雨――雨は嫌い。
雨が降るとお賽銭も入らないし、何より人の量が減る。
雨の日に好んで外に出る人は少ない。
だからこの場所にも――
「……はぁ。寂しいわね」
雨のせいで誰も来ないし、掃除以外する事がない。
暇なうえに寂しい。だから雨は嫌いなのよ。
「雨なんか降らずにずっと晴れてればいいのに」
そうすれば、こんな気持ちにならなくても済むのに。
「あはは、ずっと晴れというのは無理じゃないですかね」
「――っ!?」
「こんにちわ。霊夢さん♪」
「さ、ささ、早苗!? あんた、何でここにいるのよ!?」
「私がここに居るのがおかしいですか?」
「おかしいって言うか、その――」
ちょっと意味が分からないっていうか、混乱してるっていうか……
「もしかして霊夢さん。照れてます?」
「な――っ!? そ、そそ、そんなわけないでしょ!」
わ、わたしがあんたに照れるわけないでしょ!
「あぁ。そうでしたね。嬉しいんですよね」
「違――っ!?」
早苗が来てくれた事が嬉しいなんて……
「顔がニヤけてますよ♪」
「バカじゃないの!」
「あらら、怒らないでくださいよ」
「うるさい! 用がないなら帰りなさいよ」
もしかしてアレなの? わたしをからかいにでも来たの?
もしそうなら――
「霊夢さんの事が心配で……」
「え……?」
「霊夢さんは寂しがり屋なくせに、周りの人に頼ったりしないんですもん。そりゃ心配になりますよ」
「誰が寂しがり屋よ」
「隠さなくてもいいんですよ。ちゃんと私は理解してますから」
「わ、わたしは……」
「大丈夫ですよ霊夢さん。霊夢さんには私がいますから」
早苗が優しくわたしを抱き締める。
「早苗……」
「私には精一杯甘えてもいいんですよ」
耳元で囁かれる甘い言葉。
こんな……こんな言葉を言われ続けたら――
「霊夢さんが望むのでしたら、いつでもあなたの側に行きますよ」
「早苗」
もう我慢なんて出来ない。
「早苗、早苗、早苗!」
赤ん坊のように泣きじゃくりながら何度も早苗の名前を呼ぶ。
「はいはい。霊夢さん、私はここに居ますよ」
母親のような優しい眼差しで、わたしを慰める早苗。
「……霊夢さん。落ち着きましたか?」
「うん。なんかごめんね」
「いえいえ、私は嬉しかったですよ」
眩しいくらいの笑みを浮かべる早苗。
「それに霊夢さんの可愛らしい姿も見る事が出来ましたしね♪」
「~~~~~~~~~っ!」
は、恥ずかしい。今更になって恥ずかしさが湧いてきた。
わたし、早苗の前でみっともなく泣いちゃったのよね。
う~~~~~~~~っ、恥ずかしすぎて死にたくなるわ。
恥ずかしさのあまり頭を抱えていると、
「見て下さい霊夢さん。雨が止みましたよ」
「――え?」
さっきまでの雨が嘘のように止んでいた。
そして太陽が顔を覗かせ、眩しいくらいに輝いている。
「……よかった」
「何か言った?」
「いえ、なんでもないですよ。そんな事よりお茶にしませんか?」
「いいわよ」
「では、行きましょう♪」
「ちょっ、早苗――!?」
嬉しそうにわたしの手を引っ張っていく早苗。
早苗の笑顔。その笑顔はまるで太陽みたいに眩しい。
早苗の笑顔はもしかしたら、わたしにとって必要な物なのかもしれない。
雨のような憂鬱とした気分を明るく照らす太陽のように。
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霊夢と早苗さんです。某、とある企画で書いたやつです。
まぁ、それはそうと、雨が降ると出かける予定をキャンセルするくらい雨は勘弁して欲しいです。(家に居る時は好きなんですけどね)