなかったが、自慢であろう一本角は根本から折れてしまう。

アインツが有利に戦闘を進めている一方、映司はディアブロヤミーに苦戦していた。

やたら堅い上に突進のスピードが速く破壊力も十二分だ。トラクローで牽制し、バッタレッグの跳躍力で回避するが状況は打開しない。

目の前のヤミーは、紫のグリードが作りだしたものでオーズの力を大きく削ぐ事が出来る。その不安とも戦わなければいけないオーズはアインツよりも苦戦するのは当然か?

「映司!これに変えろ!」

痺れを斬らしたアンクは赤いメダルをオーズに投げた。

だがオーズの手に渡るその前にアインツが中継カット……もとい邪魔をする。

「ああん?これがコアメダルか」

 研究者としての性か。赤いコアメダル……クジャクメダルを太陽の光で空かすように観察する。好奇心旺盛なのは研究室だけにした方が良い。

ちなみに先ほど角を蹴り折られたモノブロヤミーは頭を揺さぶられた衝撃か未だ動けず、アインツも尻尾を振り回されると都合が悪いので間合いを開けていた。

「返しやがれ!俺のメダルだ!!」

 腕だけで飛んできたアンクは自分の半身であるクジャクメダルに腕を伸ばすが、アインツにがっつり掴まれてしまう。

「お前ら、ぽいぽい投げてたら今みたいにインターセプトされるぞ……映司!」

 とりあえずアンクに説教をかけたのち、しっかりと映司にバックホームした。

「なんか!良い方法!ないですかね!?」

 しっかりとディアブロヤミーの攻撃を避け、映司はクジャクメダルを受け取り、真ん中のトラコアと交換、オースキャナーでオーズドライバーをスキャンした。

 

『タカ!クジャク!バッタ!』

 

 オーズの上半身が黄色から赤に変わる。同時に左手にタジャスピナーが装備された。

ディアブロヤミーもモノブロヤミーも突進を繰り返すだけが能だ。距離を常に開けている以上タジャスピナーによる遠距離攻撃は理にかなっていた。

セルメダルを3枚タジャスピナーに装填し、ディアブロヤミーに射撃した。

対するアインツは回復したモノブロヤミーの突進を見事に受け止めたところだ。そのまま相手の力を利用して回し投げる。投げる方向はディアブロヤミーのいる方向だ。

見事にディアブロヤミーの突進を崩し、一瞬有利な状況が作れた……かに思えた。

一カ所に集められ、起き上がった二体は先ほどとは違う咆哮をあげる。紫の衝撃波のように見えたその波動は、オーズだけではなくアインツも吹き飛ばす。

「ちぃ!」

 アインツは吹き飛ばされただけだ。だがオーズに関しては訳が違う。何故か紫のヤミーの波動を受けるとコンボが解除されるのだ。

「映司!?」

そして決まって次には……

「!」

 映司の身体から三枚の紫のメダルが飛び出した。

勝手にオーズドライバーに収まり、オースキャナーがまるで意志を持っているかのようにその三枚をスキャンした。

 

『プテラ!トリケラ!ティラノ!プ、ト、ティラーノザウルース!!』

 

「紫のメダル!?」

 紫のオーズが変身を終えた瞬間、冷気が噴出しあたりを凍結させる。咆哮徒共に凍結した地面が衝撃波と伴って砕け散った。

アインツはその衝撃波の余波を受け吹き飛ばされる。

「何だ、このパワー……」

 明らかに異質であった。その凶暴性は計り知れない破壊力を秘めている。

オーズ・プトティラは地面に腕を突き立てメダガブリューを召喚し、ディアブロヤミーとモノブロヤミーに斬りかかっていった。

暴力の権化。まさにそう形容するしかなかった。戦闘力はディアブロヤミーとモノブロヤミーを文字通りに圧倒していた。

僅か数合で二体を追い込んでいく。勝負を決したと感じたオーズ・プトティラがメダガブリューをアックスモードからバズーカモードに換装しストレインドゥームを発動させる。

『プ、ト、ティラーノヒッサーツ!!』

 だがその必殺技が放たれる瞬間、二体のヤミーは耳をふさぎたくなるほどの咆哮を放った。アインツは怯んだがオーズ・プトティラは怯まない。しかしその咆哮は再びガラスを砕き、コンクリート舗装を翻す。目眩ましが舞う空間に向かって放たれた必殺技は、それらを細かく砕いただけに過ぎなかった。

『一騎!地中に逃げられた!』

「器用な真似を!?」

 潜行スピードも尋常ではなかった。もっともあの突進力を実現している身体と特徴的な角を利用すれば土を掘るのもかなり早いだろう。

すぐに接近するが既に学園都市を耕しに行ったらしい。しかも追跡出来ないようにご丁寧に土でトンネルをふさいでいる。

それを眺めていたアインツの背中に衝撃が走った。オーズ・プトティラがメダガブリューで斬りかかったのだ。

「どわ!?」

 幸い、今のアインツ・エナジーフォームは実装を予定しているフォームを含めても一番堅い。

しかしオーズ・プトティラの攻撃は早く重い。

「くそっ暴走か!」

 アンクが悪態付き、アインツは目の前のオーズ=映司が……何よりも優しく他人のために自分の命すら擲つ映司が、暴走しているとはいえ味方に攻撃する事態に驚愕していた。

「映司!判らないのか!?」

 オーズの暴走の原因は既に判っている。オーズドライバーに挿入されている三枚の紫のメダルだ。

「少しくすぐったいぞ!」

 アインツはアインツコマンダーを開き、滅多に使わないコードを入力する。

0――0――0

 

「ライダードレイン!」

『RIDERDRAIN!!』

 

 メダガブリューを振りかぶったオーズ・プトティラとアインツが激突した。

 

 

次回予告:

――ライダードレイン!!

 

――映司、お前は空っぽなんかじゃない

 

――やらなきゃいけないことがあるので。

 

第十二話 虚無と欲望と最初の切り札

 


 
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