愛紗たちは一刀らに近付いているのには、気付かずに鈴々と言い争いをしていた。
「鈴々、我が儘言うな!今から行けば今日中には到着できる!」
「愛紗無理したら疲れるから、一度、町に行って食事してからでも遅くないのだ」
と言い争いをしていると、もう1人の少女が
「まあまあ愛紗ちゃん、ここまで無理して来ているのだから、取り敢えず町で食事でもしてから行
こう?」
とその少女が言うと愛紗は
「しかし桃香様・・」
と愛紗が反論しようとしたところ、紫苑が
「まあまあどうしたのですか?こんな往来で口喧嘩などして」
と言うと、桃香様と言われていた少女が
「す、すいません、見苦しいところお見せして」
「何か喧嘩をしていたけど、いったいどうしたの?」
「あの~あるところに行こうとしてたのですけど、行く前に食事するしないで揉めてしまっt
て・・」
「いったいどこへ行くところだったの?」
「実は・・水鏡塾に行こうとしたのですが、御存知ないですよね?」
とその少女が言うと、真里が
「実は私たちも今からそこに行くところだけど、今から行っても着くのが、夕方か晩になってしま
う、行くとしたら、この先の町で1泊してからの方がいいよ」
と説明すると鈴々が
「ほら愛紗、鈴々が言ったことが正しかったのだ」
「お前は食事をしたかっただけだろうが!」
と相変わらず鈴々に厳しい態度だったので、一刀らは
(「この世界の愛紗(ちゃん、お姉ちゃん)も相変わらず手厳しいな・・」)
と内心思っていた。
すると愛紗が
「説明ありがとうございます。それであなた方も水鏡塾に行くとおっしゃっていましたが、失礼で
すが、あなた方は何者ですか?」
と一刀らに尋ねると、翠が
「ああ私は涼州大守馬騰の娘、馬超だ」
「従姉妹の馬岱です」
「家臣の北郷一刀です」
「その妻の北郷紫苑ですわ」
「同じく妻の北郷璃々です」
「家臣の徐庶です」
と紹介した、一刀は徐庶にすでに全ての関係を打ち明け、この旅では、必要な時以外は、翠の家臣
で紹介するように説明していた。
それを聞いた義姉上と言われた少女が
「え、え、西涼の馬超さんに、北郷さんって噂の御遣い様では・・!?」
と軽く混乱していたが、愛紗が
「桃香様、先に自己紹介を」
「あ、ごめんなさい、私は幽州の劉備で、字は玄徳と言います」
「私は義妹の関羽、字を雲長」
「同じく義妹の張飛翼徳なのだー」
とそれぞれ紹介したが、一刀は
(「この子が劉備か・・、でも愛紗や鈴々が仕えるべき人物に出会えて良かったな」)
と密かに喜んでいた。
すると真里が、
「さっき、あなた方も水鏡塾に行くと言っていましたが、どういう用なのですか?」
そこで劉備が
「実は、私たちは世の中を憂い、何とかしたいと思い立ち上がったのですが、私たち3人だけでは
限界があるので、そしてそこに優秀な軍師さんがいるという噂を聞いて、私たちの軍師になって欲
しいとお願いにきたのです」
と熱く語った。
すると翠が
「へえ~あんた達もか。私たちもうちの国の軍師になって貰おうとお願いに来たのだが、こいつは
勝負だな」
となぜか勝負事の方に意識が行っていた。
紫苑が
「ここで立ち話も何ですから、宿屋に行ってお話しましょう、せっかくですから、皆で一緒に泊ま
るのはどうでしょう?」
翠、蒲公英らは同意したが、愛紗が
「い、いや敵同士になるのに一緒に泊まるのは・・」
「敵同士って、そんな固いことは言わないの、せっかくだから、私たちが宿代を出しますよ」
と紫苑が言うと鈴々が
「やった~宿代が助かったのだ」
「こら!鈴々勝手に決めるな!」
「愛紗ちゃん、せっかくだからお世話になっておこうよ、また帰る時のお金もいるのだから」
と桃香が言うと、愛紗も観念したかのように
「わ、分かりました、ありがとうございます、お世話になります」
皆で宿泊することに同意し、そして町に移動し、宿屋に入った。
そして一度、それぞれの部屋を別れ、夕食時に落ち合う話になり、愛紗たちが部屋に着いて、落ち
着いてから、桃香が
「あ~、まさか馬超さんと御遣い様らが来るとは思ってもいなかったよ~、でもそんな人たち相手
に私たち軍師を勧誘できるかしら・・」
と少々落ち込んでいた。
落ち込んでいる桃香を見て愛紗が
「桃香様、鈴々、ちょっと外に出ていきますが、すぐに帰ってきます。鈴々、桃香様を頼むぞ」
「うん、分かった。気をつけてね」
「分かったのだー」
と2人を部屋に残して出ていった。
一刀たちも部屋に入り、皆がくつろいでいたところに外の扉から
「失礼します、関羽です。部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
と訪ねてきたので、翠が
「入ってもいいぞ~」
と言って入室を許可したので愛紗が入ってきた。
そして翠が
「どうした何の用だ?」
と愛紗に聞くと、急に頭を下げ
「勝手なお願いだが、明日水鏡塾に行くのを遠慮していただきたい」
と言うと翠が怒気を込めながら
「それはどういうことだよ!勝手な事言うなよ!」
「それは分かっている、しかしそちらはすでに人材が揃っているかもしれないが、私たちは何もな
い状態で、頼りになる軍師が居なければ、今後の見通しにも影響するのだ、本当に申し訳ないが手
を引いてはくれないか」
と言うと、真里が
「それは聞けない話ね、まず目的が同じで、私は水鏡塾の卒業生だけど、私が水鏡先生に仕官する
に一緒に挨拶に来て貰っている客人を追い返すことなどできないし、そしてあなた方のそんな勝手
な言い分で、はいそうですか引くわけにはいかないわ」
「う、確かにそうだが・・」
と愛紗が言葉を詰まらせると更に紫苑が
「関羽さん、それは劉備さんの命令で来たの、それともあなたの一存かしら?」
「わ、私の一存です・・」
と愛紗が言うと一刀が
「関羽さん、ちょっといいかな?あなたが劉備さんのために思って、こういう話をしたのは分から
ない訳ではない。しかし、関羽さんがやっていることが劉備さんが望んでいることか?そして軍師
になるかならないかは、相手が決めることであって、俺たちが勝手に決めるものではないだろう、
それこそ勝手な考えではないかな?」
と愛紗を諭した。
そしてそんな一刀の言葉に愛紗は不思議な感覚を感じ
(「何で初対面なのに、この人の言葉を素直に受け取ることができるのだろう?)」
と愛紗は少し考えると、再び頭を下げ
「申し訳ありません、考えが足りませんでした。確かに皆さんがおっしゃる通りです。決めるの相
手であって私たちではありませんね、それこそ桃香様や私たちの熱意をぶつけて、来て貰えるよう
頑張ります」
と素直に謝罪し、そして
「あなた方には大変失礼なことをしてしまったので、お詫びとそして誤りを気付かせていただいた
お礼に真名を預かって頂きたい」
と言うと、翠が
「いいのか?」
「ああ、そしてあなた方と今後交友を深めていた方がいいと思うので、よろしくお願いしたい」
と言うと、皆、承諾して真名を交換した、そして一刀は愛紗に
「俺たちは真名がないので、一刀、紫苑、璃々とそれぞれ呼んでくれ」
と言うと愛紗は顔を赤らめて
「は、はい御遣い様!?」
「御遣い様は止めてくれよ、一刀でいいから」
「すいません、一刀様」
(「何で初対面のはずなのにこれだけ緊張しているのだ?そして胸が熱くなるのだ?)」
と内心なぜか動揺している愛紗であった。
そして、少し雑談をして愛紗は部屋を離れ、食事に行く準備をしていると紫苑が
「ご主人様、愛紗ちゃん、何かご主人様に感じているみたいですよ」
「え、そうか?全然そんな風には見えなかったけどな」
と言っている璃々が一刀のそばに来て、小声で
「ご主人様、また愛紗お姉ちゃん手を出したら、ダメだからね~」
「璃々何言ってるんだよ、向こうは俺らのことは覚えていないんだぞ、無理に決まっているだろ
う」
「いや、何かまたご主人様が、愛紗お姉ちゃんに追い掛けられている姿が、何となく想像できたか
ら・・」
「それは前の世界の記憶の間違いじゃないのか・・(そして何でそんなこと覚えているんだ?)」
「でも根拠はないですが何か、ご主人様に愛紗ちゃんたちがまた絡んでくると思いますけどね」
「それは女の感かい?」
「そうですわ、女の第六感かしら」
と笑みを浮かべている紫苑であった。
そして再び全員が合流して、宿屋を出て近くの食堂で食事を始めていたが、途中で劉備が
「あれ~愛紗ちゃん、何か馬超さんや御遣い様たちと親しく話をしているけど、どうしたの?」
「え、そうですか、普通ですけど?」
と言葉で言うものの明らか動揺していたので
「・・怪しい」
「確かにおかしいのだ」
と2人の義姉妹から疑いの目を向けられていた。
そこで一刀が
「劉備さんに張飛さん、さっきまた愛紗と会って、話をしたら、意気投合してお互いに真名を交換
したんだよ」
と言うと2人は
「えー、愛紗ちゃんずるい!そんな抜け駆けするなんて!」
「愛紗はずるいのだ!」
と2人は怒っていた。
「私も真名を預けるわね、私の真名は「桃香」、だから皆もそう呼んでね」
「鈴々は「鈴々」と呼んで欲しいのだー」
と言うと皆が真名を交換し、一刀が再び「俺たちは真名がないから、一刀、紫苑、璃々と呼んで欲
しいのだが」
と言うと
「分かりました、一刀さん」
「鈴々は、お兄ちゃんと呼ぶことにするのだー」
と2人は一刀のことをそれぞれ呼んでいた。
そして話をしていると真里が真剣な顔付きで
「ところで桃香さん、もしあなた方が国を治めるようになれば、どういう国にしたいの?」
「皆さんは、今、この国の状態をどうお思いですか?、役人たちは重税で民たちから絞り取り、民
は賊が怯えて、日々の暮らしさえ困っている状態です。誰かがやらないと国がずっとこの状態ま
まです。だから私たちは立ちあがって、皆が笑顔で過ごせる平和な国にしたいのです」
と桃香は自分の信念を答えた。
横から愛紗が
「では翠様、あなた方はどういう国を目指しておられるのですか?」
と聞かれ、翠は目で一刀を見て、一刀もアイコンタクトで承諾したので翠は
「私たちは目指すのは普通の国だな、幸せの基準は人それぞれだから分からない、だったらせめて
私たちは皆が普通に暮らし、普通な人生を送り、普通に恋愛し、そして皆が賊とかに怯えずに安心
して暮らせるようにしたいと思っている」
と以前一刀が言っていたことを翠も賛同してので、このことを桃香たちに説明すると、桃香は
「ほえ~、翠さんたちも私たちと同じような考えですね、だったら同士です、これからもよろし
くお願いしますね」
と言って、桃香は両手で翠の両手を握り、同士の契りみたいなことをしてきたので、翠も困惑しな
がらも承諾をした。
それを聞いていた一刀や紫苑は内心
((「人柄や理想は悪くないのだが・・、何となく不安があるな・・」))
と感じていた。
そして食事を終えて、一刀たちは桃香らと別れ、明日に備え、休むことにしたが寝る前に紫苑は一
刀に
「今日、愛紗さんたち見てどうでしたか?」
「ああ、仲良さそうで良かったとは思うが・・、何となく桃香に不安がありそうで、何の根拠もな
いのだけどな」
「あら、ご主人様もですか、私も桃香さんには君主として甘さが目立つような気がして・・」
「そんなこと言ったら、前の世界でも俺は皆から散々甘いと言われてきたぞ」
「でもご主人様は、締める時は締めてしましたが、あの子は、何か全てに対して甘さを見せるよう
な気がして・・」
「そうか・・、まあ今、ここで心配しても仕方ないし、何かあったらその時考えよう」
「そうですね、あれこれ心配しても仕方がないですしね」
「何時まで話をしているの、もう寝るようよ~」
「「ああ、ごめん(ね)、璃々」
と一刀たちは愛紗たちの再会を感謝し、眠りに入った・・。
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取り敢えず、一刀たちと愛紗たちの再会です。
では第11話どうぞ。