~ 一刀サイド ~
……まずははっきり言おう。正直、ただいま俺は地獄の責め苦を味わっている。一体何の事かというと。
「一刀さ~ん、次のお料理ができましたよ~」
「あ、ああ。もう、出来たの。……ちょっと、早過ぎないかな?」
「そんなことないですよ?だって、これもこれも、あれもあれも、私がた~っぷりと、愛情をこめて作ったんですから♪さ、どうぞ召し上がれ」
にこにこと。満面の笑みを俺に向けつつ、次なる料理の数々をテーブルに並べていく彼女。そのツインテールにした艶やかな黒髪を揺らしながら、料理をテーブルに並べ終えた彼女は、再び厨房に立つべくくるりとその体を回転させ、俺にその背中を向ける。
(くっ……!!み、見ちゃだめだ。“あれ”を見たら、俺の理性は崩壊してしまう……!!)
そうは思いながらも、自分の顔を“それ”からそらしつつも、俺の目はそれをしっかりと追ってしまう。
「~~~♪」
のんきに鼻歌を歌いながら、俺の視界の中で楽しそうに料理をしている彼女-徐庶、字は元直。そしてその真名を輝里ーの、そのツインテールの髪とともに、彼女の動きに併せて揺れる、白い布からのぞく-もとい、思いっきり見えてしまっている、その薄紅色に高潮した“桃”に、俺の視線はしっかりと吸い込まれていた。
(一体何考えてんだ輝里の奴……?まだ明日も仕事が山とあるってのに、いきなり『二人っきりで食事しましょう!』なんて持ちかけてきて……しかも、しかもだよ?何であんな格好してんだ?ていうか、どこからそんなもの仕入れてきたんだよ!“割烹着”なんて!)
そうなのだ。
輝里の奴、一体誰から教えてもらったのか知らないが、割烹着なんてものを現在その身にまとって、それはもう嬉そ~うに、料理をしているのだ。……しかも、だ。なぜか、その割烹着の下には、な、何も身に着けていないんですよ!
(誘ってるのか?!これは誘っているのか?!……う。み、見えそで見えないあの部分が、白い桃の谷間から覗いて、なんて、なんて……!!)
なんという誘引力か!!駄目だとわかっていても、ついつい目がそちらに向いてしまう~っっ!!
「……くす♪」
ハッ!いま、こっちを見て笑った?!い、いかん、これでは完全に彼女の思うが侭じゃあないか!
(堪えろ~。堪えろ~、俺!ここで輝里の誘惑に負けてしまったら、明日の政務に思いっきり支障が出てしまうのは明白だ!……しかもその上、もしそうなったら、またみんなから“お仕置き”をされることになるのも目に見えてる!……ここは、なんとしてでも耐えなければ……ッ!!)
~ 輝里サイド ~
くすくす。一刀さん、なかなか辛抱強いですね~。
私が今何をしているのかというと、実は一刀さんをちょっぴり誘惑中なんです♪……え?何でこんなことをしているのかって?そりゃあもちろん、一刀さんをその気にさせて……ごにょごにょ……のためです///
(……だって、ここの所何かと忙しくて、中々“そういう”機会が作れなかったんですもん)
……まあそのついでに、“あれ”のネタにも出来ないものかな~という、ちょっとした実験もかねているんですけどね♪
ちなみに、今着ているこの割烹着とか言う着物は、王淩さんから教わったもの。なんでこんな着物を知っているのか不思議だったけど、
「それは乙女のひ・み・つ♪」
って言われちゃった。……うん、乙女の秘密なら仕方ない。
まあ、それはともかく、最近全然二人きりになる機会が無かったし、夜のほうも結構ご無沙汰なもんだから、思い切って私のほうから誘ってみたりしてみました♪
……んだけど。
(……正直言って、すっっっごく、恥ずかしい///はしたない娘だって思われたかな?でも、ここ最近、私たちの陣営に加わってくる娘たちは、みんながみんな、一刀さんのことを慕っているのは一目瞭然なわけで。……その娘たちに加え、由と蒔ねえさん、そして、目下最大の恋敵である命さんを、大きく突き放すためには、思い切った手もたまには必要だと思ったわけ)
で。この割烹着を真っ裸の上に着て、こうして厨房を借り切っての、一刀さん誘惑作戦の実行中だったりするのである。
「か、一刀さん?ど、どうですか?私の料理、お口に合いましたか?」
「あ、ああ、うん。もちろんどれもおいしいよ。うん、さすが輝里。料理の方の腕も抜群だね」
「ほ、ほんとですか!?嬉しい!!」
と。一刀さんの言葉に高揚した私は、ずい、と、一刀さんの顔の近くまで自分の体を正面から寄せました。
「う///」
あ。赤くなった。……うふふ、私の胸の谷間を見て赤くなるだなんて、一刀さんも意外と可愛いところがあるんだ。
ま、とりあえず、それには気づかない振りをして、
「一刀さん?どうかしたんですか?顔、真っ赤ですよ?……熱でもあるのかしら?」
なんていいつつ、さらに胸元を一刀さんの顔の近くへと近づける私だったりして。
「……あ、あのさ、輝里?しょ、食事はもうこれで全部、かな?」
「え?あ、そうそう。まだ食後のお菓子が残ってました♪いま、用意しますね」
がたがたと。一刀さんの前にある卓を、私はちょっとだけ前に動かす。
「……?輝里、サン?あの、なにを……されているんでしょうか?」
「もちろん、食後のお菓子の準備です。……よっこいしょ、と」
「ちょ!?か、カガリサン!アナタハナニヲイタシマスカ?!」
ひょい、と。卓をどかして出来た空間-一刀さんの膝の上に、私は彼の両脚をまたぐ形で座り、にっこり、笑顔でこう言いました。
~ 一刀サイド ~
なるべく輝里の方へと視線をやらないようにしつつ、彼女の作ってくれた料理を次々と平らげていく。……正直、味なんか全然分かりません。だって、ちらとでも視線を彼女の方に送れば、その、は、裸に割烹着なんていう、そんな卑怯な姿をした輝里がいやでも目に飛び込んでくるわけで。
「か、一刀さん?ど、どうですか?私の料理、お口に合いましたか?」
「あ、ああ、うん。もちろんどれもおいしいよ。うん、さすが輝里。料理の方の腕も抜群だね」
「ほ、ほんとですか!?嬉しい!!」
ずい、と。俺の顔の方へと、その体を寄せてくる輝里。
「う///」
……む、胸の谷間がすぐ近くに……!!いや、駄目だ!ここで彼女の思惑に乗るわけには……っ!!
「一刀さん?どうかしたんですか?顔、真っ赤ですよ?……熱でもあるのかしら?」
と言いつつ、さらに俺に接近してくる彼女。こ、ここは何か話題をそらさなくては……!!
「……あ、あのさ、輝里?しょ、食事はもうこれで全部、かな?」
「え?あ、そうそう。まだ食後のお菓子が残ってました♪いま、用意しますね」
そう言ったかと思うと、彼女は何を思ったのか、俺の前にあるテーブルをずらし始めた。
「……?輝里、サン?あの、なにを……されているんでしょうか?」
「もちろん、食後のお菓子の準備です。……よっこいしょ、と」
「ちょ!?か、カガリサン!アナタハナニヲイタシマスカ?!」
ひょい、と。俺の両脚を跨ぐ形で、膝の上に乗っかってきた輝里。で、そのコバルトブルーの瞳に、妖艶な光を宿してこうのたまいました。
「……しょ、食後の“でざーと”、です。……遠慮なく、召し上がれ♪」
…………………………ぷっちん。
……ええ。
その瞬間、俺の中で何かがはじけ飛びましたともw
世間体?
明日の仕事?
みんなからのお仕置き?
……そんなの、この目の前にある、おいしそうな桃に手をつけないなんていう、もったいない行為に比べれば屁でもないさ!はっはっは!!
「……かずとさん?今夜は寝かせちゃ、や、ですよ♪」
「……精一杯、努力させていただきます」
「……嬉しい!!」
……うん。
屁でもない、さ、きっと、多分……。
……自信は、無いけどね。
は、ははは……はあ。
えんど。
Tweet |
|
|
127
|
22
|
追加するフォルダを選択
はい。北朝伝の幕間です。
今回は輝里のお話ですよん♪
まあ、一つだけぶっちゃけると、今回のこのお話は、某絵師さまが描かれた作品の、その原作(?)になった話に影響されて書きました。
続きを表示