No.215735

真・恋姫無双 夜の王 外伝3

yuukiさん

始まった天下一品武道会。
祭りの二日目、その一。
あくまで外伝、期待はしないでください。

2011-05-08 18:57:47 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:5746   閲覧ユーザー数:4370

本当は祭り一日目、二日目、三日目の三作で完結の予定でしたが、

長くなってしまった為、二日目を二分割しました。

 

外伝ですので、オリキャラの出番が多いです。

暇つぶしにどうぞ。

 

 

朝、目が覚めると布団の中に居たことに気づく。

隣には凪と愛紗が乱れたメイド服を着て寝ていた。

寝ぼけた頭で昨夜聞いたことを懸命に思いだす。

何でも何かの模様し物で景品として出品されていた物らしい、それに目を付けていた凪は愛紗と協力して手に入れたらしい。

昨日の夜はそれを着て俺の部屋まで訪れていた。

 

そんな二人の乱れたあとの姿の寝顔を見て、朝一番に俺が発した言葉は、

 

「やべ、布団で寝たのは何時振りだ?」

 

限りなくどうでもいいことだった。

 

 

 

 

パアン  パアン  パアン 

 

 

「さぁ~!やって参りました天下一品武道会!三国の代表達の武の競演!もしくは三国代表の脳筋たちによる馬鹿の競演!そんな化け物渦巻く中、なんと、愚かにも一般参加の人も出場するそう、死んでも保険降りないから!死なない様に気をつけなさいよ!」

 

 

晴れ渡る快晴の中、澄み渡る声が会場に響く。

熱烈な観衆の見守る中、俺と獅堂、逆狗の三人は参戦者控室に居た。

 

「ふぁ~、ねみぃ。一刀、、、始まったら起こせや」

 

「すごいな、この部屋は俺達三人で使っていいのか?、、、はぁ、あっちの三個の部屋はそれぞれの三国か、、」

 

小蓮や恋、哀や凪、愛紗達は会場の何処かで見ているとのことだった。

女性陣はどうやら資金集めを上手くやったらしく、かなりお金を手にしていた。

入場料千円も安い物なのだろう、昨日、夕飯を食いそびれた俺達からすればうらやましいものだ。

 

 

「これはまさに、三国の威信を駆けた戦争とも言えるのではないのでしょーか!ちぃ、とっても楽しみでーす。司会進行は私、旅芸人から一躍大陸一のアイドルになった地和ちゃんでーす!解説者には謎の漢女二人組と、五斗米道継承者、華陀のおじ、、」

 

「ちがぁーう!ゴットヴェイドォォだ!それに俺は、まだおじさんではない!」

 

 

中央の石造りの試合場では、懐かしい顔が多々あった。

というより、最初にあった貂蝉との会話や、なんだか途中で思い出したように有った貂蝉とのやり取りは何だったのだろうか?俺自身、わからない。

 

「うるせぇ、、眠れねーじぁあねぇか、あ? モガ、モガァァァ!」

 

「良いぞ、逆狗。そのまま試合が始まるまで縛り付けておけ」

 

「分かっている。退場なんて嫌だしな、静かにしてろ、獅堂」

 

暴れる獅堂を横目に俺たちは会場の方を向く。

 

「モガァァ(あとで)、モモガガァ(おぼえてろよ)、モガァァァァァ(テメェェラァァ)」

 

 

「と、いう濃い面々ばかりでちぃの心は早速折れそう。では大会規定を説明します!楽隊の皆さん、音楽開始~!」

 

 

天下一品武道会

 大会規定

 

第一 使用武器は刃を潰した模造剣を使用する。

 

第二 参ったの発言をするか、審判が戦闘不能と判断した場合のみ敗北とする。

 

第三 試合場から落ちた場合、その者は敗北とする。

 

第四 そのほか、勝敗が滞る事態が起きた場合は審判員同士の審議によって決定する。

 

第五 大会出場者は己の知雄を振り絞り、全力で戦わねばならない。

 

第六 制限時間は設けてはいないが、無用に長引く場合は没試合とする。

 

第七 戦闘中の嘘、策は 是 武略という。

 

第八 対戦相手を殺した場合は打ち首とする。

 

第九 優勝者には大陸最強の栄誉と千金が与えられる。

 

 

流れるように説明される規定を俺は聞き逃さないように聞いて行く。

目指すのは、優勝、千金だ。

にやりと口元を釣り上げていると、獅堂が不満そうに言葉を漏らす。

 

「モガァー(つーかよぉ)、モガガモガモガァ(全力でやれってのに)、モガァモガガガモァ?(殺すなってのは可笑しくねえか?)。モガァァ(やりずれぇ)」

 

「しょうがないだろ。もう、一年前とは時代が違うんだ。殺し殺されの戦いなんて、もう洛陽にはないんじゃないのか?、、、、俺たちが民に残した傷のこともあるしな」

 

「、、、、、モガァモ(くだらねぇ)」

 

「、、、ふっ、くだらなくなんてないさ。その傷もまた、俺たちが生きていた証しだ」

 

わらってそういうと、獅堂は呆れた目で俺を見る。

 

「というか、主。獅堂が何言っているのか、よくわかるな」

 

縄で縛られ、口を縛られた獅堂と感心したような顔の逆狗の二人との微笑ましい会話をしていると中央では対戦相手が発表されていく。

 

「逆狗、獅堂の縄をほどいてやれ」

 

「御意に」

 

「あー、たっく、テメーら。ただで済むと思うなよ」

 

「獅堂、暴れるなよ。仕返しは試合が終わった後にしてくれ。

 

「わーってるよ」

 

 

天下一品武道会

対戦表一覧 

 

第一試合 魏 李典 対 呉 華雄

 

第二試合 呉 周泰 対 魏 夏候淵

 

第三試合 蜀 馬岱 対 蜀 馬超

 

第四試合 魏 許緒 対 蜀 魏延

 

第五試合 蜀 文醜 対 呉 孫策

 

第七試合 呉 孫権 対 一般参加 ミスター紳士道

 

第八試合 魏 夏候惇 対 一般参加 ドックバック

 

第九試合 蜀 張飛 対 呉 甘寧

 

第十試合 魏 典韋 対 一般参加 ワンソード

 

 

 

発表される試合順を聞いて、獅堂と逆狗は固まっている。

どうしたのだろうか?

 

「、、、、、おい、ミスター紳士道ってなんだよ?」

 

「、、、、俺はドックバックって、なに?どういう意味?」

 

「ん?かっこよくないか?」

 

「「ねーよ!!」」

 

「そうかな、、結構考えたんだぞ?本名を出す訳にはいかないし、、」

 

「何をどう考えたらぁ?俺の名前が謎の記号になるんだよ!なんだよ、みすたあってよぉ!」

 

「そうだ、主。どっくばっく、て、何なんだ?言いにくいことこの上ないぞ」

 

「いやさ、本当はカタカナ読みで統一しよう思ったけど、、そうすると獅堂の名前がアレになるから、俺も色々考えてだな」

 

「何がどう、あれになんだよ!」

 

獅堂は中央を指さしながら叫ぶ、ちなみに第一試合はもう始まっているが目もくれない。

 

「だから、カタカナ読みにするとお前の名前、ライオンハウスだろ。流石にそれは無いなと思って、ミスター真獅堂で登録しておいたんだよ。紳士道になってるのは誤植だな、俺の所為じゃない」

 

「試合表、書いた奴、、、殺してやんよ、、、」

 

 

「ひゃあ!?」

 

「どうしたの?亜莎?」

 

「い、いえ、何か寒気がしまして」

 

 

何とか獅堂の怒りを他者に逸らすことに成功した俺は安堵のため息を漏らす。

うん、獅堂が起こるのも分かる、流石に俺もミスター紳士道は無いと思う。

 

「主、俺の名前はなぜ、どっくばっくなんだ?」

 

「うん?お前はそのままだよ、逆狗、狗の逆走でドックバック」

 

「そうか、まあ、獅堂よりはましだからいいか、、、なら、主の名は一刀、一本の刀という意味か?」

 

「そう、察しが良いな」

 

逆狗とほのぼのと話していると、怒りを鎮めた獅堂に問いかける。

 

「おいおい、試合見てなくていいのかよ?もう、第一試合終了だぜ?」

 

「ああ、今行くよ」

 

「将達の戦い、、参考にしなくては」

 

取りあえず、試合までの間は懐かしい面々の戦いぶりを観戦するとしよう。

 

 

 

 

 

次々と試合が始まり、まあ、順当に勝敗が決していく。

個人的には第三試合の翆対蒲公英の姉妹対決が見事だった。

 

 

「それでは、第七試合を始めまーす!選手の人はすぐに上がってこーい!」

 

 

そして、遂に第七試合、獅堂の番が回ってくる。

獅堂は口元を釣り上げながら、剣を二本腰に差し試合場へと上がっていく。

 

「獅堂、」

 

「んだよ」

 

「負けるなよ。嘗て背負った、その国の名にかけて」

 

「ああ、わかってんよ。猪々子に明命の馬鹿どもは負けやがって、元天で残ってんのは馬女だけだからなぁ。流石にこれじゃ情けねぇ。まあ、お前は笑いながら祈ってろよ、俺が孫権を殺さねえように」

 

最後の部分を凄惨な笑みを浮かべいう獅堂に俺は笑顔で返す。

獅堂は、試合場へと登っていった。

 

「大丈夫か?獅堂、血に狂ったら本気で殺しかねない」

 

「まあ、そこまであいつも馬鹿だとは思わない。が、止めに入る準備はしておこう。逆狗」

 

「御意に」

 

 

 

 

 

ヤローの笑みを見たあと、俺は試合の舞台へと上がっていく。

耳障りな歓声が響き、正面に孫権立っていた。

たしか、じゃじゃ馬の姉かなんかだったが、似てねえなぁ、目が駄目だ。

じゃじゃ馬みたいに面白い目をしちゃいねぇ、俺はじゃじゃ馬とはそれなりに仲が良いつもりだが、こいつとは慣れ合うことは出来そうにねえ。

 

「というわけで、二回戦第一試合、選手入場!西より入場するは若き次期呉王、姉である雪蓮様は余裕の勝利を決めました!続けて、何れ王となるその威厳、見せつけることができるのか!孫仲謀!」

 

「わが身に宿りし孫呉の血、しかと見るがいい!」

 

司会の青い髪の女の言葉と共に、孫権は剣を抜く。

あーあ、なんだ?あの目、まったく楽しそうじゃねえ、つーかよぉ、目が怖ええな、あの女。

 

「対するは一般参加、どう考えても肉食獣の檻に迷い込んじゃったようにしか思えなくて、ちぃとしては憐れみを抑えきれません!一般人、黒い三連星序列第二位、その名の通り、紳士的な戦いを期待しましょう!ミスター紳士道!」

 

「あぁ、見せてやるよ。俺の優しさってもんをよ」

 

 

「それでは、第七試合。レディ、ファイ!」

 

 

俺は腰に差した剣を二本抜き、仮面の下で孫権を見る。

すると、孫権は何か、話しかけてくる。

 

「私はお前が一般人であろうと、対したからには手を抜くつもりはない。せめて、傷を負う前に降参してくれ」

 

「くっ、は、はは、ははっははっは。ああ、そうか、優しいなぁ、孫権。じゃあ、俺からもお返しに教えといてやるよ、、、、対した奴に、優しさなんてかけてんじゃねぇよ、屑が」

 

俺の言葉に、孫権が反応する前に地面をけり飛ばす。

 

「くっ、」

 

「はぁぁぁああ」

 

俺の行動に構えて対する孫権の前、間合いに入る前に両手に持った剣を力の限り打ち付ける。

 

ガキッン

 

バチッ バチッ

 

「な、なぁ」

 

「はは、甘めぇんだよ」

 

鈍い音と共に、火花の眼つぶしが孫権の顔を襲う。

孫権は何とか避けようと後方へ飛んだ。

 

「お、お前、、眼つぶしなど卑怯ではないか!正々堂々戦う気はないのか!」

 

「ああ?卑怯?ざけんな、俺たちは今、刃は潰してるが剣を持って対峙してんだ。なら、此処は戦場だろ。大体、これは死合い、殺し合いだろ?卑怯だっても、勝ったもん勝ちじゃねえか」

 

俺の言葉で、孫権の目が変わる。

もう、油断も優しさのかけらも消し飛んでいた。

これで良い、これが戦いだ、戦いに優しさは必要ない。

あったらそれは、憐れみという嘲りに他ならねえ。

 

「わかった、それがお前の考えだというのなら、私はもうお前に一切の優しさも持たないわ。死にたくないなら、自分で避けなさい!」

 

「それでいい。見せてやるよ、嘗て、大陸最凶と謳われた、馬鹿な獣の戦い方をよお!観覧料に、終わった後は無様に尻でも振りながら、地面に這い蹲ってな!」

 

ようやく取り戻した戦場の空気の中を、俺は笑いながらかけて行く。

俺の笑い声と引きずった両手の剣が地面をこする音とが、周囲に木霊する。

 

「はぁはあはっは」 ブンッ ブンッ

 

「くっ、はあああ」 キンッ キンッ

 

初撃、二撃共に剣で防がれる。

 

「次はこっちの番よ!せいせいせいせいせぇーーい!」

 

「はっはははっは」

 

無様な突きが次々と飛んでくる。

 

「んだよ、なかなかやるじゃねえか」

 

「これくらい当然だ、私は次期呉王!なめるな!お前などに、後れはとらん!」

 

お笑いながらそう言っている間にも次々と突きは飛んでくる。

避けていたが、頬を一撃かすめやがった。

どうする、距離を取るか?ざけんな、逃げてどうなる。

対した相手に背を向けるときは、敗走するときだけって決めてんだよ。

 

「どうした!まさか手も足も出ないというんじゃないでしょうね!本気で来なさい!」

 

「、、、、、良いのか。狂犬と呼ばれたこの牙、屑には少し鋭いぞ」

 

 

 

 

 

一般参加選手控室。

 

「相変わらず、構えも斬心もあった物ではないな。獅堂の戦い方は、滅茶苦茶だ」

 

「ああ、武人の魂である武器の扱いすら乱雑だ。だが、、、あいつは強い、幾多の戦場を駆け抜けた経験は、ちょっとばかし半端じゃないよ」

 

「だな、天軍、初代鳳薦隊。ただ唯一の生き残り、黒天夜獣興煜。その実力に、一切の偽りは無し、か。まったく、あれとタメ張っていた一蝶のすごさがよくわかる」

 

「見せてやれ、獅堂。お前の力を、友の力を、大義を目指した、俺たちの力を!」

 

 

魏参加選手控室。

 

「あの男、ふざけた名の癖にやるじゃないか!一切退かぬとは見事だぞ!秋蘭!」

 

「ああ、そうだな。しかし、姉者、間違ってもアレは真似ないでくれ。季衣と流琉もだ」

 

「どうしてですか、秋蘭様?」

 

「みろ、今、足で剣を蹴り込んだ。幾等、刃を潰していると言っても下手をすると足首を折りかねないにも拘らず、だ。あの男、己の体のことなど一切考えていない」

 

「あの男の武は無用な蛮勇を振るい切った者のみが得られる極地。秋蘭はそれが言いたいのでしょう?」

 

「ええ、そうです華琳様。私は、蛮勇の果てで姉者も季衣達も見たくないですから」

 

「そうね、私も貴方達が傷つく様なんてみたくないわ」

 

「華琳様~」

 

「けど、あの不器用な武。似ているわね、、まさか、あの三人は、、ふふ、そういうことなのね」

 

 

 

 

雨の様な突きの合間、一瞬の隙を付きながら剣と剣の隙間に体を捻じ込んでいく。

肩や腕を剣が掠るが気にしねえ、この馬鹿な俺の体のことなんか、気にしてられるかよ。

俺は接近したまま、剣ではなく蹴りを孫権に繰り出した。

鈍いとと共に、剣でそれは防がれた。

痛みは酷くねェ、折れてはいないよう、は、つまんねえな。

 

「なっ、何故避けられるの!せいせいせいせぇーい!」

 

「引かねえ、生きてる限り、戦い戦い戦い、勝つ!それが俺のやり方だぁ!理性は捨てろ、倫理もいらねぇ、あるは知性と狂気で良い。は、はぁははっはははっは」

 

あわてて繰り出された付きを片手の剣で制止、もう片方での斬撃を孫権の腹を狙う。

 

「っっ」

 

「勝った」

 

勝った、しかし、そう思った瞬間、

 

「え?」

 

「なっ」

 

孫権は自分の足に足を取られ、地面に転ぶ。

俺の一撃は運よく避けられてしまった、孫権は転んだ反動のまま距離を取る。

 

「神って奴がいたら、本当に残酷だよなぁ。負ける時間を延ばすなんてよ」

 

「私は、負けない!負けてはならないのよ!次期、呉王として!」

 

「けどよ、もう、自分でもわかってんだろ?退けや、孫権、テメーはよくやったよ、俺相手によく頑張った。褒めてやる、本気でだ。だから退け、お前ぐらいの実力があれば、俺の実力も分かんだろ?」

 

「くっ」

 

「悔いるなよ。経験の差、それだけだ。引け、これ以上やれば、中途半端に強いお前を俺は殺しかねねぇ、嫌だろ?死ぬのはよ」

 

本気だ、先の一撃、入ってやがったら肋骨の二、三本は確実におしゃかだった。

 

「退けない、、退ける筈がないわ!私は次期呉王、姉様のように強くあらねばならないのよ!将でもない、一般人相手に背など向けられるものか!」

 

「強くありてぇ、なるほどな、それがテメーの願いか?意地か?矜持か?」

 

「なにを、、、」

 

「命をかける価値のあるもんかって聞いてんだよ。屑が」

 

「当然よ、その強さこそが呉を導く物。ならばこそ、私は強さを求めるわ!」

 

なるほど、なるほどねえ、馬鹿らしい位の屑だ。

人のことどころか、自分のことすら見えちゃいねえ。

 

「頭が固てえ、何を勘違いしてんだか、強さの為に命をかける?違えだろ、お前はその強さで国を守りたいんだろ?なら、命をかけるなら、、、国の為じゃねえのかよ。あぁ!!!」

 

「っ、」

 

「大体よぉ、強いことってのはそんなに偉いのか?ああそりゃ、弱いより強い方が良いだろうよ、選択肢が広がるしな。けどよ、強いってのは、こんなくだらねえことしかできねえんだぜ?」

 

剣を握る手の制限を外す、ゴキリと嫌な音が肩からなり、だらんと蛇のように肩が垂れる。

動く可動域を広げる荒療治、真似すんなよ?一生肩上がんなくなるからな。

俺は何時も通り、人を馬鹿にした笑みを浮かべたまま、孫権に突っ込んだ、策なんていらねえ、元々、技量が違いすぎるんだ。

 

 

獣の牙が、得物を襲う。

 

 

「っっ、くっ、なぁ、つぅ、あっ、くぅ」

 

「はははははっはははっはあぁぁぁ」

 

変幻自在、縦横無尽、俺はあらゆる方向から斬激を放ちながら孫権を嘲笑う。

 

「強くなりたい?無理だね、テメーは一生強くなんてなれねえ、姉のように?はっ、夢見てんじゃねえ、お前が武で孫策の横に立てる日なんて、来る筈ねえじゃねえか!あの化け物はこの程度の攻撃、片手で防いでたぜぇ!」

 

「うる、さい。私は、強くあらねば、ならないんだ。孫家の女として、、時期、呉王として、、みんなを、守るために。もう、二度と、あの人に全ての罪を被せてしまうような、失態を起こさない為にも!」

 

あの人、ねえ。

考えるまでもなく分かるぜ、ほんと素晴らしい。

一刀の為に、こいつは強くなろうと格上の俺に挑んでるんだぜ?涙ぐましいな。

本当に、笑えるほどに、泣けるほどに、、、、くだらねえ。

 

「はっはははは、俺は砕くぜ。お前の願いも、希望も、決意も努力も!嗤いながら一蹴してやる!それが“武力っていう強さだからなぁ!!”」

 

一切の制限を解除、殺す気で一撃を振り被る。

孫権は、地面を転がった。

 

 

 

 

 

呉 選手控室

 

「蓮華様!」

 

「待ちなさい、思春。蓮華はまだ降参していないし、審判も戦闘不能と判断した訳じゃないわ」

 

「しかし!あの男は本気です!あの一撃、まともに入っていれば怪我ではすみま「黙れと言っている!甘寧!お前はいつの間に王に意見できるほど偉くなった!」っっ、、、申し訳ありません。雪蓮様」

 

「辛いのは分かるわ。でも、見守りなさい。立ち上がる筈よ、あの子は何れ呉の王になるのだから」

 

「はっ、、、、、、(それにしても、あの戦い方、笑い声。嫌な予感はしていたんだ。やはり、アイツか。狂犬が)」

 

 

 

 

「くっ、つっ、、、はあ、はあ、はあ」

 

孫権は立ち上がった、膝は笑ってるが、始めより良い目をしていやがる。

俺は、初めて、本心からの笑みを孫権に贈る。

 

「どうだ?痛いだろ?苦しいだろ?これが、武力だ。俺が持ち得る強さだ。人を傷つけて人を守る刃だ。こんな糞みてぇなもんが、テメーが命をかけて目指す物なのか違げーだろーがよぉ」

 

「なにを、いっている」

 

「強い、ああ、素晴らしいな。けど、強いだけじゃダメなんだ。大陸最強の武を持った男の国でさえ、ああもあっさりと崩れ落ちた。無残に、無慈悲に、何が残った?何も残んなかったよ、失っただけだ。国も、友も、強かったのに、果てしなく強かったのに失った」

 

「あなた、、まさか、天に仕えていたの?」

 

「そうだ、だからこそ知ってる。力があっても、守れない、救えない、何もできない。それが俺の見たもんだ、天の敗因、それは、、、“強すぎたんだよ”。自国も他国も、見えなくなるほどにな」

 

俺の言葉に、孫権は固まった。

 

「それを言った上でもう一度聞いてやんよ。“強いことってはそんなに偉いのか?暴力、武力、戦争する才能が、そんなに偉いのかよ?”テメーは幾多の人を喰らった獣を見て、尊いものだとそういうのかよ」

 

もう、俺の顔に笑みを浮かべる、嘲り、侮蔑し、嫌悪する、、、自分自身を、何時ものように。

 

「まあ、どうでもいいことはこれで終わりだ。重要なのはよぉ、テメーに武の才能なんて欠片も無えってことだけだ」

 

少々頭がわいてたらしい、らしくない説教を気づいたら垂れてた。

自己嫌悪に陥りそうになっていると、俯いた孫権が聞いてくる。

 

「、、、なら、私は、、お前は私に、、何を求めろというの。姉様は確かに、素晴らしい王よ。それを目指さす、、何を目指すというの」

 

「はっ、わかりきってんだろ。テメーに戦の才能が無いなら、戦を起こさない才能でも探したらどうだ?あるか分かんねえけどよ」

 

孫権は俺を見る、目光は変わらず鋭いが最初に吹き飛ばした筈の優しさが湧こうとしている気がする。

だが、最初ほど不快感はねえ。

 

「それは、お前の考えなのでしょう」

 

「あぁ、けど、お前は王になるんだろ?なら、俺みたいな下民の意見も聞けよ、屑」

 

「、、、ええ、その言葉。確かに聞きいれたわ、礼を言いましょう。けど、私は退かないわ。孫家の女として、一度剣を握った以上、自分から引くことなんてできないもの」

 

「それでもいいさ。安心しろ、屑。最後くらい、、名の通りに紳士的にテメーを無様にぶっ飛ばしてやるよ。終わったら、ちゃんと無様に尻振って這い蹲っててくれよ?」

 

「くっ、お前のその下品な言動さえなければ呉に招こうとも思ったが、止めだわ!」

 

「はっ、たっりめーだ。馬鹿な俺を使いこなせる奴なんざ、大馬鹿な、ヤローしかいねえんだよ」

 

孫権は構える、俺は構えない、最後まで、構えない。

これが、俺の戦い方、死ぬ?傷つく?は、だからどうした。

自分が傷つくくらい、誰かが傷つくより随分マシじゃねえか。

それが、俺の戦い方の根源。

 

「はああああ!」

 

「あああああ!」

 

片手に握った剣を投げ捨て、もう片方の剣で剣を抑えたあと、空いた手で孫権の顔面を殴り飛ばした。

孫権は無様に転がって、舞台から落ちて行った。

 

「はっ、よかったなぁ、お前は屑でよ。俺やヤローの馬鹿と違って、死ななきゃ治らねえ訳じゃねえしよお。時間かけて屑具合を調整すんだな、雑魚」

 

そんな言葉を最後に吐き捨てて、俺は舞台から降りて行った。

 

 

 

 

 

「なっ、なんということでしょう!一般参加のミスター紳士道が呉の孫権を殴り飛ばしたあー!というか、女の子の顔を嬉々として殴るなんて!あんた正気!何処が紳士道なのよ!」

 

 

 

獅堂は後ろから聞こえるブーイングを五月蠅そうに聞き流しながら、こちらに歩いてくる。

 

「少しやりすぎじゃないか、獅堂」

 

「黙れよ、逆狗。つーか、もう俺は今日は出番ねえだろ?此処じゃうるさくて寝れそーにねえから、中の休憩所に入ってるわ。ふぁぁ、ねみ」

 

「獅堂、よくやった」

 

「ふっ、あぁ、当然だろ。一刀」

 

獅堂に笑みを置くれば笑みが返ってくる。

 

「だが、俺の試合が終わったら一緒に蓮華のお見舞いに行ってもらうぞ。何も顔面を殴ることも無かっただろ、馬鹿」

 

「ちっ、わーったよ」

 

 

 

 

 

場所は変わり、休憩所。

 

「ふぁぁ、ねみ」

 

チリン

 

「、、、、、あぁ?俺の首に剣なんてあてて、何か言いてえことでもあんのか?根暗」

 

「貴様、、、蓮華様へのあの仕打ち、ただで済むとでも思っているのか?」

 

獅堂の首に思春が剣を当てる中、次の試合は始まった。

 

 


 
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