No.213180

仮面ライダーEINS 八之巻 響く魂

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。

執筆について
・隔週スペースになると思います。

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2011-04-24 08:30:00 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:455   閲覧ユーザー数:451

若くして鬼籍に入られた神戸 みゆきさんに哀悼の意を捧げます。ご冥福をお祈りします。

 

 

ヒビキさん

鬼に姿を変えて人助けをするその男の人と出会って、僕安達明日夢の夢は医師になると決めました。

そして医師になるべく学園都市で、僕はもう一人の男の人に出会いました。

 

 * OP:輝 *

 

八之巻 響く魂

 

 

――弐〇壱壱年十月三日 午後一時十七分

――学園都市 理系学区 機械工学部

 ヒビキは鬼になった。

修行により心身を鍛えることにより発現するその力も姿も、まさに鬼そのものだ。

響鬼となった彼は静かに三体目……毛むくじゃらの怪人に歩いていく。

「お兄さん、あっち頼める?」

「了解!」

 スプラッシュフォームの跳躍力で一気に距離を縮め、響鬼の登場でそちらに集中していた男性体の頬に、スティックでの一撃を加える。

同時に響鬼も二振りの音撃棒を腰から取り出し、先端の鬼石に向かって気合いを込める。

「はぁぁ……」

 鬼石の先端に炎が灯り、あたりは高温の空気に支配される。

「破っ!!」

 炎弾の連射。毛むくじゃらの動きは止めてくれるそうだ。

その隙にアインツは一騎に男性体を仕留めにかかる。

流れるような連撃。加えて弾けるが如くの打撃。名は体を表す。それがスプラッシュフォームの戦い方だ。

「同じ武器とは奇遇だね」

「一応長い杖なんですがね!」

 ロッドモードと同じく流れるような連撃は男性体を一気に畳みかけ、大きく吹き飛ばした。その間に男性体の口から液体が飛び跳ねた。

(白い血?)

 人間であるなら赤い血が飛び出すはずが白い液体が染みている。

タイプセルでもこのような現象になることはあり得なかった。唯一考えられるのはサイボーグ用に研究開発されているホワイトブラッドだ。しかし試験段階おろか人工透析機を常に利用しなければならない欠陥品なので実装されているとは思えない。

「人間じゃないってことか!?」

 導き出された証明はそういうことである。加えて響鬼と呼ばれた仮面ライダーは彼らの情報に詳しかった。人間と敵対もしくは人間の天敵と言うことか。

「むやみに命を絶つのは気が引けるな」

『一騎!捕獲して!捕獲!!』

「え、無茶言うなぁ……」

 地面に倒れ込んだ男性体は戦闘不能のようだ。だが目の前の男性体の変化に思わず目を見張った。

「え!?」

 確かに目の前の男性体は土くれに変わった。否、土に還ったと言うべきなのか?思い出してみれば女性体も姿が見えない。同じく土に還っているということか。

『え?折角献体取ろうと思ってたのに……』

 サイエンホリックの二人は違う場所でほぼ同時に肩を落とすのであった。

「お兄さん!援護して貰っていい!?」

 毛むくじゃらを忘れていた。声の主である響鬼は触手の連撃に手を焼いていた。

響鬼の言葉に我に返り、アインツコマンダーを開く。

8――8――8――

 

――超変身!!

『BLASTFORM』

 

 青い光に包まれたアインツは走りながら、緑のスプラッシュから青のブラストに。ブラストアクスガンを掃射しながら毛むくじゃらに一気に吶喊する。

「ちょ、気をつけて!あいつ消化液吐いてくるから!」

 響鬼の忠告と同時に消化液が発射される。しかし消化液は光のリングに弾かれ、変身終了と同時に開かれた口の部分にエネルギー弾を打ち込んだ。

これに驚いた……というか想像以上にダメージがあったのだろう。毛むくじゃらの怪人は地をはねるように撤退を始めた。

「ああ!」

「やばい!」

 その隙にもエネルギー弾と炎弾を双方発射するが路地に回り込むように撤退を完了した。それに仮面ライダー二人は悪態をつくのであった。

 

 

――弐〇壱壱年十月三日 午後三時零分

――都市立大学病院

――442室前

「容態は?」

「うん、脳震盪だけ。強く頭を揺さぶられているから首を痛めているかもしれないけど……命に別状はないよ」

 亜真菜によると先ほどの女生徒は一日様子を見るようだ。ひとまず無事だったことに安堵の息を漏らす。

「やっぱり……そっち系に巻き込まれて?」

「うむ。だが今日はだいぶ勝手が違う」

 思わず視線をヒビキと、続いて明日夢に向ける。明日夢は落ち着いて見えるが内心複雑な心境で入り乱れているだろう。

「だから僕まで出しゃばる羽目になってね」

 晴彦は今駆けつけたようだ。

今回の事件に関してアインツチームは情報がなさ過ぎる。そう簡単に情報を開示してくれるとは考えていないが聞くだけ聞いてみようというのが二人の考えだ。

「あ、やっぱ……話さないといけない?」

 あまり話したくない。そんなニュアンスに聞こえた。

「今重要なのは相手の行動です。貴方のことを聞いているわけではありません。こっちもいくつか秘匿事項もありますので」

「いや、教えないと、その……学園都市から出られない?」

 なるほど。今ヒビキは学園都市という化け物の胃袋の中にいる。やろうと思えばいくらでも出られると思うが、強硬はしたくないのだろう。加えて彼ら鬼と呼ばれる仮面ライダーの事情もあるだろう。

「出られます。けど貴方は今の状況を放っておかないはずです」

 一騎の直感だ。

ヒビキと自分は同じという感覚があった。だからこう言えば彼は協力してくれる。そう確信していた。

言葉の詰め将棋に最初から敗れていたヒビキはため息を一つ入れはっきりとしゃべり始めた。

「あいつらは魔化魍。古代から人間を捕食する生物として人知れず存在してきた。どれくらい前かは分からないけど……多分日本人が文明を持ち始めた付近から既に存在が確認されている」

「そんなに昔から?」

 思わず晴彦が声を上げた。

現代において古代の事は一切分からないと言っても過言ではない。それこそ文明を持ち始めた時代には文字はおろか、その文字を残す媒体も存在しにくいのだ。

「ということは口伝で伝わっていると云うことですか?」

「ご名答。今学園都市にいるのはオオナマズっていう個体だ」

「オオナマズ……魚類を想像させる割には毛むくじゃらの怪人が出てきたな」

 先ほど交戦した三体目の怪人。文字通りの毛むくじゃらであったが、あれがオオナマズなのだろうか。

「あー、アレは胃袋らしいね。本体はアンコウって感じで……地下の水路や地底湖で育ち10mくらいまで成長するかな?」

「10m!?」

 今までアインツが相手してきた中でも一二を争う体躯だ。晴彦が驚くのも無理はない。

「そんなに驚くサイズでもないだろう。ましてや水の中にいる生物なんだ。でかくなっても不思議ではない」

「とりあえず、こっちは奴を探してみます」

 ヒビキが一騎に向き合いシュッと敬礼のようなポーズを取る。

「分かりました。こちらも全力でサポートします。手伝わせてください」

 そう言って一騎はサムズアップをヒビキに差し出した。

二人のそれぞれの仕草を見て、仮面ライダー二人は笑いあうのであった。

 

 

――弐〇壱壱年十月三日 午後四時十分

――都市立大学病院 中庭

「どうした、安達君」

「雨無先生……」

「ヒビキさんなら魔化魍を探しに行ったよ。こういうときは専門家がいると助かる」

 情報戦ならばアインツである一騎より、ディスクアニマルを行使できるヒビキと、監視カメラを確認しなれている晴彦が適任だろう。

何よりヒビキに明日夢のことを気にかけてくれと、ついさっき頼まれたのであった。もちろん明日夢は自分の研究室に配属希望なのだからもともとそのつもりであった。

「僕は……かつてヒビキさんの弟子にしてもらって鬼になる修行をしていたんです」

「ほう」

 初耳だ。とはいえ人に話すような内容でもない。一般人ならば魔化魍はおろか鬼や仮面ライダーの話は聞かず感じずに過ごすことが大半かもしれない。

彼がそんな都市伝説にどうやって出会いどうやって目指したのか。

「けど……僕は医師を目指しました。その時、もう一人の弟子に随分怒られて……絶交しちゃったことがあったんです」

「今は?」

「今はもう和解したんですけど……彼に夢を押しつけてしまったと感じるときがあるんです」

「その夢は……鬼になるって夢?」

 明日夢は力なく傾いた。

「持田が襲われて……鬼になったほうがよかったんじゃないかって少しでも思っちゃって……せっかく仲直りした彼をまた裏切っちゃった気がして……」

「他人の夢を叶えることを夢にするのは悪い事じゃないと思う。ただ他人に自分の夢を押しつけることは絶対にダメだ。君は彼に夢を押しつけたのかい?」

「違います!」

 明日夢の強い否定。穏やかな彼の叫びにも似た声に一騎は優しく微笑んでいた。

「だったら大丈夫だ。俺だって他の人の夢を叶えようとしている」

 明日夢の肩を持ち、反対の手でサムズアップしてみせた。

明日夢には明日夢の、一騎には一騎の経験がある。だからこそ一騎は自分のしてきた経験で彼に伝えるべきだと感じていた。それが先に生きている人間の成すべき事なのだ。

「あの雨無先生は……」

 明日夢が一騎に問いかけようとしたとき、アインツコマンダーが着信を知らせる。

電話の主は晴彦だ。もしかしたら進展があったのかもしれない。明日夢には失礼だが電話に出ることにした。

「進展があったか」

『うん。今、G-6部隊に配備してもらった。それといくつか目星は付けて、ヒビキさんにも伝えたから。ヒビキさんは海の近くを探すって』

「海……プール……貯水施設か」

『淡水域にのみ生息できるという話は聞いていないね』

「ヒビキさんは海の方を探すから……俺たちは学園都市の中を探そう」

『了解。芸術学区と生産区にそれぞれプールがある。他には……』

「とりあえず思いついたのは流体の実験施設だ。あとは水産科だが……あそこは毎日人の目が入るからそこに巣を作るというのはありえないか……」

『何にせよ、可能性は全部潰していこう』

「OK、相棒。早い目に終わらせて和菓子でも食いに行こうぜ」

『ははっ、和泉さんも誘って?』

「もちろんヒビキさんも……安達君も誘ってさ」

 電話をそう締めた。さあ鬼という仮面ライダーを手伝うという一騎にとってはとても名誉な仕事が始まろうとしていた。

「よし、じゃあ行ってくる」

 そういって一騎は駆け出す。明日夢の師匠のように小さく敬礼し。

そんな一騎の姿が師匠と重なったせいか、明日夢は大声で彼に聞いてみた。

「雨無先生!雨無先生の叶えようとしている夢って!?」

「世界中の洗濯物が真っ白になるように、みんなが幸せになりますように!!」

 

 

――弐〇壱壱年十月三日 午後六時四十二分

――学園都市 理系学区 力学研究棟

――流体実験プール

「いないな……」

「雨無さん」

 地下に造られた流体実験に用いられるプール。主に雨水を備蓄し、様々な実験に使用するプールだが、そこにもオオナマズの姿は確認できなかった。

学園都市内のプールはだいたい調べ終えた。そこに学園都市の外も調べていた響鬼が合流した。

「一騎でいいですよ。年下ですし下手に気を遣わないでください」

「いや、一応さ。それに明日夢の先生だし」

「案外教師なんて『先』に『生』きているだけの者も多いですよ」

「いや、あんたからそんな感じは一切しないけどな」

「ははっ、ありがとうございます」

 歳を考えればヒビキは前線を退いてもいい年だろう。それでも戦い続けるのは後続にその戦い方を見せるためだろう。

「それにしても……どこにいるんだろうね」

「かなり広範囲を探さなければいけないのもネックですね。そもそもあの胃袋がどうやって地上に出てきたのか疑問があります」

「んー。多分マンホールとかじゃないかな?」

 学園都市もマンホールは多数存在している。

海に浮かぶ以上、都市に溜まる水は清めた後排水しなければならない。その浄水機能も早いわけではなく必然的に貯水施設が必要となってくる。

その思考を巡らせた結果、一騎の頭に一つの可能性……否確信が生まれた。

「俺としたことが……あるじゃないか、貯水施設がもう一個!」

『え、そんなのあったっけ?』

「機械工学部だ!最近水素燃料を実装したろ!それの排水施設だ!」

『あ、そういえば安達君達が襲われたのも!』

 灯台もと暗しとはよく言ったものだ。結局は最初の最初に戻っていた。

その排水施設はつい半年前に完成したばかりでほぼ全自動で稼働している。あそこなら人の目に付かない。

「急ごう!」

「了解です!」

 

 * *

 

――弐〇壱壱年十月三日 午後七時〇〇分

――学園都市 理系学区 機械工学部

――排水施設

 排水施設は学園都市の地下に存在していた。

既に変身を終えたアインツ・ブラストフォームと響鬼は地下に降り立ち、プールを眺めていた。それ自体はそんなに大きくないが、確かに大きな影が泳いでいるのが確認できる。

「デカいな……。確か、世界一デカい生物はキノコだったよな?」

『そそ、アメリカのミンガン州にいるヤワナラタケの菌床。15万㎡の面積に推定100tで1500歳くらいのご老人らしいよ』

「老人?」

『老菌?彼らの世界ではどう呼ばれるんだろうね?』

「ま、そんなサイズを相手取るより遙かにマシか」

 アインツがそう呟いた瞬間、オオナマズの胃袋が水中から飛び出した。なるほどよく見れば管で繋がっているのが見て取れた。

それを確認した以上弱点であるはずだ。アインツ・ブラストフォームはすかさずその管に射撃を行う。

声にならない音をあげた胃袋は胃袋に帰還を始める。先ほどの衝撃がそれほど苦手だったのか。

「随分あんたの攻撃を嫌がるな、あいつ」

「うーん。心当たりがありすぎて何とも言えないです」

 アインツほど複雑に絡み合った技術の結晶はないだろう。エネルギー一つをとっても複合しすぎてどれが魔化魍に有効なのかも分からなくなっていた。

だがそれを考える暇もなく今度はオオナマズ本体が水中から姿を現した。

今度は響鬼の番だ。取り出していた音撃棒に炎を灯し炎弾を発射する。アインツと違って純粋なそのエネルギーは炎に特化されており、オオナマズの腹に火傷をもたらす。オオナマズはその攻撃に体を捩るものの、そのままのしかかるように二人に墜ちてくる。

「やべ!」

 響鬼はこれを危険と察し回避を試みるがアインツの行動は違った。

8――8――8

 

「ライダーブラスト!」

『RIDERBLAST!!』

 

 アインツの攻撃が相手に有効であるならばそれを打ち込めばいい。超高速のエネルギー弾はオオナマズの10t近い巨体を撃ち飛ばした。

「やるねぇ!」

「響鬼さん!今です!」

「よっしゃ!」

 響鬼は腰に付けている装備帯から爆裂火炎鼓を放り投げ、地上をのたうち回っているオオナマズに吸着させる。吸着と同時に爆裂火炎鼓は巨大化を始め、巨大な太鼓ができあがる。

 

――爆裂強打の型!!

 

 幻想的な鼓動であった。

どういった過程でどういった目的で魔化魍が生まれるかは分かっていないが、鬼は魔化魍に音撃を打ち込んで彼らを"清める"。

そのせいなのかアインツが聞いている音は、幻想的で神性的で情熱的に聞こえていた。

 

――破ァ!!

 

 おおよそ30回ほど鼓動を数えただろうか。

響鬼がかけ声と共に同時に音撃棒を叩きつけた瞬間、オオナマズは土塊と化した。

 

 

――弐〇壱壱年十月四日 午前十時〇〇分

――学園都市 産業区 学園都市線連絡駅

 学園都市の玄関口。そこで一騎と晴彦そして明日夢が、ヒビキの見送りに集まっていた。

「それじゃ、お世話になりました」

「いえ、それはこちらの台詞ですよ」

 頭を下げたヒビキに驚いて一騎も慌てて頭を下げる。

「いや、俺一人の力じゃきっとあんなに早く魔化魍を倒すことは出来なかったよ」

「そう言ってくれると幸いです」

 そう言って微笑んだ後明日夢の背中を押し、ヒビキの正面に立たせた。

「明日夢。次会うときは医者になってるな」

「はい!」

 明日夢に昨日の翳りは一切無かった。

「これに懲りずにまた来てください。今度はとっておきのきびだんご、ごちそうします」

 そう言って一騎はサムズアップを、ヒビキはいつもの敬礼のポーズをしてみんなで笑いあうのであった。

 

 

 * ED:少年よ *

 

次回予告:次回予告

――力を貸しなさい

 

――え、兄さんと戦ったんですか?

 

――キバって行くぜ!

 

第九話 交響曲・過去の忘れ物


 
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