No.212308

真・恋姫†学園~新たなる外史の青春演技!?~現代入りと二人の将

青二 葵さん

やっと、投稿できました。
ラノベ風に描写をしていこうと挑戦していった結果がこれだよ。
気付けば、メモ帳64kb(あとがき含む)に…。

今回は、以前参加してくれた方々に引き続き。

続きを表示

2011-04-18 18:08:04 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:4410   閲覧ユーザー数:3837

 

「…………っ」

ふとした違和感。薄れていたであろう意識を取り戻しつつ、彼――――――北郷一刀は体を少し動かす。とりあえず、背中に固い床の様なものが当たっているので仰向けに倒れているのだと理解する。そして、瞼を開けようとするが少々の眩しさに半開きになる。だが、それもすぐ慣れて目を大きく開いていく。

「んちゅ~~~~~~~♪」

状況を整理しよう。俺は意識を失っていたっぽいが目を覚ますと目の前に黒光りする筋肉が目の前にあった。しかも、仰向けになっている俺の目の前で接吻の構えをしてるし、テカテカと唇が濡れてるっぽいし、それが目と鼻の先にある。つまりこれは――――――。

「あらん?起きてたの、ご主人――――」

「うおおおおファル〇ンパーーーンチ!!!」

「ノォオオオォォォォォッウッ!!」

危機を感じ取った瞬間に一刀は、拳が叫びと共に出ていた。

見事に顔面を捉えたその拳は、危機感ゆえか巨漢を少し飛ばす程の威力だった。あと、一刀の拳から火が出てきたように見えた気もする。

「危ねえ、貞操の危機だった……」

巨漢が吹っ飛ぶと同時に、一刀はすぐさま跳ね起きるように立つ。

「もう、ご主人様ったらイ・ケ・ズ♪」

なにくわぬ顔で、着地しながら笑顔を浮かべる貂蝉。まさかのノーダメージ。

「別にツンデレとかそういうのないからな……危機感と殺意しかないから」

「とか言ったりして、本当は愛情の裏返しなんでしょ。素直じゃないんだから♪」

「………で、ここは一体…いや、見覚えがある」

これ以上は無駄と判断したのか、はたまた現実逃避なのか、一刀は周りの景色に目をやる。並木道のようであり、真ん中はレンガの道が続いている。オレンジ色の光が差し込んでいることから、時間的には夕方だろう。

そして記憶を掘り返すように頭を少し掻きながら、思い出す。

「ここは俺がプレハブの寮からいつも通ってた聖フランチェスカの通学路……もしかして…」

「そうね、ご主人様は戻ってこれたと言う事になるわね」

その貂蝉一言に、一刀はすぐさま反応した。

「…貂蝉、何か知ってるのか?」

「そうねえ、色々知ってるけど、言えない部分もあるわね」

「なんだよそれ……」

突然の物言いに呆れて少しため息が出る。しかし、気にせず貂蝉は続ける。

「でも、これだけは確かに言えるわ。ご主人様は、元の世界に近い世界に戻ってこれたと言うことねん」

「元の世界に近い世界?ここは、俺が住んでた世界じゃないのか?」

貂蝉の言葉にすぐ思いついた疑問を一刀は投げかける。突然、来た質問にも貂蝉はすんなりと答えた。

まるで、以前にも同じような質問を受けたかのように。

「ええ、ご主人様の住んでた世界に間違いはないわよ。でも、ご主人様のいた世界に彼女達はいたかしら?」

そう言って、貂蝉は踵を返す。一刀は『彼女達』と聞いて、すぐにはっと気付き背を向けた貂蝉の隣へと並んだ。貂蝉のでかすぎる背中で見えなかったが、隣に来て貂蝉と同じ視線に立つことにより、一刀の愛さなければならない、そして、愛すべき『彼女達』が見る事が出来た。

皆の姿を見た一刀は、安堵の息を吐いた。

「ひとまず、私の詮索や多くの疑問よりも彼女達の傍に居てあげなさい。そ・れ・に、これから聞く機会はいくらでもあるかもしれないからその時にして置きなさい♪」

「……一先ず、分かったよ。俺は行くけど、貂蝉はどうするんだ?」

色々知りたい事はあるが、渋々と言った感じで一刀は了承した。

聞きたい事はあるが、いつでも聞けると言うのなら別に焦る必要もない。何より、彼女達の安否が気になっていた。

「ご主人様と一緒にいたいのだけれど、残念な事に用事があるのよねん」

用事があって良かったと、一刀は心の中で強く思った。が、それは言葉には出さないで、

「そうか、分かった」

そう言って、彼女達の元へ駆けて行く。その背中を押すように貂蝉は、

「この外史でも頑張りなさい、ご主人様♪」

そう言った。

 

「みんな無事か!?」

合流した一刀の第一声が大きく響き、全員が気付く。

「ご主人様…うぅ、無事でよかったよ~…」

そう言って、桃香は涙ぐみながら一刀の胸に飛び込む。

「あらあら、桃香ってば甘えんぼさんね。私も飛び込んじゃおうかしら♪」

そんな様子を茶化すように雪蓮、

「あら?なら私も飛び込もうかしら」

曹操こと華琳が言う。

「そんな、一編に来られると受け止められないと思うだんだけど……」

一刀は困ったように、しかし、右手は桃香の頭をなでながら言う。

「男なら、それぐらい気合で受け止めてみなさいよ」

「気合だけで物量を受け止めろと言いますか……」

華琳の言葉にたじろぎながら返答した後、会話はそこで打ち切れた。

以前にも似たようなやり取りがあったような気がしたが、一刀は気にしないことにした。

突然、戻ってこれた事に一刀自身、未だに戸惑いを覚えながらも、頭のどこかでは冷静に今の状況を整理しつつ考え事をし始める。

そして、思案をしている最中に予想出来たであろう質問がくる。

「で、ここは一体どこなのかしら?少なくとも大陸のどこか、と言う訳ではなさそうだし」

華琳がそう言うことで、文官の何人かが難しい顔をし始める。

どんな状況下であろうとも、切り替えて冷静に把握し、判断しようとするのが彼女達、文官の強みだろう。

「まず、状況の整理だ。我々は流星の落下後、落下地点を調査しようと城外に少数の兵を率いて出た。そして、流星の落下地点の近くには白く揺らめく光の玉の様なものが一つ浮いており、その光の玉を調査しようと指揮を執っている時に突然光の玉が発光し、退避しようとしたが我々は白い光に呑まれた。そうだな?風」

冥琳が簡潔に光に呑まれる直前のことを説明する。

そして確認のためか風に尋ねる。

「はい~。冥琳さんの言う通りで南門ではそのような事が起きました」

「東門でも同じような事が起きました」

「西門も同じです」

「あわ、城でも同じような事が起きました」

風が冥琳の言った事に肯定を示した後、稟、朱里、雛里の順にそう言った。

「う~ん、皆さん同じ現象に巻き込まれてここに来たと言うのは分かりましたが、新たな疑問が出てきましたね~」

おっとりした口調でそう言ったのは陸遜こと穏。

その穏が言った事を尋ねるようにして、先程一刀に抱きついていた桃香が尋ねる。どうやら、落ち着いたらしく今は華琳、雪蓮、一刀の傍に立っている。

「どう言う事ですか?」

「光が私たちを包みこんだときには、多くの兵がいたはずです。ですが、一緒に巻き込まれたはずの兵がいません」

桃香の疑問に、呂蒙こと亞莎がそう答える。亞莎が言わんとしている事に、多くの者は気付いている様子だった。

そう、兵を率いて調査したのだから光に呑まれた時には周りにいた多くの兵も巻き込まれたはずなのだ。しかし、その兵たちがおらずここにいるのは彼女達と一刀だけ。

簡単な事だが、それが分からない者が一部いた…。

 

 

「うん?分かるか鈴々?」

と、話の内容を聞いていた馬超こと翠が尋ねる。

「にゃは♪全然分かんないのだ」

そう言ってほほ笑むのは、張飛こと鈴々。

「なに、分からんもんは分からんのだから仕方あるまい。小難しい事は、軍師とかに任せればよいのだ」

はっはっは、と笑いながら得意気そうに話すは夏侯惇こと春蘭。

そして、他にも察しがついていないのがいるのを見かねてか何人かは溜息が出ている。

「…抜けている連中の事は放っておきましょう」

「時々酷いな星……」

公孫賛こと白蓮がツッコんだあと、亞莎は話を続ける。

「つまり、ここにいるのは私たちだけと言うことになります。単なる偶然……なのでしょうか…」

台詞の最後のあたりになり、自信がなさそうに言う亞莎。

しかし、華琳は納得したように頷き、

「なるほどね。一刀、貴方はどう思う?」

質問を投げかけた。

唐突に、振られた事に少々驚いてはいたが、話を聞きながら一刀は考えていた事を言う。ただ、貂蝉のことは伏して置くことにした。

それは、彼が何かを知ってるにしてもここで言えば変に情報がこんがらがってしまうかもしれない。今のこの場には余計な情報だろうと判断した。

「多分だけど、俺の居たこの世界じゃ、皆の名前は歴史書に残るほど有名なんだ。確証がある訳じゃないけど…俺たちが光に呑み込まれたのも、ここに来たのも、亞莎の言う単なる偶然じゃないと思うんだ。変な言い方になるかもしれないけど………ここに皆がいるのは、選ばれたから…かもしれない」

「はぁ!?そんな馬鹿な話を信じろって言うの!?」

荀彧こと桂花が突っかかるように言い張る。

彼女の言うことも、もっともな事ではある。なにせ、死者が生き返るのを信じろと言っているくらいに無茶な話ではあったのだから。

一部の者は桂花のように信じられないような顔をしていた。それは、さも当然の反応ではあった。

「とりあえず、今の一刀の言葉で分かった事はあるわね」

と雪蓮、

「そうね」

華琳が言う。

二人の王の言葉に、同意するように頷く者や納得したような顔をしているのが何名かいる。

「今ので分かったんだ…」

一刀は驚きの言葉をそのまま口に出した。説明した本人自身、あんまり伝わるとは思っていなかったのだろう。

「ええ、一つだけはっきりとね」

凛とした声で華琳は言い放つ。一体先程の説明で何が分かり、どれほどの確証を得たのかは知らないがとにかく、彼女の立ち居振る舞いは自信に満ち溢れていた。

そして――――。

「ここは、一刀のいた天の世界だと言う事がね」

一刀の予想の斜め上を行く言葉を放った。

しばらくの沈黙。

それから、

『えっーーーーーーーーーーーーーーー!?』

驚愕の声。

「待て!今の会話でなぜ、ここが天の国だと分かったんだ!?」

代表のようにして、魏延こと焔耶が疑問の声を上げる。

自分たちが天の世界にいると言う話にざわつく中、星は一人で考えていた。

いや、星のように一人で考えている者は何名か居た。考えている者はなぜ、天の世界であると分かったのか?と言う事を考えているのだろう。

そうして、星はしばらく考えている内に答えは出た。

「ああ、なるほど……」

「む、星は分かったのか?」

自分よりも先に分かった事に愛紗は、悔しさを滲ませているような声を上げながらも聞いた。

しかし、その悔しさを察したのか星は、

「なんだ、悔しいのか?愛紗よ」

単刀直入にそう言った。

「いいや、そんな事はない。断じてない」

あくまでも、認めたくはないようだ。しかし、図星をつかれたからか言葉の中に焦燥があったのも星は見抜いた様子で、それが可笑しいのか、悪戯な笑みを浮かべる。

「そうか。残念だったが、仕方があるまい」

「おい…何か引っかかる物言いだな」

腑に落ちない言い方をされて、どこか納得のいかない様子。

だが、それを気にせず星は話を続ける。

「先程の主との会話を覚えている者は?」

星にそう問われて、于禁こと沙和が思い出すように言い始める。

「ええっと、隊長の居たこの世界じゃ、私達の名前は歴史書に残るほど有名で…」

続けるように李典こと真桜、

「せやから、亞莎の言うとるような単なる偶然やない…」

そして凪、

「ここに我々がいるのは、選ばれたからかもしれない」

その三人が、一刀の言った台詞の大まかな部分を言う。

「さよう。主は最初になんと言われた?」

どうやら、理解させるために答えは言わないつもりのようだ。

そんな星の意図に気付いてか、真桜がしびれを切らす。

「もう、星姐さん勿体ぶらんとさっさと教えて~な」

「まあ、騙されたと思ってもう一度、主の台詞の最初を言ってみるといい」

けれども、答えを教えるつもりはないようだ。真桜は仕方なく、ため息交じりにもう一度言ってみる。

「…ふぅ、隊長のおったこの世界じゃウチらの名前は歴史書に残るほど有名…」

「隊長の居たこの世界じゃ、沙和たちの名前は歴史書に残るほど有名」

「隊長の居られたこの世界では、我々の名前は歴史書にのこるほど有名…隊長の居られたこの世界……」

三者三様に、まるで念仏を唱えるかのようにして一刀の台詞の最初の部分を言う。

そして、凪が二回目を言おうとしたその時。

「「「あっーーーー!?」」」

三人は気付いたように声を上げる。それを皮切りに段々と天の世界であると言う確証を得た者が、増えてきた。

理解を深めるためか、星は説明するように言い始める。

「そう言うことだ。主は『俺の居たこの世界』と言われた。主の居た世界と言われれば天の世界。つまり、先程の台詞は主がここは天の世界だと教えているようなもの」

そうなのだ。一刀は先程、『俺の居たこの世界』と言った。例えば、自分と客人が家の中に居て、客人に自分の家を古いと説明するのに『あの家は古い』とは言わない。それでは、自分の家とは違う、別の家が古いと言うことを指し示してしまうことになるし、なにより、話が繋がらなくなってしまう。

「そう言うことよ。ただ、それだと一刀はここが天の世界だと知っていたことになるわ」

「そうなのご主人様?」

華琳の一つの疑念に同調するように桃香が問いかける。

対する一刀は、あっけらかんとして居た。自分の何気ない一言でここが何処か、と言うことを割り出されてしまったのだから無理もない。しかし、彼女達の頭のキレのよさを考えるとこの答えも当然のことだと思えてくるのだから、不思議な話ではある。

一刀は華琳の疑念に答えるべく、意識をそちらに戻す。

「ああ、華琳の言う通りだ。知っていたよ。勿論、あとから話すつもりだったけどまさか、俺が言う前に言われるとは思ってなかったよ」

そう、微笑みながら正直に答えた。

「そうか、なら聞くが北郷。なぜ、ここが自分の元いた世界だと分かった?それなりの確証はあるのだろう」

冥琳がそう問いかける。

「勿論、確証はあるよ。俺たちが今いる場所なんだけど…俺がこの世界に居た時はここをよく通ってたんだ。何度も通ってきた景色を見間違うはずもないだろ?」

「なるほどな」

一刀の言葉に冥琳や他の面々も納得した様子。

が、冥琳は再び言葉を紡ぎ出す。

「しかし、天の世界に居るとなれば新たな課題が出てきた」

「これから、どうするか?と言うことね」

「そう言うことになるな」

これからどうするか?と言う雪蓮の発言にほとんどの者が俯き、思案する。

「う~ん、取りあえずこの世界を楽しめばいいんじゃないかな?」

重い空気の中、桃香はさらりと言った。

「また、簡単に言うわねえ」

「でもでも、ご主人様が帰る術を知らなかったんだから、私たちも簡単に帰れるとは思えないんです」

「確かにね」

「もちろん、国のことを心配していない訳じゃありません。けれど、帰る手掛かりがない以上動きようもないですし、ご主人様の世界の事も詳しく知らない。そんな状態でやみくもに動いても、きっと危ない目に遭っちゃうと思うんです。だったら、天の世界から私達の世界に来たご主人様みたいに割り切った方がいいと思うんです」

「本音はどうなのかしら?」

「せっかく天の世界に来たんだからご主人様から聞いた、綿あめとか、お寿司とか、りんご飴とか、ましゅまろ…だっけ?とにかく、珍しい食べ物を食べてみたいし。どんな所かも、色々見て回りたいな~って……雪蓮さん!?」

途中までもっともな説明をしていた桃香が、雪蓮の一言で子供のように好奇心に駆られ、興奮して早口になり、そして我に帰る。その様子は、微笑ましいものがありいつの間にか周りは笑いの渦に囲まれていた。

桃香の性格上、国の事を心配しているのは確かなのだろうが先程の姿を見れば説得力には欠けそうだった。

何名かは、呆れて首を少し横に振って、やれやれと言った感じだった。

本音を漏らした本人は、肩を落とす。

「うぅ……雪蓮さんに嵌められた」

「あんなに簡単に本音を漏らす、桃香自身に責任があるでしょう」

グサリと、華琳の言葉が胸に刺さる。

「………あぅ」

そして、更に悄気(しょげ)る。

そんな桃香を慰めようと、一刀が近づき彼女の頭に手を置く。

「まあ、桃香が天然なのは今に始まった事じゃない。元気出せ」

「ご主人様、それ慰めてない…」

一刀の悪戯心で、慰めるつもりがつい止めを刺すような言葉が出てしまった。

しかし、彼女の涙目の上目遣いを見ることで、これはこれでいいか、と役得気分だった。

「けれど、本当にこれからどうしようか?もし、今すぐ戻れないとしたら、少なくとも住む場所は決めておかないと」

それに、現代社会で彼女達の格好は目立つ。それこそ、一刀が彼女達に初めて会った時のようにコスプレか?と思われるだろう。もし、聖フランチェスカの警備員にでも見つかったら、なおややこしい事になりかねない。コスプレをした人、それも学園の生徒でない者が学校の敷地内に居れば不審に思わない人はあまりいないだろう。

しかし、そう簡単に住む場所が見つかるのだろうか?

一刀がそう思った時だった。

「お困りのようじゃな」

褌を穿いた黒い巨漢が現れた。

「えっと、卑弥呼だっけ?……何でお前がいるんだ」

「何を言う、お主らと同じように飛ばされたに決まっておろう。ご主人様は貂蝉と会っておらんのか?」

「いや、会ったけどさ」

貂蝉がいることで薄々は感づいていたが、なぜキャラの濃い二人がここに居るのかと言う一刀としては最大の疑問が立ちふさがる。

が、ここはあまり気にしてはダメだと思った。

なにせ、見た目はあれだがこの二人(一名はどこかに行ったが)も歴史に名を残しているのだから、もし、一刀の仮説が正しいのであれば彼らがここに居るのも頷けはする。

「ふむ………ご主人様に会った後、用事に会いに行ったようじゃな」

卑弥呼はそんな風に納得した感じに言った。

―――用事に会いに行った?

一刀は彼の真正面に居たため、呟くよう言ったその言葉を聞きとる事が出来た。

一体どういうことなのか、と聞こうとしたが、

「すまぬがお主ら、ここでは何かと目立ちそうじゃ。先程、よい場所を見つけたのでそこで色々考えんか?」

そう提案するように卑弥呼は声を出したために、一刀は話の出鼻を挫かれた。

だが、卑弥呼の言う通りここでは誰かが来た時に目立つのも確かだった。

その卑弥呼の提案に、全員が顔を見合わせる。文官は、この話を呑むかどうかを話し合っているのだろう。しかし、皆を人目につかない場所があると言うのなら、誰かがここに通りかかる前に早めに行動した方がいい。

そう思い、一刀は卑弥呼の提案を後押しするように言う。

「みんな、卑弥呼の言う場所に移動しよう。さすがに夜も外にいる訳にはいかないだろ?」

「そうね、火もないのに夜風に当たるのは御免被(こうむ)るわね。皆も、それでいいわね?」

華琳の一言に全員が頷く。

それを確認した卑弥呼は、うむ、と言って

「では、案内しよう。こっちじゃ」

と踵を返す。そして、皆は黙ってその後ろを付いて行く。

しばらくして、卑弥呼は一つの建物に向かっているのを理解した。しかも、それは聖フランチェスカの敷地内にあり、先程の案内をされてから5分程歩いたところにあるのだが。一刀がこの学園で暮らしていた覚えてる記憶の中では、記憶にない建物であった。

それは、ちょっとした洋館を思わせる造りの三階建てだった。当然、彼女達にとっては見たこともない建物の外見であり、好奇心の目で見上げている者もちらほらいた。目は止まっても、歩みは止めず、そのまま建物内へ入る。そして、建物の玄関部分に入ると見かけと同じくらい華やかな内装が広がっており、これまた目を見張る者がいる。皆が歩きながら、きょろきょろと建物内部を見ている内に卑弥呼が歩みを止める。

「着いたぞ。ここじゃ」

卑弥呼がそう言って辿り着いた場所は、ロビーのように広い場所だった。そして、その奥には厨房のような場所も見えるあたり、ここは食堂なのだろうかと、一刀は思った。

「ここは一体、なんの建物なんですか?」

周泰こと明命が、疑問の声を上げる。

「さてな、私も分からん。しかし、なかなかに豪勢な造りと広さを考えると、玉座の間の様な所か何かか……」

その疑問に対し、夏侯淵こと秋蘭が推測する。

「うむ。まあ、聞きたい事も山とあるじゃろうが用事が来るまでは、質問は控えた方がよいじゃろう」

卑弥呼がそう言った事で、全員が注目する。

「用事が来るとはどういうことかしら?」

卑弥呼の言動に不信感を抱いた華琳が、少し威圧感を放ちながら言う。

さすがは覇王と言ったところで、少しと言えども普通の人なら尻ごみをするだろう。

「貴様、まさか我らを罠に嵌めようとしているのではあるまいな!」

春蘭は威圧と言うより、殺気に近い物を放ちながら怒鳴る。彼女の言うことに一理あるとばかりに、何人かは武器に手を掛けようとする。その様子に卑弥呼はたじろがず。

「はっはっは!ここで、お主ら全員を敵に回したところでワシが敵う訳あるまい」

豪快に笑って、そう言って退けた。

一刀としては、どの口が言うか、とツッコミたかったがそこは言わずに堪(こら)えた。実際、この黒光りの巨漢二名が負けるところなど想像できないと言うのが正直なところではある。

そして、卑弥呼は何かに気付いたように一刀たちの後ろの方に視線を向ける。

「どうやら、用事を連れて戻ってきたようじゃな」

そう言われて、全員が後ろを振り返るとそこに居たのは……。

「あらあら、ご主人様。また会えて嬉しいわ」

貂蝉だった。

「貂蝉!?やはり、貴様もここに飛ばされていたのか?」

「ええ、まあそう言うことになるわね」

愛紗の問いかけにそう答える。しかし、本題はそこではない。

「もしかして、用事って貴方のことかしら?」

雪蓮の問いかけに、首を振る貂蝉。

「違うわ。卑弥呼が言ってたでしょ?私は用事を連れてきただけよん♪入って頂戴」

 

 

貂蝉が催促するように言うと、巨漢の後ろから二人の少女が出てきた。どちらも聖フランチェスカ学園の制服と帽子を身にまとっており、時間的には学校の帰りといった様子だった。

一人の少女は華琳と同じくらいの身長で、髪型はロングのストレートで色は明るい赤色。瞳は琥珀色であった。第一印象としては、明るい感じを受ける。

もう一人は、白蓮と同じくらいの身長、赤い髪の少女とは対照的に髪型がショートのストレートで、色は蒼色。瞳は宝石のサファイアのような色である。正直な話、制服がなければ男か女かで一刀は判断しかねていたかもしれない。つまりは、中性的な顔立ちをしておりどちらにも取れそうであったのである。

二人が現れた瞬間、呉と魏の何人かは表情を少し変え、袁紹の一行は、ポカンとした表情を浮かべている。その事から察するに、一部の者とは面識があるようだ。

「えっと……美雄(メイション)よね?」

「はい。そうですよ蓮華様」

美雄(おそらく真名であろう)と呼ばれた赤い髪の少女は首を傾け屈託のない笑顔で、そう答えた。

「お知り合いなのですか?」

紫苑が単刀直入に聞く。

「知ってるも何も美雄は呉の将よ」

淡々と答える雪蓮だが、同じ陣営の将から疑問の声が上がる。

「あの、雪蓮さま……私達は知らないのですが」

亞莎がそう言い、同意するように明命が頷く。

「二人は、知らなくて当然ね。なにせ、思春が私達に加わる前からいたんだから」

「え?思春さんより、前に居たんですか?」

驚くべき事実に、亞莎は目をパチクリとさせる。

「だけどある日突然、美雄は消息を絶ったのよ」

「ああ、思春が仲間に入ると同時に入れ替わるようにしてな。なぜ彼女が去ったのか心当たりがない訳ではないが、結局答えまでには至らなかった。けど、今ここに美雄がいることで疑問は解けた」

雪蓮は残念さを懐かしむように言った後、冥琳が補足を入れる。彼女が言い終わると同時に、美雄は照れくさそうに頬を掻きながら言う。

「まあ、お察しの通りあの時にこっちに来ちゃったんだよね……。取りあえず、初めての人もいるから名乗っておかなきゃね。姓は凌、名は統、字は公績、真名は美雄(メイション)。小蓮様は美雄の美を取ってメイって呼んでたけど、好きな方で呼んで♪」

そう言って、彼女は再び無邪気な笑顔を向ける。純真無垢なその笑顔から、一人の将であったと言うことを疑うほどのモノであった。

「で、そちらの御仁は?反応を見る限りでは、他の方の知り合いではあるようだが」

冥琳は、そう言うと蒼い髪の少女と魏の一行と袁紹一行を順番に見る。魏の方は、しかめっ面か驚きか、どちらともつかないような表情をしており、袁紹の方では先程から三人とも鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしている。

「……蒼燕(そうえん)様、ですよね?」

再び真名と思われる名前で、顔良こと斗詩が恐る恐る聞いた。

「自分以外に、他に居ますか?」

それに、蒼い髪の女性はさも同然だと言うように呆れた口調で返した。その瞬間、袁紹こと麗羽はパクパクと金魚のように口を動かしたかと思うと。

「な、なんで貴方が生きてらっしゃいますの!?確か、あの時に始末―――んぅ!?」

と大声で言いかけたところで、文醜こと猪々子と斗詩が慌てて麗羽の口を塞ぎ、耳打ちする。

「れ、麗羽さま…今ここでそのこと言ったら、麗羽さまの頸が飛ぶかもしれませんよ」

「文ちゃんの言う通りですよ。もし、麗羽さまの命令だって知れたらそ私たちだって危ないんですから」

進言に納得した様子の麗羽を見た二人は口を塞いでた手を離す。その後に、麗羽は少し大きく息を吸い、二人に問う。

「幽霊かなにかの間違いじゃありませんの?確かあの時斗詩さん、蒼燕さん達の始末の報告をしたではありませんの」

「違いますよ。あの時麗羽さまに言ったのは、お二人が突然消えた、と伝令が言った旨を報告したんですよ」

「だから、お二人を消したと言う意味ではなかったんですの?」

「違いますってば。……もしかしてあの時、分かってなかったんですか?」

「そ、そんなことはありませんわ。ちゃんと、分かっておりましたわよ」

ほんとかな~、とため息交じりに言う斗詩を横目に猪々子が話す。

「それと、麗羽さま。アレ、足ちゃんとあるっぽいですよ」

「見れば分かりますわ!ま…まあ、ともかく平静に取り繕えばなんてことはありませんわよ」

自信満々に麗羽が言うが、二人は不安と嫌な予感だけしかしなかった。そして、麗羽の後ろに回り込み二人で相談する。

「ねえ、文ちゃんどう思う?」

「いや~、蒼燕様だからねえ。嘘とか冗談通じないし、見破られるし……あと怖いし」

「……だよねえ」

何かを思い出したのか猪々子は身震いをする。その様子から相当なトラウマが窺えるようだった。一刀は、その話を横で聞いて一人の人物の名前を思い浮かべていた。

「そこ、何をコソコソと話してますの!」

麗羽が二人を指摘するように怒鳴ると、二人はすぐさま振り返り、

「いーえ、特に」

「何でもありません」

そう言った。

麗羽は気を取り直すように少し咳払いをし、蒼燕と呼ばれた人を見据える。根拠のない自信に胸を張る様子は、さすがと言ったところだった。

その自信のおかげか、話の皮切りは特に気負うこともなく自然に出た。

「あら?張郃将軍。こんな所で会うなんて奇遇ですわね」

「ええ、本当ですね」

麗羽が張郃の名を言った瞬間に一刀は胸中でやっぱり、と呟いた。そして、彼女は麗羽たちに微笑みかける。その様子に安堵したのか、斗詩と猪々子は胸を撫で下ろす。

「で、家臣の命を狙っておいて何か言うことはありませんでしょうか?」

ことは出来なかった。安堵はたちまち焦りと動揺に変わり、麗羽たち一行は目を点にする。

が、それでも白(しら)を切ろうとしてか麗羽が口を開く。

「な、なんのことかしら?」

「よく言いますよ。斗詩さん、進言したのは郭図でしょう?」

表情はあまり変わっていないのに、言葉に凄みがあった。それに押されてか、斗詩は正直に頷く。

確実に追い詰められて、面白くないのか麗羽は逆ギレした。

「ふんっ!そもそも貴方が官渡の戦いで、あの小生意気なクルクル小娘の陣営を打ち崩していれば済む話でしたわ。あれだけ、我が軍の精兵を連れておきながらも突破できなかったじゃありませんの」

そう言った瞬間、「貴様っーー!」と言いながら春蘭は麗羽に斬りかかろうとしたが、秋蘭と翠と霞がすぐさま抑える。前々から気に食わない旨を喚き散らしながら、三人の抑えの中を暴れる。あまりの喧騒に華琳は春蘭に一喝。そして、すぐに収まるのは何度見ても感心する。ほとんどはそちらの方に目を向け、その様子に苦笑いをする。

二人は、そのことを気にする間もなく話を続けていた。

「だからこそ、沮授と共に進言したではありませんか。曹操軍の陣は堅牢であり少々のことでは崩れぬ、烏巣の防衛に徹すれば勝利は確実であると。ですが、麗羽さまはこう言われましたよね」

 

『あ~ら?皆さま方はこの優位な状況で、もっと華麗な勝利を思いつかないのかしら?ここは烏巣を防衛しつつ、吹き出物の小娘の陣を破る事により圧倒的な私の威光を嫌と言うほど、あの小娘に知らしめる事が出来ますのよ。こんな機会は又とありませんわ。おーほっほっほ!」

 

その瞬間に殆どの文官が「うわぁ」と言う声が聞こえてきそうなほどの呆れた表情。そして、若干の軽蔑の視線。

その脇では、再び斗詩と猪々子がヒソヒソと話す。

「ねえ、文ちゃん……すごく視線が痛いんだけど…」

「気のせいだって。それにしてもあの時の麗羽さまの案って、夢と浪漫があったじゃん」

「むしろ、夢と浪漫しかなかったような気が……」

幾つもの視線が突き刺さる中、笑みを浮かべる猪々子の豪胆さと言うか大らかさが斗詩は羨ましく思えた。

「むむむ……」

「何がむむむ、ですか」

麗羽の顔に苦悶の表情が出る。その様子は、言葉に出たがあっさりと切り捨てられる。これでは、麗羽と言えどもぐうの音も出なかった。実の家臣にここまで言われては、面目など丸潰れであるが、彼女の言葉はまだ終わっていなかった。

「それと、主君が家臣の命を狙ったのであればそれは用済みの意味。ならば、今の自分に主君はいない事になる訳ですが……命を狙うと言うことは、その逆もまたあると言うこと。さすがにそれはご存知ですよね?」

そう言って、制服のどこに仕舞ってあったのかと突っ込みたくなるような鞘に収まった一本の太刀が、いつの間にか蒼燕の手に握られている。そして、彼女の言わんとしている事が大体の人には予想できた。

鞘から徐々に見えてくる刀身は、彼女の殺気を具現化したように鋭く光っていた。その殺気に押し当てられてか、あわあわと口を動かしながら麗羽たちは後退していく。

「猪々子さん、斗詩さん。何とかなりませんの!?」

ただならぬ雰囲気に慌てて打開策を検討しようとするが、

「何ともなりませんよ……麗羽さま」

「そうですよ。私と文ちゃんの二人掛かりでもまともに打ち合えないんですから……それに、今更謝ったってあの様子じゃ許してもくれませんよう!」

皆無だった。

彼女が一歩と歩むたびに麗羽たちも一歩後退する。桃香は止めるべきかと迷った表情を浮かべているが、一刀が「もう少し見ていよう」と囁くことで、桃香は思い留まった。一刀自身としては根拠がある訳ではないが、強いて言うなら今までに愛紗たちに狙われた経験からだろうか。とにかく、殺気には違いないが本気なようで本気じゃないと言うのが何となくだが分かっていた。

「それにしても姉さん、僕には散々この世界で殺っちゃダメだって言うのに。狡(ずる)いなあ」

この状況の中物騒な愚痴を漏らし、美雄は息を吐く。

「蒼燕ちゃんの事だから人に言っておいて自分が守らないなんてことは、ないと思うわよん♪」

貂蝉のその一言に、「それもそっか」と美雄はすぐに納得した。

そして思い出したような表情をした後、美雄は貂蝉に聞く。

「ところで、さっき運んでた赤い髪のお兄さんはどうしたの?」

「ああ、華佗ちゃんなら今は卑弥呼が介抱しに行ったわ」

「そっか、無事だといいね」

「あらあら、心配してくれるなんてやっぱり良い子ね。美雄ちゃん♪」

だが、美雄としては卑弥呼に変な事されてないかと言う意味で言ったつもりだった。一方、麗羽一行は遂に壁際まで追い詰められておりそれ以上は横に行くしかなかったが、横に動こうとした瞬間バッサリと行かれそうな感じがしたので、それ以上は動かなかった。

ここまでか、と猪々子と斗詩は麗羽にしがみつく。その場で足の力が抜けたように三人が座り込んだ瞬間だった。

「……ふう」

何でもない息を蒼燕は吐き、殺気と太刀を収める。その事に三人は疑問を感じながら見上げる。

「幾分か、気は晴れました」

その言葉に、三人はえ?と言う声を上げる。

「もしかして、冗談だったんですか?」

斗詩は恐る恐る、尋ねる。

「ええ、一割ほど」

「あ~冗談だったんだ……。よかったあ~~」

安堵の息を吐く猪々子だったが、

「九割は本気だったんですね……」

言い方を考えると全然安心できなかった。それに当然気付いた斗詩が不安を拭い切れないように言う。

「自分が冗談や嘘が嫌いなのはよく知っているでしょう?」

「ですよねえ」

そう言うと、大きく息を吐く。斗詩が隣を見ると、麗羽がなぜか放心状態になっていた。余程怖かったのだろうか?

そんな麗羽を尻目に蒼燕は魏の一行に近づいていき、華琳の正面で一礼する。

「曹操殿、降伏の件は申し訳ありませんでした」

まるで、臣下であるように彼女は丁寧に謝罪した。

「何を謝る必要があるの?貴方は確かに私の元に降ろうとしながらも、突然去った。確かに傍目から見れば、許されざる行為ではないわ。でも、あなたほど優秀な将が理由もなしに去るとは考えられないし、降伏を宣言して置きながら逃亡した将の世間に対する風評が分からない訳でもなかったでしょう?」

「はい。理由としてはここに居る方々と同じように自分もあの白い光に呑み込まれ、この世界にやって来た。それだけの事です」

「なら、先程も言った通り謝る必要はないわ。この世に抗えない事はいくつもある。つまりは、私達が呑み込んだ白い光も抗えない事だった。それだけのことよ。もし、アレが抗える事であったのなら、私達はここには居ないわ。その時は、同時にあなたの実力不足だったと言うことになるでしょうけどね。ともかく、降伏の件は不問よ」

「ご配慮に感謝いたします」

そう言って、再び彼女は一礼。顔を上げると、蒼燕はある人に目を向けて言う。

「良き器の君主に会いましたね。桂花」

「華琳さまだもの当たり前よ。貴方もさっさとあんな奴見限ってこっちに来れば良かったのよ」

桂花がそう言った辺り、幾人かが驚く。

「ほほう。桂花が認めるとは珍しい」

驚いていた人たちが思っていたであろう事を秋蘭がそう言う。そもそも、桂花の評価があまりにも厳しいためにこの程度の言い方でも認められていると認識されるあたり、彼女の辛辣ぶりが窺える。

「なによ。私が他人を認めるのがそんなに珍しいのかしら」

「ええ、かなり」

稟が正直に答える。彼女が認める人物など、早々にいないのだから珍しいと思われてもいた仕方なかった。

「ふふっ、貴方の実力。向こうの世界に戻れてから教えて貰うことにするわ。ところで、貴方と一緒に降伏するはずだった高覧という将がいたでしょう?その者もここに飛ばされたのではなくて?」

華琳が疑問に持つのも当然。史実では、張郃と共に曹操軍に降ったとされる高覧と言う名の将。だが華琳の言い方からして魏にはいないようで、目の前にいる張郃と同じくここに飛ばされた可能性が高かった。

「高覧…紫雨(しう)ですか。彼女なら、確かに自分と共に光に呑まれたのですが……気がついた時に隣に居たのは高覧ではなく、そこにいる美雄でした。この世界に飛ばされてるのは、間違いないと思うのですが行方は分かりません」

懐かしむように真名と思われる名前を呼び、華琳の質問に淡々と答えるあたり事実なのだろう。

美雄は名前を呼ばれたかと思うと軽く手を振りアピールする。

その美雄を一瞥した後、華琳はなるほどねと一言漏らしただけで、それ以上詳しくは聞かなかった。

なぜなら、そろそろこれからを話さなければと、その場にいる誰もが思っていたのだから。

「さて、懐かしい人に会えた事で積もる話もあるでしょうけど。ここまでにして置きましょうか」

「そうね。蓮華も色々話したいでしょうけど、後でにしましょう」

雪蓮のその言葉に蓮華は「ええ」と素直に頷く。

「なんだか、私達だけ置いてかれてるような気がするんだけど。気にしちゃダメだよね……」

桃香の余計な一言に、蜀の一行はそれは言わないで欲しかったとばかりに息を吐く。

そんな様子を見て、一刀は可笑しかったのか肩を竦めて笑った。

 

 

しかし、ここからがいよいよ本題。

全員が貂蝉に目を向ける。

「それにしてもなぜ、貂蝉さんはお二方を知っていたんですか?以前に、あちらの世界でお会いした事があるんですか?それと、お二人がここに居ると知っていたのかも答えて頂けると嬉しいのですけれど……」

最大の疑問を朱里が投げかける。

考えてみれば当然のことであった。あちらの世界で面識があれば、朱里の最初二つの疑問には容易に答えられるであろう。ただ、はいと答えれば解決するのだから。

しかし、最後の疑問は容易に答えられそうなものではなかった。

これを肯定すれば、貂蝉はあちらの世界と今居る一刀の世界を知っていた事になる。彼女達にとって突拍子のない話は先程の天の世界であると言う事実で、お腹も頭もいっぱいだった。これ以上、何か言われたなら確実に混乱する者が出るだろう。そんな中、余裕のある者もいるようだが。

だが、貂蝉は不思議そうな顔をしながら言った。

「あら?ご主人様がてっきり私の事についてなにか喋ったと思っていたのだけれど?」

まさかのキラーパス。

貂蝉がそう言うことにより、話の矛先が一刀に変えられるのは当然だった。

「あんた、また隠し事してたわね」

賈駆こと詠がそう言うと、鋭い視線がいくつも突き刺さる。

「いやいやいや、あの時余計な情報を言っても混乱を招きそうだったし……って、またってなんだよ詠」

「さあ?自分の胸に聞けばいいじゃないの」

詠の含んだ言い方に、要らぬ疑念を掛けられた視線に変わる。

「ともかく、変に勘ぐらないでくれよ。きちんと説明するから」

そう言って、一刀は目覚めた時の貂蝉との会話を話しながら、その会話から自分の考えられる事を言う。

一点目は、貂蝉は一刀の世界を知っていたこと。

二点目は、貂蝉はあの世界の住人ではないかもしれないと言うこと。

三点目は、少なくとも貂蝉が敵ではないと言うこと。

「って言う風に、俺は考えてるんだけど。実際のところは貂蝉に聞いてみないと分からない。出来れば、この場で説明して欲しいんだけど……」

そう言って、一刀は貂蝉に目を向け催促する。

「そうねえ。まず、ご主人様が言った通り。私はあの世界の住人じゃないの」

その催促に答えてか、貂蝉は説明し始める。

「住人じゃないと言うより、名前を借りてあの世界の住人であるように振る舞っていたと言う方が正しいわね」

その言葉に何人かが疑問の顔を向ける。

「もっと分かりやすく例えるなら、物語に登場する人物の一人を私が演じたと言うところかしらね」

言い換えたその言葉に、先程まで疑問の顔を向けていた何人かが納得したような顔をしたが、それでも分からないような顔がしている者がいる。

「まあ、ともかく私はあの世界の住人じゃないと言うこと。その一点だけ分かってくれればいいわ」

「それでは、あなたは何者なの?」

一つ分かると、すぐさま次の質問が蓮華から放たれる。

「色々、言い方はあるけれど一般的には管理者とか剪定者とか言われてるわ」

「管理者?何を管理すると言うのかしら」

と、華琳が問いかける。

「外史と言う、先程も言った通り物語みたいな物ね。本棚にたくさんの本が並んでいるのを思い浮かべてくれるといいわ。その本の一つ一つが外史であり、そして私達はそれを管理する」

「それって、書店みたいなものですか~?」

「簡単に例えると、穏ちゃんの言う通りね。だけどね、全ての外史を生み出す正史と言うものがあるの。それは、小説や物語の作家に当たるわ。その世界では、このご主人様の世界のように人々が暮らし、安穏とした生活を送っている。違いがあるとすれば……ご主人様みたいに別世界に飛ばされたり、愛紗ちゃんたちみたいにとても強い人がいないし、妖術なんてモノはないと言う事かしらね」

「と言う事は、私達は正史から創られた存在だと言うことなのかしら?」

「さすがは、曹操ちゃん♪理解が早くて助かるわ。衝撃を受けるかもしれないけど、あなたたちは作り出された存在。物語の登場人物に過ぎないかもしれないわ。だけどね、これだけは分かって欲しいの。確かにあなたたちは私と同じように作られた存在……けど、あなたたちにはちゃんとした意思があるし、信念もある。恋だってするし、愛し合ったりもする。如何に物語と言えど、貴方達の感情までは縛られる事はないわ」

全員が貂蝉の言葉に真剣に耳を傾ける。俄かには信じがたい話だが、この話は避けられない事なのだろうと何となく理解した。

「今回に関しても貴方達が飛ばされたのは正史の人間の誰かがそう望んだからでしょうね」

「それはそれで、傍迷惑な話だな」

冥琳が呆れ顔で言い、肩で息をする。

確かに望まれたからと言って、ホイホイと世界を飛ばされては飛ばされた本人たちとしては堪(たま)ったもんじゃないだろう。

「だが、利点はあるじゃろう」

そう言って、卑弥呼が貂蝉の背後に現れる。先程案内が終わり美雄たちが来た後に華佗の介抱に向かってから帰ってきたようだ。

貂蝉の方に向かって歩き、肩を並べる。

その図はやたらとむさ苦しかった。

「お主たちで言う天の世界を実際に見る事の出来る絶好の機会じゃからな。楽しまねば損するじゃろう」

卑弥呼の一言に複雑な表情をする三人の王。

彼女たちは王なのだ。置いてきたモノはあまりにも大きい。先程、楽しもうと言っていた桃香も口では言ってもやはり心配する事があった。

そんな三人の王と、それに携わる国の重鎮たちの表情を見て察したのか、貂蝉が補足を入れる。

「国の事なら、心配する事はないと思うわよ?貴方達の都合の良いように帰る事が出来ると思うわ。そう、例えばこちらでは一年経っても帰ってきたら数時間しか経っていなかった……とかね」

その言葉に全員が目を見開く。

あまりにも都合が良過ぎるために、逆に疑うほどだった。

「それは少々、都合が良過ぎると思うのだが……」

「じゃが、帰ってくれば国が滅んでいたと言う事にはなって欲しくないじゃろう?」

「うっ……」

「まあ、安心せい。これを望んだ者は、そんな事をするような性格ではない。それに、正史の人間にとってはその程度の事は造作もない事じゃ」

愛紗と卑弥呼のやり取りで、全員は幾分か安心した様子だった。

「それで?貴方達はこの世界を結局どう過ごすのかしら?」

貂蝉の問いかけに全員が顔を見合わせる。

「う~ん、せっかくだし。楽しんじゃおっか♪」

後顧の憂いが無くなったために桃香は安心した表情ですぐに提案する。反対する者はだれもいない。

まだ、色々と理解できるのには時間がかかりそうではあるが……。

一刀は完全に空気になっていたが、それでも全員の笑顔を見ることによってその事も気にならなくなった。

しかし、一つ重要な事に気付きはっとする。

「……ところで、皆はどこに寝泊りしたらいいんだ?」

一刀の一言にしばらくの静寂。

完全に忘れていたようだ。

一刀としては、元々聖フランチェスカ学園の男子寮に居たのだから寝泊りするのに特に問題はないはずだった。

一刀がその事をぼんやり考えていると、自分にも確認すべき事がいくつかあるのを忘れていた。

「しまった!?俺、戻ってこれたってことは学校に行かなきゃだめじゃん!?」

「あれ?今日、修了式だったんだけど」

嘆こうとした瞬間に、美雄の一言にえ?と表情を向ける。

「……マジで?」

「うん、マジで。これから春休み~♪だから、心配しなくていいよ。……えーと、名前は?」

「ああ、自己紹介が遅れてたね。俺は北郷一刀、よろしく凌統」

「ん~…まあ、いっか。真名は預けるよ、美雄って呼んで。かず兄(にい)」

「いいの?って言うか、かず兄?」

「細かいことは気にしな~い」

そう言いながら、美雄は一刀の背中に跳びつく。身長差があるため、美雄は一刀の背中にぶら下がる格好となるが、その光景に何人かはむっとする。

そして、何人かはその光景を見て悪戯な笑みを浮かべ、ニヤニヤとしていた。

「で、結局皆さん寝泊りはどちらにされるのですか?」

割って入るように蒼燕がそう言うことで、何人かが悩むように思考する。が、答えは別の所から出た。

「あら?貴方達の住まいはここよ」

「え?ここなの?」

貂蝉の発言に馬岱こと蒲公英が尋ねる。

「そうよ。留学生用の寮と言う事で用意された貴方達の新しい住まいよ」

「それに、学び舎の生徒の方がこの世界では何かと都合が好いしの。なにせこの世界の学問を体験しつつ、暇さえあればこの世界で興味のある事を調べる事が出来るのじゃからな。街を見て回るのも好いじゃろう」

「おおう…至れり尽くせりやな」

貂蝉と卑弥呼の話に真桜が素直に感心する。

だが、話には続きがあるようだった。

「学園に必要な物も取り揃えてあるわ。まあ、部屋に行けばあるけど……その物品とこの世界についての説明についてはご主人様に蒼燕ちゃん、美雄ちゃんたちにお願いするわ」

「任されました」「りょうか~い」「ああ、分かったよ」

三者三様の答え。

それを聞いた後、卑弥呼が続ける。

「もう一つじゃが、金銭の方はさすがに儂らでは工面できん。お主らでなんとかしてくれると助かる…」

「ええ、これだけ好待遇なうえに金銭まで寄越せなんてさすがに虫が好過ぎるわ。むしろ、ここまでしてくれた事に感謝するわよ」

華琳がそう言うと、多くの者が頭を下げる。

それを見た、貂蝉は頬笑み卑弥呼は豪快に笑う。

もう、やり残したことはないだろう。あとは、彼女達と北郷一刀の役目だった。

「それじゃ、私達は華佗ちゃんの元に戻ろうかしら?」

「うむ、そうじゃな。気が付いたらだぁりんにも色々説明せねばならんしの」

そう言って、二人は踵を返し曲がり角に消えた。一応、この寮の中には居るらしい。

「さて、これから大変だな」

そう一刀は呟きを漏らした。

「他人事みたいですね」

蒼燕にはそう捉えられたらしく、苦笑いする。

「取りあえず、今日は寝た方がいいんじゃないかな?」

美雄がそう言って外を見る。既に暗くなっており、全く見えなかった。

美雄の視線を追うように二人も同じ方向を見て、頷く。

「説明は明日にしましょう」

蒼燕はそう言った後、説明するためか魏の一行に向かっていく。

「じゃあ、僕は雪蓮さまたちに説明してくるね」

そう言って、美雄も呉の一行に向かっていく。

その二人の背中を見送って、一刀は一人考える。

本当に帰って来たんだなあ、としみじみと感じていた。まさか、皆が来るとは思っていなかったが一刀としては嬉しい誤算だった。

しかし、心の中では同時に葛藤が燻(くすぶ)り始める。俺はここに残るべきなのだろうか?それとも、あちらの世界に戻るべきなのだろうか?二つの思いが交錯する。

そんな思いを振り払うようにして、一刀は首を振り、正面を見据える。

今ここで考える選択肢ではない……今は、今を楽しみたい。そう思って、一刀は桃香たちに説明するべく歩み始めたのであった。

 

 

そんな彼を見送るようにして、景色の中を覗き込む数人の者。

そこは、白い空間で特にこれと言った変わった物はなく、同じ色のテーブルと椅子がいくつかあり、それに座っている人が何名かいるだけだった。

「蒼(あおい)さん、色々与え過ぎじゃないですか?」

そう言ったのは、髪は黒のモヒカン。瞳は鳶色。そして、眼鏡をかけ白装束を身に纏った一風変わった男だった。

「まあ、これぐらいはいいでしょう。ご都合主義万歳。と言うか砂のお城さん生きてたんですね」

蒼らしき十代の青年が答える。その者は、くせ毛のある蒼いショートヘアと濃い茶色の瞳。彼はレンズの上部分だけフレームのある眼鏡を掛けており、これまた白装束を身に纏っている。

砂のお城とは、モヒカンの男の事だろう。

「今のちょっと、メタ発言ぽくなかったか?」

そう突っ込んだのは、蒼と同じく十代くらいの青年。黒い長髪で、女性が羨むほどのつやがあり美髪と言ってもよいほどであった。腰には二振りの日本刀を挿しており、服装は一刀と同じ聖フランチェスカ学園の男性服。なかなかに整った顔をしており、ツリ目で、第一印象としては少々怖さを覚える。

「まあ、外史だからな。いかようにも創造できるし、あまり気にしない方がいいだろ」

と言ったのは、まるでターミ〇ーターのような筋骨隆々の男性。髪は角刈りの様な黒髪。服装は、アロハにタンクトップ、ジーンズにサングラスと、欧米か!と突っ込みたくなる格好だった。名前はジョージと言う。

「そういえば、こちらに何人か合流すると聞いたんですが本当ですか?」

そう言ったのは、某無双するゲームの関平まんまの格好をした青年。彼の横には、神龍昇天刀という斬馬刀が立てかける様に置かれている。

「関平さんも聞いたの?私もそう言う風に聞いたのだけれど、実際はどうなのかしら?」

関平とは、先程の斬馬刀の横にいた青年の事だろう。見た目が見た目だけに、無双するゲームを知っていればなお覚えやすいことだろう。

また、関平の疑問に同調するように言ったのは髪型が金色の長髪、目の色は紅色で装飾品は黒色のリボンをした女性。見た目からはお淑やかな印象を受ける。彼女もまた、蒼と砂のお城同様に白装束を纏っていた。

「ああ、なんでもサラダさんとか森羅さんが来るらしい」

次に発言したのは、髪型は長髪のポニテ、瞳は真紅。服装は紺のスーツと同色の皮靴、左腕には狼を象った手甲をしており、金縁の眼鏡を掛けた三十代後半と思われる男性。

「甘露さんと、スターダストさんも来ると聞いてるにゃ」

そして、彼の頭に乗っかる丸猫が補足するように言う。

「狭乃 狼(はざまのろう)さんとうたまるさんの言ったとおりですよ。あと他にも来ますが、それは来てからのお楽しみです」

蒼は、にこやかにそう答える。

ちなみにスーツを来た男性が狭乃 狼で、その彼の頭の上に乗っている丸猫がうたまるである。

「………」

「どうしたんです?ジョージさん」

先程の筋骨隆々の男性、ジョージと呼ばれた者が少し難しい顔をしていたのを見かねてか、関平が尋ねる。

「ん。ああ、誰か来たみたいだ」

関平に気付き、意識を戻したようにジョージはそう言った。

その中、心当たりがあるように蒼は呟く。

「へたれ雷電さんでも、来ましたかね」

その言葉と同時に、全員の背後に気配を感じたでそちらの方に振り返る。

噂をすれば、影なのかと振り向きざまに挨拶を交わそうとしたが、

「有澤〇工…………雷電だ」

目に飛び込んだのは、重厚なタンクだった。それは、五メートルほどの高さで両腕がグレネードランチャー、両肩に横たわるような大口径の大砲を装備していた。

「……これどう考えても、別人どころか別物でしょ!?」

大声で突っ込んだのは砂のお城。

「どこかですか?立派な雷電じゃないですか」

「どう考えても、雷電違いだろ!!」

蒼が感心するように言うが、誰もが思った…さすがにこれは違う。それを代表するかのように、砂のお城が感情的な突っ込みを入れる。

しかし、蒼がクスクスと笑っているところを見ると冗談であろう事が分かった。

「で、元ネタはあるのか?」

「ええ、アーマード〇アと言うゲームに出てくる雷電です」

戦国の問いかけに淡々と答える蒼。

「皆さん、なにしてるんです?」

そう言って、全員がタンクの雷電を見上げている間に背後から声がする。

「本物のへたれ雷電さんじゃないですか」

「狭乃さん、いきなり失礼だな」

狭乃 狼が振り返り、声を掛けたのはまさしく話していたへたれ雷電、その人だった。

彼は黒色の髪と瞳を除けば通称MGSに出てくる雷電にそっくりであり、思わずジャック!と叫びたくなる衝動に駆られる。彼も服装は白装束である。

へたれ雷電と蒼と狭乃 狼、うたまると戦国、関平の六名が談笑している間、他の面子はタンクの雷電のキャタピラ部分で何かをしている。

「これって、液体どれくらい入るのかしら?」

「いやいや、ほわちゃーなマリアさん。弾しか入りませんよ」

「タンク違いだろ」

ほわちゃーなマリアの一言に砂のお城、ジョージが順番に突っ込む。

その突っ込みに気にするでもなく、ほわちゃーなマリアはキャタピラの部分をバシバシと叩く。

が、なぜか別のところでも音がするのに三人とも気付いた。今彼らが居るのは、キャタピラの左側先端部分。音は彼らの左側で、キャタピラの長さを考えるとその半分ほどから聞こえてきた。

しかも、その音は手のひらで叩いた音ではなく金属同士を叩くような甲高い音であった。

三人がその方向に目をやると、テール状の黒い髪。瞳は赤色の科学者の様な白衣を着た女性がいたた。手には工具を持っており、それで叩いたであろう事が窺える。

「あれは、プーすけ6さんね。プーすけ6さーん!!」

ほわちゃーなマリアがそう言った大声で呼ぶと、顎に片手を当てたまま白衣の女性は顔を向ける。

三人を確認した後、小さく手を振る辺り正解だったようだ。だが、何か思いついたように振っていた手を止めると両手で筒を作り口に当てて叫んだ。

「ねえー!これって解体していいのー!」

三人は顔を見合わせた後、なんて答えたら良いものかと考えてるとジョージがすぐさま思いついた顔をし、蒼たちの方に向き直る。

「おーい!蒼、用事のある人がいるぞ」

腰に手を当てて、割と大声で蒼を呼ぶ。

談笑中とはいえ、蒼は気付き四人を確認した。割と遠くにいるプーすけ6の方に目を向けると何か納得したように頷く。

「では、五人ともちょっと席をはずしますね。あと、先程話した五人ももうすぐ来ると思いますよ」

「ああ」

狭乃 狼が生返事で答えたあと、蒼はタンクの雷電の方に向かっていく。

「そう言えば、サラダも先程の五人に入ってたんだよな?」

蒼が普通の会話の声で聞き取れないほどのところまで離れた後、へたれ雷電が尋ねる。その面持ちは、懐かしいことを思いだしていると言った風だった。

「みたいですねえ。茜ちゃんの時以来ですか?」

「そうだな。そう言えば、茜ちゃんどうしてんだろうなあ……」

「俺もちょっとは、加担しておけばよかったかな」

「今更言っても後の祭りにゃ」

狭乃 狼の言葉に再び懐かしさを覚え、どこか遠くを見つめるへたれ雷電。その構図は、彼女の境遇を哀れむ感じにも見えたが狭乃 狼は言わないでおいた。

また、関平はそれを羨むように微笑みうたまるが咎める。

戦国も言葉には出してはいないが、関平と同意見だったのだろう。うたまるに言われて「それもそうだな」と胸中で呟き、息を吐く。

「……ん?」

「どうかしたかにゃ?」

どこか上斜め遠くを見ていたへたれ雷電が、何かに気付いたような声を上げ、さらに頭上を見上げる。そのへたれ雷電の反応に気付いた狭乃 狼の頭の上にいるうたまるが尋ねる。

「いや、なんか落ちてくる」

その一言に疑問に思いつつも一匹と四人は、へたれ雷電の視線を追うようにして上を見上げる。相変わらずの白い空間が広がるだけ、当てもなく飛べば距離感すら狂ってしまいそうな何もない空間。

しかし、その白い空間になぜか五つの黒点が見えた。それは、どんどんものすごいスピードで近づいてくる。

やがて、目を凝らすと人影に見えるまでには近づいてきた。それを確認した四人と一匹は、「やっと来たか」と言うよりも、「なんで上から?」と言う疑問を胸中で呟いた。

 

 

一方、その落下中の人影では――――。

「僕たちが落下しているんです?」

「サラダさんなぜ一行前と繋げて疑問符なんだ?」

サラダと呼ばれた中性的な顔立ちの男性。女装すれば、どこかの三千院の天然ジゴロ執事と張り合えそうである。頭は例えるなら、キャベツの千切りを盛り合わせた感じで、瞳は青竹色。服装は白装束。

「外見の詳細の描写が若干ひでえな」

そう言うのは名を護衛と言う。銀色のショートヘアと鋭い鶯色の眼をしており、顔立ちとしては端正である。服装は白装束であるが、袖口が少し大きく開いている。

「それはそうと、この状況の原因はどこだ?」

護衛が目配せで、優男と言う言葉が似合いそうな顔立ちの少年に尋ねる。

「何があっても不思議じゃない」

返って来たのはそんな言葉。

おい!、と思わず突っ込みそうである。

「森羅さん、誰もそんな事聞いてない」

「冗談だよ。原因なら、あっちにいるよ」

森羅と呼ばれた、黒色のツンツン髪をした黒い目の少年は落下中にもかかわらず、努めて明るい表情で答える。

方向を指そうとすると、彼の白装束の腰にある刀二本が空気抵抗でカチャカチャと鳴る。

森羅にそう言われて、指が示す方向を護衛が見ると……。

「いやあ、楽しいですね~」

乱回転しながら、白装束を着た人が喋った。

「甘露さんがさっきからフリーダムなんだが……」

護衛の視線がその者に向いたと同時に呆れて呟いたのは、青で赤の線の入ったジャージと言う服とタオルを頭に巻いた男性。タオルは頭の全体を覆っている訳ではなく、後頭部あたりから彼の黒い髪がはみ出している。

甘露とは、乱回転している人の事だろう。髪型はくしゃくしゃの天然系、髪色は栗毛、目の色は濃い群青色。眼鏡と、腕にはブレスレットの様なアクセサリーを付けていた。

「そもそも、甘露さんが集合場所への扉を開けると言うから任せたのが運の尽き……」

「スターダストさんがブレーキ役なんですから、止めてくれればよかったんですよ」

「予測出来たら止めてるよ」

サラダにスターダスト呼ばれたジャージの男が失態を犯したように眼を抑える。

「上に出ても下に出ても一緒って、どんだけ大雑把なんだか……」

甘露のこの状況になった瞬間に発した言葉である。護衛が呟いたそれを思い出して再び呆れる様に甘露以外の者が、溜息を吐く。

「皆さん、そろそろ地面が近いっぽいですよ」

気付いたようにサラダが言う。

「なんか、でっかいタンクが解体されてるっぽいけど?」

「ああ、プーすけさんじゃありません?」

スターダストの疑問に森羅が答えた後、足が下になるよう姿勢を変える。そのまま、彼らは地面に足が地に着こうとする間際減速し狭乃 狼たちの傍に羽のように軽く降り立った。

「やっと着いたな」

降り立って一番に開口したのは護衛、少し疲れたのか軽く息を吐こうとしたとき。

ゴスッ!!!

と言う、鈍い音がするのを聞いてそちらの方に目を向けると、何故か仰向けで両足を棒のように垂直に上げている甘露の姿。

その姿を確認した後、足は重力に引かれ踵(かかと)から地面に着いた。

まさかと思い、護衛が口を開く。

「地面ぶつかるまで、乱回転したままかよ……」

頭痛持ちのように額に手を当てて呆れる。

「これって大丈夫なのかな?」

「俺たちの姿はイメージで、実態を持つ思念体みたいなもんですからね。別に、銃に撃たれようが剣で斬られようが現実にいる本体が痛みを感じる訳でもないから、大丈夫でしょ。あと、ギャグ補正」

サラダが心配そうに言ったが、森羅は心配するでもなく答える。そのあと、甘露はまるでベットから起きる様にして頭を起こした。傍から見れば不気味な構図だろう。

甘露はそのまま立ち上がり、少し後頭部をさする。痛みはなくとも、気になるのだろう。

「あ~、痛かった」

『嘘つけ!』

ズバッとその場にいた全員がその一言に突っ込んだ。

そのあと、気を取り直す様に甘露が狭乃 狼ら四人と一匹に向き直る。

そして――――――。

「へぅ( ゚∀゚)o彡°」

「「「「へぅ( ゚∀゚)o彡°」」」」「にゃぅ( ゚∀゚)o彡°」

挨拶を交わす。

「相変わらずシュールだな」

そう言ったのは、ジョージだった。その彼の後ろに続くように、他の4人が遅れて歩いてやってくる。

それを確認した甘露は即座に挨拶を交わす。

「へぅ( ゚∀゚)o彡°!」

『へぅ( ゚∀゚)o彡°!』

ジョージら五人がそうやった後、全員がはにかんだように笑いあう。

「さて、今のところ全員揃ったとこで話合いといきましょう」

そう言って、蒼が向き直ると大きな白い円卓が白い床から生える様に現れる。その後に十五の椅子が迫(せ)り上がりその内の一つは、座る場所が円卓と同じ高さである。

全員が自由に席に行くも、同じ席に座ろうとしてしまい戸惑うなどと言う事もなくスムーズに着席する。先程の高さの違う椅子はうたまるが座っている。猫である彼は、人が使う椅子に乗ると円卓の陰に隠れてしまうため、そんな事にならないようにするための配慮だ。

「で、話すって言っても何を話すんだ?」

戦国が単刀直入にそう聞く。

「今更、話す内容でもないと思いますけどね。左慈と于吉のことです」

蒼がそう言った事で、全員が「またか」といった表情をしている。

「この間、卑弥呼が言ってたことを気にしてるんですか?」

関平は思い当たる節を言ったが、その話を知らない先程来た7人は首を傾げたり、疑問の顔を向ける。それに気付いたのか、うたまるが補足するように説明する。

「以前、卑弥呼が左慈と于吉が正史の人間を募っていると言うことを忠告として伝えてきたのにゃ」

「なるほどねえ。出来た♪」

プーすけ6は円卓に座りながらも仕切りに工具を動かしていた。が、それも今しがた終わったようだ。何かの制御盤を見惚れる様に高々と上げる。

「さっきから何作ってたんです?」

好奇心で砂のお城は尋ねる。

「え~とね、圧縮コ〇マ粒子砲」

「コ〇マは…まずい」

へたれ雷電がプーすけ6の答えにそう答えた。その後、本人は少し弾んだ声で説明をし始める。

「かなり強力なんだけどねえ。3発しか撃てないうえに、次弾を打つのに30秒も掛かっちゃうのよね~」

残念そうにしながらもどこか楽しそうな声で、制御盤を操作する。すると、ゴウンゴウンと言うけたたましく、重々しい音と共に彼女の後ろにある砲台が動き始める。ある程度動かし、射線上にはなぜか自分たちが座っている円卓。多分角度的には、頭上を通るだろうがそれでも砲台を撃たれるのは御免である。

「一発逝っとく?」

何物騒な事をにこやかに言っているんだと、ばかりの視線が彼女に向けられる。

「おk、物騒なのは分かったから。実験は後でにしてくれ」

戦国のその一言に「ちぇー」と呟きながら制御盤を渋々と言った感じでしまう。

「それでどうするんですか?」

脱線してしまった話を引き戻す様にサラダが尋ねる。問題としては話を聞いてどう思うかではなく、具体的にどうするかと言う意味を込めた問いであった。

それを察するように蒼は提案を言う。

「まあ、案と言うほどでもないと思いますけど。この情報の詳細を調べたいのと、あと自分の外史に一人正史の人間を紛れ込ませたいんです」

「唐突な話ねえ」

ほわちゃーなマリアが率直な感想を述べる。当然、他の者も思っている事だろう。

「すみませんね。けれど、徒労で終わるのであれば笑い話にでもなると思うんです。でも、外史が一つ潰されるなんて笑い話にもなりませんよ」

蒼のその言葉に全員は重々しいモノを感じていた。

ここにいるのは正史の人間。同じ外史(ものがたり)を支持し、それを基盤に新しい『if』を生み出す者たち。

彼らにとって外史は、青々と生い茂る木の葉っぱのようなモノ。たかが葉っぱ一枚、けれども葉一枚に全てが詰まってるとしたら見方は変わるかもしれない。北郷一刀がいて、彼女達がいて、彼らの絆があって、その過去と未来がある。そう考えれば、外史一つと言えども重大な損失ではある。

「深く考えても仕方がない。気楽にいこうじゃないか。もちろん、手は抜かないがな」

ジョージがそう言ったことで全員顔をほころばせる。

「いいんですかジョージさん?ここでは、二度とないかもしれないシリアスな場面だったのに」

砂のお城がそう言うと全員がどっ、と笑う。

「ところで、あいつらと相対する事になったらどうするんだ?」

一通り笑った後、護衛が尋ねる。

「外史から追っ払うだけじゃない?」

推測で甘露が答える。が、何か納得しないスターダストに蒼が尋ねる。

「甘露さんの言う通りな訳ですけど、どうしましたか?スターダストさん」

「ああ。てっきり倒すものかとつい思ってたもんだから」

「それの答えは単純だ。世の中はイエスマンだけじゃ成り立たないって言う奴だ。あいつらでも一応正史の剪定は受け入れ、許容している」

へたれ雷電が理由を簡潔に述べる。そして、補足するように狭乃 狼が言う。

「許容はしても、認めてはいないけどな。左慈と于吉のファクターとしての役割を考えると、当然だろうが……」

そう言ったところで、話は打ち切れた。だが、すぐさま別のところから話が舞い込んでくる。

「そう言えば、外史には誰が行くんです?ぶっちゃけ、卑弥呼と貂蝉でこと足りそうな気がしないでもないが」

砂のお城がそう言って、蒼に目配せする。そもそも左慈と于吉との戦闘になったところで、あの二人が負けるところなど余り想像できないのが正直な話だ。それに正史の人間をあの二人の前に送り込むと言う事は、なにかしらの珍事やらチン事に巻き込まれると言う可能性がない訳ではない。蒼本人が行くと言うのも一つの手ではあったが、恋姫たちを気にかけている間にプロットが出来ていなかったなんて事にはなりかねないので、本人は辞退した。つまり彼以外の正史の人間が行かなければならないがしかし、蒼は心配いらないとばかりに一人の名前を呼ぶ。

「行く人なら決まってますよ。森羅さんです」

「あら、決まってたの?」

「ええ、マリアさん。本人の希望ですよ。祭さんとイチャイチャいたいと言う―――」

「ほとんど、欲望に近いじゃないですか……」

狭乃 狼が呆れ気味に突っ込む。その言葉を聞いた瞬間に全員が森羅の方に振り向く。

「そう言う訳です、大丈夫ですよ。やる時はきっちりやりますから」

明るい口調でそう答えるが、蒼が待ったと言った風に手を出す。

「少し、言い忘れてたんですがね。恋姫の人たちとあんまり関わるのは今回なしですよ」

「うえぇぇぇぇっ!?」

高いところまで持ち上げられて、落とされたような感覚が森羅を襲った。

だが、蒼はなんら気にせずさらに話す。

「当たり前ですよ。今回は見守ること前提ですし、外史の中だと正史の人間の実力はいかようにも強力にできます。ドラ〇ンボールみたいに、星の一部を破壊することだってできるんですからね。そんな実力を持った奴が彼女達の目に止まらない訳がないし、物語の主要人物を差し置いて自分がその位置に居ちゃったら、白蓮さんの影だってさらに薄くなります。なので、今回はエクストラか少なくとも及川みたいな悪友ポジションまでです。あと、種馬が羽馬のように彼女達の間を性的な意味で謳歌していてもそれを尾行しても無駄ですよ。これ、健全で全面的にカットされるんですから」

ドラ〇ンボールのくだりから、森羅は聞こえなくなっていた。彼に今襲いかかっているのは、絶望感と虚無感。

そして、思い馳せていた妄想に逃避した満足感。それにより、「萌え尽きたぜ、真っ白にな」と言う状態になっていた。

「ダメだ。ショックが大き過ぎて本当に白くなってやがる」

護衛の言う通り彼は真っ白になっており、周りの空間や椅子が白であるがために同化していった。

それは、一つ空席があるように見えるが実際はいる。が、座るまで分からないと言うほどに彼は白かった。

「誰か、復活させること出来ないかにゃ?」

「ええと、復活の呪文は最初なんだっけ?確か最後あたりぺぺぺぺ、ぺぺぺ、見たいな感じでぺが並んでた気がするんだが」

狭乃 狼が何かを呟くが効果はないようだった。

「まて、俺に良い考えがある」

「戦国さん、フラグな気がしてならないんですが……」

関平がそう突っ込む。

「健全じゃなく、KENZENなら?」

「それ、根本的な解決になってませんわ」

砂のお城の提案にほわちゃーなマリアがあっさりと切り捨てる。

「しょうがない、サラダさんをKENZENにするしか」

「うえ!?嫌ですよ。と言うかなぜ!?」

護衛の一言に椅子から立ち上がり、後ずさりするサラダ。

「大体、僕を弄ってだれが得するんですか!?」

「ショタ好き?」

蒼は割と真剣に答える。

「そうだ、どうせなら使う?お菊ちゃんを参考に作ったんだけど」

そう言って、プーすけ6が取り出したのは禍々しいフォルムにイボが割とたくさんあった。

それを見た瞬間、サラダは貞操の危機を感じた。

「なに取り出してるんです!?」

「ん~?ナニっぽいやつ。大丈夫よ、初めてでも安心できる心折設計だから。それに……ほら、実験してないし」

プーすけ6は、にこやかにフォルムの先を艶やかに弄る。

「字が違う上に、実験してないのを試すんですか?!」

「これも森羅さんを思えばの事です。諦めろ」

甘露が腕組をしながら頷く。

「森羅さんを思ってるなら、なぜ被害が僕に?!」

「ここまで来るとノリですよ。自分としてはちょっと虐めたくなりました」

「蒼さん、Sですか……」

この状況下であんまり、知りたくない事を知ってしまった事にサラダは嘆いた。彼が森羅に説明している時に、静かに微笑んでいたのを考えるとサディスティックな一面も考えられなくはない。

しかし、嘆いている暇があったら逃げればよかったと彼は後悔した。

なぜか、羽交い絞めにされている。誰がしているかは、すぐに分かった。

「んふふふ~♪つ~かまえた。さあさあ、おとなしくマッドサイエンティストの実験体になっちゃいなさい」

「自分でマッドサイエンティストって言っちゃった!?」

「好い実験体の前では、人はみんなマッドサエンティストになるものよ」

「初めて聞きました……」

プーすけ6にいいようにされているサラダ。

なんだか、変な高揚感を覚え始めたその時に蒼が護衛と共に何かを持ってきた。

彼らの手に持っているのは、野菜とドレッシング。嫌な予感しかしないのを感じながらも、恐る恐る聞いてみる。

「あの……なんですそれ?」

「気にするな、トマトサラダさん」

護衛の言う事に突っ込まず、そのまま聞く。

「なにプレイですか…」

「名前通りにサラダプレイという新ジャンルを……」

「開拓しないでいいですよ!!」

蒼の言う事に苛立ちを覚えながらもがくがプーすけ6は女性の割に力が強くちっとも動けなかった。

そんなサラダに微笑みながら二人は近づく。

「さて、マヨネーズかごまドレッシングのどちらから先に行きます?」

蒼がその二つをまざまざと見せつけ、さらに近づく。

「ふえっ!?ちょっと、待って、ほんとに、いやあ、来ないでって!?」

 

アッーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 

 

それを少し遠くから見てる他の面子。

あの4人以外は、全員まだ円卓を取り囲んでいる状態だ。

「誰か止めないのかにゃ?」

「もう、なにも言うまい」

うたまるがそう言うが、ブレーキ役であるスターダストが手を上げたことでサラダがいいようにされているのを見ているしかなかった。

「激しいですね。あ、トマト投入」

「森羅さん、復活したんですか」

関平が驚きを込めて言ったのは、先程まで真っ白になっていた森羅に色が戻っているからである。

そして、森羅が言ったのはサラダの境遇であろう。

「いやあ、よくよく考えてみればカットされるのはこれを見ている正史の人に対してであって、出演している自分にとっては生で見れるから何ら関係ないと言うことに気付きましてね。多分、蒼さんが尾行しても無駄と言うのは、見ている人に見せられない、と言うことだったんですよ」

「そう考えると、森羅さんが羨ましく……」

森羅の言葉に戦国は羨望の眼差しを送る。

「とまあ、方針も決まったとことですからお開きにしましょうか」

狭乃 狼がその言葉に全員が頷く。

「じゃあちょっと、ジョージさんに軽く料理でも作って欲しいんですよ。もう、夕食時ですし是非とも食べてみたいんですよねえ」

「おお、そうか。なら、オススメラーメンと一緒に満漢全席でも作ってくるか」

へたれ雷電の提案を快く引き受けてくれた。しかし、満漢全席が軽いものかどうかと聞かれれば違うだろうが。

 

そんな、ジョージの料理を楽しみにしている中、サラダの嬌声が聞こえてくるのだった。

 

そんな時、また違うところでは二人の青年が自分たちと同じ白装束の者がたくさんいる神殿の様な場所に居た。

いくつもの石柱が並び立ち、その石柱の間には様々な話をする者が並び立っている。その青年らは眼をそちらに向けるべくもなく、無関心とばかりにただ前を見て人の間と石柱を縫うように歩いていく。

ある程度、人がいない場所になってくると眼鏡を掛けた男が隣に居る青年に話しかける。

「はてさて、左慈。少々厄介な事になりましたよ」

「なんだ?まさか、正史の人間が感づいたか」

「ええ、そうです。ただ、具体的な計画についてまでは勘付かれていないようで」

「ちっ……。面倒な連中だ」

本当にめんどくさそうな舌打ちをすると、忌々しそうな顔を浮かべる。

「しかし、彼らがいなければこうして我らが存在する事はなかったでしょう。あの外史が肯定された後、否定するために生み出された我々は本来消える運命に遭ったのですから」

「とんだ皮肉だな。外史を肯定する連中に、否定している俺たちが助けられたのだからな」

「ですが、そのおかげで我々にも機会が巡ってきました。正史の方ではあの外史に対する不満の声が募っています。ここに漬け込む以外他にないでしょう」

「そう言えば新しい奴が来ると言っていたな、于吉」

「そうです。もうすぐ……いえ、今来たようですね」

そう言って、石柱がきれいに並ぶ一つの方向を見る。遠くを見るほどに深淵が増して、吸い込まれそうな錯覚に陥りそうだが。彼らは、全く動かぬまま見る。

すると、暗がりの中から一人妙齢の女性がコツコツと音を立てて、向かってくる。

そして、二人とある程度の距離を取って足を止める。

顔の方は影で見えず、その様子や表情はうかがえない。

「それでは、よろしくお願いしますよ。妲己」

于吉の眼鏡が彼女の顔を写したかと思うと、そう言った。

彼女は微笑む。

 

おそらく、彼らと相対するの日は近いのだろう。

 

続く

 

 

~あとがき~

 

もう、なにも言うまい。

 

只一言、疲れた。

 

文章の量見てなんじゃこりゃですよ。

 

自分自身驚きを隠せませんね。

 

これだと誤字とか脱字とかおかしな点とかあるんだろうなあと思いつつも、大丈夫だと思いたい。

 

一応台詞ない人いるけど、恋姫メンバーは全員いますよ。華雄さん以外は………。

 

彼女は、別のところで出てきますんで安心して下さい。あと、二喬も。

 

恋姫の中で有名な武将がいないのは、現代に飛ばされていたりと言う感じの設定です。

 

だから、これからもオリキャラがちょくちょく出てきますんで注意して下さい。

 

あと、小説に参加してくれた皆さま方ありがとうございます。

 

これからも、出てきますんでよろしくお願いします。

 

募集はまだ止めてませんので、じゃんじゃか参加して下さい。

 

ところで、サラダさんの性的なくだりに反応した方、少しお話しましょう。今後とも、サラダさんはああ言うノリでイクのかということついて。

 

ちなみにうp主は、ショタよりも雛里ちゃんのようなのが好物です。いや、ショタでもいけますけど、リアルではNGです。

 

それとクロスオーバーの企画もしてますよ。ふふふふwwwww

 

オリキャラの紹介に関してはまた次回です。

 

他に聞きたい事があれば、コメントで返信しますので、どうぞご遠慮なく聞いて下さい。

 

最後に遅れましたが、地震の被災に遭われた方々の誰かがこれを見て笑顔になっている事を心から願います。

 

地震により、日常が変わってしまった人々に、私は変わらない物を彼らに送り届けたいと思います。

 

それでは、また次回。

 

 

 


 
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