-前回までのあらすじ+α-
魏と呉が雌雄を決する戦いが始まる
建業と石頭との間の平原での戦いにおいて魏の攻勢を耐え続けた呉軍は一度も戦場に出た事のない
無名の将呂蒙こと亞紗率いる騎馬隊による中央突破で魏軍を恐慌状態に陥れ、
さらにその余勢をかって雪蓮自らが騎馬隊を率い魏軍の本陣を直撃して北郷一刀を討つという策を画策する
しかし自らの知識で呂蒙の事を知っていた北郷一刀は事前に味方へ呂蒙の存在を知らせていた、
戦場に出る可能性は不明ではあったがそれが功を奏す事となる
結果、逆にそれを自らの策に組み込んだ一刀は雪蓮と呉軍の切り離しに成功する
さらに呉軍の士気を削ぐべく張遼こと霞に呉軍本陣突入の特命を軍師郭嘉こと稟に事前に命じていた一刀、
その策は成功し張遼こと霞は呉軍本陣を急襲、さらに孫呉の牙旗を倒す事に成功する、
その効果は絶大で今まで必死に耐え、
いつか反撃への希望が見出せると考えていた呉軍兵士達の士気は大きく削がれる事となる
霞が負傷しながらも無事に帰還した瞬間沸き起こる魏軍兵士達の大歓声、
対照的に失意のどん底につき落とされる呉軍兵士達
それを合図のように魏軍は呉軍の息の根を止めるべく全面攻勢を開始する!
-魏side-
「真桜殿、騎馬隊の指揮は任せました!」
「おうまかしときぃ! いくであんたらっ!下手打ったら霞姐さんにどんな仕置きされるかわからへんでっ!!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
左翼を指揮する郭嘉こと稟は得意の騎馬運用で呉軍陣地を蹂躙する
必死に守る呉軍を指揮する陸遜こと穏ではあったが士気著しく低下した呉軍兵士達では
魏軍の攻勢を防ぎきる事ができず、ジリジリと追い詰められていく
一方中央での戦いも魏軍の一方的な戦いとなっていく
「今よっ!騎馬隊突撃!弓兵は援護っ!」
「凪!前曲を指揮して敵を殲滅してっ!後曲は負傷者の救援と前曲の手薄になった場所への援軍が
速やかにできるように!」
前衛を指揮する賈駆こと詠の指揮はまさに業火、すべてを焼き尽くすかの如き魏軍の攻勢は呉軍前衛をズタズタに
切り裂いていた、攻勢においては魏軍随一の用兵家、詠の指揮の元突き進む魏軍の前に呉軍はなすすべなく
ただただ無慈悲に討ち果たされていく
さらに魏軍右翼
「ふむ、すこぉし攻勢を抑えた方がいいかもしれませんね、秋蘭様と沙和ちゃんに無理な攻撃はしないように伝えてください」
なにかしらの理由で呉軍の反撃が熾烈なものと判断した軍師程昱こと風はあえて攻勢を抑える采配を見せる
攻勢をかけても被害は少なくはないと判断した為だ、勢いづく魏軍兵士達を抑えると呉軍を引き寄せては叩き、
退けば放置といった用兵で呉軍をじわじわと弱らせていく、変幻自在の用兵家の風だからこそできる戦いであった
一方魏軍本陣に切り込んだ雪蓮、亞紗率いる五千騎の呉軍騎馬隊は荀彧こと桂花の指揮する
魏軍中軍に重囲され残りはわずか千騎という状態にまで討ち果たされ、壊滅は時間の問題となっていた
そんな呉軍絶望的な状況の中
「一刀!私と一騎討ちをしなさい!約束したはずよ!、私は貴方を必ず殺す、そして貴方は私を殺すと!」
呉の王孫策こと雪蓮はこの絶望的状況を覆すべく魏の王北郷一刀に一騎討ちを申し込む
その一騎討ちを受ける事を決める一刀、しかしあまりにも無謀なその行為を桂花が必死に止める
しかし一刀は桂花を押しのけその一騎討ちに向かう
そして、魏の王北郷一刀と呉の王雪蓮との一騎討ちが今まさに始まろうとしていた
-魏軍side-
乱戦の最中、その異変に気付いたのは一人の軍師
「!?」
魏軍右翼を指揮するその少女はまるで一刀達の声が聞こえたかのように自軍の中軍の方を見つめる、わずかな異変、
そこで何が行われてるかなどわかろうはずもない、ましてやそんな無謀な事が行われてるなど誰が予想できるであろう…
「まったく…、おにーさんはどうして…」
具体的に何が行われてるかなどはわからない、しかし風は感じてしまう
あまりにも無謀、誰もが考えもしない事が今まさに行われようとしていると、
しかしそれをやってしまうのが北郷一刀という人物なのだと風はわかっていた
”おにーさんの所に早く行かないとっ”そう感じとった風はふわりと舞うとその場から駆け始めていた
戦場ではいつも冷静沈着(たまに居眠り)、どんな状況においても周りにやわらかな雰囲気をかもしだすその風が
戦場で駆ける姿を初めて見た兵士達は何事かと動揺する、そんな兵達をよそに風は夏候淵こと秋蘭を見つけると息を整え
「秋蘭様、申し訳ありませんがこの後の指揮をお任せしてもよろしいでしょうか」
珍しく慌ててるような風の、しかも指揮を任せるという言葉に
「ん?どうした風、具合でも悪くなったのか?」
「いえ、ちょっと…」
言葉を濁し風らしからぬ態度に並々ならぬ事態が起こったと推測した秋蘭、しかし戦況は魏軍が圧倒している、
そこまで考えその事態の原因がおそらくは一刀の事ではないかと予想した秋蘭は風の肩に手を置き
「風、何かあったのか!北郷にっ!」
風の肩に手を置く力が入る秋蘭、その言葉に風は
「わからないのです…、でも、風は感じるのですよ、おにーさんが何か無茶な事をしようとしていると…」
その言葉に秋蘭は自軍の中軍を見る、当然何が起こってるかなどわかろうはずもない、
しかし溜息をつき顔を曇らせ言葉少なな風のその態度に秋蘭は
「私も行こう、何が起こってるかはわからないが風がそういうのであればきっと北郷は何か無茶をしているのだろうな、
まったく、あいつはっ…」
いつもは冷静なのに一刀の事となると我を忘れ感情が表に出てしまい心配する秋蘭に風はつい微笑んでしまう、
その後秋蘭と風はこの後の右翼の指揮を任せる為に沙和を呼び寄せる
「沙和、この後の右翼の指揮を任せる、いいな!」
「え、ええええっ!きゅ、急にそんな事言われても沙和困っちゃうの~」
この大局において大軍を指揮するという重大任務に焦る沙和、しかし風が優しく
「大丈夫ですよ沙和ちゃん、呉軍にはもう反撃をするだけの余力ははありませんから~、いずれ戦力の集結を計る為
撤退するでしょうからそれを無理せず追撃するだけで大丈夫ですよ~」
と、風は簡単に言うものの沙和はうろたえて続ける、しかししばらくして沙和は覚悟を決めると
「わ、わかったの!さ、沙和頑張るのっ!」
こう見えても部下からの信頼は厚く、無理をしない戦いで被害を出さない沙和、ぎこちないながらも指揮をする沙和を見た
風と秋蘭は安心すると愛馬に乗り一路一刀の元へと向かう
-呉軍side-
一方こちらは呉軍、全面攻勢を行う魏軍に対し必死で守る呉軍ではあったが魏軍の勢いを止める事はできず
次々に防御陣は崩壊させられていく、さらに次々と討ち果たされていく呉の将兵
「韓当様討ち死に!」
「陳武様戦死!」
「……様!!」
呉を支え共に築いてきた者達が次々に討たれていく、そんな報告をただ聞くしかない状況
「まだだっ!まだ姉様が帰ってくるまでは退く訳にはいかないっ!耐えろ呉の勇者達よっ!!」
必死で味方を鼓舞する雪蓮の妹孫権こと蓮華ではあったがその声はただただ虚しく響くだけ
吐血しながらも必死で軍を統率する呉の大軍師周喩こと冥琳、しかし彼女の力をもってしても戦況を変える事は
すでにできないでいた、冥琳は想う、自分の力のなさに、自分の判断の甘さに
”何故北郷一刀が亞紗の事を知っていると考えなかったのか”
”何故雪蓮に敵本陣急襲などという策を与えてしまったのか”
涙を見せる訳にはいかない、まだ戦いは続いているのだ、しかし絶望すぎる状況が冥琳の心を苦しめる
天を仰ぎ見る冥琳、聞こえるのは呉の将兵達の阿鼻叫喚の声、魏軍は怒涛の勢いで本陣にまで近づきつつあった
冥琳は左手を上げ、空に何かを求めるように言葉を発する
「天よ…」
「何故この世に北郷一刀などを遣わしたのだ…」
「奴がおらねば…」
「今頃は孫呉が天下に覇を唱えていたものをっ…」
もし冥琳がこの時一刀と雪蓮の一騎討ちを知る事ができていたなら状況はまた変わっていたかもしれなかった、
しかし瀕死の呉軍にそれを知る術はなかったのだった
-魏軍中軍-
数万の魏軍、そしてその魏軍に重囲され千騎まで討ち減らされた呉軍騎馬隊、だが今この両軍は戦いをやめ
二人の人物に注視していた、その二人とは魏の王北郷一刀と呉の王孫策伯符こと雪蓮
ぎいいいんっ!
二本の剣が、二人の王の想いが激しく交差していた
二人の戦いを見守る魏呉の将兵達は驚く、力量的に雪蓮が攻め一刀が守ると思っていたからだ
しかし先を取ったのは一刀の方、激しく剣を揮い何度も鋭い剣を雪蓮に叩きつける
予想以上の一刀の剣の腕に魏の将兵達は驚く、春蘭達に鍛えられていた事を知ってたとはいえここまでやるとはと、
普通の相手であればその鋭い攻撃で退くかもしれない、しかし雪蓮はその攻撃を左腕だけでやすやすと受け流していく
時折、笑みを浮かべて
「はああっ!」
二度三度と一刀の剣が激しく打ち鳴らされる、一刀の繰り出す渾身の攻撃は一刀の間合いを作り出す、
一刀が自分の流れで戦い雪蓮はそれを防ぐ形、しかし瞬時に攻守が入れ替わる
雪蓮の並々ならぬ跳躍により瞬時に詰められる距離、そして繰り出される恐ろしいまでの鋭い剣
「速いっ!!」
一刀はそれをすんでの所でかわす、剣圧が一刀を襲う、ビリビリと熱い感覚、怪我をして右手が使えないにも関わらず
雪蓮の剣はその威圧感と破壊力を失う事はなかった
それでも一刀は退かない、次々に襲い掛かる雪蓮の速く鋭い剣を受けかわし続ける、かわす技術に関しては
春蘭達でさえ一目置く一刀である、雪蓮の攻撃を見切り続け一瞬の隙を見つけると反撃に転じる
雪蓮が一瞬作り出した間合いのほんのわずかな隙に入ると一刀は雪蓮に向け鋭い突きを放つ
だが次の瞬間躍り上がる桃髪の巻き起こす風が妖しい香りを運んでくる
「甘い!」
「!」
瞬間、一刀に重い一撃が加えられる
「がはっ!!」
大きく吹き飛ばされる一刀、迂闊だった、剣のみに気を取られていた一刀に食らわされたのは
鍛えられたすらりと伸びた雪蓮の美しい脚、雪蓮の鋭い蹴りが一刀を吹き飛ばしたのだった
吹き飛ばされ地面に叩きつけられた一刀は苦痛に顔を歪め、必死で呼吸を整える
(ぐっ…うっ…、骨は…、無事、か…)
天性の回避能力で致命傷を避け意識を失う事は免れた一刀、そんな一刀を
「あはは♪、凄いわね一刀、あの間合いからの蹴りで気を失わないなんて、思春が一刀を討てなかったってのも頷けるわ」
「はぁ、はぁ…、蹴りくれるとは思わなかったよ、まったく、油断も隙もないな、つっ…」
「こっちは右手が使えないんだから足くらいいいでしょ、それにこんな綺麗な足を見れて幸せでしょ♪」
そういうとこれ見よがしに脚線美を見せ付ける雪蓮
(うーん、なんてわがままボディ)
そんな不埒な事を考えながらゆっくりと立ち上がる一刀、緊迫した空気を一掃するような艶やかな笑みを浮かべる雪蓮
しかしそこから放たれる気は幾度もの戦いを乗り越え勝ち続けた者のみが放つ事のできる常勝不敗の気
「さすが一刀って言いたい所だけど、その程度の攻撃じゃ私は殺せないわよ?」
「心配しなくていいよ、まだこっちは準備運動みたいなもんだ」
一刀は精一杯の虚勢をはってみせる、しかし雪蓮はそんな一刀を見抜いているのか
「あらそうなの、じゃあそろそろ本気で来てくれない?これ以上呉の兵達が殺されるのを黙ってられないから」
これまで以上の殺気を放つ雪蓮、その殺気は見ている者すら感じられるほどの冷たい気
「ああ」
しかし一刀はそんな雪蓮に怯むことなく再び剣を握り締め心に念じる
(退くなっ!怯むなっ!気合で相手をねじ伏せろっ!)
「覇あああああああああああああ!!!」
一刀は腹の底から声を出し再び雪蓮に突っ込み鋭い剣を繰り出す
そんな二人の戦いをじっと見つめる人物、魏武の大剣夏候惇こと春蘭だ、彼女はただじっと二人の戦いを見つめる
今すぐにでも間に割って入って一刀を救いたいという衝動を必死で抑えて、そんな春蘭の元に
「しゅ、春蘭さまぁ~」
「春蘭様ぁ!」
やってきたのは許緒こと季衣と典韋こと流琉、そして遅れてやってきた桂花、三人は一刀が一騎討ちに向かった後を
追いかけてきたのだった、一刀と雪蓮の戦いを見た三人はただただ声を失う、あまりにも力の差がありすぎると
季衣と流琉は幼いながらも将である、雪蓮から放たれる気が並々ならぬものだと感じ取っていた
「しゅ、春蘭様…、兄様が…、このままじゃ兄様が!た、助けてあげてください春蘭様!」
「春蘭様、にいちゃんを止めてっ!助けてあげてくださいっ!」
季衣と流琉が必死で春蘭に懇願するも春蘭は何も言わずずっと二人の戦いを凝視していた、そんな春蘭に
「なに…、やってるのよ…」
搾り出すような声を出す桂花、目を赤く晴らし涙の跡を隠そうともせず、憤怒の表情で春蘭に詰め寄る
「何やってるのよあんたはっ!早くあいつを止めてよっ!あいつが孫策に勝てる訳がないじゃないっ!
こんな無駄な戦い意味ないでしょっ!早くあいつを止めてよっ!このままじゃ、このままじゃあいつがっ…」
「 黙れぇっ!!! 」
春蘭の一喝に季衣、流琉、桂花の三人は黙る、そんな三人に春蘭は
「あいつは…、あいつは私に勝つと言ったのだっ!勝つと!!」
「だから私はそれを信じる!信じるのだっ!お前達もあいつの言葉を信じろっ!!いいなっ!!!」
そう強く言い放つ春蘭、しかしその手は強く握られ血が滴っていた、信じていたい、しかしそれ以上に孫策の力は
桁違いなのだ、それは戦った者のみか分かる真実、歯を食いしばり一刀を見つめる春蘭は心の中で叫び続けていた
”北郷っ!”
一刀と雪蓮の戦いは続く
雪蓮の揮う剣が一刀を圧倒する、もって生まれた剣の才、さらに地力と己が負けるはずがないという信念の強さ
一方どんなに足掻いても雪蓮にかすり傷一つつける事ができない一刀はただただ雪蓮の剣を必死で耐えるのみ
しかしそれでも一刀は倒れない、歯を食いしばり無様に倒れ伏すのだけは堪えていた
(攻め続けろっ!)
自身を鼓舞する一刀、しかし一刀の身体には雪蓮の剣により無数に傷つけられた跡から血が滲んでいた
白く輝く聖フランチェスカの制服は紅く染まり身体中を激痛が襲う
それを見つめる魏呉の将兵達の誰もが一刀が倒れるのは時間の問題だと考えてしまう
しかし一刀は退かず倒れない、まるで不死身かと思われるほどの頑強さで戦い続ける
ようやくにして雪蓮は一刀という人物を甘く見ていた事を後悔する、対峙した時に一刀の力量は見切っていた
本気で打ち合えばすぐにでも決着はつくだろうと、だからこそ時間をかけ一刀を倒すつもりだった、
その姿を魏の兵士達に見せつける事で絶望を与え、孫策という人物に更なる恐怖を植えつける為にだ
だが一刀は倒れない、それどころか少しずつ剣が鋭くなっていくのを感じる雪蓮、おそらく北郷一刀という人物は
逆境を苦にしない強さが生まれつき備わっている、そしてその逆境が強くなれば成る程強さを発揮するのだと
打ち込む一刀、その剣は相変わらず雪蓮の身体には当たらない、力の差は歴然、だからこその雪蓮の油断
一刀の剣の剣尖の速度が少しずつ速くなっていた事に気付かなかった、
そして数え切れないほどの打ち合いのわずかな一撃
チッ!
「!」
雪蓮の左手から流れる一筋の血、かすり傷程度、しかしそれは一刀の剣がようやく雪蓮の身体に届いた事を示す
「はぁ、はぁ、やっとで届いたか…、はぁ…」
息を切らし身体をふらつかせ、それでも剣をしっかり握る一刀、対峙する雪蓮はその傷の血を舐めると
「残念だわ一刀、ほんとに…、残念だわ…」
雪蓮は楽しんでいた、愛した北郷一刀という人物との殺し合いを少しでも長く、
この幸せなひと時を過ごしたいと考えていたのだった、だが雪蓮はその想いを断ち切る、
一刀の内に秘めたものに雪蓮の勘が危険だと囁きはじめたからだ
「これで、終りよ」
雪蓮は傷ついた身体から猛獣の如き精気を滾らせて凄まじい剣を一刀に放つ
今までとは比べ物にならないほどの剣圧に吹き飛ばされそうになる一刀、本気の雪蓮、それが一刀に襲い掛かる
戦慄している間もなかった、雪蓮の剣を避けるのが精一杯の一刀、再び傷つき血に染まり軋む一刀の身体
二人の対決を見つめる全ての者が戦いの結末が近い事を感じる、一刀の死という結末に
そして
雪蓮の鋭い突きが一刀を襲う、二本の剣が交錯し鳴り響く金きり音、ついで肉が切り裂かれる鈍い音が続く
一刀の服が破れ血が噴出する、誰もが一刀の体が南海覇王に貫かれたように見えた
しかし一刀はその本能で瞬時に仰け反り致命傷を免れていた、それでも右胸から肩にかけ大きな傷跡が刻まれる
激痛を耐えながら一刀は距離をとる為後ろに飛ぶ、だが追撃の手を緩めない雪蓮のさらなる一撃が一刀を襲う
ぎいん!!!
必死で止めたものの衝撃をまともに受けた一刀は血反吐を吐き大きく吹き飛ばされ地面に叩きつけられる
微動だにしない一刀、静寂が戦場を支配する、魏の将兵達にとっては眼を覆いたくなるような光景がそこにあった
雪蓮は深呼吸をするとゆっくりと一刀に歩み始める、止めを刺すためにだ、しかし数歩歩んだ時その足が止まる
倒れていた一刀が朦朧とした意識の中で必死に剣を掴むとゆっくりと杖がわりに立ち上がろうとする、
地面に叩きつけられた時に額を切り流れる血は右目に達していた
ふらつきながらも立ち上がり剣を構え雪蓮に鋭い眼差しを向ける一刀、それはまだ負けていないという意思表示
その鬼気迫る一刀の姿に魏呉の将兵、そして雪蓮は息をのむ
「こんなの…、こんなの嬲り殺しよ…」
弱弱しい悲痛な声を発したのは桂花、その姿にはいつもの強気な彼女の姿はない
「お願い、助けてよ春蘭…、お願いよ…、このままじゃ一刀が…一刀が殺されるっ!」
震える体で必死に懇願する桂花、だがそれでも春蘭は動こうとはしない、崩れ落ちる桂花を季衣と流琉が支える、その時
「姉者ーーーーーーー!!!」
声の主は秋蘭、風を乗せ戦場から戻ってきたのだ、だが秋蘭の声がしても春蘭は何も反応はしない、
一刀と雪蓮の二人を見つめ続けているのだ、何が起こっても見逃すまいと
秋蘭も何が起こっているかの事態を把握する、孫策と一刀の一騎討ちという想像を超える事態
「姉者…」
一刀の事を心配し言葉をかける秋蘭、しかし春蘭の姿を見た秋蘭は姉の覚悟を感じる、共に歩んできた姉妹、そして、
共に愛した男の選んだ選択と決意、秋蘭は一呼吸置くと同じく覚悟を決め春蘭と共に一刀と雪蓮を見守る事を選ぶ
秋蘭が戦いを止めてくれると思っていた桂花はその姿に言葉を失う、再び顔を曇らせ涙を流す桂花をそっと抱く人物
「大丈夫ですよ、桂花ちゃん」
その優しい声に桂花は顔を上げる、声の主は風、その顔には焦りのようなものは見受けられない
「桂花ちゃんはおにーさんの事が心配なんですね、わかりますよ、ほんとにおにーさんはこんな無茶ばっかりして
後でたっぷりお仕置きをしてあげなくちゃいけませんね~」
「何…、言ってるのよ、そんなの無理に決まってるでしょ!孫策相手に無事でいられるわけがっ!…」
そこまで言った桂花の口にそっと指を当てる風、そして優しく微笑むときっぱりと言い切る
「おにーさんは負けませんよ」と
立つ事すらやっとの状態の一刀を見て雪蓮は顔を歪め苦しそうに言葉を発する
「一刀…、もうやめて…、貴方じゃ私には勝てないわ、これ以上の抵抗は無駄なのよ、わかるでしょ?
おとなしくしてたら苦しまずに逝かせてあげるから、だからもうこれ以上は抵抗しないで…」
それは情け、愛する人を苦しませたくないという想い、その言葉を聞いた一刀は剣を支えにしながら
「それは出来ないな、雪蓮…」
「どうして?」
「俺はまだ何も、示せていないと思うから…」
「示す、何を?」
問う雪蓮に一刀は呼吸を整え
「この国で、生きることを」
「おにーさんがお話してくれたんですが、風達が立っているこの大地は真ん丸い玉のようなものなんだそうです」
突然の風の話に桂花、季衣、流琉は皆”?”といった感じだった、そんな三人に微笑む風は話を続ける
「風も最初は信じられませんでしたがおにーさんは詳しく教えてくれました、この風達のいる大地は”地球”
と言われてるそうです、そしてこの地球はお日様の周りを回っているそうなんです、風はその話を聞いて
びっくりしました、だってお日様は夜になったら消えてなくなるものと思っていましたから」
「でも風はなんだか救われた気がしたんですよ、だってお日様は消えることがないってわかったんですから」
そんな話をする風がとても嬉しそうで、楽しそうだったからか、桂花達はつい聞き入ってしまう
「風はおにーさんに会うまでお日様をずっと探していました、風を、この国をぽかぽかと暖めてくれるお日様です、
そしておにーさんというお日様に出会いました、風はとても嬉しかったんですよ、
この人ならきっとこの国をぽかぽかと暖め照らしてくれると、でも赤壁の戦いの後おにーさんがこの国、いえこの世界の人間
じゃないって聞かされた時、おにーさんは風の知ってるお日様の様にいつか消えてなくなるんじゃないかって心配しました」
「でもお日様は消えてなくならない、見えなくなってもそこにあるのです」
そう言うと風は一刀を見つめ皆に言い聞かせるように言葉を発する
「お日様が消えることはないのですよ」
「前に…、言ったよな、俺はこの国の、いやこの世界の人間じゃないって、そんな俺を生かしてくれたこの国に、
大切なものを沢山与えてくれたこの国に俺は恩返しをしたいんだ」
雪蓮は一刀の言葉を聞き続ける
「国を強くすれば皆を、国を守れると思っていた、けど国が大きくなっていくにつれそれだけじゃ駄目だともわかってきた、
どんなに国を強くしても俺達がどんなに頑張っても天災や病、悲しみや辛い事はなくす事はできない」
「それでも俺はこの国で生きられて良かったって思っている、辛い事があっても皆が助けてくれたからな、
でも俺のような人ばかりじゃない、それで俺に出来るのはなんだろうって考え続けた、でも」
「でも?」
「非力な俺に出来るのはこの国を好きでいる事だけで、どんなに辛い事や苦しい事があってもこの国の為に尽くしたい、
この国で生きたいと思う事だけだけだったよ」
そこまで言うと一刀は立ち止まり遠くを見る、そこには自分達をじっとみる魏呉の将兵達
「それでも、俺はこの想いを皆に示したいんだ」
「何人でもいい、その想いを感じてくれた人がこの国を、いや国だけじゃない、大切な人の事を、家族の事を、
恋人の事を、守りたいものの事を、どんな時でも俺と同じように大切に思ってくれる人が増えてくれればこの国は
きっと本当に強くなれる、本当にこの国の為になると思うんだ」
そう語り一呼吸した一刀は再び傷ついたその身体で雪蓮の元に歩み始める
「そんな大層な事をこの国の人達に示そうって言ってる奴がさ、たかがボコられて身体中を切り刻まれた程度の事で
泣き言言ってもう勘弁してくださいなんて情けない事言うわけにはいかないだろ」
「この国で生きたいって思わせられないだろ!」
その瞬間一刀から風のようなものを感じる雪蓮、それは覇気のように熱く威圧感のあるものではなかった、だがそれは
暖かく全てを包み込むような風、それが何がわからなかったが雪蓮は昔冥琳と話をしていた事を想いだす
それはまだ雪蓮の母孫堅が生きていた時の事、孫堅と黄蓋こと祭が天子との謁見の後
”祭殿によると天子を見た時まるで暖かい風のようなものを感じたそうだ”
”何それ?”
”わからん、だが多分それが天命を受けた者の放つ気というものではないかという事らしい”
”ふーん、風ねぇ…、ねぇ冥琳、冥琳は天子ってどんな人だと思うの?”
”そうだな…、天子とは、天命を受けこの地に降り立ち、権力の付与と引き換えに綱常と人倫の擁護と維持を自ら義務づけ
それを執行する者であり、身をもってその範を示すお方だろうか…”
一歩、また一歩と雪蓮の元に歩みよる一刀、それを見つめ続ける雪蓮の額から冷たい汗が流れ落ちる、
一刀から覇王とはまた違うものを感じ取ったからだ、それはおそらく…
そこまで考えぶんぶんと首を振る雪蓮は何を言ってるのだと自分に気合を入れ直す、そして再び剣を構え一刀を見据える
しかしその時雪蓮は一刀の後ろにはためく”十”の牙門旗が視界に入り、はっ!と気付く
(”十”に一刀の”一”をたせば”土”となる)
雪蓮の頭によぎるのは五行相生説、「木」が燃えて「火」を生み、「火」は燃え尽きて「土」と成り、
「土」の中から「金」が生まれ、「金」の在る所から「水」 が湧きだし、「水」を吸い取って「木」が生える
今の漢王朝は火徳の王朝、そしてその次にくるのは土徳、すなわち…
(天は…、一刀に天下を与える事を決めているとでもいうの…)
近づく一刀が雪蓮の間合いに入りかける、その瞬間雪蓮は初めて退く、それは無意識に出た行動
王を越えた者と対峙する恐怖、雪蓮自身さえ戸惑いを隠せないでいた、そんな雪蓮に一刀は
「さぁ、決着をつけよう雪蓮」
威圧感のある声でそう告げると一刀は再び雪蓮に斬りかかる
再び二本の剣が激しく打ち鳴らされる、しかし先ほどまでとは異なる状況、一刀が有利な展開なのだ
雪蓮が手を抜いているわけではない、しかし雪蓮の動きが鈍い、そして一刀の剣尖が少しずつ雪蓮に達していく
「くっ!」
焦る雪蓮、一刀は何も変わらない、しかし雪蓮は考えそして感じてしまう、”この人物を倒していいのかと”
その心の迷いが剣の迷いとなって現れていた。そして一刀の鋭い一撃が雪蓮を襲う
必死で受けるも押されるのは雪蓮の方だった、そして、次の瞬間南海覇王に異変が起こる
キンッ
「!?」
一刀の剣が南海覇王に亀裂を入れたのだ、そしてその亀裂は徐々に大きくなっていく
「ぐっ!…」
「もしこの世に天意というものがあるならば」
風の言葉に桂花達は振り向く、そして二人の戦いを見つめる風はまるで慈しむかのような表情で優しく微笑み
「それは今、おにーさんの下にあります」
ぎいいいんっ!
金属音が戦場に響き渡る、誰もがその光景に驚愕する、雪蓮すら信じられないという表情で
「南海覇王が…、斬られたっ!?」
斬られるはずのないものが斬られたその衝撃は雪蓮の動きをさらに鈍らせる、そんな雪蓮に一刀は容赦をしない
続けざまに一刀の剣が雪蓮を襲う、それを必死にかわし折れた南海覇王で受け続けるも長くは続かない
一刀が雪蓮の間合いに入る、かわせないと判断した雪蓮は再び蹴りを見舞うも二度は通じない
蹴りをかわした一刀は雪蓮の懐に入り込み必殺の剣を繰り出す、しかし本能で感じ取り急所への一撃はかわす雪蓮、しかし
「うおおおおおおおっ!!!」
皮が裂け、肉が抉れ、そして骨が断たれる感覚が雪蓮を襲う、苦悩の声と共に雪蓮の左肩に突き刺さる一刀の剣
咆哮と共に身体ごと雪蓮に体当たりする一刀は雪蓮と共にそのまま地面へと倒れこむ
突き刺さった剣からは血が溢れ激痛が雪蓮を襲う、それでも力を振り絞り必死で一刀を引き剥がそうとする雪蓮
しかしその顔に
ぽたっ
冷たい雫が落ちる、雪蓮はその雫の元を見つめると、そこに見えたものに動きが止まる
静寂の後、雪蓮の身体から徐々に力が抜けていく、そして雪蓮は一刀に優しく
「まったく…、なんて顔してるのよ、いい男が台無しじゃない」
語りかける雪蓮に一刀は答えない、歯を食いしばり強く握るその剣は小さく震えていた
そんな一刀の真意を感じたのか雪蓮は何事かを呟く、その言葉に対し一刀は言葉を発さず小さく頷く、
それを確認した雪蓮は満足そうに笑みを浮かべると身体の力を抜き抵抗をやめる
一刀は息を整えると雪蓮の左肩からゆっくりと剣を引き抜いていく
激痛に顔を歪める雪蓮、血が噴出し身体と大地が紅く染まっていく
一方一刀はふらつきながらも立ちあがると紅く染まったその剣を
高々と掲げる
静寂が戦場を再び包みこむ、しかししばらくたった次の瞬間
わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
天地を揺るがすかのような大歓声、二人の対決を見守っていた魏の将兵達の歓喜の声だ、
自分達の信じていたものが消え去らない事への喜び、奇跡としか思うしかないその結果にただただ声をあげる
その歓声を聞く一刀、しかし体力の限界まで戦った一刀は戦いの疲労によって立っている事もできず崩れ落ちていく
だが一刀が地に伏せる事はなかった
「北郷ーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
がしぃっ! 倒れる寸前の一刀を抱きとめたのは春蘭、一刀が剣を掲げたと同時に真っ先に走り出していたのだった
朦朧とする一刀に声をかけ続け優しく支える春蘭にようやく気づいた一刀は
「やぁ…、春蘭…、言ったろ…勝つって…」
「ぶ、無様は見せるなと、言ったろうがっ!!!」
そう言うと号泣し一刀を強く抱きしめる春蘭、痛い痛いと悲鳴をあげる一刀の言葉は聞こえてないようだ、
そこに季衣、流琉、桂花、風、秋蘭も一刀の下に駆けつける
「にいちゃーーーん!」
「兄様ぁーーーー!」
季衣と流琉は泣きじゃくりながら一刀に抱きつく、血で汚れるという一刀の言葉は聞こえてないらしい
「北郷…よく、やったな…よく、頑張ったな」
秋蘭は震える手で一刀の頬にそっと触れる、秋蘭の冷たい手が心地良い一刀
「おにーさんには後でたくさん罰をうけてもらいますよ、沢山の人に心配をかけたのですから~」
と風は叱ってみせる、しかしその顔はすぐに笑顔になり一刀の無事を喜ぶ
その太陽のような笑顔が疲労した一刀の精神を癒していく
「馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!この品性下劣最低男!変態色魔!全身精液魔王!外道孕ませ男!この精子袋!」
桂花は一刀に罵詈雑言の限りの言葉を浴びせる、しかし言葉が出なくなるとそっと一刀に寄り添うのだった
「でもほんと兄ちゃん凄かったよ!特に孫策の剣を斬った所なんかボクびっくりしちゃったよ!」
「アレは…、俺一人だけの力じゃないよ、それまで皆が…、兵士の人達が身体を張って雪蓮の剣を受け続け、
春蘭の剣が雪蓮の剣に打撃を与え続けてくれたおかげだよ、そしてこの剣…」
『倚天の剣』
「天をも貫くという意味が込められており、岩を泥のように斬る事ができるという天下の名剣ですね~」
風が剣の解説を行うと季衣達はへぇ~っという感じで感心する
「この剣に助けられたんだよ…」
そんな風に和気藹々とした魏の面々を羨ましそうに見ながらゆっくりと身体を起こす雪蓮、左の肩からは血が溢れ痛々しい
それに気付いた季衣と流琉が一刀を庇うように鋭い眼差しを雪蓮に向け警戒する、しかし一刀はそんな季衣達を制する
「後は、私を殺すだけね一刀、できれば、一刀自身の剣で、やってほしいんだけど…」
すでに覚悟を決めている雪蓮の言葉に一刀は
「ああ、わかってるよ…、約束だからな」
そう言うと再び剣を握り締める一刀、傷ついた身体でゆっくりと雪蓮の元に歩み寄る
雪蓮はその間家族の事、仲間のこと、そして呉の国の事を想い浮かべ心の中で
”ごめんね、みんな…”
と、謝っていた、一刀は倚天の剣をゆっくりと雪蓮の首に当てる、そして位置を確認すると剣を離し構える
その様子を見つめる生き残っていた呉の兵士達からは孫策の名を呼ぶ悲痛なまでの叫び声が発せ続けられる
一方魏の将兵達、そして春蘭達は固唾を呑んでその様子を見守り続けていた
雪蓮は目を瞑ると覚悟を決め最後の言葉を発する
「さようなら、みんな…」
次の瞬間、一刀は剣を振り下ろす
”ズキンッ!!”
「っ!」
「がっ!、…、っ…」
振り下ろされた剣、しかしその剣が雪蓮の首に届く事はなかった、静寂の中鳴り響く金属音と共に剣は地面に落下する
と、同時に突如苦しみ出した一刀は頭を押さえ、悲痛なまでの声と共にもがき苦しみ始める
「ぐ…、あ、ああああっ…!!!」
一刀の急変に気付いた魏の面々は戸惑いを隠せないでした
さらに今まさに一刀に止めを刺されようとされていた雪蓮も苦しみ出した一刀に目が行く
「…一刀」
「お、おい北郷どうしたのだっ!おい北郷っ!!!」
「兄ちゃんどうしたの!兄ちゃん!!」
「兄様!!」
一刀に声をかけ続ける春蘭、季衣、流琉、しかしその声は一刀には届かない
地面に倒れた一刀はさらに苦しみ、傷口からは痛々しいまでに血が溢れ出していた
「孫策との戦いでの後遺症かっ!おい、北郷しっかりしろっ!北郷っ!!」
秋蘭は雪蓮との戦いで受けた傷が要因だと判断する、しかし風は何故かそうは思えなかった
あきらかに一刀の苦しみ方が変だと感じていたのだ
苦しみ続ける一刀を支えるために駆け寄る春蘭達、しかし一刀はついに気を失い動かなくなってしまう
春蘭達は声を失いただただ一刀を見つめ続ける、その様子を見ていた雪蓮が苦しみながらも春蘭達に声をかける
「どう…したのよ、一刀は…」
やっとという感じで言葉を発する雪蓮、しかし春蘭達は気を失った一刀を見つめ呆然とするばかり
そんな春蘭達を情けなく感じた雪蓮は
「一刀はどうしたのよっ!!!」
怒号のような雪蓮の言葉にようやくはっと我に返る春蘭達、再び一刀に必死に語りかけるも反応はない
最悪の事態がよぎりはじめた春蘭達、そんな中風が一刀に近寄り震える手で身体に触れると
「すぐにお医者さん…、いえ華佗さんに診て貰いましょう、すぐに呼んでもらえますか」
と、冷静に指示をする、その言葉に春蘭達は慌しく動き始める、一刀を担ぎ本陣へと戻る春蘭達
そんな様子を見送る風と秋蘭、そして雪蓮、その中で話をし始めたのは雪蓮だった
「一刀は…どうしたの…、大丈夫なの…」
「…わかりません、あの苦しみは孫策さんとの戦いで起こったものではないと思います、あれは…、
あれは多分ずっと前から抱え込んでいたものではないかと思います」
「誰も、それに気付かなかったの…」
雪蓮の言葉には怒りと苛立ちが込められているように思えた、そして風達も自分達の無力さに心を痛めていた
「そうですね…、風達の落ち度です、もっと…、おにーさんの事を見ていてあげなければいけなかった、
おにーさんという人は全てのものを一人で抱え込んでしまうような人だったのに…
苦しい事とかを誰にも言わない、そんな人だとわかっていたはずなのに…」
風は辛そうな顔をする、秋蘭もその言葉で自分達が大切なものを見失っていた事に気付く
そして雪蓮もまた一刀の事を心配し想い浮かべる
誰もが、何か嫌な予感のようなものを感じはじめていた…
あとがきのようなもの
とりあえず魏と呉の戦いは今回でほぼ終了です
次は拠点のようなものも入った回になると思います
なんていうか愚痴のようなもの
という事で数ヶ月ぶりの投稿です、ほんと久々すぎて投稿の仕方とか忘れてた
書かないとほんと書き方忘れますねぇ、キャラの仕草や言葉の使い方とかも含めて何度も見直したりしたけど大丈夫かな
いやもうね、リアルがほんと酷かったんですよ・・・
不幸ってこんなに続くんだってくらい続いたもので、しかも進行形でいくつも・・・
五月はいきなり首を痛めて上を向く事もできなかったりしたり、脊髄の神経圧迫してるそうな
まぁ頑張ろう、ほんと色々と、でも仕事がががが
そんな感じですがまたよろしくお願いします
次もいつ投稿できるかはわかりませんが
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魏呉激突編 その4
お久しぶりです、もう忘れられてるけどひっそり帰ってきました
やっぱ難しいもんですね小説って、書く期間空くとほんと書けなかった
でもってなんか久々すぎて初投稿の心境やー
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