雛里SIDE
「朱里ちゃん、ちょっと待ってってば」
歩きを激しくしながら私を引っ張っている朱里ちゃんの手に引かれながら私は訴えますが、
「………」
朱里ちゃんは無言のまま私を引っ張るばかりです。
「朱里ちゃん!」
「!」
もう一度叫んだ後やっと、朱里ちゃんは止まってくれました。
「…ごめん、雛里ちゃん」
「朱里ちゃん…どうしたの?」
「………」
朱里ちゃんは怒っていました。
どうして?
それに、一刀さんにあんなことまで言っちゃって……
「雛里ちゃん、もうあの人に構わない方がいいよ」
「どうしてそんな風に言うの?」
「だって…!一刀さんのせいで雛里ちゃんが皆に変な噂されるじゃない」
「…一刀さんのせいじゃないよ」
「あの人のせいだよ」
「一刀さんは森の中で迷った私を助けてくれただけだよ。どうしてそれが一刀さんのせいになるの?」
「それもそもそもあの人が夜あんなところに居たからじゃない」
「夜落ちた流れ星を見ようと先に外に出たのは私たちだよ……それとも朱里ちゃんは、私が一刀さんを助けない方がよかったって思ってるの?」
「……」
朱里ちゃんはそこで口を閉じました。
……朱里ちゃん?
「正直に言うと、私は北郷さんが雛里ちゃんにみつからなかった方がよかったと思ってる」
「!」
「あの人ならきっと一人で狼たちに出会っても大丈夫だったろうし、それなら朝になってでも探しに行けたよ。それなら雛里ちゃんがそんなことに巻き込まれずに済んだし、私の友たちが他の人たちに変な噂されるのを聞かなかったよ」
「あの時もしあそこで一刀さんに出会ってないでそのままいたらあの狼たちに私たちが出会ってそのまま食われたかも知れない。それに噂と言っても大したことでもないじゃない」
そう噂だとしても、単に私たちが水鏡先生と一緖に男の人をここに連れてきたせいで出来た中途半端なもの。
私が男の人をここに連れてきたことから、変な方向に噂が飛んでいたりもするけど、ここの娘たちは皆暇でちょっとした遊び心地でそんな噂をしているだけ。本当にそんな風に思っている娘なんていない。それは、朱里ちゃんが誰よりも知っているはず。
「それでも、私は雛里ちゃんがそんな噂されるのは嫌。雛里ちゃんは優しい娘で、普段知らない人に会ったら直ぐに私の後に隠れるほど人見知りなのに、そんな事を言うなんて酷いじゃない」
「私は大丈夫だよ」
「私が大丈夫じゃないの!あのような誰かも知れない人と変な噂に絡まれるなんて……それに、大体あんな夜にあんなところに居たって話からおかしいじゃない。きっと夜ここにもぐって来ようとした泥棒とかが間違って怪我をしたに違い……」
「朱里ちゃん!!!」
思わずありったけに叫んでしまいました。
そして、一番の友たちに……世界で誰よりも親しい友たちに……怒りをぶつけてしまいます。
「私の命の恩人だよ!それとも朱里ちゃんはあの人が私を助けなかった方が良いって言うの?」
「そういう話じゃ…」
「もう良い!」
朱里ちゃんが掴んでいた手を振り切って後を向いて歩きました。
朱里ちゃんに引かれて来た道を一人で戻っていきます。
「ひ、雛里ちゃん!」
後から朱里ちゃんの声が聞こえるけど、振り向かえないまま走りました。
これが、私たちの始めての喧嘩。
一番の親友との、始めての分かれ道。
最初にその手を振り切ったのは、私の方。
いつも朱里ちゃんの後に隠れて、大変な時に大事なことはいつも押し付けてしまっていた私の大事な友たち。
だけど、今回だけは…その懐の中を離れてしまいました。
ガラッ!
バタン!!
「はぁ……はぁ……」
一刀さんが居た部屋まで走ってきた私は入ってきてすぐさま門の鍵を締めました。
息が荒くなってます。
走ってきたせいもあるけど、ほんとはそうじゃありません。
怒りが収まりませんでした。
一番の友たちへの始めての怒鳴り。
その理由が……
「鳳士元、どうしたのだ」
あの人です。
なんで?
どうして私はここまでしてしまったんだろ?
昨夜事故であった知らない男の人なのに、
朱里ちゃんはただ私の心配をしているうちにそんな言葉をいっただけだった。
なのに、私は何故かそれを聞き捨てられませんでした。
この人を…一刀さんを悪く言うのが許せませんでした
「うぅぅ……ひうぅ…」
一番の友たち……
ううん
私に友たちなんて、朱里ちゃんしかいないです。
私のたった一人の友たち。
私の心の全てを委ねられる唯一の友たちに…あんなことを言って逃げてしまいました。
これからどうしよう。
どうやって朱里ちゃんの顔を見よう。
もう朱里ちゃんは私のこと見ようとしないかもしれない。
朱里ちゃんは私とは違って社交性もあって、他の娘たちとも中がいいから…私みたいな娘は直ぐに忘れて他の娘たちと仲良くしてしまうでしょう。
「鳳士元……?」
そう思ってきたら…何故か私の前に立っている人の顔がとても憎らしく思ってきました。
なんで?
どうして私はこんな人のために唯一の友たちに怒鳴らなければいけなかったの。
愚かな自分を呪いながらも前にたっているこの人が嫌いになってきます。
「一刀さんのせいです!」
「……」
「全部一刀さんのせいなんです!!」
だから、またやってしまいます。
まだ落ち着いていないこの感情をまたこの人にぶつけます。
私って、こんなに悪いコだったのかな
「どうして私の前に現れたんですか!どうしてあの時口笛なんて吹いていたのですか!」
ついさっきこの人に言った言葉が無駄になって行く。
先までこの人が泣いている所を慰めていた私はどこに行って、今度は私が一人になったからって人のせいにしてしまいます。
「一刀さんが来たせいで……朱里ちゃんが……朱里ちゃんと……」
一刀SIDE
先帰ったばかりの鳳士元が急に入って来て門をバタン!と大きい音がなる方に閉じて鍵を締めた。
まだ行って五分も経っていなかった。
患者食で大した食事ではなかったものを早めに済ませようとした俺はお粥を口を運ぶのをやめて彼女の方を見る。
「鳳士元、どうしたのだ?」
「………」
返事がない。
よくみると、どこか様子がおかしかった。
顔が高潮して、どこか興奮しているようだった。
一体その短い間何があったんだ?
「うぅぅ……」
「鳳士元…?」
「…一刀さんのせいです!」
「!」
突然、彼女はそう叫んだ。
昨夜や、先お食事を持ってきてくれた時は全く違うその態度に俺は少し頬を引き摺った。
「全部一刀さんのせいなんです!!」
彼女は怒っていた。
怒りを…俺にぶつけていた。
先まで落ち込んでいた俺を精一杯慰めようとした娘は消えて、そこには傷ついた少女の姿があった。
「どうして私の前に現れたんですか!どうしてあの時口笛なんて吹いていたのですか!」
そう、孔明の言う通りだったのかも知れない。
俺は彼女にとって迷惑きわまりない存在だったのかも知れない。
実際に、俺のせいで鳳士元に変な噂が回っていることに、お友の孔明は私に怒りを持っていた。
友たちを思うなら当然のことだ。
しかも、相手はまったく知らない男だった。
無実の友たちが訳の分からない男のせいで悪いことを言われるのが我慢できたはずがない。
孔明彼女もまだ幼なかった。
鳳士元は自分の被害をあまり俺に言わなかったのに対して、彼女は自分の友たちが俺のせいで受けている迷惑を全て俺のせいにした。
それは本当に自分の友たちを思ってあげなければできないこと。
その意味で鳳士元は本当にいい友たちを持っていた。
だけど、彼女はどうしたのだろう。
どうして急に鳳士元はこんなことを俺に言ってくるのだろう。
「一刀さんが来たせいで……朱里ちゃんが……朱里ちゃんと……」
「…あぁ………」
これは喧嘩をした、ってところだろうか。他にこんな一瞬に行動を変える理由が見つからない。
「……孔明と喧嘩でもしたのか?」
「………うっ!」
ぴくっとする彼女の様子を見ると間違いはないようだ。
もうちょっと近づいて彼女の様子を見る。
赤くなった顔に、目には涙が潤っていた。先の俺も彼女にこんな顔を見せていだのだろうか…
「そうか……先に怒ったのはどっちだ?」
「……私……です」
「どうして?」
「……一刀さんのせいです」
「………」
「一刀さんのこと……悪く言うから…」
…鳳士元、お前はいい娘だな。
「だから孔明に怒ったのか?俺のことを悪く言って?」
「………<<コクッ>>」
「そうか。…ありがとう。お前が俺をかばってくれようとするその気持ちは嬉しいが……俺はお前がそこまでするほど価値がある人間ではない」
少なくも俺は招待されてない客だった。
しかも俺のせいで彼女本人、変な噂を言われている。そして孔明はそんな鳳士元の代わりに彼女自身を守ろうとしたのだ。
「孔明のところに行け。お前が行くのを待っているはずだ。行って謝って……仲直りした方がいい」
「…………」
「そして、孔明の言った通りにここには来ないようにした方がいい。それが今はお前のためだ」
「……嫌です」
「…!」
「…朱里ちゃんは間違ってます。…一刀さんは悪い人じゃないです。私を助けてくれたいい人です。そんな人を……ただ変な噂をされるってだけの理由で遠ざかったりできません」
「…鳳士元、俺は…」
「一刀さんはいい人です!噂なんてただの噂です!おしゃべり好きな女の子たちが話題にすれための話に過ぎません!そんなどうでもいい事のせいで、一刀さんを傷つけるわけにはいきません」
「鳳士元……」
お前は優しい娘だね。
会った時間は短いけどそれだけは何度も感づいたよ。
だからこそ分かる。
もしお前がここでこのまま居座ってしまうと、本当に孔明と仲間割れしてしまうかもしれない。
この私塾という群れから遠ざかられるハメになる。
俺は鳳士元お前にとってそこまでするほど価値のある人物ではない。
俺との今の出会いよりも、孔明とのこれからのことが彼女にはもっともっと大切だ。俺が原因でこの二人の絆を傷つけることになってはならない。
「………」
どうせ俺はここで更に悪くなることもないだろう。
ここで俺はもうちょっと悪い状況になることで…お前のその優しい心に答えることが出来ると思う。
「本当に俺が優しい人だと思い込んでいるようだな」
雛里SIDE
「……へ?」
顔を上げて上を見ると、一刀さんが顔を怖くして私を見下ろしていました。
「本当に俺がいい人だと思い込んでるのか?」
「か、一刀さんはいい人です。それが私が良く知ってます」
「それが間違いだとしたら」
「え?」
突然何を言うのですか、一刀さん?
「もし、俺が孔明が言った通りに変人で、もしくはこの私塾に何か金になるものを狙って泥棒しようとしてるうちに、事故にあっただけならどうする?」
そんな…
「そ、そんなこと…あるはずがないです」
「どうして俺を信じるんだ?何故お前の親友の言葉より会って一日も経ってない俺へのお前の理想を信じる」
一刀さんの顔がどんどん近づいてきます。
ちょ、ちょっと怖い……です。
「あの時は事故で傷を負っていた。それに、途中で邪魔も入っていた。けど、ここにはお前と俺二人しか居ない」
タッ!
「ひっ!」
一刀さんは、門の横の方の壁に手をつけて、私を門の方に追い込みました。
「怒ったお前の友たちはここに当分来ようとしないだろうし。しかもここは人が通る道とは遠い。お前が叫んだ所、助け人が来ると思うか?」
「………!」
ま、まさか……
「か、ずと…さん?」
「本当に……俺がソンナコトを、しないだろうと、信じてるのか?」
「!!」
ッ……!!
どんどん一刀さんの顔が近づいてきます。
に、逃げようとすれば、逃げれます。
後には門があります。
思ってるならいつでも外に出られます。
男の人なら股間が急所ですからそこを思いっきり殴れば逃げる隙を作れます。
「例えば……ここでこのままお前の服を千切ってお前の襲うとか……」
「う、嘘です!そんなこと…一刀さんがするはずありません!」
「本当に、俺がそんなことしないと思うのか?」
壁にあった一刀さんの片手が私の顔を掴みました。
「本当に、このまま俺がこのままお前みたいな可愛い女の子に何もしないまま……逃がしてあげると思っているのか?
「!!」
顔がどんどん、近づいてきます。
一刀さんの顔がどんどん、私の顔の方が……
く、口!唇が……!
「会った時から、お前なら……良いと思っていた」
「か、一刀さん、や、やめて……」
「悪い人が目の前の獲物を見逃してやるはずがないだろ……」
目、目が直ぐまえに来てます!このままだと本当に………される!
も、もう見られません。
「……………」
「………………????」
沈黙。
「??」
何も……されてない。
ちょっと目を開けてみたら…
「//////」
「……一刀さん?」
一刀SIDE
何で!?
なんで逃げない!?
俺が彼女を脅迫して、怖くなった彼女は逃げる。
その間俺は荷物を持ってこの塾を出る。
これで彼女も変な噂をされないで、また孔明と仲良く出来るだろう。
そう思って仕掛けたのだが……
何だこれは!?
これぐらいしたら普通逃げるだろ!
それとも何だ!逆にやりすぎて逃げられないって言うのか?
だからってこれ以上することはさすがに出来ないぞ?
「……一刀さん?」
「………な、何だ?」
「…無理、してません?」
「………何の…ことだ?」
「……演技…ですよ…ね?あの、本当に…私を襲ったりとか……しませんよね?」
「…………」
こ、ここで引いたら今までやったことが水の泡になってしまう。
ここは、鳳士元のために……
「ッ!」
「うっ!ん!!」
強引に唇を奪う。
我ながらここまでしていいものかと自分に問いつめたい。
命の恩人だ。
なのに、彼女のためと云えどもこんなことまでして大丈夫なのか…?
嫌われ役ならなれている。
だけど……ただの縁ではなかった鳳士元とこんなふうになるのは少し残酷だと思った。
「こ、これで分かったな。お、俺は…本気だ」
「………//////」
唇を奪われた鳳士元は顔を先よりも更に赤くしていた。
「は、早く逃げないと、…これよりもっと酷いこともするぞ。だから……」
「……や、やっぱ嘘です」
「!」
鳳士元は赤い顔でそう言った。
「ま、まだ言うか!」
「一刀さんは悪い人じゃないです。これで確信が付きました。一刀さんは、私が朱里ちゃんと喧嘩をしたことが心配でわざと悪い人を演じようとしているのです」
「ち、違う。お、俺は本当に鳳士元に下心を持って……」
「じゃ、じゃあ、もっとしてみてください」
「…え?」
この娘何言って……
「ほ、ほら…本当に悪い人なら…口付けだけで終わらせるはずがないです!ですから……こ、こここの次のことも……やってみなさい!」
「…………」
は、謀ったな!
待て!これは孔明の…いや、士元の罠だ!
こんな、こんなはずでは……!
「や、やっぱり、で、出来ないじゃないですか」
「ほ、ほんとに…悪い人だぞ…ほんとだぞ」
もう、自分で見ても完全に演技になってない。
「や、やっぱり、一刀さんはいい人です」
「……っ」
だからって、ここ以上にして本当に彼女を傷つけるわけにもいかない。
嫌、というかこの次って何?
この次って一体どういうことをすればいいんだ?
「も、もう、逃げ道なんてありません。一刀さんはもういい人って私の中では決まってます。これ以上何されても、私はなんともないです!」
「え?」
それってどういう……
「………!!!」
ブシュッ…!
「うわっ!」
突然何かがかかって来て俺は目をとじてしまった。
「な、何だ?」
目を拭いて前を見直すと、
「なっ!ちょっ、鳳士元!?」
鳳士元が鼻血を吹き出して気を失っていた。
雛里SIDE
「……ぅぅ……」
「……目が覚めたか?」
ここ……
私……
「頭がくらくらするだろうからまだ横になっていた方がいい」
一刀さん…
私、どうしてここに……
「……へ?」
・
・
・
!!
「あわわー!!!」
「…落ち着け…」
「お、お、落ち着けていられ……ま!?」
く、口付け!
一刀さんに口付けされました。
初めてだったのに……こんな……こんな……!
「せ、せ、責任取ってください」
「え?」
「そうです!もうそれしかないです!責任取ってください!でないと、この事皆にいい付けちゃいます!」
「ちょ、ちょっと待った!だからあれは事故と言うか勢いでというか……だな!」
「は、初めてでしたのに……そんな……!」
「俺だって初めてだよ」
「……へっ?」
初めてって……
「そ、それこそ嘘です。一刀さんほどの人が口付けもしてないはずがありません」
「………モテない男で悪かったな」
「……え?…じゃあ、本当に……?」
「初めてだ……//////」
なんでそこで女の子みたいに顔を赤くするんですか?それは私の役割ですよ。
「し、仕方ないだろ。お前が孔明と喧嘩をしたって言うから」
「あ……」
そうでした。
だから、一刀さんは私のために…わざと悪役を演じて私が朱里ちゃんと仲直りするようにするため、私が一刀さんを怖がって逃げるように演技をしたのに…私は最初はあまりにも驚いて何もできなかったんですが…後はここで引いたら自分が思ったことが間違いだったと認めることだから強く行ったのですが………
「だ、大体お前が早く逃げていればあんなことにならずに済んだ」
「あわわっ!?わ、私のせいにするのですか?余計なお世話してたのはどっちの方ですか」
「よけっ!…命の恩人の心配をして何が悪い。むしろ当然のことだろ!」
「私だって命の恩人の一刀さんが悪く言われるのが嫌でこうしていたんです!」
「だから俺は…」
「一刀さんにとっても私は今日会ったばかりの人です!私のことに構う必要なんてないはずです!」
「お前はまだ子供だろ。しかもここにずっと残ってるし、これからも孔明とは友たちでいなければならない」
「私は大人です!私は今年で十六歳で天下御免の大人です!」
「……え、嘘!」
「何ですか、その反応は!」
失礼しちゃいます!
いつも幼児形体型で気にしてるというのに……だから同じ悩みな朱里ちゃんとも仲良くしていたわけで……
「…いや、異議あり!俺の世界では大人は十八歳からだ!」
「『郷に行ったら郷に従え』です!一刀さんの世界とかそういうの関係ありません!この世界だと十六歳の女の子だと普通の家だともう嫁に行くところももう決まっているか、それとももう結婚して子供が三人も居たりする年頃なんです!」
「ま、マジか」
・ ・ ・
「………いえ、ちょっと…嘘もあるかも知れません」
「……子供三人はないだろ」
「………ちょっとやりすぎな感もします」
って、そうじゃなくです!
「と、とにかく、私は大人なんです!だからそんな言い方はやめてください!」
なんかその話じゃなかった気がしますけど、また最初から始めると恥ずかしすぎるので、この話はこの辺で締めておく方が両方にとっていい気がします。
「…そ…か……」
一刀さんも、何か複雑な顔をしていますが、途中でちょっと顔が赤くなったのを見ると、私と同じ結論に辿り着いたのだろうと思います。
結構大きな声で騒いでいたので、ここに人が通ってなくて本当によかったです。
「……あ、あの、それで、だ」
落ち着いたところで、一刀さんが口を開けました。
「はい…」
「……早く、謝りに行った方がいい」
「………それは…嫌です」
「何故だ」
だって……
「一刀さんは…そんなこと言われるようなことはしていません。一刀さんは……いい人ですから…だから今この学院で起きているちょっとした騒ぎは、一刀さんのせいじゃないですし、私は大丈夫です。なのにそれを一刀さんのせいだとして一刀さんに会ってはいけないとか言うなんて……悪いのは朱里ちゃんの方です」
「……孔明はお前のことを思ってこそそのような行動を取ったのだ。鳳士元が親友の気持ちを分からないような娘だとは思わないがな」
「…………」
確かに、一刀さんの言う通りかもしれません。
朱里ちゃんは、私のために怒ってくれたのです。
私の代わりに怒ってくれたのです。
でも、本当に私は怒ってなんて、迷惑なんて思っていません。
どうしてでしょう?
何故か、長い親友よりも、初めてであったこの人に惹かれてしまっています。
一体私はどうなってしまったのでしょう?
「まぁ、もっとも、その原因になってしまった俺の口から出る言葉でもないが、二人はこれからもいい友にあるべきで、俺はただ通り過ぎる人間になりかねない。どっちの方を先に思うべきなのかは明らかだ」
「一刀さんは私を助けてくれた人です」
「そして、初めてを奪った人?」
「っ!」
この人、また態と自分を悪く言って、私を朱里ちゃんに謝らせようとしています。
そうは行きません。
「一刀さんも初めてだったんじゃないですか」
「ふっ、まさか俺ほどの男が本当に女と口づけするのが初めてなんだと思ってないだろうな」
「……初めてじゃなかったんですか?」
「…………」
あ、視線を逸らしました。
さっきも思いましたけど、この人演技というか、嘘を言うのは凄く苦手な人です。
「初めてじゃないんですか?」
「………初めてだった」
そして諦めも早いです。
「じゃあ、その件は問題ありませんね」
「問題ないのか?」
「………」
あれ、問題ないんでしたっけ?
何かそうじゃなかった気がします。
「まあ、何と言ってもお前とお前の友たちの話だ。第三者の俺がなんと言おうが、本人にその意思がなければどうしようもないな」
「………」
「ここにいるつもりか?」
「……ごめんなさい」
「お前が謝る必要はない。ここは俺の方が客だ。好きなだけここで悩んで、気が変わったら帰ればいい」
「はい……」
何か、一刀さんは諦めたみたいです。
そのまま私がいる寝台から目を離して円卓に肘をついて黙り込みました。
「……」
怒らせちゃった。
一刀さんにまで怒られる筋合いはありませんが。
でも、ああして背中を見せて黙っていると、ちょっと怒ってるように見えます。
「一刀さんは、友たちと喧嘩したことはないんですか?」
「ないな」
「そうはっきり言い切れるんですか?」
「俺の友たちは真面目ということを知らない奴でな。怒ってもいつもへなへなした顔で笑ってるから怒る気にもならなかった」
「……怒る側だったんですね」
「…俺が怒られる側だろうと思ってたのか?」
「いいえ、そうじゃなくて……友たちに初めて怒る時、どんな気持ちでした?」
「初めて……?」
私なんて、今日初めて朱里ちゃんと戦ってました。
あの時は凄く怒っていました。一刀さんのことを悪く言おうとしているのが、どうしても嫌に覚えてしょうがなかったです。
「俺があいつに怒る時は、大体そいつが嘘をついている時だった」
「嘘…ですか?」
「そう。一番の友たちが自分に嘘をついている。どうしてなのかはわからない。もしかしたら態と自分の負を隠そうとしているか、それともその嘘が本当のことだと考えてそう言ってるのか……だけど、重要なのは、一番の友が、自分と相対する考えをしていること。俺はそれが許せなかったのだろう」
「………」
自分と相対な考えを持つ。
「…それに何の間違いがあるのですか?」
「…?」
「自分とちがった考えを持ってる友たちを持っていることは素晴らしいことだと思います。私なら、そんな友たちがいたら、きっとその娘と自分が考えている考えを分けあって、自分の成長の種にします。自分と違う考えをしてる人がいるならそれを説得することが軍師としてのたしな……………あ」
…あれ?
でも私って、朱里ちゃんに怒ったじゃない。
私と違う考えを持っているからって………
「……そうなんだ」
「どうした?」
「ありがとうございます。一刀さん」
「?……よくわからないが、謝る気になったのか?」
「はい」
人は全部自分と違う考えを持ってる。
それは必然的です。だって、その人は自分じゃないんですから。
それを怒りだして逃げてくるなんて、私は軍師を目指す人として失格です。
「おかげで自分の未熟さが分かりました。ありがとうございます」
「……うまく仲直り出来ればいいな」
「はい」
一刀さんを通り過ぎて、私は門を開けて出ようとする前に、ふと思いました。
何か、お礼がしたかったです。
私を成長させてくれた人に……
「あの、一刀さん」
「?」
「今後会ったら、私のことは雛里って呼んでください」
「……孔明がお前をそう呼んでいたな。なんなんだ?」
「……もしかして、真名を知らないんですか?」
「まな……お前たちは本当に呼ぶ名が多いな。名前、字、号、それにまなもか……」
一刀さんの世界には真名がないみたいです。
こちらとしては呼び方が一つしかないというのがもっと変ですけど。
「真名というのはもっと大事な名前です。肉親や志を共にする人の間にだけ呼ぶことをゆるされる大事な名前。人の名前を勝手に呼ぶ罪は死に値します」
「重みがあるな……俺に許してもいいのか?」
「構いません。一刀さんは命の恩人ですし、それに…私に大事なことを教えてくださいました。その御礼です」
「……わかった。有り難く受けよう。今後からは真名とやらで呼ばせてもらう」
「はい」
「……ふふっ」
「…へへ……」
何だか、二人同時にちょっと笑みが出てきたのですが、暫く一刀さんを見ていて、私はそのまま自分の部屋に足を運びました。
がらり
「…あ」
塾の私たちの部屋に入ると、朱里ちゃんが寝台に座り込んで居て、私が入るのを見てすぐさま降りてきました。
「……朱里ちゃん」
「雛里ちゃん……あの」
「ごめんね、朱里ちゃん」
「あ」
先を越される前に、こっちから朱里ちゃんを抱きしめんがら謝りました。
「酷いこと言って、そのまま行っちゃってごめんね。朱里ちゃんが私のこと心配してくれてるってこと分かってたのに…あんな酷いこと言っちゃって…」
「……ううん、私だって、雛里ちゃんの気持ちなんて考えてなかったよ。私が二人のこと良く知らなかったのに、北郷さんのこと悪く言っちゃって…私こそごめんなさい」
「……え?」
「……あの、雛里ちゃん」
今、なんかちょっとおかしかったような……
「先、私、ちょっと雛里ちゃんのことが心配で……北郷さんの部屋に戻ってたんだけど…」
「!!」
ま、まさか…
「喧嘩したのに、中に堂々と入ることもできなくて、裏のほうの窓から見ていたら、雛里ちゃんが北郷さんと……く、口づけ…」
「あわわー!!!」
見られてたのーー!?
「朱里ちゃん、今直ぐ忘れて!」
「ごめんなさい!態と見ようと思ってたんじゃなくて…私はただ他の子たちが言ってることがただ噂話だったからそれが我慢できなくてそのこと北郷さんのせいだとばかり思ってたんだけど、実は、もう雛里ちゃんだけそんなに大人の階段に登ってたんだなって思ったら頭の中が真っ白に…」
「今直ぐ完全に真っ白にして!全部忘れて!お願いだから……!!」
あわわーー!!あわわーー!!!!!
あとがき
………おかしいだろ。
いや、こういうの初めて書いてみました。
この外史は純愛SSを目指してます(もう駄目だろ。この時点で)いや、そんなはずはない!
宇宙の目で見ると、こういう純愛もある。違いない!
………ある!
北郷一刀が突然雛里ちゃんに強引に出た理由は、自分を悪く思わせて朱里と仲直りさせ、自分はさっさとこの塾から居なくなる、という作戦でしたが、そんなことをするには初心すぎました。
反面、雛里ちゃんは変なところで頑固になった挙句に初めてとられました(ごめんなさい)更に昨日会ったばかりの人に真名許すとかありえん(笑)
朱里ちゃんが最初に強引に行く理由ですが、後ほど理由は分かると思います。ネタバレすると、本作には元直ちゃんが出る予定です。以前の作品を見て自分の元直を覚えている方がどれほど居るか良く分かりませんが、とりあえず正常じゃないです。
もう五話なのに24時間も経っていませんwこんな展開で大丈夫か?
次回はちょっと街へ出掛けます。
大したことは起こらないですが、まぁ……自分としてはかなり練習も兼ねてやってますので、よかったら見てください。
ちなみに今回もかなり練習用ですけどね。
次回のですが……火曜日にあげたいと思ってますが、心の我慢ができなければ月曜にあげてしまうかもしれません。あまり長い文なのに頻繁に上げれば人が読みたくなくなるのはわかりますが……いや、もうすみません。
では、火曜日にまたあげますね。
ノシノシ
あ、誤字指摘及び、感想のコメント待ってます。
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今作は、真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。