No.217225

IS/SS

うん、何だか最近ストレス溜まって来てたんで、息抜き的な意味での短編です。
主人公は設定変更した原作キャラでございます。

2011-05-17 15:09:38 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:25179   閲覧ユーザー数:23426

 

彼は、異常である。

食堂を営む一家の長男として生まれ、厳しい祖父と妹、そして優しい両親に恵まれているとしても、尚異常と言われる存在だった。

 

別に誰かから嫌われていると言う訳ではない。

親友だっている。

休日に何時も一緒に遊びに行く位仲の良い相手だって。

なのに、彼は異常なのだ。

 

別に暴力的と言う訳ではない。

祖父譲りの強い腕っ節はあるが、元より暴力は大嫌いな性質だ。

喧嘩なんて滅多にしない。

でも、彼は異常と呼ばれる。

 

素行が悪いという訳ではない。

寧ろ彼は勉強が得意で、少なくとも家族に胸を張って自慢できる程度の学力はある。

赤点等とは無縁に暮らしている。

けれど、それでも異常と言う烙印を押される。

 

それは何故?

彼は非常に一般的な一般人だ。

 

 

“ガヅン!!”

 

「あ痛!?」

 

「弾、またぶつけたのか?

いい加減慣れろよ」

 

「そうは言ってもな・・・いてぇ」

 

 

身長が異常に高い事を除いて。

 

 

 

IS(インフィニット・ストラトス)二次創作

「とある親友の日常破戒(サブストーリー)」

 

 

 

五反田弾

15歳

藍越学園1-1クラス所属の高校一年生

家族構成は、祖父、父、母、妹、自分の五人家族

大衆食堂『五反田食堂』の三代目であり、「私設・楽器を弾けるようになりたい同好会」に親友の一人と一緒に所属している

成績は上の中程度

食堂の息子らしく、料理が上手い

特に甘い物:菓子類は大得意との事

気だるげな垂れ目で、赤みがかった長髪の上から黒いバンダナを着けている

 

と、まあ、此処までは普通に何処にでもいそうな一生徒なのだが。

次に書かれるプロフィールの所為で、前述全てを台無しにしてしまう。

 

『身長:198cm

 体重:97kg 』(高校一年生度身体測定結果)

 

以上、いや異常だ。

どう考えても、日本人はおろか高校生の区分には含まれないであろう異常長身。

しかも、小学校の頃から他者とは一線を画する長身だった所為で、ランドセルは背負えないとか、服のサイズが一人だけLオーバーだとかは序の口。

生まれ付きの気だるげな垂れ目や赤みがかった髪が、俗に言う不良共には「嘗めたツラ」に映るらしく、小学生の頃から生意気な上級生や中学生、悪い時など高校生とやり合う事さえあった。

最も、祖父の御蔭、最早所為と言い換えてもいいかもしれないが、肉体は背とともに強く成長していたし、髪の色の所為で苛められがちだった妹を護る為に鍛えてもいた為、喧嘩に陥っても負ける事は無かった。

そして噂を聞き付けた更なる不良達を呼び寄せ、更なる喧嘩に、という無限ループになりかけ、結局立ち上がり向かって来る相手を全員倒して平穏を得た。

だが。

負け無しで数多の不良を鎮圧した弾に、人々は本人が望まない「不良の中の不良」という称号を突き付けた。

 

それでも弾は荒み等しなかった。

何時も通り。

普通に学校に通い、学業に精を出し、卒業する。

 

噂は弾に付き纏い、友人は作れない。

恐らく中学でもそうなるだろうと、半ば諦めていた弾だったが、まさか入学式当日で親友が作れる事になるとは、思ってもいなかった。

その御蔭で、中学生活が非常に充実したものになったのはとても嬉しかった。

・・・妹がその親友にフラグを建てられたのを除けば、だが。

まあ、それは置いといて。

きっとその親友が、高校生活も楽しくも嬉しくしてくれるのだろうと言う期待を抱いてはいた。

親友:織斑一夏が入試会場に来ず、駅前で配られていた号外に『世界初の、ISを動かした男出現』の主役として堂々と載っているのを見るまでは。

 

 

 

 

 

「お前、どうして藍越学園とIS学園の入試会場間違えられる訳?

馬鹿なの? それとも阿呆? もしくは痴呆か? ボケるにゃあまだ早くね?」

 

「言いたい放題言うなよ・・・」

 

「言われる様な馬鹿な間違いやらかしたお前が言うな」

 

「ぎゃふん」

 

 

あの報道から幾らか経った日の夜、此処は一夏の家。

親友と言う事もあって、勝手知ったる他人の家。

一夏の作った夕飯を食べつつ、話し合い中。

なんでも、先日こいつの姉さんである織斑千冬さんが久しぶりに帰って来たらしい。

その時の事を実に嬉しそうに語るこいつは、やはりシスコンなのだと再認識。

俺も人の事言えんがね。

 

チラリと視線を動かせば、そこにあるのは白の制服。

国立IS学園の【男子用】制服だ。

見るからに金がかかっていそうなデザインしてやがる。

懐の貧しい庶民の味方、大衆食堂の息子としちゃあ全く以て意味が理解出来ないぜ、フゥハハハ。

しっかしIS学園ねぇ・・・随分とまあ因縁めいてやがるな

 

IS

正式名称:インフィニット・ストラトス

元はと言えば、宇宙開発用のマルチフォームスーツとして、篠ノ之束博士が十年前に開発・発表した物。

何でも、現行の兵器全てを凌駕するという触れ込みだったが、この時点で宇宙開発用として使う気ないだろ、と当時話半分に流していた俺が後に学び直して突っ込んだ部分だったりする。

まぁそれはおいといて、だ。

ISは当初、見向きもされなかった。

それもその筈。

性能の触れ込み自体が眉唾もんだし、何より《女性にしか使えない》とか、欠陥品にも程があらあな。

しかし発表から一ヶ月後、世界12カ国の国防コンピューターが一斉にハッキングを受け、全部で2341発ものミサイルが日本に殺到し、それをIS第一号【白騎士】が華麗に薙ぎ払い、それを捕らえようと殺到した世界中の軍隊が敗北し、挙句死者を一人も出さなかったという結果に終わり、世界中にISの強さを刻み付けた『白騎士事件』という事件が起こる。

ま、この辺は此処以外でも大抵取り上げているんで、以下略。

 

そんなこんなで、世界には男女性差、女尊男卑の考えが浸透し始めている。

これまでとは真逆な状況だが、俺にはあんま関係ないね。

だって、昔っから我が家の男衆は母さんと蘭には絶対勝てねえし。

女性が話しかけて来る事なんか全然無いし・・・泣いていいか?

 

その辺りは置いといて。

今日はIS学園に半強制的に進学する事となった一夏の所為で、冷蔵庫の中身を空にするのを手伝う為に俺は此処に来た訳。

何故ならIS学園は全寮制だそうだから。

唯でさえ千冬さんの帰りが不定期で、それでも律義に毎日二人分必ず作るコイツ(一夏)はホント良い男の資質を持ってると思うよ。

但し鈍感は勘弁な!

無自覚に惚れさせワードほざいて、家の妹を誑かしてんじゃねーよ!

股座爆発しやがれ!!

・・・すぐ暴言に移るな俺の心情。

 

 

「一夏、飯どれ位残ってる?」

 

「ん、大体後一膳位か」

 

「じゃあくれ」

 

「あいよ」

 

 

本当に、良く出来た野郎だこと。

・・・女だったら間違いなく惚れてたな!

 

 

「なぁ弾、今背筋が寒くなったんだけど」

 

「何、そいつはいけねぇな。

春とはいえ、まだ夜は冷えるし。

今夜はしっかり体を温めてから寝るこったな」

 

「サンキュ」

 

 

一夏から茶碗を受け取る。

こいつ、敵意とか身の危険には意外と敏感なくせして、どうして色恋沙汰にのみあんな鈍いかねぇ・・・!?

炊き上がってから一時間も経っていない、ホカホカの白米を掻っ込む。

実は麦飯の方が好きなんだが、馳走になっているくせにそこまで言うのは、不躾にも程ありだ。

爺ちゃんの鉄拳制裁対象だぜ。

 

 

「ごっそさん」

 

「お粗末さまでした」

 

「・・・これだよ」

 

 

俺が空になった茶碗を置くのとほぼ同時に、スッと眼前に差し出される湯呑。

この野郎、人を悦ばせる業を心得てやがるっ!

織斑一夏、恐ろしい子っ!!

・・・あー、美味え・・・・・・飲み終わったら退散すっか。

あ、そうだ。

 

懐からデジカメを取り出し、キッチンで皿洗いやってる一夏をレンズに捉える。

そしてシャッター一回。

・・・うし、良く撮れてる。

こいつは蘭へのいい土産になりそうだ。

バレない内に逃げよっと。

ちと良心が痛いがな!

 

 

「一夏、俺もう帰るわ」

 

「分かった! 気を付けてな!」

 

「うぇーい」

 

“ガヅン!!”

 

「あ痛!?」

 

「弾、またぶつけたのか?

いい加減慣れろよ」

 

「そうは言ってもな・・・いてぇ」

 

 

畜生、油断大敵とはこの事か。

 

 

 

 

 

少し時間は過ぎて。

 

どうも、五反田弾です。

今日は土曜日、でも我が家は戦場だぜ!

五反田食堂に休日無し!

しかし俺は腕前不足で厨房に立てないし、注文取りをしようにもこの図体では客除け案山子扱いなので、裏側で荷下ろしやってます。

無駄にデカイ身体が恨めしい。

しかも全然疲れないし。

こんな身体に誰がした!?

 

身長は一家内でもぶっちぎりのトップ、因みに体重も。

筋肉の割合じゃ爺ちゃんに負けてるんだけどな!

 

取り敢えず、任された分の仕事全部終わったんで、俺の労働の相棒『クー○ッシュ』をクーラーボックスから取り出す。

うまーい、あまーい。

因みに俺、猫舌兼甘党です。

あぁん? 辛くて温かい物? 見るだけで涙が出るわ!!

殺す気か! 死んだらどうする!?

と言う訳で、実は五反田食堂のカボチャ煮定食の味付け監修俺です。

美味いのに不人気、不思議!

 

 

「弾、今日はもう上がっていいわよ」

 

「あり? 今日の仕事もしかしてこれで全部?」

 

「えぇそうよ、はい御駄賃」

 

「あざーッス」

 

 

何時の間にか背後に立っていた、我が家の二代(誤字じゃないんだな、これが)看板娘の片割れである母さんから千円札三枚を受け取る。

ある意味日給三千円か。

ま、別にいいんだけどな?

しっかし、母さんすげぇな。

一体何時の間に俺の背後を取ったんだ?

今からでも遅くないからIS国家代表目指せるんじゃね?

 

 

「無理無理、私にそんな大それたもの無理よ」

 

「う~む、何故俺の周りの女性は揃って読心の術を心得ているんだろう?」

 

 

マジで謎過ぎる。

一夏は何かしら考えていそうな時は「戯けた事考えるな」とでも言えば、後は勝手に自爆するんだが。

俺の思考が読まれる要因って何かあるっけ?

 

 

「伊達に15年貴方の母をやってないわ」

 

「納得いかねぇ・・・」

 

 

我が母ながら訳解らん。

訳解らんと言えば、見た目もだ。

曰く二十八の頃から変化していないとか。

しかし突っ込んではいけない。

今のニコニコ顔が崩れた時、人も崩れるのだから。

因みに厨二病でも何でもない。

実際に爺ちゃんや親父が崩れ落ちたのを見た事がある。

あの時は蘭と一緒に震えながら抱き合っていたっけ・・・へっ、兄の手がかからなくなりやがって。

全然寂しくなんかないんだからな! ホントだぞ!

 

 

「あ、そうだ弾、一つ頼まれ事してくれない?」

 

「はい?」

 

 

振り向いてちょっと後悔した。

だって、ニコニコが半分止まってるし。

やべぇ、身体の芯から震えが来た。

恐るべし幼少期のトラウマ!

・・・身長150cm半ばの幼少期って、幼少期って言えるのかね?

 

 

「イ、イエスマム!」

 

 

びしりと直立して敬礼した俺を誰が責められようか。

否、誰にも無理だ!

母さんが少し呆れた様に笑った、セーフ!

 

 

「駅の地下街に新しく出来たデザート専門店のデザート、家族の人数分買っ―」

 

「俺の分が一個多くていいならOK!!」

 

「あら、別に構わないわよ」

 

「いよっしゃぁ!!」

 

 

母さんが全部言い切る前に、即答。

その内行こうと思っていた場所だ。

名前は確か『リップ・トリック』だった筈。

 

 

「んじゃ、行って来まーす!」

 

 

取り敢えずは全力疾走だな。

よーし、燃えて来たー!!

は? 自転車?

サイズが合わないんだよ!!

 

 

 

 

 

「うぉ・・・こりゃとんでもないな」

 

 

駅の地下街、件の『リップ・トリック』前には長蛇の列が出来ていた。

しかも、弾を除いて全員女性ばかりである。

それでも、弾は一片の躊躇も無く列に並んだ。

 

そうして、二十分程経った頃である。

何人も横入りしようとした女性達を追い返し、警察に通報されそうになったりもしたものの、胸元のICレコーダーの記録で身の潔癖を証明しつつ並び続けていた。

そんな時。

 

 

「ちょっとそこの貴方」

 

「ん?」

 

 

自分を呼ばれたのかと各々に思い、列が一斉に振り返った。

そこには、極上の美少女がいた。

先端辺りをドリルの様にロールさせた長めの金髪、白人らしき透き通る様な肌に、ブルーの瞳、やや垂れ気味な目元。

どれをとっても『美少女』と呼ばざるを得ない圧倒的な存在がそこに居た。

しかしそれ以上に、着ている服装がIS学園の制服である事が、強く目を引いた。

 

 

「えーっと、俺か? 呼ばれたの」

 

「うっ・・・え、えぇ、そうですわ」

 

 

少女に視線を向けると、少したじろいだ様に後方に下がられる。

何時もの事とは言え、やはりちょっと傷付く。

 

 

「コホン、列のその位置を譲ってくれませんこと?」

 

「断固拒否する!!」

 

 

即答であった。

少女の言葉の最後「と」に被せる位絶妙なタイミングでの即答である。

 

 

「な、何でですの!?」

 

「そんなの、此処の菓子を楽しみに来たからに決まってるだろ?」

 

「それはそうですが、いいではありませんか!

此度を逃したとしても、次があるでしょう?」

 

 

その少女の言葉に、弾の米神に青筋が浮かぶ。

列に並ぶ女性達の幾人かがヒッと息を呑んだ。

そんなやり取りの最中も、二人して列に沿って動いているのが何気にシュールだ。

 

 

「じゃあ何だ、あんたは同じ事を言われて退けるか?」

 

「・・・い、いいえ」

 

「だろ? だから退かない。

俺は菓子を買いに来たんじゃない。

味わいに来たんだ!」

 

「! ならば、一つ頼んで良いでしょうか?」

 

「何を?」

 

「貴方の買い物のついでに、今日限定のタルトを二つ買って貰えませんか?

お代は支払いますし、もし貴方の買いたい物で売り切れたというならば諦めますわ」

 

「よし、承った。

何だ、礼儀正しくて良いじゃないか。

正に淑女だ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

何故か、どもる少女。

慌てる様に列から離れて行くが、弾は視線で追ったきり。

 

そうこうしている内に、弾の番がやってくる。

何とか欲しい物を買い、少女が欲しがっていた物もギリギリ買えた。

と言う訳で、少女の元へタルトの入った箱を運ぶ。

 

 

「ほれ、御依頼の品だ」

 

「あ、ありがとうございました。

これ、お代ですわ」

 

「毎度ー」

 

 

ケーキの代金を受け取り、弾はそそくさとその場を離れる。

デザートは生もの、早く持って帰らねば、食べる絶好の機を逸する。

美しい少女は、もう思考の外側だった。

 

で、残された側は。

 

 

「・・・行ってしまいましたわ。

見た目よりも、ずっと紳士的な方でしたわね」

 

 

視線を手元のケーキの入った箱に落とす。

駄目元で頼んだのだが、まさか了承されるとは思わなかった。

そして少女―イギリス代表候補生セシリア・オルコットはふと気付く。

 

 

「そう言えば、私名乗っていませんでしたわ。

まあ、機を逸してしまったのならば、しょうがありませんわね。

それよりも今は」

 

 

にへら~とセシリアの顔が綻ぶ。

ちょっと危ない人に見える。

 

 

「一夏さんとのお茶会の準備ですわ~♪」

 

 

スキップする様なテンションで、IS学園までの道程を歩むのであった。

結局お流れになった上、数日後に中国の代表候補生が転入して来た所為で、弾の事は忘却の彼方へと追いやられるのだが。

 

 

 

 

 

どうも、五反田弾です。

日常って尊いよね?

今回はそんなお話で・・・・・・

 

 

『で、一夏の奴ったら、あたしとの約束を忘れてんのよ!!』

 

「落ち着けー、約束って何だ、俺まずそっから知らねぇぞ」

 

 

でも無いのよね。

携帯電話の向こう側で吼える、俺の第二の親友が煩いので、ちょっとだけ受話部分から耳を離す。

耳が痛い。

俺の鼓膜にダイレクトアタック出来るレベルの電話越しの声量って何ぞ。

周囲に駄々漏れじゃねぇの、お前?

と、言ってやったら、ぐっと言葉に詰まりおった。

やっぱりな、一夏絡みになると余裕を即失うからなぁ、こいつは。

凰鈴音という女は。

因みに俺との身長差は40cmオーバーと言うミニ―って何だ今の怖気は!?

まさか鈴から!?

馬鹿な、IS学園からどんだけ離れてると思ってるんだ!?

 

 

『・・・弾? あんた今失礼な事考えてなかった?』

 

「いんや? 唯世の中の不公平さを噛み締めていただけだ。

・・・どうして一夏だけあんなモテるんだ?

不条理じゃね? おかしくないか?」

 

『あんたが言っても説得力が薄いわよ』

 

「はっ? 何で?」

 

 

携帯の向こうで鈴が呆れた様に溜息を吐いたのが聞こえた。

何だ何だ、ひょっとして俺って隠れモテ男だとか!?

今明かされる衝撃の事実!!

・・・有り得ねぇな!

 

 

「で、話を戻すが、約束って何だ?」

 

『そうだったわ、ねぇ聞いてよ一夏の奴、【料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べる】って約束を―』

 

「鈴、お前頭大丈夫か?」

 

『はぁ!? 何で―』

 

「馬鹿かお前、一夏との付き合いは俺より一年長いくせして、あいつの鈍感度合いを把握してないのかよ。

あいつは基本Love≒Likeで繋げるし、自分から好意を持たない限り、色恋沙汰に視点を置いて考えなんかしねぇぞ」

 

『ぐっ』

 

「それに、そんな回りくどい告白あの野郎に通じる訳ねぇだろ。

あいつ、中学時代に女の子から『好きです!』って告白された時、素で『俺も好きだ』って返したくせに付き合わなかったって実績があるんだぞ」

 

『え゛? 何それ初耳なんだけど』

 

「そりゃそうだ、お前が帰国した直後の事なんだからな。

他にも、お前の約束と似たニュアンスで玉砕した例として。

私と生涯のバッテリーになってくれ、と言われて、ソフトボールの助っ人ならいいが部活に所属は無理なんでごめんなさいって、勘違いしたってのがあるぞ。

お前の事だから、感情的になって一夏を殴ったとかしたんだろ?

女との約束も覚えていないなんて最低! とか言って」

 

『ぐぐぅ・・・』

 

 

どうやら図星らしい。

こいつも大概だね、戦略級鈍感要塞織斑一夏を墜とすには、戦略核(既成事実)位しか無理じゃね?

と、中学生時代に散々思わされて来た事だ。

 

 

「まぁあれだ、折を見て『殴ってゴメン』とでも言って仲直りするこったな」

 

『な、何であたしが―』

 

「殴られた理由が分からない=俺、もしかして鈴に嫌われているんじゃ?

・・・他に何か言う事あるか?」

 

『今すぐ仲直りして来るわ、相談に乗ってくれてありがと』

 

「そうしとけ、あいつは人から向けられる感情の内、好意よりも悪意を強く受け取る男だ」

 

 

最後の言葉は聞こえていたのか分からん。

急にブツッて切れたし。

 

それにしても、何で一夏の恋愛絡みだと俺に相談する人が多いんだか。

・・・そう言えば。

俺って学校でも日常でも大概一夏とつるんでいたよな?

もしかして、薄い本で【アッー!!】な関係として描かれているかも・・・何故否定する要素が思い浮かばないんだろう、嫌だねぇ。

しかし、そんな本は今まで見た事無いがな。

・・・・・・千冬さんの恐い笑顔が脳裏を過ぎったのは関係あるのだろうか。

どうでもいいか。

 

 

“Prrrrrrr……”

 

「はい五反田弾」

 

『弾、俺鈴に嫌われたかも』

 

「リア充爆発しやがれ」

 

“プツッ、ツーツーツー・・・”

 

 

ついでに電源Off。

充電機にセットしておく。

あーやだやだ、あいつ等も他に電話する相手位見付けろってんだ。

事ある毎に相談に付き合わされる俺の身にもなれって話だよ、ホント。

 

 

 

 

 

ある休日。

 

 

「お兄! 買い物に行くわよ!」

 

「・・・・・・一人で行けよ」

 

「今日は買う物多いんだから、あたし一人じゃ無理なのよ!

ほら、とっとと用意してよ!」

 

「あ゛ー!? 何しやがる!? メイルシュトローム(冷遇)による、テンペスタ(優遇)フルボッコが泡沫の夢と消えたじゃねーか!」

 

「ほら、とっとと」

 

「一人で勝手に行ってろ」

 

「はぁ!? ・・・・・・うっ」

 

「俺は自分で出かける、買い物に行きたきゃ一人で行け。

何時も食堂に来る《蘭ちゃんファンクラブ》の誰かでも誘えよ。

あのおっさん方なら狂喜乱舞して付いて来るだろ」

 

「うっうぅ~~~、お兄の馬鹿ー!!」

 

 

そう言い捨てて、俺の部屋を飛び出す愛すべき妹(蘭)。

俺の部屋のドアに恨みでもあるのか。

ちくせう。

蝶番がまたガタついてやがる。

原因は蘭なのに、直すのは俺の仕事なんだぞ。

不公平だコンチクショウ。

 

 

「・・・出かけよ」

 

 

俺の【IS/VS】のデータ・・・今度一夏が来た時に仰天させてやろうと思ってたのに。

ムカついたから、今度来る事を教えてやらん事にした。

いきなりな再会で大慌てするがよいわ!

・・・・・・虚しくなるな、とっとと出かけよっと。

 

―俺、外出―

 

いやー、休日の昼間ってホントに良い物だ。

結構人がいるのに、スイスイ歩ける。

見ろ! 人込みが【十戒】のワンシーンの様だ!

・・・あれ? このしょっぱい液体は何だろう?

 

 

「こんな時は、やけ食いでもするか」

 

 

懐には一応余裕がある。

小遣いは貰ってるし、家の手伝いでも臨時収入がある。

因みに、俺と蘭の小遣い比較。

何時もの溺愛加減とは裏腹に、俺の方が多い。

爺ちゃんってもしかしたらツンデレなのかと思ったりした事もあるが、気色悪過ぎるのですぐやめた。

 

目指す先は『@クルーズ』。

結構レベルの高いファミレスだ。

特にパフェが良いんだよな。

 

 

「あ、いらっしゃいませー! !?・・・・・・お、おおおお一人様でしょうかっ!?」

 

「うん、それでよろしく」

 

「で、でででは此方へ・・・」

 

 

出迎えてくれたバイトと思しき、メイド姿の女の子がガタガタ震えながら接客してくれるけど、正直物凄く悪い事してる気分だ。

この子、きっと最近入ったばかりなんだろうな。

だって俺此処の常連で、顔が知られてるんだもん。

その証拠に、周りの見知ったバイトさん達や、店長さんは笑いを堪えるのに必死だし。

 

 

「あ、あの、当店ではアルch」

 

「黒豆ココア(340円)と、春の苺尽くしデラックスパフェ(1890円)を」

 

「は、はい、かしこまりました」

 

 

席に案内されて即言われそうになる、俺への常套句を叩き斬って決めておいた注文を一方的に言う。

こうでもしとかないと、すぐにでも泣かれてしまいそうだ。

昔なんか、入店した瞬間ウェイトレスさんがマジ泣きして、通報されて逮捕されそうになった事だって・・・あ、やべ、涙が。

 

 

「災難だなぁ、弾君」

 

「何時もの事なんですけど、慣れたくないです」

 

「だろうなぁ、僕だって同じ立場だったらそう思うよ」

 

 

執事姿で笑っているのは、此処(@クルーズ)で知り合ったバイトのお兄さんだ。

名前は「佐久間亮介」さん。

大学三年生で、同棲中の恋人持ちのバリバリなリア充だ。

羨ましいよ、全く。

因みに俺より15cm程背が低い。

泣けるぜ。

 

 

「しかし、伝説の『魔弾(エビルバレット)』が、大の甘党。

誰も想像だにしていない事実じゃないか?」

 

「がふぁ! そ、それは言わないで下さいよ、俺の黒歴史なんですから」

 

「あー、すまんすまん」

 

 

そう言ってはいるが、どう見ても反省してないよ、この人。

 

魔弾(エビルバレット):俺の昔の二つ名。

件の喧嘩生活時代に勝手に呼ばれる様になった名前だ。

曰く「一撃で殺しに来る」

常に多数で襲って来るから、急所を打たずに倒す余裕なかっただけなんだが、リアル話。

曰く「人を殴る為に生まれた」

それは寧ろ爺ちゃんだろ・・・!? うぉ! 何で物凄い寒気が!?

曰く「触ると死亡フラグが立つ」

正当防衛か救出行為しかしてないから、襲われない限り殴らないって意味なんだが。

曰く「人を撲殺し過ぎて髪が返り血で染まった」

・・・地毛だっつってんだろーがっ!!

 

他にもetc.

正直ガチで死にたくなる様な二つ名だよ。

因みに一夏と鈴は「「結構かっこよくね(ない)?」」とか抜かしやがった。

お前等センス無いわ。

・・・・・・そんな事よりパフェとココアまだかなー?

 

 

 

 

 

後書き

 

うん、天遣伝で無く、最近読んでるISの二次なんだ。

何だかストレスが溜まって眠りが浅くなったりしてるんで、息抜きがてら書いてみた。

多くは語らないけど、これで少しは天遣伝を書く指が加速・・・出来たらいいなぁ。

 

 

 


 
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