No.218079

Ripply Hrart(キャッスルファンタジア)

いず魅さん

キャッスルファンタジア「エレンシア戦記」のレヴィ→ファイゼルです。

2011-05-22 10:15:56 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1105   閲覧ユーザー数:1076

 

 

       ★Ripply Heart☆  ~レヴィの戸惑い~

 

 

 

 

 乾いた音を立てて私の剣は、あっけなく地面に叩き落とされた。

 敵わなかった。まるで歯が立たなかった。

 

 さっさと止めを刺せばいい・・・・・・

 

 ギュッと目を閉じた。涙が溢れそうになる。怖いんじゃない。ただ、悔しいだけ。

 ごめんなさい、兄様。

 

「お前にフェンリルの剣を教えてやる」

 

 死を覚悟した私にそいつは言った。

 

「何を考えてるの?」

 

 敵として自分を討とうとした私に剣を教える、ですって?

 どうかしている。馬鹿なんじゃないの?

 真意を掴みかねて思わず見上げた私に、そいつは不敵に笑って見せた。

 

「シロートとやり合って勝ったところで俺のプライドが許さねーんだよ」

 

「シ、シロート・・・ですって!?」

 

「ああ、お前のあれは我流だろ? アルマンディーンがお前に剣を教えるワケはねーだろーしな」

 

「くっ・・・」

 

「アニキの敵を取りてーんだろ? だったら俺が本当の剣を教えてやるって言ってんだよ」

 

 この男、本気だ・・・どういうつもりか知らないけど乗ってやろうじゃないの。とにかく兄様の敵を討たなくっちゃ。そのためにはこいつより強くならなけりゃいけない。

 

「よろしく頼むわ」

 

 長身のそいつを私はキッと睨み上げた。

 敵に剣を教える。おかしな話だ。いつかその剣が、自分の胸を貫く日が来るかも知れないと言うのに--------。

 

 ファイゼル=リッター。ワケのわからないヤツ・・・

 

 

 

 ファイゼルに指南を受け始めてからかれこれ一ヶ月になろうとしていた。ムカつくことに、私の剣は未だにあいつの体に掠りさえしない。

 

「おらおら、踏み込みが浅い!」

 

「くっ!」

 

「サイドが隙だらけだぜ」

 

「っ・・・!」

 

 まずい・・・足にきてる。

 バランスを崩して尻餅をついてしまった私を、ファイゼルが呆れたように見下ろした。

 

「お前なー、やる気あんのか? そんなんじゃあ百年かかったって俺は殺せないぜ」

 

「う、うるさいわね」

 

 頭にカッと血が昇る。

 

「ったくー、ほらよ」

 

 馬鹿にしないでっ。ファイゼルが差し出した手をピシャリと払い立ち上がる。

 

「こえ~、ま、それだけ元気がありゃあ大丈夫か。まだやれるか?」

 

「当たり前よ」

 

 そうよ、こんな事でメゲてたら一生かかったって敵なんか。

 しっかりと剣を握り直して構える。

 

「行くわよ」

 

「おう、来い」

 

 目の前の男は憎い敵、大好きな兄様を殺した・・・

 

 そう、大好きな、大好きなアルマンディーン兄様を!

 気合もろとも斬り込んだ。

 

「 ! 」

 

 小石を踏ん付けた私は、不覚にも大きく態勢を崩してしまった。

 

「レヴィっっ!」

 

 倒れかけた私を飛び込んできたファイゼルが抱き止める。

 

「あっぶねーなぁ。今度は力みすぎだぞ」

 

「ご、ごめん・・・ありが、と」

 

 しっかりと回された腕から伝わってくる温もりに思わずドキッとする。胸の鼓動が恐ろしく早くなる。体の奥が熱い・・・・・・

 ど、どうして? 筋肉質の力強い腕、頬にかかる熱い吐息。

 

「も、もう大丈夫・・・放して」

 

「あ? ああ」

 

 私、今、どんな顔してるだろう? ううん、そんなの決まってる。真っ赤になってるハズよ。

 顔を見られたくなくってファイゼルの腕を振り解いた。

 

「つぅ・・・」

 

 え? 私そんなに力入れてないけど?

 不審げに見つめた視線の先に赤いものを認めて全身の血がひいた。

 

(血・・・?!)

 

「ファイゼル・・・血が」

 

「あーん? 受け止める時に切っ先が掠ったんだろ。なあにほんのかすり傷だ」

 

「だ、だめよ。ちゃんと消毒しなきゃ」

 

 頭に巻いたバンダナを外すと、私はファイゼルの腕を引っ掴んだ。

 

「おい、レヴィ・・・」

 

 聞こえないっ!! なぜだか苛立ちながらファイゼルを水場まで引きずって行った。傷口を洗い包帯代わりのバンダナを巻く。

 

「これで大丈夫」

 

「サ、サンキュ」

 

「小さな傷だからって甘く見ない方がいいわ。傷口からバイキンが入ったら、死ぬことだってあるのよ」

 

「ヘエ~」

 

 ファイゼルは私の顔をしげしげと見つめた。

 

「な、何よ・・・」

 

「お前が俺のこと心配してくれるなんて、ね」

 

「え!?」

 

「このまま放っといてバイキンでも入って死んじまえば、楽に敵が討てるってもんだろ?」

 

「み、見損なわないでよっ!!」

 

 私は顔を真っ赤にして拳を握りしめた。

 

「そんな馬鹿なことで死なれてたまるもんですか! あんたを殺すのは私の剣でなきゃイミないのよ」

 

「はー、さいですか」

 

 当たり前でしょ。

 

「可愛くないヤツ」

 

 聞こえてるわよ! ファイゼルの呟きにまたまたカチンとくる。あんたの命を奪うのは私の剣なんだから・・・そう、私の。でも・・・

 さっきファイゼルの血を見たときのあの感覚はなんだろう? 憎い敵がケガしたのに少しもいい気味だなんて思わなかった。むしろ、その逆で・・・

 

 私、どうしてしまったんだろう?

 こんなことで兄様の敵なんて討てるのかしら?

 

 抱き止められた瞬間の、彼の腕の熱さが、まだ消えない。このままもう少しこの腕に身を委ねていたい・・・・・・そう考えた自分がいたことに思い当たって、私は愕然とした。

 そこから導き出された恐ろしい答え-------。

 

 

 そう、私はファイゼル=リッターに魅かれている。

 

 

 

 

                                 ----end-----


 
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