始めに、主人公を始めとした登場人物の性格にズレがあるかもしれません。
そういうものだと納得できる方のみ、ご観覧ください。
第十一話 これが男の戦いだ! by左慈
「季衣ちゃん!俺の胸に飛び込んでおいで!!」
「へ?うん!!」
季衣が胸に飛び込んできた。俺は思いっきり抱きしめる。
「あーもー!華琳ちゃん違って季衣ちゃんは素直で可愛いな~。うりうり、食べちゃうぞ~」
「きゃは、あはは。もー。苦しいよ~、兄ちゃん」
「、、、隊長」
「ん?なんだ?凪」
季衣ちゃんに頬ずりをする俺。凪は微妙な顔をする。
どうしたのだろうか?何か信じた者に裏切られたような顔だ。誰かに裏切られたのか?
「隊長は、軍議には参加しないのですか?」
「参加はしている。ここにちゃんといるだろ?」
「言い直しましょう。隊長は話し合いには参加しないんですか?」
「しない♪」
「、、、、、、、、」
話しあっている面々の方を見る。
「思うのですが、大部隊で動くとなればそれだけの糧食が必要です。つまり、そこを調べれば良いと思うのですが」
于吉がいた。
「良いところに気づいたわね。于吉」
華琳に睨まれた。何が不満なんだよ。于吉は頑張っているじゃないか。
「あれだけの大部隊が動いていたのだもの。現地調達だけで武器や食料が確保できる筈がないわ。何処かに、連中の物資の集積地点が有る筈よ」
手を振ってみる。桂花に睨まれた。俺は凪の方へと向き直る。
「于吉が出てるだろ?なら、大丈夫だ。あいつは天才だからな」
「しかし、隊長もいればさらに良いでしょう」
どうも、勘違いしているのかな?凪は。
「はぁ、凪。俺は万能じゃないんだ。ああいう、知識を出すのは于吉の方が上手い。なら、あの場は于吉に任せるのが上策だ。俺は于吉を信じてる」
季衣の髪に顔を埋める。相変わらず、良い匂いだ。凪は不満そうな顔をする。
「隊長には才能がおありです。なのに、どうして、それを使おうとは思わないのですか?」
「俺に才能なんてないよ。左慈みたいに強くもないし、于吉みたいに賢くもない。だから、俺に出来るのは嘘と偽装だけ。ハリボテしか、俺にはないよ」
「、、、、、、、、、」
凪は顔を俯ける。暗くなった。はぁ、俺らしくない、女の子を暗くするなんて。
「あ、あのね。凪ちゃん」
「季衣様?」
俺に抱かれていた季衣が顔を出す。
「兄ちゃん。いっつもふざけてるけど、ちゃんとお仕事はしているんだよ?今回の出撃だって、兄ちゃんから行くって言ったんだから。兄ちゃんはやることはちゃんとやってる。じゃなきゃ、華琳様が兄ちゃんを傍に置く訳ないもん」
季衣の目は真っ直ぐ凪を見る。俺は少し季衣から体を離した。喋りにくそうだったから。
「『誰にだって役割ってものがあって、それをやり遂げてるなら、誰に恥じることもない』んだよ」
ずっと前、初陣の時に季衣にそんなことを言った気がする。覚えててくれたのか、季衣。
ほんと、ヒロイン属性高いよな~。
「役割、ですか。、、、隊長。隊長の役割とは、何なのでしょう」
「俺の役割は、支えることだよ。支えになることだ。迷ってる奴がいたら、前に立つ。泣いてるなら、蹴り上げる。前を向いてるなら、俺はそいつに道を譲る。見ろよ凪、あそこに居る誰が迷ってる?泣いている?みんな、良い目をしてるじゃないか」
名残惜しいが、季衣ちゃんを抱くのをやめた。俺は凪の隣に立つ。話しあっている、于吉や桂花達を見る。凪も、またそれを見る。
「なら、俺のすることは黙って笑いながら見ていることだけだ。凪が俺を信頼してくれるのは嬉しいけど、他の奴も信じてみろ。あいつらが、俺に劣っている筈がないだろ?」
凪は、小さく頷いた。凪の顔がほのかに赤らむ。
「申し訳ありません、隊長。自分は、」
「分かればいい」
その顔が可愛くて、俯く前に頭を撫でた。
「、、、、、、隊長は、不思議な人です」
「俺としては、手から炎がでる凪の方がびっくり人間だよ」
「あれは、氣です」
凪は笑顔でそう言う。うん、満足だ。可愛い。久々にシリアスモードに入った甲斐はあった。
この後、俺達は街の外に陣を張った。そして、いつの間にか軍議で決まった作戦。
『黄巾党の糧食を焼いて、飢餓にしちゃおう作戦』を始めるにあたり、色々なことがあった。
「ほらな、だから俺は止めておけって言っただろ?何処にだって、一人か二人居るんだって、動くだけで迷惑な奴がさ。そういう奴は仕事をやらせればやらせるほど、誰かに迷惑がかかるんだよ。ほんと、最悪だよな」
「まったくだ。貧乏神もいいところだぞ。そんな奴がいたら、この温厚な俺様でもキレるかもしれない。大体、そう言う奴は自覚を持つべきなんだよ。出来ないことは出来ないんだから、そう言う勇気を持つべきだ。情けない」
「それは、、アンタ達のことでしょう!?この、馬鹿っ!馬鹿馬鹿!頭の中はオカラでも詰まってんじゃないの!?どうすんのよ!?」
俺と左慈が三日分の糧食を全て配ってしまって桂花に怒られたりしたのだが、まあ、省こう。
結局、華琳には許してもらえたんだし、良いじゃないか。
他にも、戦いの前に。
「この戦を持って、曹猛徳の名を大陸に響かせるわよ。各員、奮励努力せよ!」
「銅鑼(どら)を鳴らせえ!鬨(とき)の声を上げろ!追い剥ぐことしか知らぬ盗人と、威を借るだけの官軍に、我らの名を知らしめてやるのだ!総員、奮闘せよ!突撃ぃぃぃ!」
「お前達!俺の名前を言ってみろおおお!」
「「「「御使い様――!!」」」」
「止めろ。北郷」
「ごめんなさい。秋蘭」
とか、絵にするとカッコいい華琳と春蘭の号令が有り。
絵にすると情けない、俺が秋蘭に怒られることがあった。が、まあ、省こう。
自分のかっこ悪いところを無理に語らなくてもいいだろう。
そして今、俺達はそんなことがどうでもよくなるくらい、重大な問題に直面していた。
「どうするか。これを成功させるか、させないかで俺達の存在意義が問われるぞ?于吉、策はあるか?」
「そうですね。最高の天上に辿り着くには、左慈の武は必要不可欠です。しかし、それだけでは足りない。強いだけではたどり着けない高み。それが有るのがこの世界」
「ふん。長ったらしい、言葉など必要ない。俺様はどうすればいい?それだけを言え。そうすれば、必ず俺様の武は一刀と于吉の期待に答えるだろう」
俺達は天高くそびえる城の高見台を見つめていた。
俺は十文字の軍旗を持ち。左慈は腕を組み。于吉は眼鏡を上げる。
盗賊達への城攻めは既に終わっていた。しかし、俺達の前には戦より大切な勝負が有った。
この勝負から逃げれば、俺達は石を投げられ、足をかけられ、陰口をたたかれるだろう。
「にしても、季衣はやってくれるな。まさか、この城の中で一番高い建物の屋根に旗を刺すなんて。あんなところに差されたら、もうこの高見台の頂点を目指すしかないじゃないか」
見上げるほど高く掲げられた許の旗を睨みつける。
何時もは可愛らしくて、愛でる存在の季衣。しかし、今だけは敵だった。
戦が始まる前に提案された勝負。『いったい誰が、一番高い所に旗を掲げられるか戦争』の前では、悲しいが、みんながみんな、敵だった。
「もう、季衣に勝つにはこの高台の上に旗を刺すしかない。だが、この高台には屋根に上る道は無いし、壁をよじ登る時間もない。どうするべきだ、于吉。今こそ、お前の才能を使う時だ。天才、于吉!」
なんてどうでもいいことに才能を使うんだと言う奴もいるだろう。しかし、言わせてもらおう。
どうでもいいことにしか燃えられない男達がここに居るんだよ!!!
于吉は微笑えむ。
「一刀君。策はあります。しかし、この策が成功するのは三つの条件が不可欠。すなわち、地の利、人の力、そして、天の運。簡単なことではありません。それでも、やるのですか?諦めてしまった方が、簡単ですよ」
俺は、笑顔で言う。
「于吉。俺は天の御使いなんだ。だからこそ、誰よりも上を目指し、天に近づかなきゃならないんだ。誰にも、負ける訳にはいかないんだよ」
「一刀君」
「北郷」
俺はただ、天を見た。我ながら思う、ただ旗を刺す遊びなのに大げさすぎるな~。
「分かりました。では、作戦を言いましょう。まず、強い横風が来るのを待ち、来たら私が合図を出します。合図が出たら、一刀君は旗を真っ直ぐ、左慈が思い切り蹴れる高さに投げ上げてください。そして、左慈がそれを高台より上に蹴り上げれば、あとは風が私たちに勝利を運んでくれる筈です」
「ふん。正しく、三位一体の作戦という訳か。面白い。俺様達に成せないことなど無いのだと、天に知らしめてやろうじゃないか!!」
「ああ、そうだな。左慈!于吉!行くぞ、これが俺達の戦いだ!!」
「はい!」
俺と左慈と于吉はお互いに拳をぶつけ合い。俺達の戦場に立った。
「、、、、、、、、、」
「、、、、、、、、、」
「、、、、、、、、」
静かな時間だけが過ぎて行く。しかし、時間はそうない。
天よ、風を!俺達に勝利の風を!!
孔明並みに祈ってみる。すると、一陣の風が吹いた!!
「っっ、一刀君!今です!行きましょう!高みへ!!!」
「それを、、待っていたああーーー!!」
俺は十文字旗を垂直に投げる。
「左慈いい!受け取れえええ!!」
気分はさながら、元螺旋王だ。ふ、今はただの戦士だ、お前と同じな。とは言ったら、カッコいいだろうか?
「この十文字旗は、、、一刀の意地!」
ちなみに、劇場版だ。
「「「「、、無茶だろ。出来る筈がねえ」」」」
兵士達が呟く。気が付けば、俺達三人の周りに人だかりが出来ていた。
「それは貴様の限界だああ!この軍という世界で!無理だと嘆いて可能性を封じ込めた、貴様自身の限界に過ぎない!」
左慈は叫ぶ。
「そう、人間にももっと大きな人がいるのです!その人がやれというのなら、私達は前に進む!一刀君こそが無限大、その大きさに、私は賭ける!」
于吉は叫ぶ。兵士達は俺を見る。その眼に、今までにない輝きを宿して。
「「「「本当に、出来るっていうのか!?」」」」
兵士達はそう叫んだ。俺も、叫んだ!
「覚えておけ!この十文字旗は、大陸に風穴を開ける!その穴は平和を願う者の道となる!太平を行く願いと!平和を願う者の希望!二つの思いを二重螺旋に織り込んで!天へと続く道を突く!俺達の軍旗は!天を作る軍旗だあああ!」
俺は左慈見て、もう一度叫んだ。兵士達も左慈を見る。
「左慈いい!行っけえええええええ!!」
「「「「「、、、、、、、、、」」」」
「俺は信じる!一刀を!于吉を!二人は、俺様の、魂だああああああ!!!」
凄まじい風切り音と共に、左慈は右足を振り上げた。
十文字旗は空高く打ちあがっていく。
「「「行けええええええええ!!!!」
そして、数秒後。
「、、、、、、、、、、、、、、、、」
「、、、、、、、、、、、、、、、、」
「、、、、、、、、、、、、、、、、」
「「「「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」」」」
落ちてくる瓦礫と共に、天高く聳え立ち、風ではためく十文字旗があった。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
兵士達の称賛の声が響いた。
俺達は、長く厳しい戦いに勝利したのであった。
北郷一刀。俺が兵士達から絶対の支持を勝ち取った瞬間だった。
しかし、まさか、このおふざけがあんなことになるなんて。
今はまだ、左慈も于吉も、俺も、知らなかった。
そして兵士に混じって、官軍の諜報員が目を輝かせていたことにも気付けなかった。
数日後、陳留。
政務に励む華琳の元に、桂花は慌てて飛び込んでくる。
「か、華琳様!大変です!都より、先の戦に関する文が届いたのですが!」
「どうかしたの?まさか、官の連中が手柄を横取りでもしたのかしら?そこまで腐っているとはね、、」
「い、いえ。そうではなく、、その」
「桂花?早く言いなさい」
「はい、、、、、、、、、原因は不明ですが、先の戦の手柄が全て北郷の物となっているんです!」
「、、、、、はい?」
「文にはそう。近く、都から使者が労いの言葉を掛けに行くとも」
華琳の身体が小刻みに震え始める。手に持った筆が軋む音を立てる。
「へ、へえ。どうやったのかしら。ま、まあ、良いわ。一刀に才が有るのは知っていたのだし、こういう形でその才を見るとは夢にも思わなかったけど。相変わらず、面白い男ね。ふ、ふふ」
華琳は無理やり怒りを鎮めている。すると、次は秋蘭が慌てて駆け込んできた。
「華琳様!大事です!」
「どうしたのかしら?」
「はっ。それが、一部の兵。先の戦に出ていた兵達からが反乱というか、謀反の気配があるようなのです」
兵の統率には絶対の自信があった華琳は眉を顰める
「どういうことかしら?」
「それが、酒の席でのことですが、、、兵士達は口ぐちに君主は華琳様ではなく。、、、その、北郷の方が良いのではと」
「、、、、、はい?」
「あれ程の英雄が人の下に付くなど、おかしいと。口々に、北郷を褒め称えているようです」
華琳の体が震える。遂に握っていた筆が音を立てて折れた。
「ふ、ふふふふ。そう、一刀は遂に本気を出す気になったのかしら?いえ、本気と言うより本性ね。反乱なんて、本当に面白い男じゃない、、、ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふ」
華琳の脳裏に一刀の馬鹿な行動が思い浮かぶ。今思えば、あの全てがこの為の布石に思えた。
さしあたって、思い出すのは最近起こした問題の二つ。
華琳の評判を貶める為、糧食配分を間違えたり。(勘違い。一刀はそこまで悪辣じゃない)
舌戦の時に自分の名前を兵士に叫ばせ、華琳の印象を薄くしたこと。(勘違い。あれはただ単に、ノリで言っただけ)
そして、自分のことを妻と呼んだのは全てを奪い取った後、跪かせるという意味だったのではないか?(華琳はマイハニーの意味を一刀から聞いています)
華琳は引き攣った顔で無理やり笑顔を浮かべる。もう、顔が般若みたいだ。
「一刀!!!絶対に許さないわ!!」
華琳は血走った目で一刀を探しに部屋を出て行った。
後書き
黄巾党との戦い第二部!前回から繋がって無い?いえ、繋がってます。
戦いに勝利した一刀達に待ち受ける次なる敵!?
やり過ぎた感が満載ですが、少し後悔はします。
ちなみに、読んでくれた方は一言でもコメントしていただけると、嬉しいな~。
次回は遂に第完!話。遂に対立した華琳と一刀。どうなってしまうのか!
お楽しみに?
それでは、、、また次回。
ドロン
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引き続き、黄巾党との戦い。
しかし、青年達の戦いは別にあった!