No.213635

月の詩~そして僕らは月に唄う-epilogue-~

月千一夜さん

こんばんわ
≪月の詩≫
これにて完結ですw
ここまでのご愛読感謝ですw

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2011-04-27 00:06:49 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:9077   閲覧ユーザー数:7032

『許さないから』

 

 

 

夜風は、冷たい

だから、閉めたはずの窓

それが開いている

 

 

『そんなこと、俺は許さないよ』

 

 

フワリと、風が頬を撫でる

どこか、心地の良い風が

その風の行く先に、開け放たれた窓に

 

 

『月は落ちないし、世界はいつだって残酷かもしれない』

 

 

“彼”はいた

夢でいい

夢でもいい

“彼”が、私の前にいる

それだけでいい

 

 

『けど、俺がいる

君がいて、皆がいて

それでいい

それだけでいい

たったそれだけのことで、世界はこんなにも色鮮やかに見えるんだから』

 

 

夢か、幻か

窓に座る“彼”は笑う

 

“遅いのよ、馬鹿”と、言いたい言葉を呑みこんで

私も笑った

 

 

 

 

 

『ただいま・・・“華琳”』

 

 

 

 

 

色褪せた、寂れた世界

その世界に今、白い光が・・・優しく灯った

 

 

 

 

 

 

≪月の詩~そして僕らは月に唄う-epilogue-~≫

 

 

 

夢を見た

とても、幸せな夢を

 

もう絶対に有り得ない・・・存在するはずのない“物語”

 

彼が消えることなく、私たちの傍で笑ってくれる

そんな“夢物語”を

 

私はまた・・・夢にみていた

 

 

「ふふ・・・」

 

 

それは、本当に可笑しくて

思わず笑いを零してしまうようなものから

普段の“あの娘達”からは、あまり想像もできないような姿まで

様々な“幸せ”を写し出す、私の願望が生み出した“物語”

 

 

 

 

「馬鹿ね・・・」

 

 

言って、小さく笑った

“在るはずのない物語”

言ってしまえば、これらは全て・・・私の思い描く“妄想”だ

無様な、本当に無様な私が生み出した“虚構の世界”

 

 

「ふふ・・・本当に、無様だわ」

 

 

目を覚ます直前

最後に見た夢を思い出し、私は笑う

 

彼が・・・一刀が帰ってくる夢

私の願望が生み出した浅ましい夢

 

だけど、嬉しかった

たとえ夢の中でも、彼は帰ってきてくれたのだから

 

それだけで、私は嬉しかった

 

 

「けれど、もう駄目ね」

 

 

もう駄目

もう・・・待てないわよ、馬鹿

貴方を想うだけで、こんなにも苦しいの

こんなにも、辛いのよ

だから・・・

 

 

 

 

「私は、一刀に会いに行く」

 

 

取り出した短刀を喉にあてがい、私は微笑む

もう限界だった

待つのも、待たされるのも

 

だから、会いに行く

 

月が落ちてこないというのなら

私は自分で、月までいこう

この寂しい世界から飛び立とう

そうして、貴方に会いに行く

 

その時は、私のことを迎えに来てほしいの

誰よりも早く、私に見せてちょうだい

 

貴方の・・・あの、太陽のように温かな笑みを

 

 

 

 

 

「一刀・・・」

 

 

 

 

 

 

≪許さないから≫

 

 

 

 

 

「ぇ・・・?」

 

 

“フワリ”と、髪を風が撫でる

おかしい

私は、窓を開けた覚えなどないのに

いや、それよりも・・・

 

 

 

「そんなこと、俺は許さないよ」

 

 

 

この“声”は、いったい誰のもの?

 

ああ、違う

わかってる

“知っている”

この声を、私はきっと誰よりも知っている

 

 

 

「月は落ちないし、世界はいつだって残酷かもしれない」

 

 

 

ありえない

これは、夢の続き?

そう思い、首を横に振る

 

違う

 

この温かさが、この気持が

夢なはずない

 

 

 

「けど、俺がいる

君がいて、皆がいて

それでいい

それだけでいい

たったそれだけのことで、世界はこんなにも色鮮やかに見えるんだから」

 

 

 

優しい風が、髪を撫でる

その風が向かう先、開け放たれた窓

そこに座る・・・“白い光”

手が、いや全身が震える

 

“遅いのよ、馬鹿”という言葉を呑みこみ

私は震えをおさえようともせずに、微笑んでいた

 

それは、本当にいつ以来からか忘れていた

“華琳”という、一人の寂しがり屋の笑み

そんな私の笑みを見て、彼もまた笑みを浮かべていた

屈託のない、無邪気な笑み

でも、少し大人びた・・・優しい笑顔を

 

 

 

「ただいま・・・華琳」

 

 

 

そうして、彼はまた笑ったのだ

一言

たった一言“ただいま”と、そう言いながら

 

あふれ出る想いを、涙を止めようともせず

私は目の前の彼に向い手を伸ばす

 

夢だと思った

幻だと疑った

けれど、触れた手に伝わる温もりが教えてくれる

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい・・・“一刀”」

 

 

長い間、光を失った世界

真っ暗な、光のない世界

 

そこに、ようやく光が灯った

 

 

 

白く、優しい光が・・・

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

 

 

 

 

「そうして、寂しがり屋な少女は再会したのです

白き光を纏う、愛しい彼と・・・」

 

 

“パタン”と、本が閉じられる

古ぼけた、分厚い本が

その本を閉じた女性は“ふぅ”と息を吐きだすと、自身の膝に頭をのせる幼い少女の頭を撫でた

 

 

「これで、この物語はお終いよ

どうだったかしら?」

 

 

言って、彼女は微笑む

それに対し、少女はパァッと表情を明るくさせる

 

 

「とても面白かったです、お母様」

 

「そう」

 

 

“なら、よかったわ”と、女性は笑う

そんな彼女の膝から頭を起こし、少女は少しだけ不思議そうに首を傾げる

 

 

「でも、おかしいです

城内にある書庫は勿論、城下にある書店もすべて読みつくしたというのに

そのような本は、今まで見たことがありませんでした」

 

「当然よ

だってこの本は、私の宝物なのだから」

 

「宝物、ですか?」

 

「ええ、そうよ

この本はこの世界に一冊だけ・・・これしかないの」

 

「そうですか・・・残念です

私も、欲しかったのですが」

 

 

言って、シュンとなる少女

その姿を見て、女性はクッと笑いを堪えたあと・・・その本を、少女の頭の上に乗せた

 

 

「なら、あげるわ」

 

「いいのですか!!?」

 

 

驚きのあまり、少女は思い切り顔をあげる

その拍子に危うく落ちそうになる本を抱え、ジッと何かを期待するような目で女性を見つめていた

 

 

「いいわよ

元々、貴女にあげる為に持ってきたのよ」

 

「私に・・・何故ですか?」

 

「あら?

もしかして、本当に覚えていないの?」

 

「・・・?」

 

「ふふ・・・どこか抜けているのは、“彼”に似たのね」

 

 

言いながら、少女の手に触れる

それから、彼女は優しく微笑んだ

少女ではない

その“背後”に、視線を向けながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「誕生日おめでとう、“子桓”」

 

 

不意に、聴こえてきた声

その声に、少女はバッと背後へと振りかえる

そしてそこにいた“一人の男”の姿を見つめ、今までにないくらいの笑顔を見せたのだ

 

 

「お父様っ!」

 

「おっと・・・」

 

 

勢いよく駆け出し、少女は男の胸元へと飛び込む

それを、男は苦笑しながら受け止めた

 

 

「今日は、私の誕生日だったのですね

すっかり忘れていました」

 

「そうだよ

今日で子桓が生まれてきて、十年の月日が経ったことになるな」

 

 

“時間が経つのは早いなぁ”と、彼は感慨深げに微笑む

そして、少女の頭を撫でながら女性へと視線をうつす

 

 

「ごめん、ちょっと遅くなった」

 

「構わないわ

貴方のことだもの・・・色々、準備に戸惑っていたのでしょう?」

 

「まぁね」

 

 

そう言って、彼は笑う

それから、少女の手を握った

 

 

「さぁ子桓、行こうか

皆が、子桓のことを待ってるよ」

 

「はいっ!」

 

 

その手を握り返し、少女は笑った

少女の笑顔は、眩いほどに明るく・・・彼は、つられて笑う

そんな彼の様子にまた、女性も笑っていた

 

 

 

「お母様、早く行きましょう!」

 

「はいはい」

 

 

少女の言葉に、頷く女性

彼女はそれから、視線を男へと向ける

その視線に気づき、男はフッと表情を緩めた

 

 

 

 

 

「さぁ、行こう・・・“華琳”」

 

「ええ、そうね・・・“一刀”」

 

 

 

 

優しい風が、三人の間を吹き抜けていく

その風が撫でる、一冊の本

少女が抱きしめる、古ぼけた一冊の本

 

 

≪月の詩≫

 

 

それは、一人の少女が月に願った物語

それは、一人の青年が月に唄った物語

 

“月”を挟んで、紡がれていった

 

 

二人の想いの物語

 

 

やがて二人は唄うのだ

 

いつか見た、月を見あげ

今度は共に、肩を並べ

微笑みながら、唄うのだ

 

 

 

終わることのない・・・この、“月の詩”を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪月の詩~そして僕らは月に唄う-epilogue-~≫

 

    Fin♪

 

 

 

☆あとがき☆

 

皆さん、どもです

月千一夜です♪

 

ここまでのご愛読、まことにありがとうございました♪

これにて今回の物語≪月の詩≫は、終わりを迎えました

 

月に願った少女と、月に唄った青年の物語

いかがだったでしょうか?

 

まぁ、また飽きもせずに魏√afterかよとか言われそうですがwwww

細かいこと気にしちゃ、メッ!ですよ☆

 

 

いやぁ、色々な作品を書いて来ましたが最後にお願いですw

今回の短編なんですが、できればでいいんで一言ご感想と“これが一番お気に入りww”という作品を教えてほしいのです

カオスからホッコリから色々あって難しいかもしれませんがww

 

そして、不完全燃焼である(ぇ

挿絵が・・・挿絵が、間に合わなかったです

今度、別個に投稿しますwwwww

それではみなさん、今後ともよろしくお願いしますwwwwww

 

 

 


 
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