真・恋姫†無双~赤龍伝~第56話「落日への足音」
その日の軍議の際、呉郡太守の許貢が、曹操に内応する動きを見せているとの報告が入った。
赤斗(許貢!…………ついに来たか)
雪蓮「許貢……」
雪蓮の身体が怒りで震えている。
赤斗「雪蓮?」
雪蓮「許貢を討つわよ!」
一同「御意!」
雪蓮「私たちを裏切った事、後悔させてあげるわ」
赤斗「…………」
赤斗「冥琳」
軍議が終わり、廊下に出た冥琳に赤斗が声をかける。
冥琳「どうしたのだ?」
赤斗「……冥琳。大切な話があるんだ」
冥琳「…………なら、私の部屋に行こう」
赤斗の真剣な顔を見た冥琳は、何が重大な事を伝えようとしていると察してくれた。
赤斗「ありがとう。あと、藍里も呼んでおいてくれないか」
冥琳「分かった」
赤斗と冥琳と藍里の三人は、冥琳の部屋に集まった。
冥琳「この忙しい時に、わざわざ我らを呼びだすのだから、よほど重要な話なのだろうな?」
赤斗「……まあね」
藍里「いったい、どうされたのですか?」
冥琳「まさかとは思うが、許貢討伐を中止しろとは言わないだろうな」
赤斗「…………雪蓮の命が危ない」
藍里「っ!」
冥琳「どういう事だ?」
赤斗「天の知識だ。……近々、孫策は暗殺される。きっかけは……許貢討伐」
冥琳「それで軍議中、上の空だったのか」
赤斗「どうすれば、雪蓮暗殺を阻止できるか考えていた。火蓮さんの件もあるしね」
藍里「それは、いつ起こるのですか? 分かっていれば防げるのでは?」
赤斗「分からない。許貢討伐後に暗殺が起こる事になっているけど、天の知識とは多少の誤差があるから、もしかして、許貢討伐中に起きる可能性だってある」
冥琳「なるほど」
藍里「なら、これから雪蓮様には、お一人や少人数での行動は謹んで頂きましょう。あと、雪蓮様の護衛を増やしましょう」
冥琳「うむ。風見、お前も護衛に回ってくれるか」
赤斗「了解。……きっと守ってみせる」
雪蓮暗殺を阻止すると、赤斗は強く心に誓った。
その後、雪蓮は許貢がいる呉郡へと兵を率いて攻め込んだ。
赤斗は、呉郡を攻め込んでいる間、ずっと赤斗は雪蓮の傍を離れなかった。
雪蓮「赤斗。ずっと私の傍にいるけど、どうしたの?」
赤斗「別にどうもしないけど」
雪蓮「そう。……なんだか護衛の数も、いつもより多いようだけど。何か知ってる?」
赤斗「雪蓮は王様なんだから、護衛の数が多いのは当たり前だよ」
雪蓮「……赤斗。何か隠してるでしょ?」
赤斗「何も隠してないよ。僕が雪蓮の傍にいるのは、雪蓮が心配なだけさ」
雪蓮「ふふ……ありがとう。けど、そんな心配は無用よ」
赤斗「そうは言うけど……心配は心配だよ。それに……また、鴉のような奴が現れるとも限らないだろ」
雪蓮「大丈夫よ。その時は返討ちにしてあげるわ」
赤斗「…………」
数日後、雪蓮たちは許貢を討ち居城へと戻った。
冥琳「許貢討伐は何事なく終わったな」
赤斗「そうだね。……とりあえずは良かった。でも、本番はこれからだよ」
居城へと戻った赤斗たちは、再び冥琳の部屋に集まっていた。
藍里「引き続き雪蓮様には、お一人や少人数での行動を謹んで頂く必要がありますね」
赤斗「それなんだけど、雪蓮が勘付き始めている。護衛の数が多くなっている事も気にしている」
冥琳「勘の良い子だからね」
藍里「いっその事、雪蓮様に事情を説明しますか?」
冥琳「それは駄目だな。そんな事をしたら雪蓮の事だから、返討ちにするなんて言いかねないからな。それは危険すぎる」
赤斗「確かに……言うな」
冥琳「今は現状維持だな」
藍里「はい」
赤斗「分かった。僕も雪蓮の護衛を続けるよ」
冥琳「うむ。頼んだぞ」
同時刻。
――呉郡――
許貢の残党①「これから、どうするんだよ」
許貢の残党②「決まっている! 許貢様の仇を討つ」
許貢の残党③「だが、どうやって孫策を?」
許貢の残党②「うーーーん」
生き残った許貢の残党たち数人が、孫策に討たれた許貢の恨みを晴らそうとしていた。
玄武「お困りのようですね」
許貢の残党④「誰だ!」
玄武「ご安心ください。あなたたちの敵ではありません。それよりも、許貢殿の仇を討ちたいのならば、曹操様のもとにおいで下さい」
残党たちのもとに玄武が現れた。
許貢の残党①「曹操のもとにだと?」
玄武「はい。きっと曹操様なら、お力を貸して下さるでしょう」
許貢の残党②「本当か!」
玄武「はい」
許貢の残党②「なら行くぞ! なあ?」
許貢の残党③「応さ!」
許貢の残党①「必ず許貢様の仇を討つぞ!!」
許貢の残党全員「おおーー!」
玄武「ふふふ……」
何の疑いもなく提案に乗った残党たちを見て、玄武は黒い笑みを浮かべていた。
つづく
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この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に
脱線することもあります。また、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。