― 一刀Side ―
「何時まで一刀に抱きついてるんですか!?いい加減に一刀から離れてください姉様!!」
「え?・・・・・・・あぁ!!」
物凄い勢いで雪蓮が俺から離れていった。
名残惜しいと思うのは・・・・・・・。
健全な男なら普通・・・・・・・だよな?
雪蓮のいる方へ視線を送ると普段と違って落ち着かないらしく挙動不審だ・・・・・。
いや、俺も落ち着かないけどさ・・・・・・。
「落ち着け雪蓮、北郷の事は張勲の書簡のお陰で何とかなる・・・・・・・のだが・・・・・・」
「あくまで当面は・・・・・だろ?朝廷が黙ってるはず無いだろうしね」
張勲の機転のお陰で命は助かった。
お陰で雪蓮に重荷を背をわさずにすんだし、自身の大きな間違いを気づかせて貰った。
でも、俺に対して何も罰が下らないとなると皇帝はまだしも、その下が黙ってない可能性が高い。
俺が殺めた者の身内は全員が全員とは言わないが何が何でも仕返ししようとするだろう。
俺だけならいいが、孫家にもその矛先が向かうと思う。
となると手段は一つ。
覚悟を決めて冥琳の方を見る。
たぶん冥琳も同じ考えにいたったんだろう。
その眉間にはいつもよりも深い皺が刻まれていた・・・・・・。
「冥琳」
「・・・・・・なんだ北郷」
「自分で言うのもなんだけどさ、鞭打ち五十でどお?」
「・・・・・・・・妥当だな」
「ちょっとまって、二人とも何の話してるのよ・・・・・・・」
俺達の会話に雪蓮が割り込んでくる。
そんな顔しないでくれ雪蓮。
孫家に迷惑を掛けない為にはこれしか手段が無いんだよ。
「何って・・・・・・なぁ?」
「・・・・・・・悪いが雪蓮、これは孫家を守るためには必要な事だ」
「だから何の話をしてるのよ・・・・・・」
雪蓮の表情を見ればわかる。
俺と冥琳が話している事の意味を悟っているのだと。
「雪蓮、気にする必要は無いよ。孫家に迷惑を掛けた俺への正当な罰なんだから」
「でも張勲が・・・・・・」
「三人とも一体何の話をしているの!?」
「蓮華様・・・・・・・これは・・・・・・」
心配そうな顔をして俺たち三人を交互に見つめる蓮華。
そしてその後ろの皆も同じように。
穏だけは暗い顔をして俯いている。
穏は気づいているのだろう・・・・・・流石は陸伯言といったところか。
「気を使わなくていいよ冥琳。・・・・・蓮華、今の俺と冥琳の話は・・・・・・俺が受ける罰の事だ」
「どうして!?張勲のおかげで解決したんじゃなかったの!?」
「『朝廷』に報告すれば済むならね。・・・・・・だけど、それじゃ納得行かない奴らがごろごろいるはずだ。
そいつらは身内の仇をとるため・・・・・俺だけならまだしも必ず孫家にも何かしらしてくる可能性のほうが高い」
「そんな奴らに孫家が負けるはずは無い!!」
蓮華は優しい子だなと改めて思った。
だけど・・・・・・孫家を背負う物としてはまだまだだな。
「蓮華、一番重要なことを忘れてないか?」
「重要な・・・・・事?」
「孫家の夢はなんだ?」
「・・・・・・ぁ」
「そういうことさ・・・・・・・正直な話一番手っ取り早い解決方法はあるんだよ」
「じゃぁそれでいいじゃない!!鞭打ちがどう言う物かわかってるの?
どんなに屈強な人間でも五十発も打たれたら下手をすれば死ぬかもしれないのよ!!」
「蓮華さま・・・・一刀さんが居なくなってもいいんですか?」
今まで口を閉じていた穏が蓮華に問いかけた。
普段とは打って変わってしっかりとした口調で・・・・・。
「ど・・・どういうことなの?」
「蓮華さまはまだまだ勉強が足りないようですね・・・・・・・本当はご自分でお考えになる方がいいんですが、今回はわたしがお答えします。
一刀さんが仰った一番手っ取り早い方法・・・・・・それは一刀さんが呉から逃げ出す、もしくは私達が処刑すると言う事です。
一刀さんが居なくなれば孫家は目を付けられる事無く寿春を治められるでしょう・・・・・・とりあえずは、ですけどね」
「・・・・・・・・・・」
「そう言うわけだ。まぁ、余り言いたくないんだけど今回は死なずに済んだ・・・・俺としては孫家に残れるなら残りたい。
俺を実の息子のように可愛がってくれる美蓮さんや俺を家族として扱ってくれる皆と今更離れ離れになるのは・・・・・・・ね。
それに・・・・・自分のやった事には最後まで責任を持たなきゃいけない」
「一刀・・・・・・・・」
「雪蓮、わかっているな?」
「・・・・・・・・・・・えぇ。北郷一刀!今回の所業、いくら民の為とは言えど、そう簡単に許されるものではない!!
よって・・・・・・・・・・・・・・」
「雪蓮・・・・・」
言葉に詰まった雪蓮の名を呼び先を促す。
「っ!!鞭打ち五十の刑に処す!!!」
「その刑、謹んでお受けします」
俺は雪蓮の前に片膝をつきそう答えた。
ありがとう雪蓮。
其れでこそ孫家の王だ。
「蓮華様、今の雪蓮を良く覚えておいてください。あれこそが王たる者です」
「・・・・・・・・わかったわ冥琳」
― 周瑜Side ―
『民の前で罰を執行してくれ』
其れが北郷の言った言葉。
そこまで徹底してするのか・・・・・。
私はそう思った。
北郷がどうして此処まで孫家の為にしてくれるのかわからない。
そんな北郷に私達は甘えているだけに過ぎないのではないか?
北郷から聞いた天の知識。
そして北郷から提案された統治に役立つ案や手法。
それらは私達孫家、そして何より民にとっても非常に良い物だった。
私は天の知識だけでも十分だと思っている。
そのお陰で建業に住む民達は前よりも遥かに安定した平和を得る事が出来ているのだから。
孫家の再興、そして孫家の夢に関しては北郷が此処まで体を張る必要は無いのだ。
あの後、張勲に朝廷への書簡を書き換えて欲しいと頼んだ。
これ以上、北郷の命を危険にさらす必要はない、そう思ったから。
だけど張勲はこう言った。
『一刀さんは自ら『天の御使い』と名乗ったんです。だから書き換える事は出来ませ~ん♪』
そう聞いて私は悟った。
張勲も気づいているのだろう。
その上であの書簡を書いたと言う事。
あの場でそう名乗ったのは、我々の世界の現状、そして朝廷と言う物の本質見る為だったのではないか?
今回の北郷の行った事で、私達の中でどれだけ朝廷というものがあがらい難い存在かはっきりと表に出た事となる。
我ら孫家の様に各地の諸侯は、落ちぶれたとは言え今だ朝廷の威光にあがらいきれないのだ。
だけど民は違う。
今目の前に集まって北郷を心配そうに見ている民達は、もう朝廷の威光になんら価値が無いと思っているのだろう。
『朝廷は自分達を助けてくれない、むしろ自分達を不幸にする』
そう思っているのだろう。
そこに朝廷と同じ『天』を冠する人間が自分達を救ってくれた。
その『天』は命を掛けてまで自分達を守るために、『地に落ちた天』から救い出してくれた。
だが、今民の目の前で北郷を罰すればどうなるのかわかっているのか?
下手をすれば暴動が起きかねず、その矛先は目の前にいる孫家に向かうのは目に見えている。
「心配しなくていいよ冥琳」
私の方を向いて北郷はそう答える。
そして民の方に振り返り口を開いた。
「寿春の民達よ、俺は今から罰を受ける」
「御使い様が罰を受ける必要なんかねーぞ!!」
「そうだー!!悪いのは御使い様じゃなくて城にいた悪官だ!!」
「御使い様を罰するなんてとんでもない!!」
「今すぐ止めろー!!!」
「聞いてくれ!!これは正当な罰なんだ。
俺はこの孫家の人達に多大な迷惑を掛けた。
それに俺は官位も、ましてや地位も無い!!
そんな人間がいくら悪行を働いていたとは言え、殺してしまったとなればそれは単なる私怨であり殺人だ!!!
だからこそ俺は罰を受ける!!
本当なら斬首されても文句は言えない!!
でも孫家の皆は寛大にも鞭打ちをもって罰とすることを選んでくれた!!
皆、これだけは覚えていてくれ!!
孫家は朝廷の為じゃない!!民の為を思ってこの地を治めてくれるはずだ!!
孫家ならば必ず民に平和をもたらしてくれると俺は確信した!!!
俺は・・・・・・『天の御使い』北郷一刀はこの罰を受けた後、自らの意思を持って孫家に忠誠を誓う!!!!
孫家と協力し、皆が平和に暮らせるように尽力する事を此処に誓おう!!!」
この男は・・・・・・・・。
自ら罰を受ける事によって民達に悪を説き、それを使って私達孫家を悪ではないと知らしめる。
そして自らを『天の御使い』であると認めたうえで孫家に下ると言うのだ。
孫家ならば自分達を守ってくれると・・・・孫家は『天の御使い』が認めた為政者だと。
孫家には『天の御使い』がついているのだと・・・・・・。
民達はこう思うだろう・・・・・。
『天の御使いが認めた孫家ならば信用に値するかもしれない』
なんていう男だ・・・・・・・。
さっきまで死ぬつもりでいたはず。
それが張勲の機転により危機を脱した。
それでも、北郷は責任を取ることを望んだ。
その責任を取る事によって罰を行う孫家への不信感を払拭する為に、あえて民の前で罰を受ける事を選んだのだ。
そして、北郷は自ら『天の御使い』としてこの大陸の表舞台に立つつもりだ。
これをあの一瞬で考え付いたのだとすれば恐ろしい事この上ない。
全て計算の内だったのか・・・・・・・いや、それは無いな。
北郷はこういう男なのだ。
人の死を嫌い、民達の事を憂い、私達孫家の事をも憂いてくれる。
それらの為には自らの事を一切省みない、ただ単に優しい男。
これはもう、認めざるを得ないな。
だが、このまま北郷の策に乗っかるのも面白くない・・・・・。
「さぁ、冥琳、始めてくれ・・・・・・・」
「わかった。今回の罰は私自身の手で執行しよう」
「え?・・・・・そ、その手に持っているのは何・・・・・かな?」
鞭打ち用の台の上で、うつ伏せになっている北郷の前に立ちそう告げる。
私が手に持っている物・・・・・
「鞭だが?」
「え?いや、それ鞭は鞭でも刑罰用の鞭じゃないよね?」
「あぁ、あれは持ってきてないのでな」
「・・・・・それは何処から持ってきたの?」
「これか?これは私個人の物でな・・・・名を『白虎九尾』というのだ。さぁ、始めるとするかしっかりと轡を噛み締めておけ『一刀』・・・・・」
私は手に持った鞭を振り上げる。
「っちょ!まって冥琳!!『ッバッチーン!!』ッア"--------------!!!!!」
あとがきっぽいもの
きーみはだーれとキースをする~♪・・・・・できるのなら呉の全員と・・・・・・獅子丸です。
いやね、昨日この話を投稿する予定だったんですが・・・・・・
気がついたら赤壁の場面を書いていたと言う。
あとがき冒頭の歌の所為だと思います!
過去に友人Aから進められたマクロスF内で使われている楽曲。
いや、燃えますよね!?萌えじゃなくて燃えますよね!!
まぁ、そのお陰でずっと考えていた本郷隊の設定とかをどう組み込むかずっと迷ってたんですが昨日で解決したと言うw
っとまぁ、次は今回の話の内容をば・・・・
今回も寿春編の続き・・・・もう直ぐ終わるよ寿春編。
まぁ、次で終わるとは思いますw
その時に一緒に一刀の策のことも書きますです。
とりま、一刀の策に意表を突かれっ放しだった冥琳の逆襲の話でもあります(ぁ
むしろその部分がこの話の肝なのかもしれない・・・・。
鞭打ちの刑に関してですが某、蒼い天の航路を参考にしてますb
どう見てもあれって鞭じゃなくて棍棒な気がしたのでそれを逆手にとって見ましたw
皆、想像してみて欲しい、鞭で一刀をシバく冥琳を・・・・・・・。
俺はありだと思います!!
まぁ、Sっ子冥琳にするつもりはありませんがwww
っと言うわけで今回はこの辺で。
次回も
生温い目でお読み頂ければ幸いです。
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第二十二話。
昨日投稿する予定だったのですが予想外のことが起きてしまって(ぁ
今回も
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