どこまでも続く道があった
周囲には走っている車も、人も、何もない
とても広い道
そこを僕はひた走る
バイクのエンジン音を響かせて
見渡しても、何も変わらない風景
誰も通らない道
でもそんな事は些細な問題だ
僕は今、ここに居る
何気なく、本当に何気なく
ふと左側へと視線を向けた
いつからだろう?
そこには“誰か”がいて、じっと前を見詰めてる
僕も、それに倣って前を向く
変化というものは、往々にして突然姿を現すものだ
どれくらい走っただろう?
前方に信号があり、先がY字型に分岐していた
車や歩行者なんか見当たらなかったけど、僕らは律儀にそこで止まった
束の間の休息
隣の“誰か”と会話を交わすわけでもなく、流れる時間を楽しんでみる
不意に“誰か”と目が合った
――僕は彼を知っている
最初に思ったのはそんな事だった
お互いフルフェイスのヘルメットを被っていて
顔など分かりもしないのだけれど
緩慢な動作で、左側で歩行者用の青信号が明滅し始めたのが目に入る
そろそろ前の信号が青に変わるだろう
僕は改めて道の先に意識を戻して、聞いた
『さようなら』
エンジン音が響き、尚且つヘルメットまで装備している状況なのに
その声は妙にハッキリと脳に届く
途端信号が青へと変わり、僕は右の方へとバイクを走らせる
信号が青に変わった途端、“誰か”は左へとバイクを走らせた
あぁ進む方向は逆なのか
左手を挙げて、先程の返事の代わりとしよう
“誰か”に見えたかは分からない
僕は振り向きもせずに走り去った
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隣に居ても気付かない
後ろに居ても分からない