数日前、屋敷に入ってきた情報によって、俺は今建業へと向かっている。
数日前…
いつもの軍議で冥琳が報告した。
「北で袁紹と曹操が白馬・官渡で対峙したそうだ」
袁紹は最近河北で領土を拡大しており、少し前に幽州の公孫賛の領土をも奪っている。
領土を失った公孫賛は、前の連合の功により徐州の州牧となった劉備に保護されたと言う情報が入っていた。
「天下に躍り出るため領土を拡大したい袁紹と、同じ野望を持つ曹操がぶつかるのは必然」
「どっちが勝つと思う?」
「…そうだな。袁紹は曹操よりも兵数が多い。
相手よりも多くの兵を集めるのは戦で勝つ事の基本だ。
しかし無理な徴兵により、全体的に練度が低い。
一方曹操は袁紹よりも兵は少ないが、兵ひとりひとりの練度は高い。
それに隊を率いる将は曹操のほうが圧倒的に有能だ」
「つまり…分からないってこと?」
雪蓮姉さんが半眼で冥琳を見ている。
「いや、この戦い曹操が勝つだろう。
先程も行った通り袁紹はかなり無茶な兵の集め方をしている。
その兵力で袁紹は短期決戦に持ち込みたいと考えてる節がある。
多分急な兵力の増加で兵糧が足りないのだろう。
そこを曹操が付け入れば自然と袁紹軍は崩れてゆくだろう」
そう答えると、冥琳はメガネを指でクイッと上げ、
「これは好機だな。
この混乱に乗じて我等呉の独立を行う。
一刀、至急建業の黄蓋殿の所に向かってくれ」
「わかった」
こうして俺は、独立の準備を行なっている祭と合流するために建業に向かうことにした。
城の前に着くと中年の細身の男がこっちに近づいてきた。
「お久しぶりです、孫権様。お変わりはございませんか」
「久しぶりだな、張昭。俺は見てのとおり変りない」
俺を出迎えたのは張昭、字は子布。呉に使えている文官である。
張昭に案内され俺は祭たちの所に向かった。
その途中、
「お兄ちゃ~~~~~ん!!」「一刀さま~~~~~!!」
2つの物体が俺に飛んできた。
不意を突かれ、腹部目掛けて飛んできたそれらをまともに食らい俺は吹っ飛ばされてしまう。
「ぐふっ!!」
「会いたかったよ~~!!」「会いたかったです!!」
俺の腹の上に乗っている二人は悪びれる様子もなく、顔を摺りつけてくる。
「…久しぶりだな。小蓮、烈火」
俺に飛び込んできたのは、妹の尚香、真名は小蓮。
もう一人は凌統、字を公績、真名は烈火。
烈火は小蓮の護衛をしている。2人は歳も近いためか仲も良い。
二人の頭を撫でてあげ、そろそろどいてもらえるかと言うと、しぶしぶといった顔をしながらもどいてくれた。
「元気にしてたか?シャオ」
「もっちろん!街をいろいろ見てまわったり、近くの森を探検したりしてたよ!」
「遊んでばっかだなぁ。ちゃんと勉強もしていたのか?」
「…もちろん」
目をそらすシャオ。嘘だな。
「ははは。尚香様、嘘はいけませんぞ。
私の課題を解いた試しが無いでは有りませんか」
「子布~~!」
張昭にあっさり本当の事を言われ、シャオは慌てる。
「遊ぶのもいいけど、きちんと勉強もするんだぞ」
「は~い」
シャオは少し膨れながら答えた。
「烈火はどうだった?」
「はい!毎日修練を怠らず技を磨いておりました!」
背筋をピンと伸ばし烈火が答えた。
「甘寧にも負けません!だから甘寧の代わりに私が一刀様のお側に…きゃっ!」
何を考えたのか赤くなった頬に手を当て、体をくねくねとさせる。
実は思春と烈火は仲が悪い。
過去の誤解が有り、出会った頃は最悪であった。
誤解が解けた後も最初の頃ほどでは無いものの、以前犬猿の仲である。
2人との再会の挨拶もそこそこに祭たちの元へ向かった。
案内された部屋に入ると、祭の他に2人の女性が居た。
祭と挨拶を済ませる二人の内の一人がこちらにやってきた。
「お久しぶりです、一刀様」
恭しく頭を下げる女性に俺は返事を返した。
「久しぶりだね、茶々。シャオの面倒を見てくれてありがとう」
俺に挨拶してきたのは諸葛瑾、字は子瑜、真名を茶々と言う。
シャオの世話役として、そばに付いていてもらった。
「いえいえ、呉のため当然のことです」
メガネをきらりと光らせ、茶々は答える。
「そちらの方は?」
茶々の後ろでおどおどとしているもう一人の女の子を見ながら俺が言うと
「はい、こちらで私たちに協力してくれている娘です。
亞莎さんこちらに」
亞莎と呼ばれた少女は、真っ赤な顔を服の袖で隠しながらこちらに来た。
「は、はい。名前を呂蒙、字は子明と申します」
「俺は孫権だ。これから仲間になるんだ真名を預ける。一刀だ、よろしく頼む」
すると呂蒙は隠した袖の隙間からおずおずと俺を見る。
「私の真名は亞莎と言います!よろしく、お願いします!」
言うとまた袖で顔を隠してしまった。
嫌われてしまったのかな…
「亞莎さんは恥ずかしがり屋なんです。だから照れているんでしょう」
「照れていません!ただ…少し緊張しているだけです」
「緊張?」
「はい……呉の王族である孫権様に会うということで、その…」
「大丈夫ですよ、亞莎さん。
一刀様は気さくな方です。きっと亞莎さんも仲良く出来ますよ」
「ですが…私は目つきが悪く、相手に睨んでいると思われるのです…」
「そうかい?さっき見たけどそうは思わなかったよ。もう一度顔を見せてくれるかい?」
「うぅぅ…」
俺が言うと、亞莎はゆっくりとそれを下ろした。
俺は亞莎の目を見て、
「そんなことは無いよ。凛々しい目をしている。良い目だ」
と言うと、亞莎は顔を赤くしてうつむいてしまった。
小さな声で「ありがとうございます…」と言ったのが聞こえたが、そのまま茶々の後ろに隠れてしまった。
「はっはっは、早速亞莎も落ちたか。さすが一刀じゃな」
俺達の様子を見ていた祭の笑い声で、周りのみんなも笑った。
シャオと烈火は何故か膨れており、「また敵が…」とか「甘寧のいない今のうちに…」と言う言葉が聞こえてきた。
こうして新しい仲間を迎え、孫呉独立の戦いが始まった。
ということで第10話でした。
今回はオリキャラが3人出てきました。詳細は次のページに。
前のあとがきに書いたのですが、穏の拠点、結局思いつきませんでした!
穏ファンの皆様すみません!次回の合間には必ずや書こうと思います。ので、どうか勘弁を!
前回、恋姫たちの「声」の話をしたら思いの外皆様の食いつきがよく、今回も少し。
穏の声ですが、彼女の声はのんびりしていますがとてもエロいです。
恋姫のネットラジオでも言っていたのですが、あの声はまさに魔性の声!
実際に耳元で囁かられたらと考えると…息も荒くなるというものです!
あのボディにあの声。穏はある意味、呉の最終兵器ではないかと思います。
このページでは、今回出てきたオリジナルキャラクターの紹介を行いたいと思います。
張昭。字は子布。
呉に仕える文官です。
中年で細身の男性。鯰髭とか生えている。
ゲームをしていると、小蓮と合流したときに、字の子布が出てきたので小蓮たちと一緒にいたのだろうと推測し登場することになりました。
多分今回だけの登場。次回からは出てこないと思います…
凌統。字は公績。真名は烈火。
呉に仕える武官で、小蓮の護衛を行っています。
小蓮とは年も近く、主従の関係と言うより友達の関係に近い。
だから小蓮と一緒に悪戯とかしています。
服装は明命のような服で、武器は…どうしよう…まだ考えていません(汗)
何かいい武器は有りませんか?
体型は小蓮よりは大きいですが、明命よりちっさいです。何がって?そりゃもちろん……
髪型は長い茶髪を愛紗のように左にサイドテイルにし、前髪で右目が隠れています。
右目には隠れた力が…有りません。
一刀の事があるきっかけで大好きに!ですが、思春がいつも一緒にいるので目の敵にしています。
過去に思春と因縁が有りましたが、今はそれとは別に犬猿の仲。
真名の由来は、実際の凌統の息子・凌烈の烈から取りました。
はじめは父親の凌操から操(みさお)にしようかと考えましたが、後のことを考えるとややこしくなりそうなので、まだ見ぬ子供から名前を拝借!
烈火の子供が出てきた時どうしよう…
諸葛瑾。字は子瑜。真名は茶々。
呉に仕える文官で軍師としても活躍しています。
小蓮の世話係として江東にいました。
妹はあの「はわわ軍師」こと朱里ですが、あわわとは言いません。
普段はクールですが、慌てると妹と同じようにかみます。
朱里とは違い大人の体型をしており、そこそこに出ています。
釣り目がちでピンク縁のメガネをかけており、決めポーズはメガネがピカリと光る。
ロングの金髪を二房に分けて結んでいます。
誰にでも丁寧語で、呉の王族には「様」、他の人には「さん」を付けて名前を呼びます。
真名の由来はあるアニメの題名をもじりました。結構くだらないです…
皆様、何のアニメかわかりますか~?
以上、オリキャラ紹介でした。
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第10話です。
とうとう始まった孫呉独立の戦いの序章。
そして今回、オリキャラが出てきます。しかも3人も!
そんな事で大丈夫か!?