No.213647

そらのおとしものショートストーリー 脱衣(トランザム)

という訳で毎週水曜日の更新です。
今回は鳳凰院兄妹です。サービス回です。それ以上言うこともないですね。
口直しにムッツリーニ×愛子もあげときます。
そして次回はカオスです。

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2011-04-27 00:57:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3494   閲覧ユーザー数:3147

 

「鳳凰院・キング・義経っ! 今日こそ本気で決着をつけてやる。脱衣(トランザム)っ!」

 掛け声と共に智樹の全身が眩い黄金の光に包まれその衣服が一瞬にして吹き飛ぶ。

 後には雄々しく地面に降り立つ全裸の少年の姿があった。

「Mr.桜井。それは僕の台詞だよ。君の存在を認める訳にはいかない。月乃の為にもね。脱衣(トランザム)っ!」

 義経もまた掛け声と共に一瞬にして衣服を吹き飛ばす。

 赤いオーラに包まれた全裸の義経が智樹の前に雄々しく現れる。

 2人の男は空美学園の校門の前で、しかも下校生徒が多く存在する中で誇らしげに裸(ら)を晒していた。特に帰宅する女子生徒たちに向かって己が雄姿を誇らしげに見せ付けている。鼻息は荒く、2人のパワーは最高潮へと導かれていく。

「お兄さまもエテ公さまも私の為に争わないでぇ~っ!」

 悲劇のヒロインチックに金切り声を上げるブロンドの長髪をした少女。

 義経の妹である鳳凰院月乃は自分が置かれたこの状況に相当酔っていた。

 

 

そらのおとしもの二次創作ショートストーリー 脱衣(トランザム)

 

 

 月乃にとっての不幸、智樹にとっての迷惑、義経にとっての憤怒な出来事が巻き起こったのは、10日前のとある春の日のことだった。

 その日も智樹と義経は脱衣(トランザム)して戦っていた。

 それはもうごく日常と化した風景だったので気にする者は誰もいなかった。

 兄を愛して止まない月乃が義経の応援をしているだけで、イカロスさえ立ち会っていない無観客決闘だった。

 だが、観客はいなかった代わりに1台の高級車が2人の決闘している川原の横を通りかかった。

 そしてその車は智樹たちを見て停まった。

 後部座席が開き中からスーツ姿の中年男性が降りてきた。そしてその男性は智樹の顔を見るなりこう言った。

「娘に全裸をそんな激しく見せ付けているとは……君、鳳凰院家のしきたりに従って娘の婿になりなさい」

 男は鳳凰院グループの現会長であり、義経と月乃の父親だった。

「「「はぁ?」」」

 3人は父親の言葉に激しく反論した。

 月乃は智樹のことを猿程度にしか考えていない。

 智樹は自分をバカにしきっている月乃のことを快く思っていない。

 そして義経は智樹に激しいライバル心を燃やし、なおかつ月乃を溺愛しているので2人の結婚に賛同するはずがない。

 しかし、義経と月乃の父親は2人の父に相応しいそっくりな性格をしていた。即ち、人の話をまるで聞かない人間だった。

「鳳凰院家の娘は、初めて全裸を激しく晒してきた男の下へ嫁に行かねばならんと先代の頃から決まっている」

 割と浅い歴史だった。

鳳凰院家は五月田根家や守形家に比べると家を興してからの時間は短く所謂成金だった。

 人間金を得られるようになると今度は格を欲するようになる。鳳凰院家も例に漏れず、家の風格を上げるために謎なしきたりが量産されていた。

「しかし、父上。いくらMr.桜井は僕のライバルとはいえ、所詮はただの庶民。月乃の嫁には相応しくありません」

「義経よ。お前にはわからないだろうが、私は社交界デビューを果たした時に庶民の子、庶民の子と散々バカにされてきた。だから私は庶民の子の何が悪いと開き直ってやった」

「父上……」

 義経が言葉を詰まらせる。

 義経は空美町の住民を庶民と呼んで散々バカにしてきたが、自分の父にそのような過去があったとは知らなかった。

「だから庶民をバカにするものではない。というわけで月乃の婿はこの少年にする」

 そして父親はやっぱり人の言うことを聞かない性格だった。

「お父さまっ、そんな一方的に結婚を決められては私の気持ちはどうなるのですの?」

「気持ちなんて後から付いてくるさ」

 だから人の話を聞かない親子だった。

「君、名前は何と言う?」

「桜井、智樹ですけど……」

「智樹くん、娘をどうか幸せにしてやってくれ」

 初対面の少年に深々と頭を下げる父親。だから人の話はまるで聞く気がない。

 3人は視線を交錯させる。

 このままでは無理やり結婚させられてしまう危機であることはすぐに一致した。

 何としてもこの縁談を壊さないといけない。

 だが、半端な意見ではこの父親には通じそうもない。

 何か、大掛かりな話が必要だった。

 そして義経は一発逆転の秘策を思いついた。

「父上、Mr.桜井が月乃の婿に相応しい力量を持つ男かどうか試験しましょう」

「試験?」

 試験という言葉に父親は心引かれたようだった。

「月乃の夫ともなれば、鳳凰院グループの一角を担う人材です。それに相応しい力量を持つ男でなければ、グループは瓦解してしまう可能性すらあります」

「それは一理あるな。だが、どうやって力量を測る?」

「簡単です。この義経を倒すだけの力量があれば、月乃の婿として十分な男と証明できましょう」

 というわけで月乃を賭けて智樹は戦いを挑むことになった。

 ルールは10日以内に義経を1度でも倒せば智樹の勝ち。

 月乃と結婚する意思のない智樹は義経に勝つつもりはまるでなかった。ところが、形だけとはいえ毎日の戦いに敗れ続け

「無様だね、Mr.桜井。庶民の君に相応しい惨めな姿だよ」

 バカにされ続けている内に智樹の堪忍袋の緒はたやすく切れた。

 そして10日目に当たる今日、智樹は本気で義経に戦いを挑んでいた。

 

「やはり今日確信したよ。本気の君をけちょんけちょんにしている時が僕の人生で最も充実している時だとね」

「相変わらず性格悪いな。だが、お前のツラが苦痛で歪む様を見ていると喜びが込み上げて来るのは俺も同じだ」

 智樹と義経の激しい戦いは続く。

 2つの裸(ら)が校門の前でワルツを踊るように巡り回っている。

 耽美 is best.

 だがその2人の戦いにも終止符が打たれる時がやって来た。

「チッ、脱衣(トランザム)の持続時間が30秒を切りやがった。次で決めるしかねえな」

「Mr.桜井。君に完全敗北を与えてあげるよ」

 後30秒経てば智樹はエネルギー切れになって敗北となる。敗北となれば月乃との結婚はお流れになる。

 それは3人が望んだ結末。

 だが、2人の漢は己が全てを賭けて相手の存在を倒そうとしていた。

「もごもご。お兄さまもエテ公さまも頑張ってぇ」

 智樹をバカにする為に持ってきたバナナを頬張りながら勝負の行方を見守る月乃。

 簡単に言えばもう飽きていた。

 しかし、そんな移ろい易い少女の心とは別に漢たちのテンションは最高潮に盛り上がる。

「勝負を決めるぞ、鳳凰院っ!」

「勝負だよ、Mr.桜井っ!」

 全身全霊を賭けて己が倒すべき敵に立ち向かっていく2人。

 そして──

「月乃、勝負はどうなっている?」

「あっ、お父さま」

 父親に呼ばれた月乃は手に持っていた2本のバナナの皮を放り投げた。

 放り投げられたバナナは全力疾走を続ける2人の足元へと転がっていき──

「「うぉおおぉっ!?」」

 2人の戦士の足を滑らせて

「「マッスルドッキングっ!?」」

 新たなる悲劇を生んだ。

 重なり合う若い肢体と肢体。

 絡み合う若い身体と身体。

 淫らな、とても淫らな風景。

 そのあまりの絡みっぷりに、義経の父は

「義経と智樹くんがそんな絡み合う仲だとは知らなかった。無理やり月乃を嫁にやろうとしたことを許してくれ」

 と涙を流しながら謝罪した。

 そして──

「義経と智樹くんの結婚を認めよう」

 最悪な選択肢をのたまってくれた。

「父上、僕は女の子が好きなんですよ!」

「俺もだ!」

「却下」

 とどめに人の話を全く聞かない人だった。

 こうして智樹と義経は夫婦になったという。

 

 めでたしめでたし

 

 そらのおとしもの True End

 

 

 


 
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