No.215358

真・恋姫無双 夜の王 外伝2

yuukiさん

祭りの中に入っていく一刀達、前の続きです。
あくまで外伝、期待はしないでください。

2011-05-06 21:29:57 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6052   閲覧ユーザー数:4706

新しいシリーズを考えようとしても、何故か面白そうなのが浮ばない。

ならばと、気分転換に外伝を考えれば手はすらすらと動く。

俺は一体何なのだろう?そう考える今日この頃。

 

 

あくまで外伝、オリキャラの出番が多いですが暇つぶしにどうぞ。

 

 

 

「洛陽よ、私は帰って来たぁぁ!!」

 

「、、、、、何いってんだ?テメー」

 

「いや、言っておいた方がいい気がして。お前も言ってみろよ、獅堂、スッキリするぞ」

 

「そうか?じゃあ、しょうがねえなぁ」

 

「「洛陽よ、私は帰って来たぁぁ!!」」

 

「、、、、何をしているのですか、貴方達は」

 

愛紗に白い目で見られた。

というか、凪達はおろか洛陽に出入りしている民達からも白い眼で見られていた、、

 

「おい、馬鹿だと思われたじゃねえか。どうしてくれんだよ、あぁ!」

 

「いや、仕方ないだろ。逆狗が例の物を持ってくるまで洛陽には入れないんだ。暇なんだよ。それにこれは言おうってずっと前から決めてたんだ」

 

洛陽に辿り着いた俺たちは門の前で立ち往生していた。

まあ、当然だろう、何せ此処は元天国の都、俺の顔を覚えている民等幾らでも居るのだ。

死んだことになっているのだから、生きているとばれたら不味いのだ。

 

シュタッ

 

「主、例の物、手に入れてきたぞ」

 

「よし、良くやった。全員集合!」

 

「「「「はーい」」」」

 

逆狗から例の物を受け取り、全員に配っていく。

 

「これは、、」

 

「、、、、、、お面」

 

恋が早速、嬉しそうに受け取った物を装着しているのを見ながら頷く。

 

「そうだ。愛紗以外の俺たちは罪人で死んだことになってるからな、洛陽に入ったらこれで顔を隠すんだ。普段なら怪しまれるかもしれないが、祭りの間なら仮面をしている奴なんて幾らでもいるしな」

 

こんな物が露店で売ってるくらいだ、と付け加えながら言えば一様に頷く。

 

「ねえ、逆狗。なんか、男女で種類が違うけど、どうして?シャオのはピンクで逆狗のは黒いよ?」

 

「ああ、それは一緒じゃ面白くないと思って種類を変えて買ってきた。ちなみに主の仮面が一番高額だ」

 

ふーん、と小蓮は唸りながらきょろきょろとそれぞれの仮面を見ている。

凪、愛紗、小蓮、哀の女性組は色違いのパピ○ンマスク、と言うか華蝶仮面がしていたお面だ。

逆狗、獅堂の二人は黒の○士団の団員がしていた仮面。

そして、なぜか俺だけはフルフェイスだった、ゼ○総指令だった。

 

「よし、じゃあ、行くぞ!」

 

全員が全員、仮面を付けるのを確認してから声をだす。

 

「「「「「「おお!」」」」」」

 

そうして仮面の軍団は洛陽へと入っていった。

 

今さらだが、警備体制が甘すぎる気がする。

 

 

 

「さて、諸君。早速だが問題が発生した。忘れていたが今、我らには資金が足りなかったのだ。これではせっかくのお祭りなのに遊べない」

 

入ってすぐの路地裏で仮面の軍団は集会を開いていた。

 

「幾らぐらい残っているのでしょうか、一刀様」

 

「良い筆問だ、凪。ぶっちゃけ、まったくない。三時のおやつも買えない位だったからな。宿は借りる手はずが桃香を通して整っているから困りはしないが、どうするか」

 

悩みながら唸っていると、明かにごろつきですよって感じの男たちが近寄って来た。

 

「よおよお、あんたら洛陽は初めてかい?ここじゃあ、この道入ったら、俺達みたいのに通行料払う決まりがあんだけどさぁ」

 

「へへ、とっとと有り金おいてけや」

 

六人ほどの男たちはガラの悪い笑みを浮かべながら詰め寄ってくる。

まあ、人が集まれば集まるほどこの手の商売が儲かるのは分かるんだが、相手が悪かったな。

 

「獅堂、殺すなよ」

 

「あぁ、わかってる。取りあえず、8分殺しぐらいで勘弁してやんよ、、良かったなぁ塵が、俺が優しくてよぉ」

 

男たちが浮かべる笑みがガラの悪い笑みなら、獅堂の笑みはもはや狂った人殺しの笑みだった。

ぐちゃ、ごちゃ、と言う鈍い音が隣で響く中、俺たちは金をどう用意しようか唸りながら考えていた。

 

「けっ、時化てんな。これだけしか持っちゃいねえ。一刀、そらよ」

 

秒殺した男たちの懐から獅堂は財布を取り出し俺に向かって投げてくる。

中を確認すれば、合計で8千円(お金の単位が分からなかった)ほど入っていた。

 

「よし、今から一人に1千円ずつ配る。取りあえずの軍資金だ。まあ、これで三日は持たないだろうから、後は個々で金を手に入れてくれ。最悪、麗羽の所に行けば貸してくれるだろうと思う」

 

俺の言葉で全員が頷く。

 

「取りあえず、全員で動くのは流石に目立つし正体がばれる可能性が高い。一日目、二日目は分かれて行動しよう。三日目は、そうだな、夜、全員が集めた金を持ち寄って宴でも開けたら開こう」

 

「じゃあ、お金集めるの頑張んなきゃね」

 

「宴、、楽しみ」

 

全員が納得したのを確認する。

 

「じゃあ、散会」

 

「はーい♪恋、哀、一緒に行こう。取りあえず、シャオはお姉ちゃん達に会いに行きたいな!」

 

「 わかった(コクン) 恋は、ちんきゅと麗羽に会いたい」

 

「ついて来いと言われれば行きます」

 

「愛紗様、少し、手伝っていただきたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

「ん、私か。ああ、別にいいが、一体何をやるきなのだ?凪」

 

離れて行く女性組を見ながら、獅堂と逆狗を見る。

 

「じゃあ、俺たちも行くか。逆狗、獅堂」

 

「御意」

 

「ああ、」

 

こうして仮面の軍団は散らばっていった。

 

 

 

 

視点、黒の○士団御一行。

 

 

「で、どうすんだよ?金集めっても、楽じゃねぇぞ?襲ってくる屑以外、殺っちゃいけねえんだろ?」

 

「そうだな、、どうするか」

 

「いえ、その点ならご安心を、主。先に洛陽に入った時、これからの資金面を考え、前もって調べておいた。なんでも、このような模様し物があるそうだ」

 

そう言って指導は一枚の紙を取り出した。

 

 

        天下一品武道会

 

乱世を駆けた魏、呉、蜀の将達がその武勇を競う!

本戦1回戦目は祭りの二日目に、決勝戦を含む第2戦は三日目に開催。

ぜひ、御観覧にお越しください、入場料はおひとり様、千円。

 

なお、一般よりの参加も応募いたします。

予選は一日目、調練場にて開催、突破した者は本戦へと参加できます。

もし、各国の将を破り優勝した場合は賞金3百万円を進呈いたします。

腕に覚えがある方、是非ご挑戦を!!

 

              天下一品武道会 運営委員長 文武両道の軍師 呂蒙

 

 

 

「なるほど、はっ、太っ腹じゃねぇか。三百万とはよぉ」

 

「大方、一般参加の奴が各国の将には勝てる訳が無いと思ってるんだよ。だが、甘いな、華琳に桃香、雪蓮。三百万か、、手に入れば、しばらくは金に苦労しなくなるな。獅堂、逆狗、予選会場に行くぞ」

 

「ああ、」

 

「御意」

 

「勝つぞ、この大会。狙うは三王の首三つ!対する者は殺して進め!」

 

「「おおおおおおおお!!」」

 

物騒なことを叫び、昔を思い出しながら俺たちは歩いて行った。

 

 

そして、予選会場に辿り着くと、いきなり。

 

ビューン ゴロゴロゴロゴロ バタン

 

「あぁ?んだ、このゴミ」

 

「人形だろ、獅堂」

 

「人だな、主」

 

人が飛んで転がって来た。

 

飛んできた方向を見れば、明かに修羅場を潜ってきてますよオーラ満載の三人の男たちが居た。

 

「予選の試験は簡単だ!俺達、呉、蜀、魏の代表兵を倒せば本戦出場」

 

「さあ、さっきのごろつきと同じくなりたい奴はかかってこい!」

 

「言っておくが、各将軍達は俺達より遥かに強いからな。これくらいでビビっているようでは本戦など出る資格なし!」

 

予選会場には三十人ほどの人々がいたが、皆、男たちの殺気に怯えていた。

 

まあ、腕に覚えがある奴は乱世で既に何処かの国に属していただろうし、国に入れない奴で腕の立つ奴は俺が全て天国に引き入れていたから、ここに居るのはそこそこの腕なそこそこの奴らなのだろう。

三国の精鋭兵に勝てる筈もない。

そんなことを思っていると三人衆の一人がこちらを見てきた。

 

「ん?なんだ、お前達、挑戦するか?」

 

「ああ、頼む。三人いるから、一対一でいいのか?それとも一人一人、お前達と三回戦やらなきゃならないのか?」

 

「いや、流石にそれは無い。一対一でいい。そこにおいてある武器箱から好きなのを選んで闘技場に上ってこい、安心しろ、刃は潰してある」

 

一番、真面目そうな男はそう言いながらも少し心配そうに俺たちを見てくる。

まあ、あっちからしたら今までの挑戦者たちとの試合は殆ど弱い者苛めのようなものだったのだろう。

しかし、多分、今はその立場が逆転する。

 

俺たちはそれぞれ武器をもって、闘技場に上がっていく。

観客は一様に無理をするなと言う顔をしていた、思わず、笑みをこぼす。

俺たちが負けるとでも思っているのだろうか、、笑える。

 

 

 

久々の戦いだ、思わず浮かぶ歓喜を抑えながら対した男を見る。

鎧は緑を基調とした物、蜀の兵士なのだろう。

もしかしたら、対蜀大戦の時に戦場で出会ったことがあるかもしれない。

仮面が外れないように気を付けながら、手に持った剣を振るってみる。

本当は刀が良かったのだが、流石に無かった。

兵士は剣の確認が終わるまで待ってくれていた。

 

「そろそろいいか?」

 

「ああ、何時でもいいぞ」

 

俺がそう言うと、兵士は構え、突っ込んできた。

見事、と思う。

並みの兵、ましてや調練も受けていない者なら反応することも難しいと思う。

しかし、俺にはどうも軽すぎた。

 

ガキンッ

 

「なに!?」

 

「吹かねば、花とて散りまいが」

 

片手で剣を持ち、難なく斬激を止めた俺に兵士は驚き、しかし流石は精兵、すぐに危険を感じ下がろうとする。

だが、俺がそれを許す訳もなく懐に絡みつき、一撃を放つ。

 

「ぐはっ、」

 

「吹けば散りゆく、夜風は花の毒なれば」

 

あまりにもあっけなく、兵士は膝をついた。

 

 

膝を付き、驚きと屈辱で地面を見つめる兵士を一瞥した後、獅堂の方を見ればこちらもすでに終わっていた。

 

「はっ、はははっはははは、、、弱ぇーなぁ、弱過ぎだ。どうしてテメーは、其れ程までに弱ぇーんだ?」

 

獅堂は気絶した兵士をそう言って見下した後、こちらに向かって歩いてくる。

息一つ、乱れてはいなかった。

 

「はっ、手ごたえがねーよ。まあ、楽でいいけどよぉ、面白くはね―な」

 

「そう言うな、兵士の方じゃよくやった方だ。流石は精兵」

 

「ぜぇ、ぜぇ、そ、そうだ。十分に強かったじゃないか、、はぁ、はぁ」

 

いつの間にか戦い終わった逆狗も合流していた、獅堂や俺とは違い息がかなり乱れていた。

 

「大丈夫か?獅堂」

 

「はい、、なんとか、勝かった」

 

「おいおい、だらしねえなぁ。あんな雑魚相手に息乱してんじゃねえよ」

 

「お前と、一緒に、、するな。何度も言うが俺は隠密、戦うんじゃなくて戦わないように、何処に居るかばれない様に戦うことが俺の戦いなんだよ。真正面からの戦いは、専門外だ」

 

そうかよ、と獅堂が呆れたように言うのを見ながら俺は昔の感覚を思い出す。

 

しかし、その感覚のまま横を向いても、何時も獅堂の隣に居た男はいない。

昔、一蝶がよくいた位置には今は逆狗が立っている、時は流れる、何時までも、誰が居なくなっても流れて行く。

多分、俺が居なくなっても時の流れの中、俺以外の俺がこの場所に立つのだろう。

死んだ者は戻らない、そして、生きている者は生きている者しか見ない、それが世界の正しい姿。

 

そんなことを考えていると、俺と戦った兵士が立ちあがり、近寄って来た。

 

「、、、、俺たちの負けだ。予選は突破、まずはおめでとうと言おう。そして、礼を言うぞ、久しぶりに将軍職以外の者に負けた。俺たちもまだまだだと思いだせたよ」

 

笑いながらそういう兵に俺は笑みを浮かべ、差し出された手を握る。

 

「本戦は明日の午前10時からだ。9時半までには会場に来ていてくれ。それと予選突破者の選手席が用意される。突破者はあんたらだけだ。あんたらは知り合いみたいだから、その席に入りきる数ならだれを連れてきても構わない。ああ、それと、これを」

 

兵士は懐から、天下一品武道会選手証明書と書かれた紙を俺たちに渡す。

 

「ああ、」

 

「どうも」

 

「あぁ」

 

「それと、何か特殊な武具を使うならここに書いてくれ、出来る限り此方で用意する」

 

真桜辺りが作るのだろうか、そんなことを思いながら俺と獅堂達は紙に思い思いの物を書いて行く。

 

 

なるべく長い長剣。

 

片手剣、二本。乱暴に扱っても折れねえやつ。

 

小剣、遠的用。糸を通す穴があれば最適。

 

 

「わかった、じゃあ。明日は俺たちも応援させてもらう。頑張れよ」

 

 

こうして、俺と獅堂、逆狗は明日、天下一品武道会への出場が決まった。

 

 

 

 

視点、総指令。

 

 

獅堂達と分かれたあと、俺は一人道を歩いていた。

 

「へぇ、屋台も多いんだな。、、、、と言うより、綿あめなんてこの時代からあったのか?おいおい、しかし、白だけじゃなくてピンクや黄色いのまであるのかよ」

 

どう考えても時代錯誤な屋台の名物を少し引き攣った笑顔でみる。

ピンク、桃色は桃味なのだろうか?そうすると、黄色は蜜柑か?金柑や檸檬なのかもしれない。

綿あめと言ったら白色しかないと思っていた俺は少々カルチャーギャプを覚える。

そのうち、青い色まで出るんじゃないだろうか?ブルーハワイ味とか言って。

そうなったなら、非常に残念だが此処は中国じゃないと断言しなければならないだろう。

 

そんなことをしていると、一人の少女が前に立ち、じっと見ていることに気づく。

綺麗な紫色の髪をした、小さな女の子だった。

 

「、、、璃、々?」

 

「、、、かずと、お兄ちゃん?」

 

声で判断したのだろうか、璃々はそう呟いた後、数秒かたまり、こちらに駆け寄って来た。

 

「お兄ちゃん!」

 

ドスンッ

 

「ぐっ、」

 

訂正、頭突きと共に飛び込んできた。

 

「かずとお兄ちゃん!本物だよね?うそものじゃないもんね?」

 

「あ、ああ、本物だよ。と言うより偽物の俺がいるのか?それはかなり嫌だな」

 

そう言うと俺は昔のように璃々の髪をくしゃくしゃと撫でる。

 

 

 

璃々もまた、昔のように気持ちよさそうに笑ってくれた。

 

 

 

一年、色々なことがあり、俺は何かが変わっているかもしれないのに璃々は何一つ変わってはいなかった。

 

「えっとね、えっと、お母さんが、もしかしたらかずとお兄ちゃんがお祭りに来るかもしれないって、言ってね。璃々、すっごい楽しみにしてたんだから」

 

この子は、知っている筈だ、俺の魔王としての顔を。

一年前、あれ程の大事が起きたのだ、幾等周りが隠そうとしても隠せる筈がない。

この子は、俺が大戦を招いた原因と知って、人を笑いながら斬れる外道と知って、こうして笑いかけてくれているのだろうか。

 

「今日もね、お兄ちゃんに会えるかなって、出てきちゃったんだ。でもね、お母さんに内緒で出てきたから、、璃々、怒られちゃうかな?、、、かずとお兄ちゃん?」

 

だとしたら俺はどれ程最低なのだろうか、純粋なこの子に俺という悪を見せて笑わせているというのか。

 

「お兄ちゃん!」

 

「え、あ、悪い。その、なんだ?」

 

突然、璃々は俺の手を握って来た。

自分が涙目になるほどに強く、しっかりと。

 

「璃々、、かずとお兄ちゃんのこと好きだよ」

 

「、、、、、」

 

「かずとお兄ちゃんが、、怖い人だって言うのも聞いた。璃々のお友達はみんな、お兄ちゃんが悪い人だって言うの。璃々が違うって言っても信じてくれないの。でも、でもね、璃々は知ってるもん、璃々とっては、かずとお兄ちゃんは優しいお兄ちゃんなんだもん!」

 

涙声で、聞こえない所あった、舌足らずの所もあった、けど、璃々はそう泣きながら俺の為に言ってくれた。

抱きしめてしまうほど、嬉しかった。

 

抱きしめられて、頭を撫でられて泣きやんだ璃々は少し悪戯っぽく笑う。

 

「でもね、、璃々。かずとお兄ちゃんにきらいなところもあるんだよ。どうして、約束破ったの?一年前、お仕事終わったら遊んでくれるって言ったのに、、うそつきは璃々きらいになっちゃうよ」

 

訂正、どうやら璃々は変わっていたようだ、成長という良い変化だったが。

 

「悪かった。少しあの後、忙しくてな。お詫びに今日一日遊んでやるから、それじゃ駄目か?」

 

「だめだよ、一年待たせたんだから。一年遊んで!」

 

「、、、、流石に一年は遊べないな。今日だけじゃ足りないから、明日は午前中武道会だし、決勝(出れること自己確定)の為に疲れたくないから、、、明後日の午後も遊んでやる。二日で一年分遊んでやるから、それでいいか?」

 

「うん!いいよ!」

 

「じゃあ、始めはなにがしたい?」

 

「んとね、璃々、綿あめ食べたい!桃色のがいいな」

 

「わかった、買ってやるよ」

 

どうやら、俺の軍資金の大半はこの子の為に消えそうだ。

 

 

 

 

視点、団員1

 

 

「さて、何しようか?」

 

俺は主たちと分かれたあと、一人で街中を歩いていた。

暗部を駆けることが仕事の俺としては、民たちの笑顔は少々眩しすぎるぐらいだ。

その中で、少女を肩車している主を見た気がしたが、多分気のせいだろう。

大体、顔が見えないし、顔にしている仮面は其処ら中で売っている物なのだ、人違いだろう。

 

「まあ、激しい運動は控えた方がいいな。明日は、武道大会だし。しかし、勝てるのか?俺が?」

 

横目で体を使う遊戯の施設を通り過ぎながら思う。

 

「何度も言うが、俺は武人じゃなく隠密だぞ?そりゃ、呉には武人で隠密の奴もいるけど、俺は根っからの隠密なんだぞ?武で争って、武人に勝てる訳が無いと思うが。いや、そりゃ出るからには頑張るんだが」

 

昔、呂布と対した時のことを思い出す。

練りに練った奇策は簡単に純粋な腕力でねじ伏せられた、あれはトラウマだ。

大体、あの細腕の何処からあんな力が出るのだろうか?主や、獅堂もそうだが、人間じゃないと思う。

昔、一蝶にいたっては数里先から飛んでくる矢も見えるとか言っていたが、もはや目が良いとかいう次元じゃないだろう。

 

そんなことを思って歩いていると、周囲への警戒が薄れ、女性とぶつかってしまった。

 

「あっ、」

 

「きゃっ、」

 

倒れそうになる女性をとっさに抱きかかえる、正面から見つめ合う形になってしまう。

 

「、、、、、、」

 

「、、、、、、」

 

白い肌に、白い鎧、黒い服を着て黒い仮面をしている俺とは対照的な女性だった。

桃色の髪が背の後ろに回した腕をくすぐり心地いい。

 

「あの、えっと、、」

 

「っっ、ああ、悪い」

 

「いっ、いや、私の方こそ」

 

彼女の声で唐突に赤くなりそうな顔を押しとどめ、正気に戻る。

しかし、何故か離れても彼女の顔を見つめてしまう。

なんだかずっと肉食獣に囲まれて生きてきた自分が、やっと同じ草食獣に会えたような心地だ、いや、自分で言っていて、よくわからないが。

 

「怪我とか、無いか?悪い、少し考え事をしていて」

 

「い、いや、私の方こそ、前を見ていなかったんだ。その、受け止めてくれて助かった、ありがとう」

 

「ああ、」

 

何故か、少しの沈黙が流れる。

しかし、気まずいものじゃない気がする。

 

「じゃ、じゃあ、私はもう行くな。本当に、ありがとな!」

 

「ああ、気をつけろよ」

 

そう言って、彼女が去っていたことを残念がっている自分に混乱していると、地面に落ちた白いハンカチが目に映る。

 

「これ、、彼女のだよな?」

 

それを拾って、一瞬考えたあと、俺は走り出した。

 

「おい、待て!」

 

「え、、、な、なんだ。追いかけてきてくれたのか?」

 

何故か、顔を赤らめ、嬉しそうに言う彼女を見ながら、俺は手にした物を差し出す。

 

「あ、な、なんだ。落としたのを拾ってくれたのか、、、そうだよな、、初めてあったし、、私、地味だし、、ははは、そんな訳ないか、、、」

 

正直、後の方は何を言っているか聞こえなかった。

それほど、彼女の赤らんだ嬉しそうな表情を見たら頭が混乱した、脳が熱を持っているように思う。

 

「あ、あの、よかったら、、、お茶でもしないか、、、」

 

口ごもるようにそう言い終わってから、俺は何をしているんだと思う。

目立つことを避けることが隠密の基本なのに、あろうことか初めて会った女性を会食に誘うなど、、馬鹿か、俺は。

 

「あ、ああ!その、、、い、良いぞ!」

 

しかし、まあ、たまにはこういうのもいいのかもしれない。

 

「じゃあ、、、行くか?」

 

「う、うん」

 

取りあえず、軍資金はすぐに消えてしまいそうだった。

 

 

 

 

視点、団員その2

 

 

「つーかよぉ、俺が2って可笑しくねぇか?普通、俺が1だろーが。あんな戦争中は活躍したんだかしてないんだか分かんねえ奴よりよぉ」

 

ヤロー達と分かれた俺は唐突に呟きたくなった文句を言いながら、道を歩いていた。

周りがキャンキャンうるさくてうざくなるが、まあ、人が笑ってるのは良い事だろうと思うぜ。

 

「んだ、あれ?雲でも売ってんのか?」

 

一つの露店に目をやれば、桃色やら黄色やら白い色やらのふわふわした謎の物体が売っていた。

素直にすげぇと思う、大陸は色々回ったがあんなもんを見たのは初めてだ。

 

「ガキども人気っていことは、甘い菓子かなんかか。はっ、大陸もまだまだ面白いもんがあるんだな」

 

そんなことを欠伸をしながら言い、露店の前を通り過ぎる。

興味はあるが、俺が行けば集ってるガキどもは恐がるだろうしな。

これでも、ガラが悪いのは自覚してんだ、変える気はねぇがなぁ。

 

「って、次は何だ?ありゃ、逆狗か?、、、、まさかなぁ」

 

ふと眼を向けた先には、野外の茶店みたいな店に逆狗のような男と談笑する女がいた。

まあ、しかし、逆狗のように見える男は逆狗じゃないだろう、仮面してるし、あんな真黒な服装の奴なんて探せばいるだろうし。

 

「第一、あの引き籠りにそんな度胸はねぇはなあ。一蝶じゃあるまいし」

 

実は結構、一蝶は女にもてたのだ。

まあ、顔も女みてぇに綺麗な部類だったし、俺と違って気もきくし。

始め、洛陽に居たころはもてていた、、、、ヤローに会ってからは妙な性癖に目覚めて、そんなことは無くなっちまったが。

まあ、今となってはどうでもいいことか、そう思い、もう一度茶店の方を見て思う。

 

「あの女、見たことあんな。確か、公なんとか、だったけか?連合の時、いたような、いなかったような」

 

そんなことを考えていると、突然俺の体に振動が来る。

 

ドンッ

 

「あっ」

 

「あぁ?」

 

見れば、ガキが一人、俺にぶつかってきていた。

 

「あっ、あの、っっ」

 

視線を落とすと、さっき露店で見た白くふわふわした謎の菓子がガキの手に持った棒から取れ、地面に落ちていた。

 

「もう、これは食えねぇな」

 

ガキは俺の顔と地面に落ちた菓子を交互に見ながら、泣きそうになっていた。

俺はガキを起こしてやると、自分の懐に手を突っ込み財布を取り出す。

 

「悪りぃな、テメーの菓子、地面に食わしちまった。これで次は三色盛りにでもしてもらってくれ」

 

財布に入ってた金をあるだけ乱暴につかみ取り、ガキに握らせると立ちあがり歩いて行く。

後ろから、ガキの礼の声が聞こえた気がしたが、まぁ、関係ねえ。

 

「ふぁぁ、ねみ。あ?」

 

ふと、服を見るとぶつかった時に着いたのだろうか白い菓子が一つまみ付いていた。

多少、砂が付いているが気にせず口に放り込む。

 

「うわ、甘めぇ。んだこれ?砂糖でもできてんのか?」

 

思った以上に甘ったるく、何か飲みたくなってから呟く。

 

「取りあえず、飯どうすっかな。一刀か逆狗にでも奢らせるか」

 

獅堂はそう言って町の喧騒に消えて行った。

 

そして、実は獅堂の様子を見ている一人の者がいたのだが、彼はそれを知りはしない。

 

「、、、、、、、、ふん」

 

さて、三度、獅堂と殺し合いを演じた彼女は獅堂の姿を見てどう思ったのだろうか。

 

 

 

 

「「「悪い(悪りぃ)。飯奢ってくれないか?」」」

 

「はい?」

 

「あぁ?」

 

「三人もと、金ないのか?」

 

 

 

 

場所は変わり、洛陽、場内、元真天城。

 

嘗て一人の魔王が支配していたその城の中に今は三人の王が居た。

 

「じゃあ、後、報告はあるかしら?」

 

「はい!えっと、明日の天下一品武道会のことなんですけど、三人予選を突破した人がいるそうですよ?今、亜莎ちゃんと朱里ちゃんが一緒にその調整をしてるって。私からはそれぐらいかな?」

 

「へぇ、結構やる者もいるじゃない。大戦を生き抜いた三国の精兵を倒すなんて、まあ、私の子達に勝てるとは思わないけど」

 

「そうね、明日の天下一品武道会。楽しくなりそうでなによりだわ。それより、雪蓮、貴方からは何かあるかしら?」

 

「いいえ、何もありませーん」

 

「そう、ならこれで終わりね」

 

「取りあえず、一日目は無事に終わりましたね」

 

「みんな、お疲れ様」

 

三人の王たちの言葉と共に、その場に居た全員が動き出す中、呉の王は他の二人の王を呼び耳打ちする。

 

「そう言えば、まだ報告なんてする段階じゃないだろうけど、妙な話が入ってきてるわ」

 

「妙な話、何かしら?」

 

「なんでも、妙な輩がいたらしいのよ。白い服を着た道士風の男たちが何人か、裏路地で集まって何かやっていたとかいう話が入ってきてるのよね」

 

「でも、お祭りですし。少し浮かれちゃっておかしな格好をしている人たち普通には居ますよ?私もお店の前をお腹を空かせた様子でトボトボ歩く、謎の仮面の三人組を見ましたもん」

 

「そうね、まあ、まだそこまで警戒はしなくてもいいと思うけれど。雪蓮、一様、見周りの強化をお願いしてもいいかしら?」

 

「ふふん、もうしてあるわよ。思春と明命に命じてあるわ」

 

「流石です!雪蓮さん」

 

「それほどでもあるわよ!桃香」

 

「まあ、じゃあ何かわかったら私と桃香の二人に報告してちょうだい」

 

「ええ、わかったわ。華琳」

 

 

 

 

場所はまたしても変わり、洛陽の裏路地。

 

「増」

 

道士服を着た一人の男がそうつぶやくと、白い服の男たちが虚空の中から現れる。

 

「ふ、ふふ、はははは。ああ、待っていてください、北郷一刀。必ずや、私が今一度、貴方を黒天へと導く、一匹の蝶と成り果てましょう」

 

死んだ筈のその男の顔には、昔と変わらぬ思い人を思う笑みが浮かんでいた。

 

 

黒天を飛んだその蝶は、再び舞い戻り、晴れた黒天を飛び狂う。

姿を変えて、その名も、于吉と、変え果てて。

 

 

 


 
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